ベーシストとヴォーカリストの両面で魅せる『TERMINAL』。そこに描く新たな始まりと未来への希望。きっと辿り着くから――
2022年、Angeloの無期限活動休止を機にソロプロジェクトをスタートさせたKOHTA。同年12月に発表した1stミニアルバム『UNLEASH』でベースヴォーカルに初挑戦し、2023年からはフロントマンとしてのステージを重ねてきた。そしてこのたび、前作以来2年ぶりとなる1stフルアルバム『TERMINAL』が完成。全10曲中6曲がインストゥルメンタルであることに加え、ベースヴォーカルの4曲においても新たなアプローチが光り、よりベーシストとヴォーカリスト両面の魅力を堪能できる作品に仕上がった。
PIERROTやAngeloのメンバーは永遠に刺激
まず、KOHTAさんの動きを振り返ると、2022年は今までやってこなかったことに重きを置いた活動で、12月に初の音源『UNLEASH』をリリースしたことから、2023年はソロのステージを活発に行い、2024年はPIERROTやNUL.(サポート)の動きと並行しながら、ソロは音源制作に力を入れていた1年という流れでしたよね。
KOHTA:そうですね。今年は誕生日付近に1本ライブをやらせてもらったんですけど、他の活動が忙しくて…(苦笑)。
ただ、やっぱりソロの曲を増やしたいという思いは大きかったですか?
KOHTA:それはありましたね。とは思いつつも、その他のやらなきゃいけないことに忙殺され…自分の中でも色々矛盾を抱えながら、やりたいけど時間もない中で、どう見せていこうかなみたいなところは、ちょっと悩んでいた部分もありました。でも、言い換えれば、ソロはマイペースに動けるということでもありますし。自分の意思で動けるので、周りの都合はあまり関係ないじゃないですか。だから、ソロのほうが皆さんの前にも出やすいのは確かで。今後は色々やらなきゃいけないことの合間を縫って、ソロの活動もしっかりやりたいなと思います。
今年はPIERROTの動きがあり、来年2月にもライブが控えているというところで、だからこそ逆にソロもきっちりやりたいという思いもあったのかなと。
KOHTA:それもありますね。バンドは自分がソロでやっていることよりも、規模もスケールも何もかも違うじゃないですか。当然その中で刺激はありますよね。こういうのを取り入れてできたらいいなとか、なるべくそういう風に考えるようにしています。時間がなかったからできないというのは言い訳なので、さらに良くするために、久しぶりにバンドでできたことをソロで還元したい気持ちはありますね。
それこそ、PIERROTやAngeloのメンバーの今の活動に触発される部分もありますか?
KOHTA:触発はされますよね。皆、精力的に頑張っているし、刺激にはなります。永遠に刺激でしょうね。彼らが何かやればやっぱり気になるし、負けてられないなって。自分もちゃんと、自分のやりたいものをしっかり提示していきたいなと思いますね。
『UNLEASH』の時は歌で表現したいというよりも、歌って弾く挑戦をしている姿を、どうしても一発目に見せなきゃという思いが強かったと話していて。それを経ての二作目として、今回どのような心持ちで制作に臨みましたか?
KOHTA:確かに前回は何もかもが初めて尽くしの中で、見せ方とかやることも含めて、世界観の提示はすごく意識していたんですけど、今回はライブでやっていたインストゥルメンタルのストックをまとめたいというのがあったので、またちょっと違うかなと。そういうアプローチから始まって、一つのパッケージができた満足感みたいなものもあります。
ちょうど1年前に、インスト曲集を出したいと言っていたなと思って。それが結果ヴォーカル曲と合わせてフルアルバムという形なったのは、どのような経緯だったんでしょう?
KOHTA:さすがに全部がインストゥルメンタルだと、僕がリスナーの立場だったらちょっとつまんないなと思ったんですよね。そんな単純な理由です。なので、若干インスト曲が多いですけど、半分ぐらいの割合で、ちゃんと新しい世界観の歌も見せながら、ライブで培ってきたインストゥルメンタルもまた見せていきたいという。
ヴォーカル曲の間にインストゥルメンタルを均等に挟む形になっているのが、フルアルバムとして新鮮な構成であり、綺麗な流れを生んでいますよね。
KOHTA:多分、世の中にもあまりないでしょうね。僕も聴いたことがないし。既存のインスト曲を挟むうえで、こういう歌ものが欲しいというのを自分なりに考えていきました。しかも今回、インスト曲のタイトルを全部数字にしていますけど、元々は「TERMINAL 01」「TERMINAL 02」…だったのを、もうアルバムのタイトルで『TERMINAL』と言ってるし、曲タイトルはいっそ数字のほうがインパクトが強いんじゃないかということで。一緒にやっているクリエイターの高蝶君のアイデアだったんですけど、確かに何度も「TERMINAL」と出てくるのも、どうかというのもあるし(笑)、アートワークのインパクトや覚えやすさとか全部ひっくるめて、もう数字だけでいいかと。だからインスト曲は数字、歌が入っているものはタイトルを付けたという形です。
元々インスト曲に付けられていた『TERMINAL』というワードをアルバムタイトルにした経緯を教えてください。
KOHTA:今日、いい機会だから話したいなと思っていたんですよ。本来、アルバムタイトルは『TERMINAL』ではなかったんです。実は、交わっていくみたいな意味合いで『CROSSING』というタイトルを付けたかったんですけど、身近に『CROSS』と付けた方がいらっしゃって(笑)。
ものすごく身近にいらっしゃいますね(笑)。
KOHTA:全く同じではないですけど、意味合いが被っちゃうので…しかもそれに気づいたのが結構ギリギリだったんですよ(笑)。面白いものだなと。ただ、僕のほうが後だから被るわけにはいかないなってところで、 元々インスト曲から広げていったという制作の流れだったり、起点、自分のホームみたいな、そういう意味合いで『TERMINAL』にしました。これ、初めて言いましたよ。
いやはや驚きました。今作の歌詞の中にある〈物語が始まるだろう〉〈境界線を越え〉〈道は交わり〉といった言葉も、KIRITOさんの『CROSS』とリンクするなと思ってハッとしたんですよ。
KOHTA:そうですよね。僕が一番ハッとしました(笑)。彼がやろうとしていた世界観は本当に知らなかったんですけど、何か通じるものがあるんですかね。たまたまだと思うんですけど、僕もそういう感じで構成していたという。
インスト曲がこれだけ多いというのがそもそも冒険
ヴォーカル曲が「ARRIVAL」「TRANSIT」「LOST and FOUND」「DEPARTURE」で、タイトルのワードとしては空港で使う用語がモチーフになっていますが、これはやはり『TERMINAL』から派生したものだったのでしょうか?
KOHTA:そうですね。TERMINALから始まって、そこから色々交わって、最終的にまた飛び立つみたいな。
「ARRIVAL」=到着で始まり、「DEPARTURE」=出発で終わるわけですよね。
KOHTA:それ、絶対言われると思っていました(笑)。ARRIVALは直訳すると確かに到着なんですけど、僕の中では、どこかから来て着きましたというよりも、ここから始まりますみたいな意味合いのほうが強いです。
ARRIVALは新しい物や考えの始まり、新しい段階や状況に入ることという意味もありますもんね。それと、終わりと始まりは同義語であるというPIERROT、Angeloが描いてきたものにも通じるなと思ったんです。
KOHTA:そういう世界観は好きかもしれませんね。全部が全部リンクしているわけではないですけど、自分が経験して思ったことが自然と出ているのかなと。こういう世界観、意思表示の仕方は元々好きで。解釈で色々変わってくるとは思うんですけど、そこも含めて楽しんでいただければと思います。
ちなみに、前作と同じ日付の12月25日に発売ですが、これはいつ頃決めたんですか?
KOHTA:制作段階の夏頃の時点で、色々逆算していたら最短がここだったという。別にクリスマスを意識したわけではないし、前作も意識はしてないんですよ(笑)。たまたま今年は12月24日のライブが決まったので、それがアルバム発売の前夜祭みたいな感じですね。
ライブが先に決まっていたと。改めて『TERMINAL』はベーシストのソロプロジェクト感が前作『UNLEASH』より強いように感じます。もちろんインスト曲の存在は大きいですが、ヴォーカル曲も前作と雰囲気が違う気がして。チームでの曲作りにあたって、今回はどのような話が出たのでしょう?
KOHTA:とにかくインスト曲ありきだったので、その中でもバラエティに富んだ感じにはしたいなと。特に「DEPARTURE」は割とストレートな感じ、「LOST and FOUND」はちょっと荒々しさがあって、真逆のベクトルになっていたり、歌が入る部分はそれぞれ聴かせ方を変えたいなというのがありました。
前作は今までバンドでやってきたものとは毛色が違うものをやりたいというところで、ロック色、自分らしさ、男臭さを出したものでしたよね。
KOHTA:前回の歌に関しては、元々僕の好きな色をしっかり出したうえで、しっかり聴いてほしいというのが強かったですね。今回はインスト曲がこれだけ多いというのがそもそも冒険なので、歌の聴かせ方も曲によって冒険したくて。「ARRIVAL」や「TRANSIT」は割と実験的というか、僕が今までやってこなかった要素を取り入れた感じですね。前回は名刺代わりのような、本来の僕が持っている表現を主体にしつつ、バンドを経て、これから一人になるにあたっての決意表明という意味合いが強かったですけど、今回は前作があったうえで色々試したり、今後を連想させるものが表現できたと思います。
今回、ベース始まりの曲が結構多いですが、これは偶然か意識的なものか、どちらでしょう?
KOHTA:そこは単純に僕が好きというのが大きいですね(笑)。ついやってしまいがちというか。ベース始まりのほうが、全部の音が入った時のインパクトが強くて好きなんですよね。例えばドラム始まりだと、割とそのままの流れでいくけど、ベース始まりは一番落差が大きいというか。やっぱり単音楽器だから、華やかさを抑えつつメインイントロでドカンみたいなことができて、それは僕の好きな手法ですね。
ドラムが打ち込みなのも前作との大きな違いですよね。
KOHTA:そうなんです。今回、ドラムの打ち込みやミックスはギターのJEAN君(THE VALVES)にやってもらったんですけど、ベーシックの構成だったり、彼が色々担ってくれた部分が大きいですね。僕のイメージするものを形にしてくれました。ドラムが打ち込みなのは、これも実験ですね。本当は歌の曲だけ生ドラムも考えてはいたんですけど、いろんな都合でこの形になりました。