2023.05.21
ギル、KOHTA@高田馬場CLUB PHASE
ギル presents「Unleash the Flame of Resonance」

ギル
KOHTA

ギタリスト・ギルの主催イベント第二弾として、KOHTAを迎えたツーマンライブが5月21日、高田馬場CLUB PHASEにて開催された。2022年1月をもってAngeloが無期限活動休止となって以降、ソロアーティストとして始動した両者がステージで顔を揃えるのは、あの日以来1年4ヵ月ぶり。ここに至るまでにギルは『DAWN OF FLAME Ⅰ/Ⅱ』(2022年12月/2023年4月)、KOHTAは『UNLEASH』(2022年12月)と、それぞれソロ作品を発表してきた。

そんな二人の初ツーマンに冠されたのは「Unleash the Flame of Resonance」。つまり双方の核となるワードを組み合わせたものであることは言わずもがなだが、彼らを長い間見続けてきた人たちは「Resonance」というワードにもハッとしたはず。その意味は後ほど記したいが、細かいことを抜きにしても直訳すれば「共鳴の炎を解き放て」とは、実にこの日にふさわしいタイトルだろう。また、ソロアーティストとしては両者ともこの日が僅か2本目のステージという共通項も偶然か必然か。

先攻はKOHTA。自身がベースヴォーカルを務め、ソロワークスのプロジェクトメンバーであるTHE VALVESのJEAN(G)、スズキ・アキラ(Dr)と共にスリーピースでのパフォーマンスだ。未音源化ではあるものの、ソロプロジェクトで初めて世に出した(YouTubeで公開)楽曲という点では“KOHTA”の始まりの曲とも言えるインストゥルメンタル「TERMINAL 01」、そしてここからまたスタートするのだという彼の決意が込められた『UNLEASH』のリード曲「PIECE OF MIND」で幕を開け、様々な場面を経ながら現状の全持ち曲を披露していった。

この日、1月の1stライブ以来4ヵ月ぶりのステージとなったことから「『ただいま』と言うべきでしょうか?」と問い掛けたKOHTAに対し、フロアから「おかえりー!」という温かな声が上がるシーンも。ファルセットを駆使したサビのメロディーが印象的なミディアムナンバー「INNOCENT PHASE」、心の葛藤をエモーショナルに歌い上げた「RAIN FADE」では、ヴォーカリストとしてのKOHTAの魅力が溢れ、中盤に初披露したインスト「TERMINAL 02」では、重心を低く構えてプレイする姿が、私たちがよく知るベーシストKOHTAのそれで、スリリングな楽曲ながらある意味安心感を覚えるものだった。

「ここからキッチリ3曲畳みかけて終わるから!」というまさかの宣言で「3曲の中で心を燃やしてください!」と、横ノリが心地よい「KICK OVER」を皮切りに最終ブロックへ。ギター&ベースのリフ始まりかつキャッチーなサビメロの王道ロックナンバー「SLAVE TO THE GRIND」へ流れるとフロアには拳が上がり、間奏ではKOHTAが前方へと繰り出し場内の熱をさらに上昇させたのだった。

ラストナンバー「UNLEASH NIGHT」に突入したところで機材トラブルにより一時中断を余儀なくされ、思いがけずMCで場を繋ぐことになりつつも「ラスト、精一杯みんなではじけましょう」と仕切り直してプレイ。KOHTAは笑顔を見せ、疾走感あるロックチューンに呼応するオーディエンスと共に、文字通り“解放の夜”を完走してみせた。そして最後に「色々ありましたが、最高でした! どうもありがとう!」と告げ、ステージを後にしたのだった。

後攻は主催者であるギル。4月に行われた1stライブと同様に高井淳(B)、ばる(Dr/DuelJewel)がサポートを務めるスリーピース編成で、ギターを主役としたインストゥルメンタルをメインとするのがソロアーティスト“ギル”のスタイルだが、最新作『DAWN OF FLAME Ⅱ』ではその歌声も披露している。同作品の1曲目を飾るメロディアスなインスト「革命」でスタートを切ると、ステージを上手下手と動きフロア全体をしっかりと見つめながらプレイ。次いで早くもギル初のヴォーカル曲「Liberty」を投入すれば、そのキャッチーなロックナンバーにフロアの一体感が高まる。なお、この楽曲ではギルが初めて作詞も手掛けており、決意を新たに未来へ走り出すギル自身が投影されたメッセージが印象的だ。

中盤にはオリエンタルなムード漂う「バビロン」、聴かせるヴォーカル曲でありつつメタル調のギターフレーズも光る「Exceed」という未音源化の2曲が入り、さらにギル作曲によるAngeloの「JIHAD」をインストで披露した場面ではフロアが沸いたのは言わずもがな。当然ギルが奏でたのはバンド時の自身のパートではなく、歌メロのフレーズをメインとしたもの。加えて様々なアレンジが施されていた中でも、ギターソロ前の長尺ライトハンドは見応え抜群であった。

「ここからは皆の声をここまで届けてほしい! 腹から声出していけるか!?」という言葉から、KOHTAの「PIECE OF MIND」をギルver.でプレイ。もちろんこの楽曲に関しても歌メロをギターで奏でるインストでのパフォーマンスとなったわけだが、間奏ではギルがデスヴォイスでOiコールを発するという意外な展開に。センター上手下手と3ヵ所に設置したスタンドマイクで煽り、フロアも抜群の対応力で応戦してみせた。さらに「meteor」ではイントロのリフでヘドバンの光景が広がり、現状の持ち曲の中で最も速弾きが炸裂する「arise」は、後半で「かかってこい!」とシャウトするなど暴れ曲へと進化し、1stライブとは異なる景色を見せてくれたのだった。

「皆の声が聴きたくてイヤモニ外しちゃった。声出し解禁だから、こういうのもやりたかった」とギル。その後ムードを一変させ、初作品の1曲目すなわち“ギル”の始まりの曲でもある温かくメロディアスな「Departure」を奏で、ラストには「Liberty」を再び披露。ここでも3ヵ所のマイクで歌いフロアを盛り上げ、本編を締め括ったのだった。

この日のセットリストは結果として前半が『DAWN OF FLAME Ⅱ』、後半が『DAWN OF FLAME Ⅰ』、その間に新曲や実験的なものが配されたわけだが、これが絶妙に良い流れとなっていたのは、もしかしたら作品の制作時点でギルの中では想定済みだったのかもしれない。また、全ての楽曲において、あれだけのテクニカルな演奏をしながら、魅せることを徹底したパフォーマンスであることがさすがで、それは“センターに立つギタリスト”としてのあるべき姿と言えよう。

この後、KOHTAを加えた4人編成でのセッションへ。楽屋でギルのステージを観ていたというKOHTAから「カッコいいですよ。やるじゃん、ルーギー。もちろん昔からやれる子ですけどね」という褒め言葉も。KOHTAがなんとハンドマイクでヴォーカルをとり、メッセージのマインドとしては同じ方向性でもあるお互いの楽曲「PIECE OF MIND」「Liberty」を立て続けに披露したのだった。最後には二人がハグを交わし、「もう言うことはありません。最高でした」(KOHTA)、「タイトル通りの一日になったと思います。これからも俺たちと一緒に楽しんでいこうぜー!」(ギル)という言葉をもって、この特別な一夜は幕となった。

さて、冒頭で触れた「Resonance」について。Angeloが2018年に発表したアルバムのタイトルが『RESONANCE』だが、このワードを本公演にチョイスしたことに何がしかの意図があるのか、偶然の一致なのかは定かではなかった。しかし、終演後のギルに話を聞いたところ、ギルとKOHTAそれぞれの作曲による楽曲が同時に収録された初めての作品がこの『RESONANCE』だから、という意味合いがあったのだという。加えて、KOHTAとのツーマンだからこそAngeloの楽曲もラインナップに入れたし、さらにはギルver.のインストで演奏したKOHTAの楽曲「PIECE OF MIND」に、Angeloの「Daybreakers」のリフをキー違いで忍ばせたとのこと。もちろんステージ上でそれらに触れる発言は一切なかったが、アーティストたるや全てを自らMCで説明してしまうのは野暮というもの。だからこそ筆者がこれほど重要な真実を聞いたからには、ぜひとも皆様にお伝えしたく、ここに記すことにした次第だ。これはギルが生み出すもの、起こすアクション、その全てに様々な意味合いがあることを実感させてくれる出来事だった。

二人の今後の動向としては、ギルは6月に2本のイベント出演が控えている他、8月21日に高田馬場CLUB PHASEにてバースデーワンマンを開催することが決定。KOHTAは6月9日〜7月8日、全5ヵ所のNUL. tour2023「HIGH AIM」にサポートベーシストとして参加、8月13日にはHEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3にてメリー主催のツーマンライブが決定している。どちらの活動も注目しつつ、再び二人が交わる日が来ることを期待したい。

◆セットリスト◆
【KOHTA】
01. TERMINAL 01
02. PIECE OF MIND
03. INNOCENT PHASE
04. TERMINAL 02
05. RAIN FADE
06. KICK OVER
07. SLAVE TO THE GRIND
08. UNLEASH NIGHT

【ギル】
01. 革命
02. Liberty
03. バビロン
04. JIHAD
05. Tiny Grace
06. Exceed
07. PIECE OF MIND ギルver.
08. meteor
09. arise ライブver.
10. Departure
11. Liberty

【セッション】
01. PIECE OF MIND
02. Liberty

(文・金多賀歩美/写真・柳本史歩FOTOLORE)


【ギル ライブ情報】
●Rame Birthday 2023 Live more Beautifully
6月11日(日)西川口Hearts
出演:Leetspeak monsters、ギル、JILUKA、可嘘(カワウソ)

●ユウヤヤバセPresents「Independence Days」
6月22日(木)SHIBUYA REX
出演:ユウヤヤバセ、ウミユリ、ギル、K

●ギル バースデーライブ(タイトル未定)
8月21日(月)高田馬場CLUB PHASE

【KOHTA ライブ情報】
●NUL. tour 2023 「HIGH AIM」
※サポート参加
6月9日(金)柏PALOOZA
6月17日(土)姫路Bata
6月18日(日)梅田Zeela
6月25日(日)仙台ROCATERIA
7月8日(土)代官山Space ODD

●メリー主催2マンイベント「魑魅魍魎2」
8月13日(日)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
出演:メリー、KOHTA

ギル オフィシャルサイト
KOHTA オフィシャルサイト