KOHTA

KOHTAソロプロジェクトの始まりを示す初の音源作品『UNLEASH』が完成。挑戦と可能性、ありのままの自分を解き放つ――

2022年のKOHTAを紐解くうえで、最も重要なキーとなるのは「今までやってこなかったこと」だろう。1月をもってAngeloが無期限活動休止となって以降、彼はまず「CREATIVE × MOTION」という冠のもと写真やプロダクトでの表現をスタートさせ、8〜10月にはNUL.のサポートベーシストとして全7公演のステージに立った。活動方法、表現方法、見せ方…その全てがKOHTAにとって「初めて尽くし」だった1年が終わろうとしている今、ついにソロ名義初の音源作品『UNLEASH』が完成を迎えた。ここでもやはり様々な試みがなされているわけだが、中でもベースヴォーカルへの初挑戦は特筆すべき点。KOHTAの2022年の活動を振り返るとともに、待望の初作品についてじっくりと話を聞いた。


自分を見せていきたいという欲求

KOHTA

今年3月の時点で「今までやってこなかったことに重きを置いて」ということをインスタライブで話していましたが、12月になった今振り返ってみると、2022年のKOHTAさんはそれが一番のテーマだったんだろうなと思います。

KOHTA:そうですね。一人になったからこそできることだったり、今年は初めて尽くしでした。自分で自由に発信するというのは、以前からちょっとやってみたいなとは思っていて。ただ、SNSは今まで全くやっていなかったので手探りで、1年あっという間でしたね。

2月に開設したTwitterとInstagramもKOHTAさんのカラーが出ていますよね。

KOHTA:やりながら「これでいいのかな?」と思いつつも、もうあまり飾るのはやめようと(笑)。自分らしくいこうと思って。それでどういうふうに思われても、まぁいいかなと。バンドだと、どうしても5人並んだ時の絵面やイメージを大事にする部分があったので、それを取っ払った今、自分自身をどう見てもらえるのかな、こういうふうに見せたいなというのを発信するのにSNSは良いきっかけでしたね。すぐにやろうと決めていたわけではなかったんですけど、自分を見せていきたいという欲求から始めました。

活動の仕方、プレイヤーとしての表現方法、見せ方…全てにおいて「今までやってこなかったこと」が重要な部分だったと思います。活動という面ではSNSに加えてファンクラブの開設もありましたし、様々なプラットフォームでトーク配信もしていますよね。

KOHTA:ファンクラブのほうでは月に1〜2回、一人喋りをやっているんですけど、大分慣れましたね。最初はコメントを拾いながら喋るというのが思いのほか難しくて大変だったんですけど、やれば慣れていくんだなと思いました。

NUL.のサポートメンバーとしてステージ(8〜10月にツアー6公演、9月にイベント1公演)にも立ちました。

KOHTA:HIZUMI(Vo/NUL.)と何か一緒にやりたいねという話は春くらいにしていて、その流れで誘ってもらいました。これも良い勉強になるかなと。ただ、NUL.は五弦ベースを使わなきゃいけなかったので、そこがチャレンジでしたね。

あれはベーシストKOHTAさんにとって結構大きなトピックスでしたよね。

KOHTA:大きいですね。僕、今まで五弦は使ってこなかったので。でもNUL.は音源を聴いた段階で、五弦じゃないと無理だなと思って。自分にとって間違いなく今後のためにもなるし、そういう機会を与えてもらえて感謝しています。

飾るのをやめたということにも繋がるかもしれませんが、ヴィジュアル面での変化として1月のAngeloのライブが終わってまず髭を伸ばし始めましたよね。

KOHTA:昔からやってみたくて。自分たちが活動している、いわゆるヴィジュアル系というジャンルで、どうしてもバンドのカラーには合わないなというのがあったので、一人になったらやりたかったことの一つですね。Twitterも最初、髭の写真を出した時に反応が多くて面白かったです(笑)。幸い、皆さんに「良い」と言ってもらえたので、違った一面を見せられたのかなという意味では良かったなと思います。

髪色も今はありのままですよね?

KOHTA:今、めちゃめちゃ白髪がすごいですよ(笑)。髪が長めの時はちょいちょい染めていたんですけど、短くしたら白いのが混ざっていても、それはそれで味かなと。早くもっと白くなってほしいなというくらいですね。チバユウスケさん(The Birthday)とかカッコいいですよね。あの色気はまだ無理ですけど、イメージとしてはそういう感じ。その辺も飾らず、今あるもので自然に見せられたらなと思います。

特にヴィジュアル系のアーティストは、髭や白髪を解禁するタイミングが難しいとよく聞きます。

KOHTA:難しいですね。ヴィジュアル系の中でも、特に中性的に見せている方とかは余計難しいとは思います。今回、自分で何かをやろうと思った時に、まずヴィジュアル系というカテゴライズを良い意味で気にしないでやりたいというのがあって。ただ、今まで自分たちを支えてくれたのは、そういうジャンルが好きなお客さんたちなので、完全に切り離すんじゃなくて、自分のキャラも理解しつつ、カテゴリーに囚われずにやりたいというのは最初の段階でありました。だから、最初のアー写はほぼスッピンですし。まぁ僕の場合は元々中性的な色があまりないので、いきなりの方向転換というわけでもないじゃないですか。バンドの中でも割と男っぽさのあるキャラだったので、そこをもう一歩踏み込んでというものを一人で見せられればなと思いました。

模索している姿を見せたくないという考えはないとも言っていましたが、完成されたものだけでなく、その過程も見せていくというのは今まであまりやってこなかったですよね。

KOHTA:そうですね。出来上がったものだけを見せる美徳ももちろんあるし、今まではそっち寄りでしたけど、今一緒にやっているクリエイターの高蝶(智樹)君とも話して、例えば歌うことに関しては今回が初めてのことなので、そこら辺は別に隠さなくてもいいのかなというのが共通の考えとしてありました。曝け出すという言い方はちょっと違うんですけど、ステップアップしていく段階を見せるのはいいんじゃないかなと。そういう意味で、やっぱり今まで見せてこなかった部分ということに繋がりますよね。

それこそ7月には、かなりリアルな練習風景の動画をYouTubeで公開していましたよね。

KOHTA:編集は高蝶君に任せているんですけど、あれは自分でも「おお、新しいな」と思いました(笑)。ソロとは言えチームでやっているので、そこも今までにない部分かなと。自分だけで考えていたら、あの発想にはならなかったと思うんですよね。かと言って、自分のやりたいことから逸脱しているわけではなくて。チームでやることによる面白い効果かなと思います。むしろそういうふうにやっていきたかったので。

歌に苦戦している姿も見せるということに抵抗はなかったですか?

KOHTA:あれは恥ずかしかったですけど(笑)、まぁいいんじゃないかなと思って。こういう過程を経て音源を出した時に聴いてもらったら、また何か違うのかなと思うので。あまり出し過ぎそうになった時は止めますけどね(笑)。

(笑)。表現という面では「CREATIVE × MOTION」という冠のもと、写真やプロダクトでも表現してきました。

KOHTA:全てが新鮮で手探りなんですけど、これもやっぱりそうですね。ブランド的なものは昔から興味はあったし、高蝶君もそっちが本職なので、これはぜひやりたいということで。音はちょっと遅くなっちゃいましたけど、音と物の融合というのは僕が見せていきたいものなので、その手始めとしてまず写真とプロダクトを出せたのは良かったですね。

9月にはNUL.のサポートメンバーとして出演したイベント、Luv PARADE主催「DEVIL’S PARTY 2022 Vol.2」@Spotify O-EASTでKaryuさん(Angelo)との対バンもありましたよね。

KOHTA:新鮮でしたね(笑)。あれは色々と複雑に絡み合ったイベントでしたけど、僕は絶対に負けないつもりでやりました。そういうのがいいなと思うんですよね。仲間とやるにしても、馴れ合いの感じじゃないという。あれで最後に一緒にセッションをやるとか、そこまでいくとちょっと馴れ合いっぽいと思うんですけど。元々仲間だけど違うバンドとしてステージに立つというのは、単純に燃えますよね。だから、あの日はサポートとは言えNUL.の一員として、他のバンドに負けないつもりでバチバチで行きました。じゃなかったら、やっても面白くないなと思ったし。あれは良い機会を与えてもらいましたね。

あのイベントでは出演バンドの皆さんの中で「ぶっ潰す」がキーワードになっていましたよね(笑)。

KOHTA:そこだけ掻い摘むと面白いですけど(笑)、負けないという気持ちですよね。「ぶっ潰す」という表現はアレですけど、知った仲でもそのくらいの意気込みでちゃんとやりましょうという、自分たち自身への叱咤激励でもあったかな。

自分の中でのステップアップのための挑戦

ミュージシャンとして最も重要な「表現」の一つである音源『UNLEASH』が、ついに完成を迎えました。やはり2022年のうちに出したいという思いは強かったですか?

KOHTA:絶対に出したかったです。夏くらいにはもう作業を始めていたんですけど、思っていたより遅くなっちゃいましたね。8〜9月はNUL.の動きがあったので、自分のイメージとしては11月くらいには出したかったんですけど、色々と作業の都合上ギリギリになって。少しでも早く出したいなという気持ちはありましたね。

ここでもやはり「今までやってこなかったこと」が重要なキーになっていると思います。

KOHTA:まさにやってこなかったことだらけですね。

ちなみに、6月にYouTubeを開設して初めて公開した楽曲はインストゥルメンタルでしたが、今回のミニアルバムを作るにあたって、最初からインストではなくベースヴォーカルでやろうと決めていたのでしょうか?

KOHTA:はい、インストを入れるつもりはなかったです。そこは挑戦ですね。すごく歌をやりたかったからやったというよりも、自分の中でのステップアップのための挑戦というか。一歩成長した違った顔を早くファンの人たちに見せたいなと思って。でもやっぱり、途中経過を見てもらえればわかるように、不安のほうが大きかったですけどね。ただ、歌で表現したいというよりも、歌って弾くという挑戦をしている姿を、こういう時期だからこそどうしても一発目に見せなきゃという思いが強かったです。

なるほど。ソロプロジェクトはベースヴォーカルのフロントマンという立場かつ、チームであるとは言えイニシアチブを取るのはKOHTAさんですよね。そういった面での大変さはありましたか?

KOHTA:そこに関してはそんなになかったかな。今までやってきたバックボーンとは違うものを見せたい、そのためにはどうしたらいいかという部分での葛藤はありましたけど、最終的には自分の思い描く通り好きなようにできたので。

高蝶さん曰く、KOHTAさんは「性格は優しいけど、注文は優しくない」とのことですが(笑)。

KOHTA:基本的には任せるんですけど、ちょいちょい僕が注文をつけるので(笑)。細かくああだこうだは言わないですけど、譲れないところは「よろしく」と(笑)。

KOHTAさんのソロプロジェクトは、THE VALVESの皆さんとチームで様々なものをクリエイトしていっているということで、曲作りはどのように進めていったのでしょうか?

KOHTA:今回、ギターもドラムもTHE VALVESのJEAN君、スズキ・アキラ君に手伝ってもらって、ヴォーカルの鍛冶毅さんにプロデューサーとして入ってもらって、楽曲もお願いしました。歌うことに関しても、鍛冶さんは元々プロデューサー的なことをやっているので、ちゃんと見てもらいたくて。自分が好きなように吐き出すのではなく、自分がやりたいものを見せつつも、世間的にちゃんと認められるような作品にしたかったんですよね。

制作に入る段階で、作品全体のイメージはどのようなものを伝えたのでしょうか?

KOHTA:今までやってきた毛色とは違うものをとにかくやりたいというのを伝えて、ロック色、僕らしさ、男臭さだったり、そこら辺をもっと出したいと。事前にそういうイメージを色々と話せたので、それを鍛冶さんがしっかり具現化してくれました。あとはそこに乗っかる歌詞を高蝶君と二人で考えてはめていった感じです。

ディスカッションしながら作っていくという点で言うと、ある意味バンドっぽい制作でもあったのかなと。

KOHTA:そうですね。バンドっぽくもやりたかったですし。まぁバンドほどのクロストークはないですけど、高蝶君にしろ、鍛冶さんにしろ、僕が今まで見せてきていないものや持っていないテイストをふんだんに持っている人たちなので、僕はできるだけそれを受け入れて、自分なりに昇華していきたいなと。そこは新しい試みでしたけど、すごく楽しくできましたね。

高蝶さんと二人での作詞は、どのようなやり方だったんでしょう?

KOHTA:言い回しや全体的な作り込みは高蝶君の世界観が強いです。僕はキーワードだったり、彼が「こんな感じでどう?」と書いてきたものに対して、肉付けしていくという方法をとりました。彼の表現、アーティスティックな部分というのを僕はすごく認めているので、まず彼の思う世界観を見せてもらってという感じですかね。だから、僕がまず使わない言葉や表現がたくさんあります。楽曲にしても僕ならこうしないなという部分があるんですけど、どうしても嫌ということじゃない限りは、あえて受け入れて答えを出したいなという思いが強かったです。だから、主に僕と鍛冶さんと高蝶君の三人で作っていますけど、二人の描くものやテイストを大事にしたいなと思いました。

今作について事前にオフィシャルで出ている文言には「解放をテーマに綴った6つのストーリー」とありました。

KOHTA:細かいことを言うと、僕の中では「解き放つ」なんですよね。微妙な印象の違いですけど。「解放」というワードだけ出すと、勘違いされる方が多いんじゃないかなと思って。バンドで縛られていて、一人になったから解放しますということじゃなくて、自分の中にあった可能性、見せたいものをもっと解き放ってオープンに見せたいなという意味合いです。ただ、それを文言的にはわかりやすく「解放」にしたんですよね。全体的な歌詞のイメージは、そこをテーマに広げていっている感じです。

バンドサウンドかつカラーは様々ですが、どれもメロディーを重要視している楽曲たちという印象です。

KOHTA:そうですね。僕思うんですけど、やっぱりヴォーカリストってすごいなと。自分で歌ってみて改めて思ったんですよ。生身の肉体で表現するのってヴォーカルだけじゃないですか。それがいかにすごくて大変かということが身に染みてわかりました。だから、あくまで自分なりの表現ではあるんですけど、そういうことを噛み締めながらやりました。言葉の言い回しから何から逐一気になるところがあったら言ってくれと鍛冶さんにお願いして、まぁまぁ色々言われましたね(笑)。でも僕はそれを素直に受け入れて。

全て吸収していったんですね。

KOHTA:楽器は何年もやっていますけど、歌に関してはド素人なので、そこも自分がやりたいようにだけじゃなく、音楽をあまり知らない人が聴いてもしっかり良いものだと思わせられるようにしたかったんです。だから、ちゃんとした人からの意見を素直に受け止めて、自分のできる限り表現しようと。他の方がどういうやり方をしているかわからないですけど、僕の場合は本当に初歩的なヴォーカルレッスンからでしたね。声の出し方だったり、言葉の言い回し、強弱、ブレスの仕方…自分でもわかるレベルで全部がダメだったので(笑)。例えば息継ぎのタイミングも「なるほど、こういう工夫があるんだ」と知ったり。そうやってでも吸収しないとなと思って。

逆に言えば、伸び代しかないですね。

KOHTA:まさにそうですね(笑)。素人だし、変に凝り固まったものはないので、とにかく素直に聞き入れて良いものを作りたいと思いました。

今後、歌もどんどん追求していきたくなりそうですね。

KOHTA:そういう願望はあります。ただ、何度も言いますけど、本当にヴォーカリストってすごいなと思います。やっぱりバンドの顔じゃないですか。どれだけのプレッシャーの中で、ああやって歌で表現しているのかと思うと、どこのバンドのヴォーカルさんも尊敬します。それがわかっただけでも収穫ですし、今後のためになりました。