其の弐 ~レイヴの“これまでとこれからと”後編~
連載「レイヴのすゝめ‐2020‐」第弐回目となる今回は、これまでに撮影された全26枚のアーティスト写真と、リリースされた作品群を眺めながら、4人にバンドの歴史をより深く振り返ってもらった。さらに、現在佳境を迎えているONEMAN TOUR 2020 #1「序章」について、そしてその会場限定でリリースされる最新作『ドリップ』の魅力についてもお届けする。大いに盛り上がりながら、赤裸々に語られた4人のトークをご堪能あれ。
記憶に残る1枚:アーティスト写真
●凪
――過去のアーティスト写真の中で記憶に残る1枚を教えてください。
凪:僕が思い入れがあるのは『フラチズム』ですね。この写真の撮影で初めて東京に行って、メイクさんにちゃんとメイクをしてもらって、撮影して、それまでのアーティスト写真から一転しました。
悠:違うバンドみたいだよな。
――これが、先輩であるR指定の七星さんに言われて撮影したという写真なんですね。
(※過去に行った悠さんのパーソナルインタビュー「ベーシスト悠とレイヴ」にも詳しく掲載しています。ぜひチェックしてください)
悠:そうです!
凪:それまでとはガラッと変わりましたよね。メイクさんがめちゃくちゃ上手くて、「メイクでこんなに変わるんだ!」って感動しました。だから一番記憶に残っています。
レン:この撮影の時、楽屋でみんなで盛り上がったんですよ。
凪:一人ずつメイクが上がるたびに、「うぉぉぉ!」「やっぱすげえな!」って。みんな同じことを言っていました(笑)。
――「東京のバンドみたいだ!」って言っていたそうですね。
凪:当時、九州でこんなクオリティで撮っているバンドはいませんでしたからね。ここまでやっていたのは僕らだけだったんですよ。だから、頭一つ抜けた感がありました。
――七星さんはこのアーティスト写真は見たんでしょうか?
悠:すぐに見たと思いますよ。でも、「めっちゃいいね!」という感想ではなく、「まぁ、これでしょ」という感じだったと思います。やっとスタート地点に立てたなという感じだったんじゃないかな。
●レン
レン:俺は、『ナミダヒロイン』あたりで、それまでの元気マッスル坊やが変化しましたね。
悠:マッスルではなかったけどね(笑)。
レン:元気がマッスルってことよ。
凪:それを言うならハッスルだね(笑)。
nisa:それまでのカラフルでキャピキャピした感じから変化したってことね。
悠:カラフルでキャピキャピした感じが一番凄かったのは、『オヒトリセレナーデ』の頃かな。
レン:そうだね(笑)。もちろん、私生活はカラフルでキャピキャピな感じではあるんですよ。でも、自分の好きなバンドとかやりたい音楽をもう一度考え直したときに、いつまでもキャピキャピできんなと思ったんです。なので、この写真以降は無理に若く見せようとしていないというか、着実に年齢を重ねていっている感じですね。人って、見た目やキャラクターでその人の言葉の重みや印象が変わるじゃないですか。そう考えたときに、もったいないなと思ったんです。俺の好きなアーティストは年相応の貫禄がある人が多いし、俺も年相応に見られたい!と思って。
――外見よりも内面を出したいと思うようになったんですね。切り替えはとても難しいですし、ヴィジュアル系のバンドマンとしてはかなり勇気のいる決断です。
レン:そうなんですよね。ヴィジュアル系っていつか必ずこの問題にぶち当たると思うんです。石田は「九州のバンドは一回キラキラして元に戻る」って言っていましたけど。
悠:「九州のバンドはキラキラできない説」があるんですよ。みんなキラキラしきれずに終わるという。
レン:みんな東京に来て、最初は周りの意見に合わせて無理してキラキラするけど、やっぱり肌に合わなくて戻っちゃうらしいです。みんなアンダーグラウンド系を聴いているから、好きなものに帰っていくんじゃないかな。
――九州バンドあるあるなんですね。
レン:音楽で勝負したくなってくると変わるんだと思うんですよ。俺も、この頃からステージングもガラッと変わったと思いますし。
nisa:あと、このアーティスト写真からみくるが女形から男になったんです。亡くなって、献花式で大きなパネルを作ってもらったときに、最後のアーティスト写真がこれで本当によかったねって僕らも言っていたんですよ。
凪:彼は男になりたがっていましたからね。
●悠
――悠さんの記憶に残る1枚はどれですか?
悠:難しいなぁ。俺、そんなに変化がないんですよね。個人的に一番攻めたことをしたのは、やっぱり『ツミトバツ』かな。『メンブレさん通ります。』や『BOTEKURI』の俺もちょっと恐いけどね。
nisa:この時、ブレイズだったね!『ツミトバツ』ワンマンツアーの最終公演の本番が終わったら、楽屋で「今、切り落とす!」って言っていたのを覚えてる。
レン:俺が取ったんですよ。その後でブラッシングするのが気持ちよかったです(笑)。
悠:今思えば俺、おそらくブレイズの素材のアレルギーだったんですよ。この時、サイドの髪を刈っていたんですけど、そこにファイバーが触れて真っ赤になっちゃって。この髪型は結構辛かったんですけど、それまで自分の見た目が普通だと思っていたから、ヴィジュアル系として何かやりたかったんでしょうね。それで「ブレイズくらいやらないとだめなのかな」と。
――やる前にメンバーの皆さんに予告はしたんですか?
悠:すごく迷っていたんですけど、「やろうと思うんだよね」って言ったらnisaが「いいやん! やっちゃえよ!!」って(笑)。確か、仙台MACANAの楽屋だったな。
nisa:こういうのって、男だったら誰でも一度はやってみたいと思うんですよ。でもレイヴでは、やった人がいなかったんですよね。
悠:背中を押してくれたからやったんですけど…まぁ一日限定とかなら、またやりたいかも。
凪:実は俺もやりたいんだよね。
悠:いいやん! やっちゃえよ!!
全員:(笑)
悠:でも、凪とnisaは似合うと思う。
レン:俺は?
悠:お前がやったら、ガチガチのジャンキーみたいになる。
nisa:ぶっといドレッドで、ボブ・マーリーみたいになりそうだよね(笑)。
レン:ボブ・マーリー(笑)!
●nisa
nisa:俺の記憶に残っている写真は何枚かあるんですけど、まずは転換期になった『不幸福論』ですね。レイヴはアーティスト写真の撮り方を『初恋』から変えていて、ヴィジュアル系バンドっぽくないというか、タレントの宣材写真っぽい感じで撮っているんです。そういう、人が際立つ、人の良さが伝わる写真の始まりがこの『不幸福論』の写真で、これがあったからこそ『初恋』ができたのかなと思います。あとは、5周年のアーティスト写真ですね。
nisa:この時の衣装は、「SETSUDAN」(シングル『妄想×カニバリズム』収録)を彷彿とさせるドット柄なんです。
――衣装はあえて『SETSUDAN』に揃えたんですか?
nisa:そうなんです。ここに来てドットに戻るという。だから、背景には全てのアーティスト写真があって、それが渦巻いているんですよ。5年分がギュッと凝縮されているという感じです。
レン:すごくいいよね。
――ここで『SETSUDAN』に戻ったのはなぜだったんでしょう?
nisa:このメンバーのスタートは『SETSUDAN』だなと思うんですよ。
悠:初めて5人でMVも録ったしね。
nisa:うん。初の全国リリースだったし。なので、5周年のタイミングでこういう写真にしました。
――ちなみに、一番撮影が大変だった写真は?
nisa:『アクメ狂詩曲』ですね! 撮影の時、カメラマンさんが100万円くらいするカメラを持って来たんですけど、撮影中にそれが壊れて、線が入った写真しか撮れなくなってしまったんです。しかも、スペアのカメラがなくて。それで、使える写真をどうにかセレクトしたんですけど、最終的には事務所の代表のジャッジで、オフショット用だったこの写真になりました。
悠:でもこれ、今見るとすごく良い写真だよね。
凪:うん。当時は結構カッコつけていたから「え!?」って思っていたけど、すごく良い。
悠:昔はアーティスト写真をコンセプトに合わせよう合わせようとしていたからね。
――その考え方はいつ頃変わったんでしょう?
nisa:やっぱり『初恋』からかな。
凪:うん。『初恋』からは変わったよね。「背景なんかいらない!」って考え方ですもん。最近、人にフォーカスした写真っていいなと思うんですよ。
悠:俺が思うのは『スーサイドBABY』からかな。背景が邪魔していないんですよね。あと、触れておきたいのは『トイパレッドワルツ』。
nisa:俺もこれは絶対触れておいたほうがいいと思う(笑)。事務所に入って一発目の写真なんですけど、俺ら自身、この写真はなかったことにしちゃっていますからね。
悠:『フラチズム』でアーティスト写真がすごく良くなって、「これが全国区のアーティスト写真や!」と思ったんですけど、『純情ビッチ』までは、まだ環境に良くされただけだったんです。それが、『妄想×カニバリズム』でやっとメンバーも垢抜けてきた。そこで事務所に入って、「一体どんなアーティスト写真を撮らせてくれるんやろ」とワクワクしていたら…これですよ(笑)。
nisa:俺らは、いつもお願いしているカメラマンとメイクさんがいたんですけど、所属して最初だし一度事務所のやり方でやってみようという事になったんです。何しろ夢と希望をもって所属した、あの事務所ですからね。その人たちが『トイパレッドワルツ』の写真を見て「いいじゃんいいじゃん!」って言うんですよ。正直俺らは「マジか!」と思ったんですけど、でもいろんなアーティストを見てきた人たちが言うなら間違いないだろう…と思ったら、やっぱり結果は微妙な写真でした(笑)。
レン:ファンからも関係者からもボロカスに言われましたからね。「あれはないやろ」って(笑)。
――前回話してくれた「自分たちのやりたいようにやらせてもらった」というのは、これ以降なんですね。
nisa:むしろこれがきっかけでしたね。自分たちの意見をしっかり出さずに言われる通りにやっていたらこうなるんだと思ったので。
悠:次の『アクメ狂詩曲』はこうならないように散々打ち合わせをしてから撮影したんですけど、結果これが選ばれて、その次の『オヒトリセレナーデ』からは完全にこっちの希望の撮影チームでやりたいようにやりました。ここでようやく元のレイヴに戻りましたね。今思うと、『オヒトリセレナーデ』も転換期じゃないかな。ここから明るいほうに行き出したから。そして、そこからの『UKIYO』の写真は謎だったよね。
nisa:確かに当時は「レイヴというバンドのコンセプトは何ですか?」って聞かれて答えられなかった自分たちがいたから、それを模索していた時期だったよね。
悠:それにしても、『ナミダヒロイン』から『UKIYO』で、何で暗いほうに行こうと思ったんだろう…。
nisa:俺が思うに、レンレンが『UKIYO』から徐々に脱力系になっていったんだよね。
悠:本当だ。腕がどんどんダラッとして『ツミトバツ』に至っては、もう机で支えないといけなくなってるじゃない(笑)。
レン:色々あったなー(笑)。でも今のアーティスト写真が一番好きですね。
記憶に残る1枚:CD
――サウンド面での記憶に残る1枚はどの作品でしょう?
悠:作品としては、「SETSUDAN」までで一括りという感じですね。
凪:当時付いていてくれたマネージャーが、エンジニアさんに「『トイパレッドワルツ』は商業的なロックの音にしてくれ」って言ったんですよ。それによって音作りは変わったんですけど、俺は「この人、何言ってるんだろう」と思って、その意見は聞かなかったことにしました(笑)。
悠:当時、俺らは『トイパレッドワルツ』はライブでもできるだけやらないし、衣装も含めトイパモードをできるだけ早く脱したかったんだよね。あと、方向性で言ったら、エロティックなのは『オヒトリセレナーデ』までで一区切りなのかな。
nisa:ギターのサウンドは、ここ(「オヒトリセレナーデ」)から完全にデジタル機材になったんだよね。悠がこの前、久々に聴いたらすごく音が良いって言ってたし。
悠:作品の中で、『ヨクバリーゼ』と『有頂天バブル』だけがサウンド的に違う感じがするな。その次でまた帰ってくる感じ。『ヨクバリーゼ』を出す頃、俺らは「こんなにはっちゃけてなくて大丈夫?」って言ってたんだよね。
nisa:『ヨクバリーゼ』は、はっちゃけているのはアーティスト写真だけで、曲調やサウンドは全然はっちゃけてなかったからね。何ならこの衣装で「Day×Bye×day」(『ヨクバリーゼ』収録)のMVとか撮ったし。俺はサウンド的には『トイパレッドワルツ』では変わらなかったと思っていて、一番変わったと思うのは『ナミダヒロイン』かな。
凪:急に生っぽくなったよね。
――『ナミダヒロイン』は他とは一線を画している感じがします。
レン:名曲ですよね。レイヴは本来こういう曲が得意なのかもしれない。この『ナミダヒロイン』が一周回って『初恋』になったんだと思います。
悠:俺は、『ツミトバツ』から『ハラスメント』への変化は大きかったと思う。
nisa:ここにきてヘヴィになったよね。
凪:チューニングも下がったしね。
悠:俺は、「転んだ。」(『メンブレさん通ります。』収録)を世に出すときに不安で。すごくカッコいい自信はあるけど、ファンの子たちがこれをどう思うだろうと思ったんだよね。
凪:でも、「転んだ。」が好きな子は多いよね。
悠:そうなんだよ。MVを公開したときから評判が良くて。嬉しかったと同時にビビッたし、「気に入るんかーい!」ってツッコミも入れたかった(笑)。
nisa:この時に、ファンも流行りに敏感で、俺らがずっと抱えていた王道ヴィジュアル系のイメージじゃなくても良いものは良いって思ってくれるんだって思ったんです。
悠:この後は結構王道なんですよね。『スーサイドBABY』もレイヴって感じだし。
nisa:初期の楽曲のレイヴっぽさって、シンセが入って4つ打ちのイメージだったのが、『ハラスメント』と『スーサイドBABY』で軽く戻ったよね。だからヴィジュアルもそっち寄りになった気がする。
――『BOTEKURI』からは、レンさんの曲が入るようになりましたね。
nisa:この頃は、俺と悠の二人だけの作曲体制が長く続いていて、わりと二人ともネタを出し切っている状態だったから新鮮でしたね。
悠:レンの曲だけど、「BOTEKURI」は今までのレイヴっぽいと思う。
nisa:アレンジしてちょっと寄せたんだよね。レンが持ってくる曲は今までのレイヴっぽさが皆無だったので、それを俺らが昇華したというか。そして、ここからMVの撮影方法を変えて、曲のイメージを大事にするようになったというのが大きいですね。今考えるとおかしな話なんですけど、それまでは作品の中に俺らがいたんですよ。例えば「ツミトバツ」ではレンがヤバいやつを演じたり、「ハラスメント」では俺らが演奏している横でハラスメントが起こっていたり。でも「BOTEKURI」からは俺らが楽曲で表現している中の世界を映像で表現するようになった。その変化はすごく大きいです。
「序章」ツアーと最新作『ドリップ』
――前作シングル『初恋』で新しいレイヴに生まれ変わった感があったので、次なる作品が気になっていました。今回、アーティスト写真はシンプルを極めつつ、白から黒へと変化。さらに、ヴィジュアルもサウンド面も全てセルフプロデュースなんですよね。
悠:セルフプロデュースにしたのは、最近nisaが写真が好きすぎるなと思ったからなんです。以前から「機材を買った」「これで人も撮れる」と言っていて、そんな時に俺の生誕ライブ(昨年12月に行われたBa.悠 生誕記念ONEMAN 「石田の石田がスプラッシュ!?~今年もやります大忘年会~」@渋谷REX)専用の写真が撮りたくなったので、nisaに頼んでみたんです。
――このクオリティはすごい!
レン:すごいんですよ(ドヤ顔)。
nisa:やったの、お前じゃないけどな(笑)。
悠:これで確信に変わりましたね。なおかつ今回は、いつものリリースとは違って会場限定シングルなので、一度全部セルフでやってみようと。
nisa:衣装のスタイリングも自分たちでやったので、アーティスト写真の撮影現場には俺らとメイクさんだけでした。
レン:スタイリングはプロに任せたほうがいいんじゃないかと思っていたんですけど、ずっとスタイリングしてくれていたスタイリストさんにできあがった写真を見せたら、「プロの俺の目から見ても、これなら人に頼まなくていいレベルだよ」って言われたんですよ。
nisa:え、そうなの? 俺は今でもやっぱり頼んだほうが良かったんじゃないかと思っていたんだけど。
レン:絶対わからないって言われたよ。「悠君のジャケット、どこで見つけたの?」って言われたし(笑)。「スタイリングは凪がやったんだよ」って言ったら、「凪君センスあるんじゃない?」って。
凪:いやいや、衣装はみんなで見に行ったんです。でも俺、今思うともっと良くできるなと思うんです。初めてやったから視野がめちゃくちゃ狭かったけど、落ち着いて考えたらもっと良くできた。むしろなんで俺はこれで納得しちゃったんだろうと思って。
レン:伸びしろがあるなぁ(笑)。
凪:でも今回、シンプルだから成立した部分もあると思うんですよ。もし柄を入れようと思ったら俺には無理だと思う。
nisa:写真が成立したのもシンプルだからだと俺も思うんだよね。ちなみにこの写真、一人ひとり別撮りして合成しているんですよ。カメラマンさんがいないので、撮影機材を俺がセッティングして俺が3人を撮って、俺の写真は悠に撮ってもらいました。
――今回の作品は、各メンバーの得意分野を存分に生かしているんですね。セルフでできたことで大きく変わったことはありますか?
悠:パッと動けるようになったのは良いことですよね。例えば明日までに写真撮って来いって言われてもできるし。
nisa:レンのバースデーイベント(3月2日に行われるVo.レン 生誕記念ONEMAN「ねぇ、レンくん?下北沢で唄ってよ」@下北沢SHELTER)の写真も、本人が下北でロケしたいって言ったんですけど、「じゃあやるか」ってフットワーク軽く行けたんですよ。今回、写真も音も自分たちでこのクオリティなら出せるってことがわかってよかったです。それがわかっていると、今後プロにやってもらったときに口が出せますから(笑)。
――同じくセルフプロデュースで完成した今回のシングル『ドリップ』は、タイトル曲+初のインストゥルメンタルが収録されていますね。
凪:今まで、歌がない状態の音を入れて意味があるのかなって思っていたんですけど、インストゥルメンタルだと楽器の音がすごく良くわかっていいなと思いました。
レン:「楽器隊はこんなことやってるんだ」ってよくわかるからね。
nisa:うちのファンは楽器好きな子が多いですしね。なので入れたいなと思っていたんです。
――曲頭の歌詞は、綺麗な比喩表現になっていますね。
レン:やっぱり曲頭が大事だと思って、歌い出しの2行は一番考えました。なので、思いっきりストレートな表現よりも、比喩的にしようと思ったんです。ただ今回、『初恋』の時みたいにプリプロの時点でサビ頭はできていて、その後歌い出しもできたんですけど、他の箇所が全然できなくてレコーディングが押しました(笑)。自分が作ったAメロやCメロが詰め詰めで歌うのが難しかったので、そこに言葉を入れるのも難しくて。
――苦労が偲ばれます。今回も女性目線の歌詞ですが、『初恋』同様“愛の上に歌っている”感じでしょうか。
レン:そうですね。最近こういう言葉がよく生まれてくるなと思いながら書きました。プリプロの段階では〈私の女子を捧げた人よ〉って歌っていたんです。この歌詞だったら、最初を捧げた人って受け止められるなと思ったので。でも、その段階ではまだ迷っていたんですよね。これは偏見なんですけど、女性が「女子」って言える年齢って限られるじゃないですか。そんな時を一番捧げた人の思い出って、捨てたくても捨てきれないんじゃないかと。別れた後に憎んでも、時が経って振り返ったときに、「あぁやっぱりいい思い出だったな」って思えるような美しい黒歴史なんだろうということが書きたかったんです。
nisa:これ、本当に恋愛の歌詞だったんだね。これを読んで、「今俺らを追いかけてくれているファンの皆は、俺らに対してこう思ってくれているのかな」と思ったんだけど。
レン:そういう捉え方もあるよ。
――いろんな解釈ができる歌詞です。では、楽器陣は聴かせどころを挙げるとしたらどこでしょう?
悠:サビ後半のベースです。むしろ、そこしかない(笑)!
レン:最初はルートなんですけど、送られてきた音を聴いて「あぁ、俺はやっぱりこういうベースが好きだな」と思ったんですよね。
悠:実は、ベースを録るときにまだ完成しきっていなくて、色々やった結果、「ダメだ! もうわからない!」と思って、サビ後半以外をシンプルにしたんです。でも、出来上がってみたらシンプルでよかったなと。
凪:ドラムもシンプルすぎるんですけど、聴きどころは曲最後のツッツッツッツからのツッッ!っていうハイハットの一撃ですね。あそこに魂が込められています。
nisa:ドラムは録るのもすごく早かったよね。
凪:うん。むしろ音作りにすごく時間がかかった気がする。チューニングからマイクまで結構こだわったので、音を作っている時間と録っている時間が同じくらいでした。
nisa:今回、俺が音源をミックスするので、レコーディングの時にエンジニアさんに「こういうサウンドにしたいので、こういう風にマイクを立ててください」ってお願いしたんです。ドラムに関してずっと思っていたことをこの機会に改善できたと思いますね。あとこの曲は、今までの中で原曲からの仕上がりが一番変わりました。ギターは、レンレンがギターヴォーカルをやりたいと言っていたので、それを叶えるためのツインギターになっています。あと、レンレンからイントロとアウトロにあるテーマの部分をもっとシンプルにしてほしいと言われたんですけど、俺はこれが一番良いと思ったので、騙されたと思ってこれにさせてくれと頼みました。
レン:ここは色々話したよね。
nisa:うん。レンレンの理想は、もっと青春パンクみたいな素直な部分で、今までのレイヴにはないものを作りたかったんだと思うんです。でも、その印象は越えられるから、大丈夫だからって言って。結果的にこれでよかったなと思います。
――さて、現在この会場限定シングルが手に入るONEMAN TOUR 2020 #1「序章」の真っ最中(取材時点では初日の仙台公演が終了)ですが、このツアーの展望を教えてください。
nisa:『初恋』ツアーで、大人しくも見せられる聴かせられるレイヴを提示できたので、それを経てのレイヴでこそ表現できる部分を楽しみにしてほしいです。
悠:あのツアーの後っていうのがいいよね。俺、なぜか今怖くないんですよ。『初恋』ツアーで強くなった気がします。それも含めて今回の初日の仙台では、今までやってきたワチャワチャした部分も、静かな部分も、できるようになったことも、ちゃんと反映されているなと感じました。
レン:『初恋』ツアーみたいに聴かせる曲が多いと、全てはヴォーカルのブレスから始まると思うんです。その大切さもわかったし、『初恋』ツアーで自信を得たことで、今すごく余裕があるんですよ。
凪:俺も余裕があるのか、肩の力がすごく抜けてリラックスできています。『初恋』ツアーを経験したからなのか、変に緊張もしていないし、ノレるところは自然にノリながら叩いていて。個人的には良い空気感でやれていますね。
レン:じゃあ、「序章」ツアーに来てくれた人に、凪すけから何かしてもらおう!
凪:え!? うーん、何してあげようかな…じゃあ下手くそなウィンクをします(笑)。
nisa:両目を瞑っちゃうやつか(笑)。
レン:各ライブ中5回はするので、お見逃しなく!
Vifからのお題にメンバーが答えるこのコーナー。第2回目のお題は「癖」。レンさんと悠さんの癖(くせ)や癖(へき)を教えてもらいました。
レン
僕は産毛への完全なる癖(へき)があります! 完璧に毛を処理してる人よりも、赤ちゃんみたいなふわふわな産毛が少しだけ生えてる人を見ると、「この人も人間だな~可愛いな~」と思ってしまうのです!
悠
ここ数年の僕の「癖」(くせ)ですが、いわゆる“ラインパンツ”を収集する癖があります(笑)。タイトなシルエットのラインパンツを探し求めて通販やお店で集め、もう7本程所有しています! 全部一緒じゃん…と思われそうですが、謎の拘りがあって常に美しいシルエットの物を今もまだ探し求めています(笑)。特にツアー中はラフな服装が多いのでいつも履いていますが、毎回同じものを履いているのではなく、ちゃんと替えていますのでご安心を!
レイヴ
<プロフィール>
レン(Vo)、nisa(G)、悠(B)、凪(Dr)によるロックバンド。2012年8月に福岡県で結成し、1stシングル『ALIVE』をリリース。2016年10月にみくる(G)が病気のため永眠。2017年3月に1stフルアルバム『不幸福論』をリリース。2018年3月、PS COMPANYより24RECORDSに移籍し、5月に移籍第1弾としてミニアルバム『メンブレさん通ります。』を、その後シングル『ハラスメント』『スーサイドBABY』『BOTEKURI』『初恋』をリリース。2020年2月16日よりONEMAN TOUR 2020 #1「序章」をスタートさせ、会場限定シングル『ドリップ』をリリースした。
■オフィシャルサイト
http://rave-official.com/
【リリース情報】
New Single『ドリップ』
2020年2月9日(日)発売 ※ONEMAN TOUR 2020 #1「序章」会場限定販売
レン盤
(CD only)
RVCD-006A
¥1,200(Tax in)
nisa盤
(CD only)
RVCD-006B
¥1,200(Tax in)
悠盤
(CD only)
RVCD-006C
¥1,200(Tax in)
凪盤
(CD only)
RVCD-006D
¥1,200(Tax in)
【収録曲】
01.ドリップ
02.ドリップ(Instrumental)
【ライブ情報】
●レイヴONEMAN TOUR 2020 #1「序章」
2月21日(金)心斎橋FANJ
2月22日(土)名古屋HeartLand
2月24日(月)四谷LOTUS
●レイヴ Vo.レン 生誕記念ONEMAN「ねぇ、レンくん?下北沢で唄ってよ」
3月2日(月)下北沢SHELTER
●anfiel PRESENTS 2MAN LIVE『#QUEST_2 レイヴ』
3月13日(金)新宿RUIDO K4
●レイヴ Dr.凪 生誕記念ONEMAN「凪のお誕生日会」
4月6日(月)高田馬場CLUB PHASE