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集大成となるアルバムを経て完成した、バンドの新たな始まりを予感させるニューシングル『Period』をフィーチャー!

昨年リリースされた“現時点での集大成”であるアルバム『CHRONUS』。これに続く新曲として完成した今作で、彼らは一見ネガティブにも思われる〈終止符〉を意味するタイトルを冠しつつ、その先にある〈始まり〉をはっきりと提示して見せた。この作品に込めた思い、7月7日に7周年を迎えるバンドの過去、現在、そしてこれからを、智(Vo)とTohya(Dr)に聞いた。

◆次にアルバムを作るとしたら、これを1曲目にしたい(智)

――シングルのリリースは1年ぶりですね。

智:『CHIMERA』(2013年4月リリース)以来だからね。

Tohya:もうそんなに経ってるのか…。

――今作は、昨年7月リリースのアルバム『CHRONUS』以来の新曲ですが、制作はいかがでしたか?

智:なんだかんだ忙しかったし、タイアップも決まっていたので大変でした。

Tohya:「Period」はアルバム制作が終わってすぐに作ったんですけど、制作も巻き巻きでしたね。

――「Period」はゲーム『幕末Rock』のタイアップ曲ですが、ゲームを意識して作りましたか?

Tohya:資料を見たり、作品中で使われる曲を聴かせてもらって、かけ離れないようにしました。多分誰にもわからないと思いますけど、僕のイメージする昔の日本ってことで琴の音を入れたり。最近、作るときに個人的な楽しみを盛り込んでいますね。

――今回は『CHRONUS』で登場した未来の智さんから何か曲作りのヒントはなかったんですか?

智:その話、懐かしいな(笑)。

Tohya:あはは、残念ながら今回はなかったです(笑)。

――ところで、今回の「Period」というタイトルが気になっていたんです。「THE END.」(2012年7月7日、TOKYO DOME CITY HALLで行われたライブのタイトル)くらい意味深だなと。

智:いやいや、そんなに何回も同じ感じでは持ってきませんよ(笑)。今回は単純に、自分という存在自体に一度ピリオドを打って、新しい自分をスタートさせたいという意味合いで付けたんです。

――リスタートのためのピリオドなんですね。

智:そうです。

――アルバム『CHRONUS』のインタビューで、「この作品が現段階での集大成」だと言っていたこともあって、より強くリスタートの意思が感じられます。今回、集大成となる作品を経て、初の新曲ですがどんな気持ちで挑みましたか?

智:正直この曲には、始まりっぽい感じさえあれば良いという気持ちがあって。自分の中で、今年の1枚目の曲にすごくふさわしいなと思うんです。今回、別にキラーチューンというわけでもないし、言うなれば、風みたいな曲ですけど、その空気感がこの曲ですごく確立されたなと。次にアルバムを作るとしたら、これを1曲目にしたいですね。

――この曲が1曲目のアルバム、とても広がりのある作品になりそうですね。

智:そうですね。だからこそ、タイトルの「Period」って言葉がちょうど良くて。今回、自分が変わっていく様子とか、どうして変わったかを事細かに書いているわけではないんですけど、音と歌詞から何か重たい感情があることを汲み取ってほしいですね。

◆やればやるだけ世界も広がって理想も高くなる(Tohya)

――『SINGLE COLLECTION』のインタビューで「深海魚の夢は所詮、」の音がすごく良かったと言っていましたが、今回はそれを超える出来ですか?

智:まだですね。あの偶然の産物さ加減はマジ半端ないですよ。周りのスタッフにお願いして力を貸してもらってもどうにもならない。

Tohya:色々と試行錯誤を繰り返しているのに、なぜ越えられない…!っていう。

――今回、ドヤ顔で「超えましたよ」って言ってくれると思っていたんですが…。

智:いや無理でしょ(笑)! 全然追いつかないよね。

――理想の音を作るのは難しいんですね。

Tohya:多分いつまでも辿り着かないよね。やればやるだけ世界も広がって理想も高くなるし、時代とともに音楽も変わっていくからそれに合わせていかないといけないし。無限回廊ですよ。

智:本当にね。音楽もファッションみたいに回ってくるものなんだろうけど。でも、竿(ギターやベース)を持っている人たちは一番大変だと思う。どんどん新しい機材が出てくるし。

Tohya:そうそう。Yuhはそのたびに買ってるし(笑)。

智:買いすぎて結局迷ってんじゃねーか、ってこともあるしね(笑)。

Tohya:何をそんなに使うんだかわかんないんだよ。この前は冷蔵庫くらいでっかいラックを買ってたし。

智:結局、繋いで繋いで繋いでいくと、電気みたいに弱くなるんじゃね?って思ったりするんだけど。

Tohya:わかる(笑)。本当に全部使ってんの?って思ったりするし。

智:あんなの電気っすよ、電気(笑)。

全員:(笑)。

――智さんはマイクを変えたりは?

智:僕はスタッフの皆さんがやってくれますね。自分の好きな声っていうのがあるから、それを毎回伝えて。好みをわかってくれているスタッフは「これは嫌なんでしょ?」って言ってくれるし。「Period」の時は、三つ用意してくれた中から新しいマイクを選んだんですけど、見た目はタンブラーみたいな超ダサいやつで(笑)。

――音色の違いはありましたか?

智:結構あるんですよね。日によるんですけど、その時の俺の声には合っていて。でも、その時に録った歌は歌詞の都合で全没になったんです。歌詞を新しくした歌は、同じマイクで、お布団の中で録りました。

――お布団?

Tohya:音が反射して余計な音が入らないように、お布団の壁の中で録るんです。ドラムも毛布に囲まれて録りました。

智:俺は今回、初お布団でしたね。

Tohya:僕は最近ずっとお布団だな。むしろ徐々に布団が増えてきている気がする(笑)。最初はバスドラの前だけだったのに、最近はサイドとか後ろにまでお布団が…。しかも、おばあちゃんちにありそうな謎の柄なんだよね(笑)。

智:何柄だ!?っていうね(笑)。でも、その時に録った歌がTohya的にも一番良かったみたいで、お布団とそのマイクの組み合わせが採用になりました。

――歌詞が全替えになったのはなぜでしょう。

智:タイアップならではの意見の相違があって。タイアップをやるたびに同じことになるんですけど、その都度何回も書いてます。結構ぎりぎりまでかかっちゃって申し訳なかったですけど、噛み合わないと仕方がないですからね。

Tohya:智の世界観があるから、それをゲームに合わせるためにどこまで歩み寄るのかっていうのが難しいんですよね。

◆あいつ騙されやすいからなー。人がいいから(智)

――今作のアーティスト写真が解禁になったとき、Vifでもかなりの反響がありました。

Tohya:カラフルだからかな。昔に戻ったもんね。

智:2008年くらいにね。ヴィジュアル系だよねー。外国のファンから「vistlipだと思わなかった」って言われたし。でも楽しいですよ。青にピンクに…チェシャ猫みたい。

――今回も衣装は海さんが?

智:そうです。コンセプトは、“はき違えた新撰組”だって言ってました。はき違えたっていうのは、現代に新撰組が来ちゃったら、的な意味合いみたいですけど。

――なるほど。そして、MVは初のフルCGですよね。

智:そうです。何もしなくて良かったから、本当に楽でした。撮影時間は1人40分くらいだし。

Tohya:個人を撮って終わりだったからね。いつもは全員で撮って、2人で撮って、っていろんなパターンで撮るから時間がかかるんですけど、個人で何アングルか撮るだけだったから。あれを1回味わっちゃうと、大変なのはやりたくなくなっちゃうね(笑)。

――「Recipe」のようなMVはキツイですか。

Tohya:あれね…。公園の管理の人に撮影許可を取ったはずなのに、ドラムセットを川沿いに置いたら怒られて、一回戻したけどやっぱりそのシーンを撮るってことになって、アホみたいに何往復もして(怒)。

智:あれはキツかったね。あ、CGだったらブルーバック用のシートさえあればいいから「俺、その日NGっす。別日で!」とか言えちゃうな。

Tohya:そうだね。ただ莫大なマネーが動くけど(笑)。

全員:(笑)

――ところで今回の不思議な映像イメージはどなたの案なんですか?

智:あー…そうですよね…気になると思います。…海君なんですよ…。

――やっぱり(笑)。パーツがいかにも海さんらしいと思っていました。

智:こればっかりは電話でもして本人に聞いていただけるといいんですけど、今回のMVは、俺たちもわからないところがあって…。

――真相は海さんの頭の中ですか(笑)。そんな海さんは、今回のジャケットで、もうちょっとやりたいことがあったと言っていましたが。

Tohya:きっと、仕様のことだと思います。最近アルバム続きで色々できたから味を占めたんですよ。

智:あの野郎…無駄な金使おうとしやがって。予算まで考えてこそ現代のアーティストですよ。

全員:(笑)

――先ほど機材の話が出ましたが、海さんも機材をたくさん買っているんでしょうか。

智:海さんはね、いつもYuhに怒られてます。そんないらないの買うなって。ちょこちょこいらないもの買うなら貯めて必要なもの買えって言われてますね。

Tohya:でも、最近Yuhが優しくなって、「この機材やるよ」とか言ってますけどね。

智:でも、その優しさの裏で「自分色に染めてやろう」って思ってるかもしれないよね。

――海さんは綺麗に染まりそうですね。

智:あいつ騙されやすいからなー(笑)。人がいいから。

◆より上を見るようになったということ(Tohya)

――3曲目の「aim」はYuhさんとTohyaさんの合作ですね。

智:この曲は、デジタル面は全てTohyaで、Yuhがギターでデモを持ってきたんですけど、二人の要素がちゃんと入っていて、本当にいい合作だと思います。「aim」は、サウンド面や方向性が、これからシリーズ化していきたいものに1番近いんです。なので、歌詞も含みが多いというか、隠した感じにしているんですけど、これこそ始まりを告げるものになっているなと。

――王道でありつつ革新的ですね。

智:そうですね。長い間音楽をやっていると、自分たちの世界を大事にしすぎて、世界ができあがっちゃうんですよ。ミュージシャンにありがちな「自分たちはこれをやっていくべき」っていう逃げがうちらにも出始めていた気がして。アルバムごとの進化は自分たちでも感じているけど、誰々っぽい曲と俺の歌詞っていうパターンが決まってきていた気がしていたんです。でも「aim」はそれを払拭できる曲だなと。

Tohya:自分っぽい曲っていうのはわかりますね。「Period」も俺っぽいなと思うし。今回、Yuhと一緒に作ることで新たなステップが踏み出せると思ったし、前にも何曲かやったけど、Yuhが持って来たセクションに、俺が新たなセクションをつけたのは初めてだったから、今後もこの作り方でvistlipの新たな一面を出せたらいいなと思いますね。

――次のアルバムが楽しみになりました。

智:足がかりになる曲だよね。

Tohya:智がずっと、この曲は「第1弾だ」って言っていたんです。その時、曲のタイトルが決まっていなかったから、俺はずっと「THE FIRST」にしようって言ったんですけど(笑)。

智:斬新(笑)。

――この3曲で良いスタートを切った先は7周年ですが、結成時、7年後の自分たちはどんな風になっていると思っていましたか?

智:めっちゃ売れてると思ってました。みんな当時クソガキだったので(笑)。

Tohya:ハッピーなことしか考えてなかったよね(笑)。

智:全然努力してなくて、ミーティングでファミレスに集まって酔っぱらってたし。

Tohya:俺がワイン飲みすぎて酔っぱらってサイ●リヤのトイレにこもって瑠伊がキレたりね。

智:サイ●リヤで潰れるってマジないわ(笑)。あの頃Tohyaと一緒に住んだりしてたね。

Tohya:そうそう。智の家に入り浸って。当時はJUNOっていうでっかいシンセサイザーで曲を作ってたから、それを担いで行ってました。金はぶっとんだけどね。夜中まで寿司食ってアホみたいに金使ってたし。クソガキだったなー(笑)。

――そんな7年前あってのvistlipですよ。

智:そうですね。ビッグドリームを掲げて、今があるわけですから。今、バンドをやれているのは嬉しいことです。

――では、さらに7年後の野望は?

智:えー、考えられないですよ! だって、今やっと7年ですよ。この倍とかちょっとしんどいんですけど…。

――ワールドツアーをガンガン回っているかもしれませんよ。

Tohya:そうだね。日本の食事を食べつくしちゃったから、次は海外かも。

智:(笑)。確かにメンバー全員、海外に興味はあるんですよ。いろんなところに行ってみたいって言ってます。でもね、あんまり海外海外言うのも日本のファンが可哀想でしょ。僕たち日本のバンドなんで。とりあえず、今年、欲を持って生きようと思います。だって7周年の後、すぐ10周年ですよ。それまでに、少しくらい自分たちが納得したいんです。

――現状に納得していないんですか?

智:厳しいことを言ったら誰も納得していないと思いますよ。もちろん、トータル面では自信を持って出してます。でも、すごい先輩たちは一つくらい納得している部分を持っているはずなんです。それがほしい。そのために欲をもって頑張りたいですね。

Tohya:決して自信がないんじゃなくて、より上を見るようになったってことですからね。

智:vistlipはクオリティ高いっていろんな方に言ってもらえるし、自分たちも良いものを作っていると思うけど、自分たちは一つも納得していないところまで欲が出てきていて。自分たちの良さを欲が追い越しちゃってる状態なんです。だからまずは濃い1年にして、後悔が残らないようにしたいですね。

(文・後藤るつ子)


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<プロフィール>

智(Vo)、Yuh(G)、海(G)、瑠伊(B)、Tohya(Dr)の5人からなるロックバンド。2008年4月、ミニアルバム『Revolver』でデビュー。2013年7月7日にZepp Tokyoにて行われた6th Anniversary “TELESCOPE CYLINDER”はチケット即日ソールドアウト。7月17日に3rdアルバム『CHRONUS』をリリースし、12月4日にバンド初となるシングルのリード曲のみを収録したニューアルバム『SINGLE COLLECTION』をリリース。2014年5月より全国ツアー「Good vibes CIRCUIT Ⅱ」をスタートさせる。

■オフィシャルサイト
http://www.vistlip.com

【リリース情報】


LIMITED EDITION/CD+DVD<初回生産限定盤>
MJSS-09118~9
¥1,800+税

vister/CD+DVD
MJSS-09120~1
¥1,800+税

lipper/CD
MJSS-09122
¥1,200+税

『Period』
2014年4月9日発売
(発売元:マーベラスAQL/販売元:ソニー・ミュージック ディストリビューション)
vistlipの2014年第1弾シングル。タイトル曲はPSPソフト『幕末Rock』テーマソングに決定している。

【収録曲】
[CD]
01. Period ※幕末Rockテーマソング
02. Locoism
03. aim(【lipper】のみ収録)

[DVD]
【LIMITED EDITION】
ROUGH the vistlip『測定大好きvistlip』

【vister】
「Period」music video + making

★初回限定特典:トレーディングカードランダム封入(全10種類)
 ※vistlip メンバーの撮り下ろし写真