ヴィジュアル系×本格派ヴァイオリン――高い音楽性と演奏力を武器に唯一無二の音楽を生み出し続けるバンド「アイオリン」の魅力に迫る!
来たる2月6日に1周年記念ワンマンライブ「First Anniversary ONEMAN “Proof of Existence”」を行うアイオリン。丹念に作られたその楽曲達は一度聴くといつまでも記憶に残る不思議な魅力に満ちている。東京藝術大学器楽科を卒業という異色の経歴を持ち、ヴォーカリストにしてギターとヴァイオリン、そしてピアノを操るヒカリトをフロントマンに据え、悠(G)、レイス(B)、Seiya(Dr)という結束の固い4人で2018年を突き進む彼ら。初登場となる今回、ヒカリトとレイスにアイオリンというバンドについて話を聞いた。
◆絶対にクオリティを重視したバンドでいたい(ヒカリト)
――まずはバンド結成の経緯を教えてください。
ヒカリト:元々、僕とベースのレイスとドラムのSeiya君は同じバンドで活動していたんです。その時やっていたバンドは地下ではよくあるようなヴィジュアル系バンドで、今のようにヴァイオリンだったり独自のサウンドを意識していたわけではなかったんですよ。そこからそのバンドの解散後、紆余曲折を経てこの3人にギターの悠君が加入した今の4人編成になりました。僕自身は元々バンドでは上手ギターだったんですけど、色々思うところもあってヴォーカルに転向したんです。
――ヴィジュアル系のサウンドにヴァイオリンを取り入れるというのは珍しいコンセプトですよね。
レイス:他のバンドと違う味を出すために何ができるかを考えたときに、ヒカリトが長年やって来たヴァイオリンを取り入れてみることが一つのヒントになったんです。
――ヒカリトさんは東京藝術大学器楽科のヴァイオリン専攻を卒業していますが、最初からヴァイオリンをバンドに取り入れようとは考えていなかったんですね。
ヒカリト:バンド活動を始めた最初の頃の僕はちょっと捻くれていて、「バンドでは絶対ギター1本で勝負してやるんだ!」と思っていたんです。ヴァイオリンはバンドじゃなく仕事で弾くというスタンスでした。でも、エンジニアさんや様々な現場で会う関係者、メンバーにも後押しされて、自分が持っている技術は全てバンドのために惜しみなく使わなければ、と強く思って。今はヴァイオリンもピアノも、積極的に曲に取り入れています。今まで世の中にアイオリンがやっているようなサウンドはなかったと思うので、それを明確なコンセプトとして表現しているんです。
――ヴィジュアル系というジャンルを選んだのはなぜだったんですか?
ヒカリト:僕は3歳でヴァイオリンを手にしてから東京藝大を卒業するまでずっとクラシックを弾いてきて、卒業して最初の1年目はオーケストラのオーディションを受けたり、プロオケのエキストラの仕事や講師業もしていたんですけど、どうしてもバンドが好きで片時も頭を離れなくて。その悩んでいた時もレイスとロックバンドみたいなことをやっていて、お客さんは全くいなかったけれど、どうしてもバンドで大きな舞台に立ちたいという夢を諦められなかったんです。それで、ふと誰かが見てくれるかもしれないと思いYouTubeに「ギター弾いてみた」の動画を少しずつアップし始めました。SIAM SHADEさんやvistlipさんを始め、とにかくいろんなバンドの曲をコピーしては動画をアップしていました。そんな時、たまたまvistlipのYuhさん(G)がローディーを募集していると知ったんです。思い切って自分のYouTubeチャンネルのURLを送ったら「(ローディーを)やってみる?」ってご本人から連絡が来て。思えばそれがヴィジュアル系の世界に来ることになった大きなきっかけになるんでしょうか。バンドの将来的にはジャンルの壁やそういったものも超えた大きな存在になれたらいいなと思っています。
――Yuhさんがきっかけだったんですね。ヒカリトさんは、過去にvistlipの「Scapegoat」(2014年8月リリースのシングル『Jack』収録曲)や「BABEL」(2015年8月リリースのシングル『OVERTURE』収録曲)にヴァイオリンで参加し、最近では、Far East Dizainの最新シングル『Beyond These Walls』にも参加していますね。
ヒカリト:そうなんです。昨年の12月にLedaさんにお声がけをいただいて。FEDさんの音楽に関わることができて、すごく嬉しかったです
――Ledaさんに手紙を書いたそうですね。
ヒカリト:はい。たまたま共通のメイクさんがいらっしゃって、それを知った時にその方にお願いしてバンドのCDと手紙を渡していただきました。
レイス:「これ、渡してください!」って言ってね(笑)。
ヒカリト:Ledaさんのギターは昔からずっとリスペクトしていてフレーズもたくさんコピーしていたので胸が熱くなりました。
――お二人ともDELUHIがお好きなんですよね。
ヒカリト、レイス:大好きですね!
レイス:うちのバンドのメンバーは全員がDELUHIを通っていますから(笑)。
――それにしても、アイオリンの曲はキャッチーで、1度聴くと耳に残るものばかりで驚きました。
レイス:ありがとうございます! ヒカリトが曲を書いているんですけど、メロディにはかなりこだわっているんですよ。
ヒカリト:サビのメロディラインはしっかり説得力があって、耳にリフレインするようなメロディを、こだわって音符を選んでいます。
レイス:ベーシストとしては、楽曲に一番大切なメッセージ性やメロディを消さないラインを作ることを心がけつつ、自分がステージ上では言葉で発信できない分、パフォーマンスで見せられたらなと思っています。
――楽曲制作において、バンドサウンド+ヴァイオリンという組み合わせに難しさはないのでしょうか?
レイス:実はすごくナチュラルに馴染むんです。
ヒカリト:むしろ俺達の楽曲からヴァイオリンが抜けたら、きっと変な感じがするよね(笑)。ヴァイオリンというと、パッと見で飛び道具的に捉えられがちなんですけど、自分がずっとクラシックで培って来たこの楽器を軸に据えながら、伝えたいメッセージとメロディを大切にした曲を作っていきたいと思っていて。そして、絶対にクオリティを重視したバンドでありたいと思っているんです。ヴァイオリンはバンドのコンセプトではありますが、あくまでそれが楽曲をより強く引き立たせるものにしたい。ピアノもそういった気持ちで弾いていますね。
レイス:だから、無理やり楽曲の中に取り込んだ感はなく、ここぞというところに自然に入っているのだと思います。
――でも曲はちゃんとキャッチーですよね。
ヒカリト:そこは外せないところなんです。僕らとしては、まずは一度曲を聴いてもらいたいという思いがあって。楽曲がコアな路線になりすぎたら、やっぱり敬遠されがちになってしまうと思うし、あくまで聴いたときにスッと心に響くような、真っすぐなサウンドであることを忘れずに、音楽ファンが聴いた時は細かいところまで抜かりないな、という音楽を作りたいと心がけています。
レイス:入りやすいけど、飽きづらくさせるような。
ヒカリト:そうだね。聴くたびに一曲一曲新しい発見があるんじゃないかな。「よく聴くと、ここで小さくピアノが鳴っている!ここにアコギが入っている!」等々、色々な仕掛けがしてあります。
――ヴィジュアル系でヴァイオリンというとSUGIZOさんが思い浮かびますが、違うものを作るということは意識していますか?
ヒカリト:LUNA SEAさん(SUGIZOさん)はどちらかと言えば効果音的な要素でヴァイオリンを取り入れられていることが多いと思うので、アイオリンが目指すヴァイオリンの取り入れ方とはベクトルがまた違うのかなと考えています。LUNA SEAさんの楽曲に取り入れらているヴァイオリンの響きが独自の世界観を作り上げているように、僕たちもまた独自のサウンドで世界観を表現したいと思っています。ヴァイオリンを楽曲に入れたから、といって同じようなサウンドになるとは限らない、と思います。
レイス:それと、これはそう思われてしまいがちなんですが、ヴァイオリンが入っているからといって耽美系には寄らないようにと思っています。メッセージ性の強い、激しいロックサウンドの中にヴァイオリンを入れるというのが僕らのサウンドの軸になっているんです。
――さらに、歌詞がとても伝わりやすいです。中でも「Tear In The Rain [Piano Acoustic Ver.]」は実に文学的で美しい歌詞でした。
ヒカリト:ありがとうございます。歌詞に注目してもらえるとやっぱり嬉しいですね。儚い物語の情景が見えてくるような、そういったものを表現したかった歌詞です。
――さらに、色々な曲のピアノアコースティックVer.や、ライブで演奏された「Faded」のアコースティックVer.では、原曲からまたガラリと表情を変えているのが面白いですね。
ヒカリト:アコースティック然り、激しいサウンド然り、同じ楽曲でも180度違う見せ方があるということを提示していきたいし、そういった切り口で様々なバージョンを聴いてくれた人がより楽曲を好きになってくれたら嬉しいです。
レイス:それが自分たちの武器でもあるよね。
ヒカリト:そうだね。そして、そういったアレンジを外に頼まずにあくまで自分たちで納得したものを作るというところが大事なポイントなんです。
――自分たちだけでできると違うものですか?
レイス:外部の人を一度挟むことによって、どうしても本当に伝えたいことが変わってしまうこともあるじゃないですか。でも、自分たちだけでやることによって、しっかり納得したものができるというのはあると思います。
ヒカリト:全部を自分たちで仕上げるから、方向性がブレないというのが一番のメリットですね。僕自身色々なストリングスやアレンジの仕事をしているからこそ思うことでもあるんですけど、自分たちは今、“この4人で考えたものを自分たちで答えを出してそれを表現する”ということにこだわっているんです。今の段階では自分たち4人で目指すサウンドを完結させたい。そして将来、世界へとこの音楽が向かった時に、角度を変えていろんな人に加わってもらったとしたらそれは面白いんじゃないかなと思っています。
――バンドとしての目標はありますか?
ヒカリト:ほとんどのバンドが心のどこかで「あそこまでは売れない」と思って諦めている部分があると思うんですけど、XさんやLUNA SEAさんのような、誰もが知るようなクラスの大きな存在へ、たとえどれだけ時間がかかっても僕たちは行きたいと思っています。そこまでたどり着く近道や抜け道なんてないから、地道に一つ一つできることを頑張るしかない。そのためにもまず2018年はたくさんの人にアイオリンというバンドの存在を知ってもらいたいので、いろんなイベントに出たいし、枠組みに囚われない対バンもしていきたい。最近嬉しいことに、同じようにヴァイオリンを使ったり取り入れている他のジャンルのバンドと対バンをさせていただくことがあるんですけど、他ジャンルも巻き込みつつ、こういう音楽をやっているバンドだって日本にいるんだぞということを広めていきたいです。
◆お客さんにライブならではの熱い思いを受け取ってもらえたら(レイス)
――アイオリンのライブの魅力は何だと思いますか?
ヒカリト:音源を聴いてくれた子たちはきっと、「これをどうやってライブでは再現しているんだろう」と考えてると思うんです。でも、僕たちがライブで伝えたいことは、「実際にヴァイオリンを弾いているバンドだよ」ということではないんです。もちろんそれも大事な要素ではありますが、4人が上を目指す姿勢の本気度がお客さんに感じ取ってもらえるように、そして各楽曲が持っているメッセージ、俺たちが思っていることをストレートに伝えたい。だから、ライブでは歌詞もより大事にしながら、メッセージ一つ一つを届けたいなと思っています。ライブは、音源とはまた違った生き物でありたいと思っているんですよ。ただ音源を再現するだけのライブはしたくない。プレイリストを流しているだけのライブがやりたいわけじゃない。そこにはメッセージ性の強い、ライブに来た子が「このバンド良かったな」と少しでも思えるような、何か一つ、熱いものを持ち返ってもらえるようなライブがしたいと常に思っています。
レイス:音源と同じような感じではなく、お客さんにちゃんとライブならではの熱い思いを受け取ってもらえたらと思いつつパフォーマンスしています。
ヒカリト:パフォーマンスと言えば、1月13日の池袋EDGEでのライブでベースの音がトラブルでワンコーラス分ぐらい出なくなっちゃったんですけど、その時にレイスがベースを置いてステージを練り歩き煽りに行くというとてもメッセージ性の強いパフォーマンスを見せてくれて(笑)。
レイス:ずっと音が出ないのはさすがにまずいなと思って、音が出るまでベースをスタッフさんに預けて煽りに行きました(笑)。
――アグレッシブですね!
レイス:そういう面でも、音源のイメージとは、180度違うライブをしていると思います。
ヒカリト:ライブを観た人からは、「アイオリンて、こんなに激しいんだ!」みたいな声をもらうこともありますね。皆さん、ぜひ一度アイオリンを生で観に来てください!
――「Remember The Name」のライブ映像では、ヒカリトさんがヴァイオリンからマイクに持ち換え、さらにフライングVへ…と目まぐるしい展開にも圧倒されました。
ヒカリト:(笑)。あれも気が付けば定着していたんですよ。パートが多いから、ライブではどうやって再現するかという難しさもありつつ。やっぱりバンドですし、ソリッドさを失いたくないという葛藤もないと言えば嘘になります。結果色々やってますが…(苦笑)。
レイス:ヒカリトがすごく忙しそうに見えてしまうという印象が大きいですけどね(笑)。
――さらに2017年8月に行われたアイオリン単独公演「Quartet Night」ではヴァイオリンソロでイザイの「無伴奏ソナタ第3番」を演奏したんですよね。
ヒカリト:そうなんです。この曲は超絶技巧を要するクラシックの難曲なんですけど、アイオリンというバンドをきっかけに、今度はクラシカルな面やヴァイオリンという楽器そのものの面白さもまた伝えられたらいいなと思っていて。そういう広がりも一音楽家としては嬉しいので、見せ方の工夫としてこだわっているところです。
――イザイはベルギーのヴァイオリニストですが、随分珍しい楽曲を選んだなと思っていました。
ヒカリト:よくご存じですね!ヴィジュアル系のライブでこの曲を弾いた人は、きっと僕が最初だと思います(笑)。ちなみに2017年11月に行われた1stワンマンライブ(新宿clubSCIENCE アイオリン 1st ONEMAN「Crescent Moon」)の際は、登場SEがわりにクラシックの名曲であるグノーの「アヴェ・マリア」をしっとりと聴いてもらったりもしました。
――アイオリンのライブは他にはない驚きがたくさんありそうです。2017年は精力的にライブ活動を展開してきましたが、2018年も2月19日に高田馬場CLUB PHASEでESPミュージカルアカデミー 学生主催の「咲かぬなら咲かせて魅せようバンドギャル」が学生無料、一般¥1,000という破格のチケット代で、さらに2月27にはレイス&Seiya合同生誕主催 「The Future is in Our Hands」が決まっていますね。
ヒカリト:こういう機会にもアイオリンをどんどん多くの人に知ってもらえたらと願っています。いろんなアーティストと対バンをしていく中でまた広がりが生まれていけばと思っています。
――そして2月6日にはいよいよ1周年ワンマン(First Anniversary ONEMAN ”Proof of Existence”)が新宿club SCIENCEで開催されますね。「存在の証明」を意味するライブタイトルが冠されています。
レイス:タイトルの通り、ここにこんなバンドがいるぞ、ということを伝えたいです。1年前の全く同じ日に、同じライブハウスで始動主催ライブをやったんです。今回、同じ場所でやるからには、そのときを超えられるような、僕たちはこれだけ成長したんだよという成長が見せられるライブができたらと思っています。
ヒカリト:1年やってきて、ここから新たなスタートを切るという気持ちでいます。ワンマンライブという空間で、アイオリンの音楽はここにしかない唯一無二のものだということを知ってもらいたいですし、仲間としての強い結び付きがあるこの4人が同じ気持ちで楽曲を届けることに意味があると思っています。そういったものをワンマンでは余すことなく届けていきたいです。
レイス:まずはとにかくアイオリンの音楽に触れてみてほしいので、是非YouTubeでMVを見ていただきたいですね。
ヒカリト:最近、「YouTubeで見たのをきっかけに、実際のライブを観に来ました」という子が増えましたし、一人で来てる子も多いんですよ。友達や家族もどんどん巻き込んでほしいですね。
――音源とライブでまた違った楽しみがありそうですね。
レイス:そうですね。アイオリンの音楽はパッと見で敷居が高いと思う人がいるかもしれないですけど、ライブではすごく熱いものを届けているのでぜひ観に来てください。
ヒカリト:2018年は、シーンの台風の目になれるような強いバンドになりたいと思っています。「哀愁のヴァイオリン」というコンセプトを掲げる僕たちにしか表現できない、この唯一無二の音に触れてほしいので、ぜひYouTubeなどでも視聴してもらって、そしてまずは2月6日の1周年ワンマン、ここを今後の飛躍に向けての序章としたいと思っているので、ぜひ一度ライブハウスに足を運んで、アイオリンはこんなライブをしているということをその目で観ていただけたらと思います。よろしくお願いします!
(文・後藤るつ子)
アイオリン
<プロフィール>
2017年2月6日始動。東京藝術大学器楽科を卒業し、作詞作曲からアレンジまで全てを手掛けるヒカリト(Vo&G&Violin&Piano)を中心に悠(G)、レイス(B)、Seiya(Dr)によって結成された4ピースヴァイオリンラウドロックバンド。ヒカリトは様々なバンドの音源やライブにヴァイオリニストやアレンジャーとして参加している他、FEST VAINQUEURのHALやex.BLESSCODEのmasayaのサポートも務める。始動同日1stアルバム『Tear In The Rain』をリリース。2018年2月6日には1周年ワンマン「First Anniversary ONEMAN ”Proof of Existence”」がShinjuku club SCIENCEにて開催される。
■オフィシャルサイト
http://aiolin.com/
【リリース情報】
『From Here』
2017年7月12日(水)発売
(発売元:アイオリン)
【収録曲】
01. From Here
02. Horizon
03. Night Howling
【ライブ情報】
●First Anniversary ONEMAN“Proof of Existence”
2月6日(火)新宿club SCIENCE
●「咲かぬなら咲かせて魅せようバンドギャル」
2月19日(月)高田馬場club PHASE
[出演]アイオリン / マゼラン
●アイオリン レイス&Seiya合同生誕主催 「The Future is in Our Hands」
2月27日(火)池袋BlackHole
[出演]アイオリン / 紅ク染マッタ記憶 / タケルセッション / DatuRΛ / LAVANS / LIM