インタビュー

AKIHIDE

前作『Amber』と対をなす作品『Lapis Lazuli』が完成。自身初のインストゥルメンタルアルバムに見る、ギタリスト・AKIHIDEの原点と挑戦。

BREAKERZのギタリスト、AKIHIDEが世に送り出すソロ作品第2弾は、自身初となるインストゥルメンタルアルバム。AKIHIDEが全曲作詞作曲、ヴォーカルをとった前作『Amber』と対をなす今作は、アコースティックギターでロックを表現するという、彼が以前から思い描いていたものが形となった至極の作品。“生の音”にこだわったからこそ生み出されたその音色を、心行くまで堪能していただきたい。

◆聴いてくださった方の人生の1シーンに添える花になれたら

――初のインストゥルメンタルアルバムを制作した率直な感想はいかがですか?

AKIHIDE:インストゥルメンタルアルバムというのは人生初でもありましたし、アコースティックギターだけで表現するというのも初めてだったので、当然難しさも感じたんですけど、今一番思うのは「楽しかったなぁ」ということですね。アコースティックギターってシンプルな楽器じゃないですか。だからこそ自分の手やアイディアでこんなことができるんだなっていうのを再認識できたことが、ギタリストとしてすごく楽しかったです。

――歌、歌詞がないというのは表現するパーツの一つがないわけですが、歌があるのとないのとでは制作する上でどちらが苦労しますか?

AKIHIDE:歌詞があることの良さというのは伝えやすいということですけど、だからこそ言葉一つ一つの難しさはあるし、同様に歌うことも伝えやすい分、表現力をより高めないといけないという難しさとおもしろさがありますよね。前作『Amber』は僕が伝えたい物語を「一緒に冒険しましょう」と提示した作品なんですけど、今作に関しては僕の気持ちや世界観云々というよりは、聴いてくださった方の人生の1シーンに添える花になれたらいいなと思ったんです。そうなった時に、歌や歌詞があることは逆に邪魔になりかねない可能性があって。僕も朝食を取る時や夜寝る前に歌詞がある曲も聴くことはあるんですけど、そこに耳が行ってしまう時もあって、作業中だと中断しちゃうこともあるんです。インストゥルメンタルだと、言葉がないことで気持ちがより高まる瞬間があったりして。そういうものを作りたいなと思って。歌や歌詞がないことで、聴いてもらう方の想像力、心地よさを広げられるアルバムになるんじゃないかなと思います。

――前作『Amber』は“人生の旅”というテーマがありましたが、今作も全体で一つの物語になっている印象を受けました。

AKIHIDE:対の作品ではあるんですけど、『Amber』は“人生の旅”で今作はもっとミニマムな時間軸でのストーリーを考えていて、朝起きて夜寝るまでの、リスナーの皆さん一人一人が持っている生活に身近なものを作りたかったんですね。1曲目は「Birthday」というタイトルですけど、朝起きるってことはある意味生まれ変わっているんじゃないかなと思って。記憶は受け継いでいますけど毎朝細胞は生まれ変わるので、朝起きる度に生まれているから「Birthday」として祝って、夜寝る前に明日が希望に満ちているといいなという意味で「Tomorrow」という曲で終わる。今回は“一日”という身近な単位での作品作りをしました。

――なるほど。『Amber』は“私小説のような作品”とおっしゃっていましたが、今作を一言で表すなら?

AKIHIDE:“BGM”ですよね。聴いていただく方が主役のストーリーのサントラというか。

――『Lapis Lazuli』というタイトルにはどんな思いが込められているのでしょうか?

AKIHIDE:“Amber”が木々の流した樹液が固まって琥珀になるということで大地の石だとしたら、“Lapis Lazuli”は天空の石と言われているので、まず天と地という対比ができているのと、“Amber”はオレンジっぽい色で“Lapis Lazuli”はブルーなのでそこの差も上手くリンクするなと。“Lapis Lazuli”は石として、邪気を払う、浄化するという意味もあるらしいんですよね。聴いてくれた方の心が少しでも浄化されるような作品になってほしいというところで『Lapis Lazuli』がいいなと思いました。

――“Lapis Lazuli”は昔から幸せの象徴とされてきたそうですが、そういった意味合いも込められているのでしょうか?

AKIHIDE:そうですね。どちらも幸せを呼ぶ石なので、ある意味『Amber』と『Lapis Lazuli』というのは真逆に見えて、実は同じような意味も持っているんです。なので、歌ものを聴きたい時は『Amber』を、他の作業をしながら聴きたい時は『Lapis Lazuli』をというように、ぐるぐる回っていただいてもいいと思います。

◆あの優しい笑顔はどこから生まれたのか

――今作の収録曲はボーナストラック以外、全て英語表記なんですよね。

AKIHIDE:ストーリー云々というのはあまり提示したくなかったので、想像力が広がる少ないワードがいいかなと。日本人としては日本語よりも英語の方がもっと曖昧になるし、インストゥルメンタルで言葉が無い分、海外の方に聴いてもらえるかもしれないので、英語でなるべく1ワードで、僕たち日本人にも馴染みのある言葉で、なるべくシンプルにしましたね。

――では、ボーナストラックを日本語表記にした理由というのは?

AKIHIDE:アルバム自体のテーマとして全て生楽器でやろうと思ったんです。「Moon Dancer」という曲の途中で虫の音が入っているんですけど、あれも実際に富士山の麓まで録りに行ったんです。わざわざ録りに行かなくてもサンプリングCDとかに入っているんですけど、やっぱり生の方がいいだろうということで。そういうのも含めて今作は基本的に生楽器でやっているんですけど、ボーナストラックはその括りをなくそうということで、エレキギターを弾いてシンセも入っていて、タイトルも日本語にしようと思ったんです。「遠き山に日は落ちて」って学校の下校時や閉店の時に流れる、皆さんご存知の名曲だと思うんですが、実は僕が人生で初めてギターで弾いた曲なんですよ。

――そうだったんですね。

AKIHIDE:その曲を初めてのギターアルバムの最後の曲に持ってくるというのは、自分の中で納まりが良いというか、これを英語にするのは自分的にリンクしなかったし、ボーナストラックなのでいいかなと思って。

――なるほど。前作はソロ活動が決まってから作った楽曲はないということでしたが、今作はいかがですか?

AKIHIDE:「Home」以外はソロ活動が決まってから作った曲ですね。「Home」はオフィシャルサイトでずっと使っていて、7年くらい前からある曲ですね。

――制作は順調でしたか?

AKIHIDE:約1年前、『Amber』の最初の曲をレコーディングした頃に、もう「Lapis Lazuli」や「Sayonara」もレコーディングしていたんです。その後『Amber』の制作に入ってツアーもあったので一回止まっていて。ツアーを経て秋に向けて制作するとなった時に、エレキギターを使ったインストゥルメンタルも入れたくて、自分の中で色々と迷ってはいたんです。で、8月頃に「やっぱりアコースティックギターだけで表現したいな」とまとまってからは、曲作り自体はポンポンすぐ生まれてきましたね。

――今作はどのくらいの本数のギターを使用したんですか?

AKIHIDE:アコースティックギターだけだと、たぶん4本ですね。あとガットギターとマンドリンと三線という沖縄の楽器ですね。

――三線もAKIHDIEさんが演奏しているんですね。(※「Okinawa」)

AKIHIDE:難しかったですね。母が誕生日にくれた、おもちゃみたいな三線だったんですけど。それを引っぱり出してきて弾いてみました。普段全く弾いたことがないのに急に持ってきたので、練習してなんとか(笑)。いい雰囲気になったので良かったですね。

――レコーディングで技術的に一番苦労したのはどういった点ですか?

AKIHIDE:呼吸すると息の音も入っちゃうんですけど、これはもうしょうがないんですよね。そこが難しかったですね(笑)。集中しないといけないし、リズムを取るのに足を揺らしても音が入っちゃうんです。プレイももちろんなんですけど、その部屋の空気感も音に入っちゃうので、そこは結構気を使いましたね。

――「Birthday」と「Home」は特に息づかいが聴こえました。

AKIHIDE:すいません(笑)。イラッとする方もいるんじゃないかなと思ったんですけど、あれは消せないんですよ(笑)。でも、楽器って本来はそういうものだと思うんですよね、人間がやっていることなので。歌だったらブレスが入るじゃないですか。楽器も動きや呼吸が当然伝わるはずなのに、商品化されることによって削られちゃったりするんですよね。今回はそういうのはやめようと思って。歌と詞が無い分、多少の粗い部分もミスや息づかいも入れることで、よりヒューマンな伝わりやすいものが出てくるのかなと。まあ、息は他のプレイヤーの音も入っているので、僕の音だけじゃないんですけどね(笑)。

――曲のタイプ的に得意ジャンルみたいなものはありますか?

AKIHIDE:僕の母が沖縄出身で、おばあちゃんが90歳くらいで今も沖縄にいるんですけど、沖縄って第二次世界大戦の時に色々なことがあったじゃないですか。うちのおばあちゃんも自分以外みんな戦争で死んじゃったんです。沖縄の方ってそういうことを抱えている方が多いと思うんですけど、僕が田舎に帰った時はやっぱり優しい笑顔なんですよね。その笑顔の裏にある悲しみっていうのが…なんかすごいなと思って。他の曲は自然と生まれてきたものなんですけど、唯一「Okinawa」だけは「こういうものを作りたい」と思ったんです。自分のおばあちゃんのあの優しい笑顔はどこから生まれたのかっていうのを音で表現したいと思って、最初は静かなメロディで途中から派手に賑やかになって、色々なことがあって笑い合っている感じがあって、また静かに戻っていくというアレンジにしました。それを弾いている時はわりと考えないで弾けるんですよね。得意とかじゃないんですけど、自分の中でストーリーや世界観が固まっていた分、ギターだけなのにすごく感情移入できたんです。

――なぜ「Okinawa」という曲があるんだろうと思っていましたが、そういう経緯があったんですね。

AKIHIDE:わからないですよね(笑)。聴いていただく方には、沖縄という雰囲気だけで、そういう色々な思いは気にしないでいただいていいんですけど。自分的にはそういう情景もありつつ、前向きな気持ちで作った一番世界観が強い曲ですね。

――この曲に入っている波の音というのは…。

AKIHIDE:オーシャンドラムという波の音を再現できる楽器があるんですよ。それを家で一人で「ザザザザザザ」ってやってました(笑)。本当は波の音も録りに行こうと思ったんですけど、お台場だと人がいっぱいいるし、鎌倉まで行くのはちょっと大変だったので、まぁ自宅で録ってもいいかと思ってやってみたんですよ。そうしたら意外と波っぽくて。なんか楽しかったですね。だんだん慣れてくるんですよ。小さい波と大きい波をこうすると本物っぽいなとか、一人でずっとやってました(笑)。

――(笑)。

AKIHIDE:今回思ったのは、生で録った音っていうのはすごく前に出るんですよ。虫の音もCDから持ってきた音を使っていた時はサウンドに馴染んでいたんです。でも、本当の虫の音を入れた途端に、どれだけ下げても聴こえてくるんですよ。なんでかなと思ったんですけど、虫っていうのは生きるため子孫を残すために一生懸命鳴いているんですよね。そのパワーっていうのが計り知れなくて、音楽に混ぜた時にすごく前へ出てくるんですね。その時に、生が持っているエネルギーっていうのは強いんだなって再認識したし、今作をなるべく生で作ろうと思ったということは、きっと聴いてくれる方にも普通以上に伝わるものになるんじゃないかなと。「生で作ってきて良かったな」と思うきっかけになりました。

◆初めてギターを触った時の楽しさに近いものがあって

――今作で挑戦したことはありますか?

AKIHIDE:歌が無いというのも挑戦だったし、アコースティックギターのアルバムというと優しいものが中心になるという印象を持たれる方が多いと思うんですけど、僕はロックミュージシャンなのでそれだけに留まらず色々なロックの要素も入れたかったというのは挑戦でもありましたね。こうして一つの形になったのは自分としては自信に繋がりました。まぁでも大変でしたね。叩いたり引っ張ったりかき鳴らしたり、色々な奏法を考えたし、指の皮はずるずるに剥けるし、手首は痛めるし…色々あったんですけど、それに見合っただけの新しいことを発見できたので、そういう時の楽しさって初めてギターを触った時の楽しさに近いものがあって。それが作品に込められたということは、きっと聴いてくれる人にも楽しいっていう雰囲気は伝わるんじゃないかなと思います。本当に挑戦だらけでしたね。

――それぞれ楽器編成も異なりますが、イメージはどの段階で固まっていたのでしょうか?

AKIHIDE:坂本龍一さんの『1996』というアルバムが、ピアノとチェロとヴァイオリンだけの編成のアルバムなんです。そのアルバムが本当に大好きで、どこかでずっと意識していて、こういうものを作れたらいいなぁと思っていたんです。それで、今作を作るにあたって、チェロとヴァイオリンは入れたいと思ったんです。なので、その二つの楽器が一番出現率が高いんですけど、アコースティックギターとチェロ、ヴァイオリンの音色が、切なさも明るさも儚さも表現できるので、ギターで曲を作った時点ですごくハマる感じがイメージできたんですよね。自然と呼ばれた感じがありましたね。

――チェロは人の声に一番近い楽器とも言われているので、心地いいのかもしれないですね。

AKIHIDE:確かにそうかもしれないですね。生楽器の良さというのもあるし、声に近いからかもしれないですけど、優しい曲はより優しくなったし、「Rain」みたいなギターとチェロだけの曲では、より苦しそうな表現にもチャレンジしてくれて、すごく良い演奏をしていただきました。

――ちなみに、急遽追加した楽器やフレーズはありますか?

AKIHIDE:「Sayonara」という曲の途中でパーカッションみたいな音が入っているんですけど、最初はコンピュータの音で入れていたんです。でも生楽器でやりたいというテーマから外れているのでなくしたんですね。でも急に寂しくなっちゃったので、何か入れないとまずいなと思った時に、スタジオにビスケットの缶があったんですよ。「コレいいかもね!」って叩いてみたら意外と良い音で(笑)。今度は、お茶っ葉の缶を「コレ使えるかも!」って叩いてみたら「いいね!」って(笑)。レコーディングの最後に本当にギリギリで追加しましたね。楽器ではないんですけど(笑)。言わないとわからないくらい良い音で録れたので、おもしろかったですよ。

――意外な裏話ですね(笑)。さて、今作を引っさげてのライブが、大阪はMusic Club JANUS、愛知はNAGOYA Blue Note、東京はSTB139という初のジャズクラブでのライブになりますが、編成はもう決まっているんですか?

AKIHIDE:基本的にはドラム、ベース、チェロ、ヴァイオリンと僕っていう5人編成で考えているんですけど、曲によっては全員が参加するわけではないですし、アルバムのままだとライブではなかなか難しい場合もあるので、ライブバージョンとして進化させます。アルバム以外の曲も入れつつ、インストゥルメンタルのライブやジャズクラブでのライブは今回が初めて、という方にも楽しんでもらえるようなライブにしたいと思っています。

――「Tomorrow」はすごくライブの画が見えるなと思いました。

AKIHIDE:やらない曲もあるかもしれないですけど(笑)。でも確かに「Tomorrow」はプレイ云々じゃなくて楽しむということに重点を置いているので、画は見えますよね。この曲の最後に使っているヴァイオリンのメロディが前作『Amber』の「ダッシュ」という曲のコーラスのメロディラインを使っているんです。やっぱり『Amber』と繋がっているというのは残したかったので、1曲目から2曲目に入る流れも『Amber』と一緒にしているんです。そこは僕のネタが少ないわけではなく(笑)、一緒にすることによって前作と今作が一つの括りとして僕の中で同じ作品なんだというのを伝えたかったんです。聴く方はそんなに意識しなくてもいいんですけど、僕的にはそういうちっちゃなこだわりをちょいちょい入れているので、そういうところも楽しんでもらえたらいいなと思います。

――最後に、AKIHIDEさんの今後の展望を教えてください。

AKIHIDE:作品としては完成したんですけど、楽曲はライブで完成するという部分もあると思うんです。今回はとにかく初めての試みなので、インストゥルメンタルでのライブをどう楽しんでもらうかをすごく考えているんです。まずそれを楽しんでもらって、その後にこれから新たにできることが見つかるんじゃないかなと思っています。とにかく今は、ライブを成功させることを一生懸命考えています。

(文・金多賀歩美)

AKIHIDE

<プロフィール>

2001年、FAIRY FOREのギタリストとしてメジャーデビュー。2003年、FAIRY FORE脱退。2004年、NEVER LANDを結成しギターヴォーカルとして活動を始める。2007年、NEVER LAND解散。同年BREAKERZ結成。これまでに様々なアーティストのサポートギタリストや楽曲提供も行ってきた。また、オンライン絵本コンテンツ『MOON SIDE THEATER』の開設、絵本『ある日 ココロが欠けました』を出版する等、アート作品も手掛ける。BREAKERZデビュー5周年を経て、2013年よりソロ活動をスタート。6月に1stアルバム『Amber』をリリースし、その対となる作品『Lapis Lazuli』をこの度リリース、初のジャズクラブでのライブを開催する。


■オフィシャルサイト
http://akihide.com/


【リリース情報】

初回限定盤
ZACL-9067
¥3,700(tax in)
・3面デジパック仕様
・スペシャルフォトブックレット封入

通常盤
ZACL-9068
¥3,059(tax in)


『Lapis Lazuli』
2013年10月30日(水)発売
(ZAIN RECORDS)
BREAKERZギタリスト、AKIHIDEの2ndアルバムは自身初のインストゥルメンタルアルバム。アコースティックギターでロックを表現するという“ギタリスト・AKIHIDE”を存分に堪能できる一枚。

【収録曲】
01. Birthday
02. Lapis Lazuli
03. Sayonara
04. Moon Dancer
05. Okinawa
06. Namida
07. Home
08. Rain
09. Lost
10. Battle
11. Tomorrow
Bonus Track. 遠き山に日は落ちて ※通常盤のみ