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――さっきRUKIさんから「辛い」という言葉が出ましたが、それは昔の曲だからなんでしょうか?
RUKI:大変で辞めたくなったのは「reila」なんですよ。うまく歌える気がしないし全然終わらなくて。この曲だけテンポを落としたんです。
麗:「絲」もテンポが落ちてるよ。
RUKI:あ、そうなんだ! 逆に「絲」は全然歌ってなかったから、新曲みたいな感じでした(笑)。今回、昔の曲を当時歌った通りにやると変な部分が色々あったんです。メロディがフワフワフワフワしていたり、ハモリを聴いたら全然違ったり。下手だったし無茶苦茶なんですよね。それもあって聴こえ方もかなり違うと思います。あと今回、スキルで見せるような、「上手くなったんですよ、僕」という歌い方をするのはやめようと思って。再録というと、何となく元の曲よりシンプルになっているイメージが強いんですけど、今回はどちらかというとプラスしていく感じでニュアンスを付けました。あまりわかるような部分ではないですけどね(笑)。
――今回、曲の世界観がよりクリアになって歌詞もまっすぐ入ってくる感じがしましたし、声の深みが格段に増していて、聴いていて心地よかったです。
RUKI:昔の声に比べると格段におじさんになっているなと(笑)。
麗:キーが下がったわけじゃないけど低く感じるよね。
RUKI:声が太くなっているんだろうね。
――REITAさんは今回、「俺のベースを聴け!」という箇所はありますか?
REITA:いやいや、僕はヴォーカルを聴いて欲しい一心で弾いてますから。歌のために存在してますからね、もちろん。
RUKI:よく言うよ! あんなにヴォーカルのローを持ってったのに(笑)。
REITA:(笑)。ベースは「D.L.N.」のソロで弾き方を変えました。でも派手にならないようにしたいと思ったので、フレーズがちょっと違う程度ですけど。そこは気に入っていますね。ちなみに俺も一番時間がかかったのは「reila」です。ドラムと弾いてみても合わないんですよ。家で録ったんですけど、すげー時間がかかりました。本当に合わないし、馴染まないし…。
――何がいけなかったんでしょう?
戒:…僕ですかね。
REITA:いや、戒が悪いんじゃないんですよ。ただ息が合わなかったってだけで。
戒:15年目にして息が合わないって…!
全員:(笑)
――そんな戒さんは、特に思い入れのある曲はありますか?
戒:一番雰囲気が変わったのは「体温」ですね。構成自体は変わってないんですけど、前よりも大きいフレーズに変わったので。時間もこの曲が一番かかった気がします。
麗:俺は「PLEDGE」は楽しくやれたんですけど、「体温」が結構辛かったですね。新しいアプローチをしてもハマらなくて、結局昔のアレンジがいいのかなと思った曲でもあります。しかも最後に音圧を詰めるときに、原因不明なんですけどどうしても音が破綻しちゃう部分が出てきて。何とか収まるようには持っていったんですけど、マスタリングで他の曲と同じように色付けしてもらったら、案の定その部分が破綻した状態になっていたんです。そんな不思議なこともあって、もっと突っ込みたいのに突っ込めない、そういう曲でしたね。
――試行錯誤の上に完成した作品なんですね。麗さんは、今後もMIXをやりたいと思いますか?
麗:どうだろう。でも今回、普通にMIXをしたというよりは、音作りの延長だった気がするんです。常々やっていることの風呂敷がちょっと広がっただけの話だなと。結局これからもやることは変わらないだろうし、例えば誰かにその役割を預けたとしても自分も一緒になって参加するつもりではあるし。それは昔からそうで、エンジニアさんがいた時もギターの音は常に提案しているんですよ。だから、今回もその延長で手を出してみたという感じなんです。
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――今回のジャケット写真は実際に撮影に行ったそうですね。
REITA:そうなんです。撮りに行ったとき、すっげー寒くて。
RUKI:被写体が自分たちじゃなくてよかった。耐えられない寒さでしたからね。
――前作『TRACES BEST OF 2005-2009』のジャケットを飾ったブランコのモチーフがそのまま活かされています。
RUKI:今回、『TRACES BEST OF 2005-2009』と同じブランコをもう1回作り直したんですよ。最初はネオン管でブランコを作ろうとか、しゃれた方向に向かっていたんですけど色々無理になったりして、結果あの方向性になりました。過去の曲を収録しているから12本の十字架で死を表しているんです。そこをファンの方が汲んでくれたらいいですね。そういうことを踏まえて聴くと見方も変わると思うので。
――こういうテーマはあえて教えないという方もいるので、教えていただけて嬉しいです。
RUKI:わかりますよ。昔は俺らも歌詞に対することは言わなかったし。『DIM』(2009年リリースのアルバム)の頃なんて「いや、言いたくないです」みたいな感じだったし(笑)。
――インタビューする側としては「言ってくださいー」と切に願っているんですが…
RUKI:「関係ねー」みたいな(笑)。
――今回はファンの方々にジャケット写真の真意が伝えられて本当によかったです。ところで、この作品でMVは撮らないんですか?
一同:いやー…
葵:そんな金がどこにあるんですか。
――REITAさんの貯金とか…。
葵:なるほど!
麗:それなら全曲撮れるね!
RUKI:お奉行!
REITA:いや、ないから!
全員:(笑)
RUKI:とは言え、MVを撮っていたら終わらないし、アルバムは出なかったですね。
REITA:しかも季節的に寒い日に撮らないといけないから、良いものになるわけがないってわかっているし。
麗:もうMVって聞いただけで気分が…
RUKI:だよね。「映像」って言った瞬間にウッてなる。
全員:(笑)
――ところで、先日まで募集していた3月10日の十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」のセットリストの投票が済んだそうですね。
RUKI:ありがたいことに、かなりたくさんの方に投票していただきました。
――REITAさんの「意外な曲が上位にあって我々を悩ませてくれてます(笑)」という言葉が大変気になっているのですが。
REITA:そうですね。「これ知ってるの?」みたいな曲が上位だったり。
RUKI:セットリストはそんな上位から抜粋した感じになります。すごくプレミアム感のあるセットリストになると思いますよ。レアじゃない曲がないもんね。
麗:オールレアだからね。
RUKI:「初めて聴いた」のオンパレードだと思います。
――10周年ライブ(2012年3月10日に幕張メッセで行われた“THE DECADE”)のセットリストもとても素敵な感じでしたが。
RUKI:あんなの比にならないですよ! セットリストの前半は確かにそうなんですけど、後半は割と普通だったし、今回のセットリストとは曲数的にも比にならないです。
葵:レア過ぎて曲をもう一回データに起こしちゃうくらいですからね。
RUKI:耳コピ不可能ってやつね(笑)。
――すごいレア感が伝わってきますね。ところでこのライブのタイトル「暴動区 愚鈍の桜」にはどういう意味合いがあるんでしょうか?
RUKI:昔「暴動区」っていうカップリングツアーを回ったことがあったんですよ。
――ヴィドールと回った2003年のツアーですよね。
RUKI:そうそう。自分が思うガゼットの過去の良さは「暴動区」と「桜」が付くなと思ったんです。それで、「○○の桜」か「○○の哀歌」というタイトルにしようと思ったんですけど、昔、自分たちが愚かだ、クソだっていうのを売りにしてた時があったから、その感じを活かして「愚鈍」という言葉をつけました。語呂が良かったし、一つの映画のような感じにしたかったんです。
――〈愚鈍〉と〈桜〉は、いずれも『14歳のナイフ』の歌詞に出てくる言葉ですよね。
RUKI:そうです。〈愚鈍〉って言葉を使っているのはあの曲くらいですし。とは言え、15周年だから14歳じゃないし、そこはあんまり関係ないですけどね(笑)。
――「暴動区」という言葉通りのライブになるんでしょうか。
RUKI:いや、「暴動区」とは言っても「暴れる」って感じじゃないんですよ。
葵:みんな勘違いするんですよね。過去のガゼットといえば、すごく暴れるみたいな。
RUKI:過去を美化している部分は絶対あるとは思うんですよ。でも、それを体現したことは絶対にないはずなんです。だから、何とかこれを昇華させたいなと思っています。
――それにしても、過去のインタビューで13周年が不吉な年だという話をお聞きしたと思ったら、あっという間に14周年も終わり、いよいよ15周年に向かいますね。14周年はどんな年でしたか?
RUKI:本当に「DOGMA」な年でしたね。
REITA:13年の延長だったなと。15周年は不吉はやめたいですけどね。やめたくてやめられるのかわからないですけど(笑)。
麗:でも、どこまで行っても陰キャだから、ウェーイっていうわけにはいかないよね。
REITA:最近その言葉使うよね。陰キャとか陽キャとか(笑)。
――意外な言葉が出てきました(笑)。では最後は戒さんに15周年の展望を語っていただき、ビシッと締めていただきましょう。
戒:15周年として自分たちも楽しみつつ、次のことに手をかけていく年になると思います。良いテンション感で持って行ければいいなと。今回の15周年のバラードベストがあって、「愚鈍の桜」があって…この15年目があったからこの作品ができたと思えればいいなと常々考えています。そういう意味で楽しんでいけたらいいですね。
葵:全く同じだわ。それがみんなの総意ってことで…。
RUKI:Me tooです。
(文・後藤るつ子)
the GazettE
<プロフィール>
RUKI(Vo)、麗(G)、葵(G)、REITA(B)、戒(Dr)。デビューより一貫してセルフプロデュースを貫き、妥協なく追求したハイクオリティなサウンドが国内外で高く評価され、2010年12月には東京ドームライブを成功させる。2015年8月、アルバム『DOGMA』をリリースし、全国ツアーを開催。2016年2月、国立代々木競技場第一体育館にてツアーファイナル「LIVE TOUR 15-16 DOGMATIC – FINAL – 漆黒」を行った。2017年3月10日には国立代々木競技場第一体育館にて十五周年記念公演“大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」”を行い、4月からはHERESY LIMITED TOUR17 十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」追加公演を行う。
■オフィシャルサイト
http://the-gazette.com
【リリース情報】
『TRACES VOL.2』
2016年3月8日(水)発売
(SMR)
【収録曲】
01. 枯詩(写真集「Verwelktes Gedicht」収録)
02. Cassis(8thシングル)
03. D.L.N(2ndアルバム「NIL」収録)
04. CALM ENVY(3rdアルバム「STACKED RUBBISH」収録)
05. reila(7thシングル)
06. UNTITLED(5thアルバム「TOXIC」収録)
07. WITHOUT A TRACE(14thシングル「DISTRESS AND COMA」収録)
08. 紅蓮(12thシングル)
09. 白き優鬱(4thアルバム「DIM」収録)
10. PLEDGE(18thシングル)
※初回限定盤のみ収録
11. 絲(ベストアルバム「大日本異端芸者的脳味噌逆回転絶叫音源集」収録)
12. 体温(2ndアルバム「NIL」収録)
【ライブ情報】
●十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」
※SOLD OUT
3月10日(金)国立代々木競技場第一体育館
●HERESY LIMITED TOUR17 十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」追加公演
4月12日(水)Zepp Tokyo
4月14日(金)仙台PIT
4月20日(木)Zepp DiverCity(TOKYO)
4月24日(月)Zepp Nagoya
4月26日(水)Zepp Osaka Bayside