インタビュー

AKIHIDE

AKIHIDE、ソロ作品第4弾が完成。インストゥルメンタルアルバム
『月と星のキャラバン』でいざなう音の世界旅行――。

BREAKERZのギタリスト、AKIHIDEのソロ作品第4弾としてリリースされるインストゥルメンタルアルバム『月と星のキャラバン』。昨年11月に行われたジャズクラブツアーを通して、サポートミュージシャン、ファンと共に育て上げた至極の全10曲が収録される今作は、世界各国の情景を描いた“旅”をテーマにした作品。「より僕らしくなった」という今作が完成に至るまでの経緯をAKIHIDEに聞いた。

◆4作目にしてより突き詰められた

――1stアルバム『Amber』(2013年6月)が私小説のような作品、2ndアルバム『Lapis Lazuli』(2013年10月)が聴いた方が主役のストーリーのサントラ、3rdアルバム『RAIN STORY』(2014年5月)が聴いた方にとっての絵本ということで、ずばり今作のテーマは?

AKIHIDE:ギターで音の世界旅行を一緒にしたいな、という作品になっています。

――世界各国の風景を思い浮かべられるアルバム作品ということですが、各曲、具体的な国のイメージはあるのでしょうか?

AKIHIDE:そうですね。例えば、「Electrical Pirates」はアジアや中東、そういうオリエンタルな雰囲気だったり、「Starlight Wizard」はアンデスとか南米のほう、同じ南米でも「Ring」はブラジルだったり、「Machine Heart Blues」はニューヨークのスムースジャズと日本が混ざった感じ、「Gypsy Sweets」はフランス、「Warrior」はスペインだったり。本当に色々な国の音楽を自分なりに昇華したものですね。

――なるべく幅広い国の音楽を取り入れようという意識があったんですか?

AKIHIDE:どの曲も、同じような音楽ジャンルにはしないで、各国の影響を受けた1曲1曲かぶらないような作品にしようと、意識的に違うジャンルを選んでいきました。

――前作『RAIN STORY』はブックレットの絵本が軸になっていましたし、これまでの他の作品ももちろん今作も、ストーリー性のあるものになっています。そこは、やはりAKIHIDEさんのこだわりでしょうか。

AKIHIDE:今までも色々な形で表現してきたんですけど、ストーリーがあって、インストゥルメンタルですけど、言葉と絵があることで自分らしくなるというのが、4作目にしてより突き詰められたなと思います。今回はストーリーも前よりも長い文章だったり、絵も自分で描いている量が多いので、より僕らしくなったんじゃないかなと思います。

――ちなみに、そちらが今回のブックレットの中身ですか…?(※AKIHIDEの手元にチェック用の印刷物が)

AKIHIDE:まだ文字校正前のものですけど。

――本当に文章がたっぷりなんですね。

AKIHIDE:絵本というよりは物語というか。前回は言葉を散りばめたポエムっぽい感じだったんですけど、今回は完全にストーリーが伝わりやすいものになっていて。10個の章に分かれているんですけど、各章に合った音だったり、アレンジもその物語に合わせて膨らませたりしたので、今まで以上に音と絵がリンクしている作品になっています。

――物語の各章のタイトルが、曲のタイトルの日本語に近いんですね。

AKIHIDE:そうですね。物語に近い名前で曲のタイトルが付いています。「教会の指輪」(物語)だったら「Ring」という曲のタイトルというように、そのまま一緒のタイトルではないんですけど、ワードやイメージは同じものにしていますね。

――なるほど。物語の文章は会話になっているんですね。

AKIHIDE:それぞれ個性のある4匹のうさぎたちが旅をしていく話になっています。昔から日本人は月にうさぎが住んでいると言っていたので、今回はうさぎが月からやって来て…という話なんです。

◆ギターで表現する楽しさや難しさ、そのために何が必要か

――『Amber』ではヴォーカルとギター、『Lapis Lazuli』ではアコースティックギターのインスト、『RAIN STORY』ではエレキギターのインストがメインという、異なるタイプの作品3作を経て、音楽的には次はこんなものを作りたいというイメージはあったのでしょうか?

AKIHIDE:『RAIN STORY』のツアー(2014年6~7月)が終わってすぐ、ジャズクラブでのツアー(11月)がもう決まっていたので、そこで作品を出すのもありかなとは思ったんですけど、これまで結構短いスパンで来ていたので、なんか違う作り方をしたいなぁと思っていたんです。毎回ライブで曲が進化することが多かったので、だったら逆にライブを経て、進化した状態のものを皆さんに聴いていただくのもありかなと。もう7月中旬くらいに『月と星のキャラバン』というタイトルが浮かんで、絵が浮かんできて、旅をテーマにしようということで、色々な国の音楽を吸収して作品にしようというのが、わりとすぐに浮かびましたね。

――制作の遅れ等で結果的にというのは聞きますが、ツアー先行で、そこで披露した新曲たちを作品にするということを先に宣言する方法は珍しいなと。

AKIHIDE:お客さんは知らない曲だらけのツアーになるというところで、最初はもしかしたら不安もあったかもしれないんですけど、メンバー、スタッフさんのおかげですごく良いツアーが回れて、そこで曲も良くなっていったので、本当にやってよかったなと思いましたね。

――Motion Blue yokohamaでのライブを拝見させていただきましたが、距離が近いのもあって、お客さんのほうがドキドキしている印象でした。前回(2013年11月)と2回目(2014年11月)のジャズクラブツアーで、会場の空気に変化は感じましたか?

AKIHIDE:最初は、お客さんもインストゥルメンタルが中心のライブってあんまり聴いたことがない方が多かったと思うので、お互い探り探りな感じもあったと思うんですけど、2回目のジャズクラブツアーでは、食事をしながらお酒を飲みながらリラックスした状態で、音で会話するスタイルのライブを楽しむというのを、皆さんもだんだん知っていただいたみたいで。例えば、メンバー同士その時その時だけのアドリブで仕掛け合って、うまくいって笑ったりする楽しい雰囲気というのを、お客さんも感じ取ってくれて、笑ってくださったり、拍手してくださったり。音を通じてコミュニケーションしているという形が、2回目のツアーではより強くなりましたね。

――AKIHIDEさんがすごく楽しそうな表情をしているなと思いました。

AKIHIDE:言葉がない分、表情で伝えるというのもすごく大事なライブスタイルになるので、ある意味、BREAKERZのライブや自分が歌う時のライブより、いつも以上に表情が出ているかもしれないですね。近い距離感だからこそ、それが共有できて良かったなと思います。

――アコーディオンとサックスは11月のツアーが初共演だったそうですが、どの段階で今回の編成を決めたのでしょうか?

AKIHIDE:最初にタイトルが浮かんだ時にライブの絵が浮かんだんですね。その段階で、アコーディオンとサックスがあったんです。なんとなく「キャラバン」って、僕の中ではアコーディオンのイメージが強くて。ヴァイオリンもいいなとは思ったんですけど、やったことのない楽器の方とやるほうが、お客さんにも新鮮に見てもらえるかなと。なので、早い段階で決まりましたね。

――『RAIN STORY』で、ジャズ、フュージョン界の方々と楽曲を制作したことが、今作に繋がっていたりするのでしょうか?

AKIHIDE:前作の素敵な大先輩の皆さんも、「RAIN MAN」ツアーもそうですし、8月にあった「Being Guitar Summit Vol.02」というギタリスト4人が集まるイベントがあって、それも本当に凄腕の先輩ギタリストの皆さん(増崎孝司(DIMENSION、B.B.クィーンズ)、五味孝氏(T-BOLAN、electro53)、柴崎浩(ex.WANDS、abingdon boys school))とやらせていただいて。そういう色々な人との巡り合わせで、ギターで表現する楽しさや難しさ、そのために何が必要かを学んで、今作を作るにあたってすごく勉強し直したところがあったので、刺激になりましたね。

――今回のアーティスト写真では、AKIHIDEさんがギブソンのES-335を手にしたものになっていますが、今作の収録曲のうち半分くらいはこのES-335の音でしょうか?

AKIHIDE:そうですね、エレキギターはこれと新しく買ったもう1本の2本で録ったので、レコーディング初参加のギターたちとやりましたね。アコースティックギターは前も使っていたものですけど、ガットギターも新しいものだったので、今回は結構新しい楽器でしたね。

――新しい楽器が多くなったのは、どういう経緯なんでしょう?

AKIHIDE:ギターって面白いもので、形とか種類でそれぞれの音があって。今回は大人の優しい音を出したくて、ES-335は大人の音がするギターなので、これを使うことでギターのサウンド的にも一皮むけたような、大人の音になったと思いますね。

――聴いていて、すごく甘くて温かい印象を受けました。

AKIHIDE:確かに、アコースティックギターとエレキギターの間に位置するようなギターなので、生っぽいというか。生楽器に近ければ近いほど、人の声や温もりに近くなると思うので、そういう温かい印象を受けてもらえると思います。今作はアナログテープという往年のレコーディングシステムで初めてミックスしたので、音が全体的に優しいんですよね。でもちゃんと太いし、心地いい音で録れていて。ギターも他の楽器もトータルですごく心地いいサウンドで録れているので、聴く場所を選ばないんじゃないかなと思います。

――ちなみに、「Starlight Wizard」の笛はケーナですか?

AKIHIDE:最初はケーナのイメージだったんですけど、なかなかケーナを持っている人がいなくて。ライブでやる際に、じゃあリコーダーでやってみようかという話になって。サックスの中村くんが小学校の時に実際に使っていたリコーダーを持ってきてくれたんですけど、それがすごく良い音色で。いいなと思って、今回はソプラノリコーダーとアルトリコーダーを吹いてもらいました。両方とも中村くんの小学校時代のものなんですけど、やっぱりすごいですよね、プロが吹くとあんな良い音色になるんだっていう。

――今回も様々な音色が収録されていますが、『Lapis Lazuli』レコーディング時のビスケットやお茶っ葉の缶をパーカッションにしたというような、意外な裏話はありますか?

AKIHIDE:クラップは大変でしたね。「Ring」はブラジルの結婚式のイメージで作った曲で、最後に結婚式が盛り上がってみんなでクラップして歌っているというイメージだったので、クラップを録ったんですけど、100人くらいの規模の結婚式にしようという話になって。結構大きいスタジオだったので、場所を変えて録ってみました。実際の結婚式場みたいな配置にしたほうがリアルな音になるんですね。だからスタッフさん合わせて4~5人で、「君は親族の席。君は友人の席。君は外野」とか言って録って、「じゃあ移動! 次は新婦さん側の友人」とか(笑)。そういう感じで、みんなでワーキャー言いながら、本当の結婚式場のような配置で並んで拍手をすると、臨場感が出てきました。実質4~5人なんですけど、何度もやったので100人近い人数のクラップになりました。

◆愛情を持ってやってくれた

――Musing限定盤(完全生産限定)にはGuitar Only Ver.も収録されていますが、レコーディングはこちらの方が先でしたか?

AKIHIDE:レコーディング自体は先でしたね。でも曲自体はライブでやることを考えて、通常盤のバンドアレンジの方向性で考えていましたが、そこから抜き取って、Guitar Only Ver.は一日で一人で録りきりました。

――早いですね。最初からGuitar Only Ver.も制作するつもりだったんですか?

AKIHIDE:いえいえ。最初は、新曲を知らないお客さんのために、ネット上で少しでも聴いていただこうと思って短く作ったんですけど、それがお客さんやスタッフさんから良い反応をもらったので、じゃあちゃんと作ってみようかということで。最初のものは1分サイズだったんですけど、せっかく作るなら1分じゃ申し訳ないので、もう少し膨らませて作り直しました。

――なるほど。今回の制作において、特に新しいことをしたなと思う部分は?

AKIHIDE:今回はライブツアーを経てからのレコーディングで、ライブは基本的にアドリブが多かったので、僕も含めそれぞれのミュージシャンのその時の気分で、曲の長さが全然違うんですね。それがツアーの最後くらいにはだんだん固まってきて、お互いが曲のストーリーを共有できて、レコーディングはバラバラで録っていくんですけど、それぞれが「あの人はこう来るな」というのがわかっているので、その躍動感というのが今までにないくらい出てるんですよね。

――ミュージシャンの皆さんが一堂に会することはなかったんですか?

AKIHIDE:今回はなかったですね。実際は同時には録ってないんですけど、ライブをやっているかのような。サポートミュージシャンなんですけど、ある意味バンドっぽいというか、すごく愛情を持ってやってくれたし、みんな上手いんですけど、ソロとかすごく時間を掛けてくれたんですよね。「良いのが録れたからもう大丈夫」って言ってるんですけど、録り終わった後で「もうちょっとだけやらせてください!」って(笑)。みんな上手いから普段は1回2回くらしか録らないと思うんですよね。それをこだわって何十回もやってくれたっていうのは、皆なりに曲に対しての愛をツアーで感じてもらえたんじゃないかなと。それが本当に嬉しかったですね。これが今までにはない感覚だったかもしれないですね。

――2月28日には初のホール公演が国際フォーラムホールCで行われます。今回は新たなバンド編成、映像演出が加わったライブになるそうですね。

AKIHIDE:基本的にはアルバムの編成なんですけど、そこにピアニストが加わったり。あとは、うさぎたちの物語も一緒に進行していけたらなと思っています。

――きっと、グッズもまた可愛いものが出るんでしょうね。

AKIHIDE:そうですね、追加でいくつか考えています。僕の場合はグッズも作品のような感覚で作らせてもらっているので、それも楽しみにしていただけたら嬉しいですね。

――ここまでの4作、毎回タイプの異なる様々な作品をリリースされてきたので、今後AKIHIDEさんがどんな作品を生み出すのか、すごく気になるところなのですが、今現在AKIHIDEさんの中でやってみたいなと思っていることはありますか?

AKIHIDE:おぼろげには色々あるんですけどね。今回、一部ではありますけど色々な国の音楽を表現してみて、今度は日本の音楽を掘り下げたものを作ってみたいなと思いました。今まで英語のタイトルが多かったので、言葉も然りなんですけど。

――なるほど。本当に尽きないですね。

AKIHIDE:音楽が尽きないので、そこで遊ぼうと思うと永遠に続けられる楽しさがありますよね。

――初音源からずっとアルバムをリリースし続けているということ自体が、すごいことです。

AKIHIDE:(笑)。さすがに今年はBREAKERZも動き出しますし、今までのスパンではなかなか作れないとは思いますけど、制作意欲は変わらずありますので、いい形でまたリリースできたらいいなとは思います。でも現時点で、このアルバムは自分でも聴きまくっているので、まずこの作品をたくさんの人に聴いていただきたいです。

――では最後に、Vifをご覧の皆さんへメッセージをお願いします。

AKIHIDE:ギターインストゥルメンタルの作品ですが、すごくメロディが聴きやすいと思いますので、あまりインストゥルメンタルを聴いたことがない人にも楽しんでもらえる作品になっていますし、どこでも心地よく聴いていただける音やフレーズを散りばめました。何より、色々な国の音楽を僕のギターで一生懸命表現したので、聴いていただくと一緒にどこか違うところに行けるような作品になっています。ぜひ聴いていただきたいなと思います。

(文・金多賀歩美)

AKIHIDE

<プロフィール>

2001年、FAIRY FOREのギタリストとしてメジャーデビュー。2003年、FAIRY FORE脱退。2004年、NEVER LANDを結成しギターヴォーカルとして活動を始める。2007年、NEVER LAND解散。同年BREAKERZ結成。これまでに様々なアーティストのサポートギタリストや楽曲提供も行ってきた。また、オンライン絵本コンテンツ『MOON SIDE THEATER』の開設、絵本『ある日 ココロが欠けました』を出版する等、アート作品も手掛ける。2013年よりソロ活動をスタートさせ、これまでに3枚のアルバム『Amber』『Lapis Lazuli』『RAIN STORY』、絵本『Life Book』、LIVE DVD『AKIHIDE LIVE 2013 “Amber×Lapis Lazuli”』を発表。2015年2月28日には、ソロ初のホール公演が国際フォーラムホールCにて行われる。


■オフィシャルサイト
http://akihide.com/


【CDデータ】

Musing限定盤
(完全生産限定)
「月と星のキャラバン −Musing Special Package−」
2CD+LIVE DVD/三方背ハードカバーBOX/デジパック仕様
40Pスペシャルブックレット・月と星のメッセージカード
ZACF-9005
¥7,407+税
※この商品はビーインググループ音楽ポータルサイト「Musing」限定で購入いただける商品となります。

通常盤
(CD Only)
28Pブックレット
ZACL-9081
¥2,593+税
※CDの内容はMusing Special PackageのDisc.1と同様です。


『月と星のキャラバン』
2015年2月18日(水)発売
(ZAIN RECORDS)
BREAKERZのギタリスト、AKIHIDEのソロ作品4枚目となるアルバム。聴いた人を世界各国へ連れていく“旅”をテーマにした作品。

【収録曲】
Disc.1:「月と星のキャラバン」
01. Moon Wind
02. Aurora
03. Silver Rain
04. Electrical Pirates
05. Starlight Wizard
06. Machine Heart Blues
07. Ring
08. Gypsy Sweets
09. Warrior
10. 月と星のキャラバン

Disc.2:「Music Letter’s 〜月と星のキャラバン Guitar Only Ver.〜」※Musing限定盤のみ
01. 月と星のキャラバン
02. Aurora
03. Electrical Pirates
04. Starlight Wizard
05. Machine Heart Blues
06. Ring
07. Gypsy Sweets
08. Warrior

LIVE DVD:「Premium Night Show −月と星のキャラバン−」※Musing限定盤のみ
01. 月と星のキャラバン
02. Warrior
03. Namida
04. Machine Heart Blues
05. Aurora
06. Electrical Pirates
07. Gypsy Sweets
08. Libertango
09. Ring