◆二刀流を追究していきたい(沙我)
――「FIVE JOKER」は、ヒロトさんに何かオーダーを出したんですか?
沙我:今回は特に出してないですね。2~3曲は作ってくれるよなーと思っていたけど、絞り出されたのがこれでした。タイに行った時に思い付いたらしいです。
将:あれだけ作曲期間があったのに、ストックから持って来たってこと(笑)?
沙我:そういうこと(笑)。ヒロト曲は基本的に大変ですね。でも、逆に言うとやり甲斐があります。
――沙我さんが「虎さんにA9がビジュアル界の嵐として恥じない曲をオーダーした」とツイートしていたのは、「CASTLE OF THE NINE」ですか?
沙我:そうですね。元は将くんなんですけど。
将:Naoさんもマイクを持ちたがっていたし、ラップバトルみたいなことをしたらいいんじゃないかなと思って、そういうトラックを作ったんですよ。これは虎が進行することになっていたので託したら、すごくちゃんとメロディーが付いてきたので、コーラスワークを考えて、メンバーヴォーカル曲になりました。虎と沙我くんがラップしていて、あとは5人で歌っています。全く演奏してないんですよ(笑)。
――これはやはり「UNDEAD PARTY」を経たからこそ生まれた楽曲ですよね。
沙我:バンドとして、あの曲で掴んだものがあったんですよね。
将:逆に言うと、それを認めてしまったのはお客さんたちなので、あの時点で止めてれば俺たちも思い止まっていたかもしれないけど、皆が大喜びしてくれるから仕方ないな!って(笑)。これで「楽器弾かないなんて、あり得ない」とか言われたら、おいおいと(笑)。
――それにしても、Naoさんの声はわかりやすいですね(笑)。
沙我:歌入りの曲を聴いて、Naoさんの歌でズッコケましたね(笑)。
将:1行しかソロがないのに、この存在感ってヤバイですよね(笑)。1サビの前で初めてNaoソロが来て、沙我ラップがあってサビにいくという展開なんですけど、もうそれでNaoは持っていきますからね。イントロも「ヘイ!」のパーティー感がすごい(笑)。
――(笑)。沙我さんはベースという立ち位置もそうですが、歌声も5人のちょうど中間くらいなんだなと。聴き分けるのが難しい箇所が結構ありました。
沙我:そうですね(笑)。虎とNaoはすぐわかるんですけどね。
――イントロは細かく分かれていて、将さん、虎さん、将さん、沙我さん、ヒロトさん、Naoさん、5人という順ですか?
将:合ってます!
――〈ハンドルさえも握らず 仮面舞踏会へと 飛び込もう さぁ〉は、前半後半で二人ずつですよね。
将:前半が将虎、後半がヒロトNaoですね。でも、ここまでちゃんと聴いてくださってすごい。
沙我:確かに! 余談ですけど、〈CASTLE OF~〉のブロックは全員で歌っている体なんですけど、どうせNaoの声がうるさいんだろうなと思って、僕は入れなかったです(笑)。聴いたらNaoの声がすごく抜けていて、あぁやっぱりなと。
全員:(笑)
――これは皆さんそれぞれのご自宅で録ったんですか?
沙我:そうですね。
――ということは、5人の声が合わさったのを最初に聴く時は新鮮な感じでしたか?
将:楽しかったですね。バンドを始めた頃の気持ちを思い出すよね。
沙我:そうだね。ドラム、ベース、ギターを重ねていって、俺たちのバンドの音だ!というのに似た感覚。俺らの1st…シングルじゃないけど(笑)、すごく感慨深いですね。でも、この曲はライブでやっと完成するので。
――ジャージで練習をしているという件ですね。
将:ちゃんと仕上げないとヤバイです(笑)。
沙我:これは物議を醸すと思いますね。ライブを観て「普通だったね」とは絶対にならない。何かしらを残して帰れますよ。
――とても楽しみです。実は、沙我さんが2015年のパーソナルインタビューで、「ツインギターにベース、ドラムという形以外の何か新しいバンドの見せ方みたいなものが、そろそろ生まれそうなんですよね。実験的なものをやってみたい」と言っていて、まさに現実になっているなと。
沙我:あ! 言ってましたね! めちゃめちゃ繋がりましたねー。まさにこれですよ。
将:予言してる…!
沙我:もっと研ぎ澄ましていきたいですねー。二刀流を追究していきたいです。
――沙我さん作曲の「ASYLUM」は中毒性のある楽曲だなと。
沙我:将虎が「CASTLE OF THE NINE」を作っていた時期に、僕は「ASYLUM」を作っていたんですよ。とにかく締め切りが迫っていたので、考えて作るというよりは、自分の中ですぐにイメージできるものを作らないと間に合わないなと。考えてできたとしても、あまり良くない曲になっちゃうと思ったんですよね。「ハロー、ワールド」(2012年2月リリースのアルバム『“9”』収録)に近い方向性ですけど、もっとそれを進化させた感じです。「CASTLE OF THE NINE」があるからこそ、両極に振り切っちゃおうかなと思って。「CASTLE OF THE NINE」で思いっきりハッチャケて、「ASYLUM」で変態だなっていう(笑)。
――(笑)。
沙我:将くんが曲を聴いてイメージして出てきたタイトル案の中から「ASYLUM」になって、そのテーマのもと、自分のラップ部分は自分で、歌の部分は将くんが歌詞を作りました。
――奮い立たせるようなメッセージ性の強い歌詞ですね。
将:男目線ですね。僕はあまり怒りの感情がないんですけど、この曲は物申すみたいな空気を感じたので。沙我くんのラップの歌詞も、ラッパーの友だちに見せたら「ナイフみたいな、すごく尖ったリリックだね。この人ヤバイ。ちょっと怖い」って(笑)。
沙我:(笑)
将:いやいや、いい感じじゃんって思ったんですけど。対自分みたいな歌詞なのかな?
沙我:学生時代や昔のバンドで、やりたくてもやれないまま閉じ込められて、そのまま手遅れになっちゃった男をイメージしましたね。あぁ俺の人生こんなハズじゃなかった、本当はこんなことを思っていたのに、それも言わないままで…というような。
――沙我さんの身近なことというよりは、フィクションという部分が強いですか?
沙我:リアルというよりはフィクションなのかな。どうしても、メイクして衣装着て、華やかになっている自分でリアルなことはラップしづらいなと思ったんですよね。自分なんだけど自分じゃない、もう一人の自分というのはイメージしました。だから、本当に自分がステージで言えるワードをチョイスしているかというのは考えましたね。そこで言えないような言葉は、作品としてダメだなと。あくまでこのヴィジュアルイメージの自分が、ライブで人を前にしてラップしている画が想像できる、曲の世界観に沿った言葉選びをしました。
◆何を伝えたいのか、本当に自分を幸せにしてくれるのか(将)
――将さん作詞作曲の「GIGA」ですが、こういうビート感はA9には珍しい気がします。
将:「F+IX=YOU」に着手するまで、あえてヴィジュアルシーンに寄せたライブ向けの曲を作っていたんです。ヘドバン、逆ダイ、モッシュみたいな。それを否定するわけじゃないですけど、Kenさんと出会って、もっと俺たちらしくお客さんをノせられる方法があるんじゃないかということで、腰でリズムをとる感じのビートをテーマに作った曲です。沙我くんがいい感じにアレンジしてくれて、後半テンポが上がるのも沙我くんのアイディアなんです。沙我くんは結構ラスサビにグッとくるところを作って、メロディーをバーンッと終わらせるのが好きだよね。そこはグッときました。
沙我:この曲はどちらかと言うと変態のほうに寄ってもいいのかなと思ったんですけど、アルバムの前半は「F+IX=YOU」や「UNREAL」に引っ張られたような近未来感強めの雰囲気が多くて、後半に行くに連れて、バンドの素の部分というかコアなところに寄っていくような流れになっていて、「GIGA」はちょうど中間くらいかなと思ったんですよね。
――リズムパターンが多くて、展開がとても不思議な曲ですね。
沙我:確かに、イントロもサビも最後のほうも全部違いますからね。
――しかも、サビがサビっぽくないというか。
沙我:新しいなと思いましたね。俺にはこういう発想はなかったわと。跳ねたリズムで始まってサビでワルツになるという、なるほどと。その流れをどうしようかなと考えていて、ちょうどその時、テレビでBRAHMANのライブ映像を見ちゃって「カッケーな!」と思って、その勢いで作ったら、熱く速くなっちゃったんですよね(笑)。
――ダイレクトに影響が(笑)。ところで、将さんのヴォーカル録りはどのような雰囲気なのでしょうか?
将:僕は作業部屋で、デュアルモニターのディスプレイの後ろにヴォーカル用のラックが積み上がっていて、そこからPCの横にあるコンデンサーマイクに繋がっていて、音の反響を防止するパネルが置いてあって、普通に録っていますね。普段は昼過ぎに起きるんですけど、起きてから6時間以降に録ると決めているので、その日は少し早めに起きるようにしています。
――今回、特に試行錯誤したことは?
将:「ソナタ」の歌詞を書くのはめっちゃ大変でした。
沙我:元々は個人でやろうかなと思っていた曲なんですけど、今回、バラードを作って来る奴が誰もいないことに気付いて、ヤバイなと思ってこれを持っていったんです。曲自体は1年以上前からあったんですけど、歌詞思い付かないわと思っていて。このメロディーに対する曲のテーマとか言葉のハメ方って、実はすげー難しいなと思っていたんですよね。だから、こういうハメ方をするんですね、先生って思って。言葉の選び方、構成の仕方が勉強になりました。
――歌の比重が大きい楽曲だと、特に難しいですよね。
将:「ソナタ」で音楽の専門学校で歌詞の授業ができるくらい、歴代のプロデューサーから言われてきたスキルを全部詰め込んでいるので、結構学問的に書いたと思います。
沙我:だから俺の場合は、いい曲だなという聴き方じゃなくて、「えっ、こういうハメ方! なるほど!」っていう感じなんですよ(笑)。
将:僕も、「ASYLUM」の沙我くんの歌詞に刺激を受けましたね。お互い、これはちょっと微妙だなと思ったら言うと思うんですけど、そういうのが全然なかったです。逆に言葉がすごく強かったので、良かったですね。飛び道具っぽくない曲のほうが歌詞は難しいですよね。J-POPのチャートに定期的に曲を送り出している人って、本当に尊敬します。
沙我:しっかりとした歌モノにハメる言葉というのは、単純に言いたいことを言えばいいわけじゃないし、それっぽい言葉を並べればいいわけでもない。ちゃんとした主題と知識、構成力…小説家のようなものですよね。改めて歌詞の奥深さを目の当たりにしました。最近、サウンドというよりはメロディーや風景、その曲で何を伝えたいのか、歌や言葉の持つ力、そっちのほうに興味があって。昔はどうしてもサウンドの構築美、リフのパワー、音圧とかに興味があったんですけど、段々と目線が変わってきましたね。
――そうなんですね。そして、全国ツアーが間もなく始まります。前半『「STAIRWAY TO MOON」-月への招待-』と後半『「STAIRWAY TO MARS」-火星への招待-』でセットリストがかなり変わるそうですね。
沙我:去年の冬ツアーや今年のバレンタイン&ホワイトデーライブは、そんなに苦労はしていなくて、自分たちが得意なものだけをやったという感じなんですけど、今回は明確に成長しなければいけないツアーというか。Kenさんとの出会いがあって、バンドとして一歩先に行くためのアドバイスを受けている中で、改めて方向性を考える機会があったので、このツアーで何を見せるか、バンドとして自分たちに課しているハードルが今までよりすごく高いですね。観に来てくれた人にはそういう難しさは感じさせたくないし、観終わった後に、また行きたいな、元気出たなとか、明るい気持ちになってほしいだけなんですよね。ただ僕らとしては、いつも使わない筋肉まで力が入っていますよ(笑)。決して楽ではないツアーだと思います。
将:ライブって皆、何はどうあれ幸せになりに来てくれていると思うので、チケットを購入していただくということは、幸せにしてくれるかもしれないということに賭けてくれているわけです。昔は理解してなかったんですよね。自分たちが作った曲を一生懸命演奏する場になっちゃって、ツアーの後半で馴染んできて、その先にやっと行けるみたいな感じだったと思うんですけど、結局、何を伝えたいのかということと、その人は本当に自分を幸せにしてくれるのかということが大事だと思うので、その期待に応えるような僕たちでいたいし、1本1本そういうライブになると思うので、期待して遊びに来てほしいです。
――ちなみに、A9の楽屋が汚い問題(※各パーソナルインタビュー参照)は、将さん曰く「全員のちょい残し」が原因という結論になりましたが、それを卒業するのがA9の課題でしたよね。
将:そうですね(笑)。
沙我:いろんな現場に行っているメイクさんに「俺らの楽屋、どうすか?」って聞いたら「汚いですね」って言われて悔しくなってきて。
将:まぁやっぱり、ちょい残しが一番の原因だと思うな。
沙我:確かに、なんで飲みきらないんだろうっていう紙コップがいっぱい並んでいるね(笑)。
――では今回のツアーでは、ちょい残し撲滅運動を頑張ってください(笑)。
将、沙我:頑張ります(笑)!
(文・金多賀歩美)
A9
<プロフィール>
将(Vo)、ヒロト(G)、虎(G)、沙我(B)、Nao(Dr)により2004年結成。メロディーセンスが光る楽曲が注目を浴び、結成直後よりシーンで注目を集めセールス、ライブ動員ともに拡大。2011年には初の日本武道館公演を成功に収める。10周年を迎えた2014年、アルバム『Supernova』を発表し、初のアジアツアーを含む全34公演を展開。同年8月、富士急ハイランドコニファーフォレスト公演をもって独立し、1年の休止期間を経て、2015年8月、EP『銀河ノヲト』を引っさげた11周年記念公演で完全復活を遂げた。2018年4月にアルバム『PLANET NINE』をリリースし、全28公演に渡る全国ツアーを開催する。
■オフィシャルサイト
http://a9-project.com
【リリース情報】
『PLANET NINE』
2018年4月25日(水)発売
(NINE HEADS RECORDS)
【収録曲】
[CD]※共通
01. PLANET NINE-INVITATION-
02. F+IX=YOU
03. FIVE JOKER
04. UNREAL
05. CASTLE OF THE NINE
06. PENDULUM
07. ソナタ
08. Neophilia
09. GIGA
10. ASYLUM
11. Re:Born
[初回盤DVD]
「UNREAL」Music Video
【ライブ情報】
●A9 ONEMAN TOUR 2018
FC限定公演
4月25日(水)高田馬場AREA
「STAIRWAY TO MOON」-月への招待-
5月4日(金・祝)EX THEATER ROPPONGI ※ヒロトBD
5月19日(土)水戸LIGHT HOUSE
5月20日(日)宇都宮HEAVEN’S ROCK VJ-2
5月25日(金)仙台darwin
5月26日(土)盛岡CLUBCHANGE WAVE
6月2日(土)岐阜ROOTS
6月3日(日)京都FAN J
6月5日(火)高松DIME
6月7日(木)広島SECOND CRUTCH
6月9日(土)熊本B.9 V1
6月10日(日)鹿児島SR HALL
6月16日(土)新横浜NEW SIDE BEACH!!
6月23日(土)新潟NEXS
6月24日(日)郡山CLUB#9 ※沙我BD
「STAIRWAY TO MARS」-火星への招待-
7月5日(木)福岡DRUM Be-1 ※将BD
7月7日(土)大分DRUM Be-0
7月8日(日)愛媛サロンキティ
7月10日(火)松江AZTiC canova
7月11日(水)岡山IMAGE
7月13日(金)大阪BananaHall
7月14日(土)浜松窓枠
7月16日(月・祝)名古屋E.L.L.
7月21日(土)金沢AZ
7月22日(日)長野LIVE HOUSE J
7月28日(土)函館CLUB Cocoa
7月29日(日)札幌PENNY LANE24 ※Nao BD
TOUR FINAL 14th ANNIVERSARY LIVE「ALICE IN CASTLE」-星の王子と月の城-
8月25(土)新木場STUDIO COAST
●VisUnite PRESENTS「VisUnite Fest Special Edition Vol.3」
6月20日(水)TSUTAYA O-EAST