2021.08.18
GOTCHAROCKA@TSUTAYA O-EAST
「NINTH ANNIVERSARY TOUR ~Vibrant World Add9~ The 9th Anniversary day」

昨年開催予定だった「Summer TOUR 2020」の振替公演として、冠を新たに6月からスタートした全17公演に渡るGOTCHAROCKA全国ツアーのファイナル兼9周年記念公演「NINTH ANNIVERSARY TOUR ~Vibrant World Add9~ The 9th Anniversary day」が8月18日、TSUTAYA O-EASTにて開催された。

「1年前の周年を思い出した。365日経って、形は元には戻ってないけど、やっと皆でライブできてるなぁ」と樹威(Vo)がこの日のMCで感慨深げに話したように、“8月18日のO-EAST”はGOTCHAROCKAのアニバーサリーを祝う毎年恒例の大切な場。昨年は同会場にて無観客配信ライブを行うという結果になったが、今年は緊急事態宣言下ではあるものの、感染対策を徹底した上で有観客での開催が実現した。

樹威

SEと共にオーディエンスのハンドクラップがメンバーを迎え入れ、最新アルバム『POLYCHROME』のリード曲かつ1曲目を飾る「HYPER NEXT WORLD」で幕を開けたこの日。イントロのヘヴィーな第一音が鳴った瞬間に、生で音を体感する“ライブ”という空間の醍醐味がひしひしと感じられた。不透明な未来へ恐れずに突き進むのだというメッセージは、2020、2021年に限らず、普遍的なものであり、私たちの背中を押してくれる。どんな時代であっても、確かな未来など存在しないのだから。事実、この歌詞はコロナ禍になる直前に書かれたという。

もちろん今の時代が反映された楽曲も存在する。十夜(G)のカッティングからスタートした「PRAYER」では、〈この歌届いているか 僕らは怒りを光に変え〉〈この思い届いているか 僕らは悲劇を奇跡に変え〉と歌い、歌詞の言葉尻を変え「今から証明しようぜー!」と樹威が高らかに叫んだ場面は印象深いものであったし、JUN(G)によるスタイリッシュなリフに乗せた樹威の甘い歌声が後半に進むに連れて力強さを増した「CREATORS」では、〈二度と戻れぬ旧世界 一度サヨナラ言うけど やり直せるさ新世界 僕らの希望は消えない〉と、まさに彼らの決意表明とも取れるメッセージが描かれていた。そして、この歌詞と「HYPER NEXT WORLD」がリンクする。つまりそれは、GOTCHAROCKAの根底にあるものが変わらないことの証でもある。

JUN

また、この日のステージは『POLYCHROME』の楽曲を中心に据えながら展開していったわけだが、中盤で2020年の周年曲(GOTCHAROCKAでは周年記念公演用に制作した新曲をライブで初披露、来場者に同楽曲の音源を配布するのが恒例)である「サプライズ」が披露されたことは、昨年、有観客公演が叶わなかったことから、1年越しにこの楽曲を直接届けたいという3人の思いがあったのではと推測する。〈何を信じて生きればいい〉〈手を伸ばせば触れられるのに 透明な壁が僕らを引き離す〉〈どうかお元気で お体には気をつけて いつかまた会える 時がまた動き出す〉と、実にリアルな言葉が綴られたバラードナンバーは、多くの人々の心に響いたことだろう。なお、冒頭に記した樹威の言葉は、この楽曲を披露した直後に発せられたものである。

後半戦は、フロアにタオルが旋回した「Onomatopoeia」、ツインギターのユニゾンが何度観ても痺れる「Baccarat」、セクションごとの緩急の差がドラマティックな「天秤」、高速ハードナンバー「OUT OF SERVICE」と立て続けに披露し、様々な毛色の楽曲たちによって終始熱量の高い空間が繰り広げられていった。ちなみに、「OUT OF SERVICE」においてJUNと十夜がセンターでギターソロをプレイした後、その中央に樹威が加わり、3人が寄り添い笑みを見せたシーンは何とも微笑ましいものだった。“いつもの”GOTCHAROCKAの光景が見られたことの喜びはもちろん、ディスタンスが叫ばれる昨今、いわゆる“ワチャワチャ感”は私たちの実生活において縁遠いものになっていることも、このような感情をもたらした要因の一つかもしれない。

本編ラストはアルバム同様にバラードナンバー「Suddenly」を。メンバー3人で1コーラスをしっとりと奏で、その後ベース、ドラムも加わり、エモーショナルに展開。ギターとヴォーカルの音の絡み合いが実に魅力的だった。

十夜

そして、アンコールで披露された今年の周年曲「Vibrant」。個人的な感想を述べるならば、決して楽観的なポジティブさではない、深い悲しみにも寄り添ってくれる、GOTCHAROCKAらしい温もりを感じられる楽曲だと思った。歌い終えた樹威はこう語ったのだった。「ツアーは正直どうなんだろう、でも負けちゃいけないなという気持ちで初日を迎えて。やっていく中で、皆、日々不安と戦っているんだなと、頑張らなきゃいけないな、俺たちが救ってあげなきゃいけないなと思いました。マイナスをプラスに変えて、やり甲斐のあるツアーでした」――そんな思いが「Vibrant」にも反映されているのではないだろうか。

さらに、「楽しみがあったほうが強く生きられるから!」という樹威の言葉もあったように、この日の模様を9月18日よりオンデマンド配信、11月14日に新宿ReNYにてJUNのバースデーライブ、冬にはショートツアーを開催することが一挙に発表され、その歓喜のムードから「I♡JJTGR」に突入。『POLYCHROME』のボーナストラックであるこの楽曲は、まさにアンコールに打ってつけのナンバーだ。80年代アイドルソングをイメージしたメロディーと、アイドルデビューしたGOTCHAROCKA(という体)を応援するバンギャル目線で、その日常がリアリティたっぷりに描かれた歌詞。そしてオーディエンスの手には“I♡JJTGRタンバリン”が光る。ステージ、フロア共に満面の笑みにならないわけがない。各メンバーのことが歌われているセクションでは、樹威が紫、JUNが赤、十夜が青、とそれぞれのカラーがステージを照らしたり、「JUI」「JUN」「TOYA」「GR」といったLEDライトによる光の文字の演出など、視覚的にも楽しめるエンターテインメント空間が広がった。

次いで、フロアにこの日一番のヘドバンの嵐を巻き起こしたハードナンバー「#スグ消シマス」を経て、「Ash」で光溢れるラストシーンを描き出し、この記念すべき一夜は幕となった。そこには、これぞ完全燃焼と言えるメンバー3人の達成感に満ちた笑顔があった。

改めて振り返ると、『POLYCHROME』はコロナ禍の中で制作され、昨夏前には完成しながらもリリースを当初の予定から昨年10月に延期、そしてその楽曲たちを披露する有観客ライブを開催することができたのは12月だった。さらにそこから約8ヵ月が経過した今、すなわち楽曲の誕生から1年以上の時を経て、ようやく『POLYCHROME』という作品が本当の意味での完成形を迎えたように思う。未曾有の事態に翻弄されたこの作品は、GOTCHAROCKAと彼らを愛する人たちの中で大切な宝物になっているだろう。そして、今後の活動の中でも重要なポジションを担っていくに違いない。「楽曲はツアーを通して成長する、ライブはオーディエンスがいるから成立する」とはよく耳にする言葉だが、それが真実であることを証明してくれた一夜だった。最後に樹威の言葉を記したい。「これからも楽しいことを一つずつやっていきましょう。必ず、またね。ありがとう」

◆セットリスト◆
01. HYPER NEXT WORLD
02. ASIAN NIGHT
03. HUMAN BOARD GAME
04. MONOCHROME
05. PRAYER
06. 恐想ロワイヤル
07. Chase!!!
08. CREATORS
09. 白いDIA
10. サプライズ
11. Onomatopoeia
12. Baccarat
13. 天秤
14. OUT OF SERVICE
15. Suddenly

En
01. Vibrant
02. I♡JJTGR
03. #スグ消シマス
04. Ash

(文・金多賀歩美/写真・WHOKO)

 

【配信情報】
●「NINTH ANNIVERSARY TOUR ~Vibrant World Add9~ The 9th Anniversary day」オンデマンド配信
初回配信日時:2021年9月18日(土)18:00~21:00予定
配信期間:2021年9月18日(土)21:00~9月23日(木・祝)23:59まで

【ライブ情報】
●JUN バースデー公演
11月14日(日)新宿ReNY

●ショートツアー
12月開催

GOTCHAROCKA オフィシャルサイト