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Dが語るオーストラリア森林火災へ向けた『ACACIA ~Pray For Australia~』『Hard Koala』、コロナ禍における様々なアクションの真実

新型コロナウイルスの感染拡大により世界中が深刻な事態にある昨今、Dは様々なアクションを起こしている。オーストラリアの森林火災へ向けたチャリティーソングとして、シングル2作『ACACIA ~Pray For Australia~』『Hard Koala』の同時リリースと、日本初となるダウンロード&サブスクリプション楽曲収益からの自動的な寄付プロジェクト、同様のシステムを活用した日本ユニセフ協会への寄付プロジェクトとライブハウス応援企画、さらに全世界へ向けてエールを送る新曲「Hang in there」の発表、ウェブストアイベントの開催。コロナ禍におけるバンドの現状と数々のアクションについて話を聞くと、Dというバンドの真実が見えて来た。そして、彼らが思う音楽業界の未来とは――。

――今回はリモート取材ですが、この自粛期間中に新たに始めたことや変化したことはありますか?

ASAGI:こういうZoomなどのオンライン会議システムを使うことも、この期間中に始めたことですし、取材にしても打ち合わせにしても、やっぱりリモートワークは多くなりましたよね。移動時間や、お互いのスケジュールを合わせることを考えると、これはこれで割と良いことなのかなと。今後も上手く使っていけたらと思います。

HIDE-ZOU:今はオンラインでやらざるを得ない状況ですけど、これをきっかけに今後も発展していくでしょうし、何より時間の短縮ができるのが良いですね。

HIROKI:自分は自宅で電子ドラムを使っていて、「Hang in there」はそれでレコーディングしました。宅録自体初めてだったんですけど、電子ドラムの知識も増えてデジタルに強くなったかなと思いますね。

Tsunehito:僕はオンラインサロンでやらせてもらっているコンテンツを、どうやったらもっと音質を良くできるかなとか、こういう状況になってから、より意識してもっと突き詰めようと機材や接続方法などを調べていますね。

Ruiza:僕もツネと同じように、オンラインサロン用にデジカメで撮影をしてみたり、映像や音について、どうやったらより良いものになるか研究していますね。結構難しくて試行錯誤しています。

ASAGI:オンラインサロンの必要性、重要性が一気に増した感じがしますね。この自粛期間中、メンバーは結構オンラインサロン中心の活動だったりするんです。

――Dとしては以前からオンラインサロンを始動していて良かったですよね。

ASAGI:本当に。1年以上前からやっていますけど、5Gとかも含めてオンライン化の加速は以前から予測していたことではあって、いずれは主流になるのかなと思っていたんですけど、コロナ禍で急激に加速した気はしますよね。

――Dは2023年の20周年に向かう動きの最中でもあるわけですが、新型コロナウイルスの影響で活動予定が大幅に変わってしまったのではと。

ASAGI:もうガラッと変わりましたね。ただ、このコロナ禍はDに限らず全ての人が大変な状況の中、ピンチはチャンスとは思えないので、ピンチはクエスチョン、クイズみたいなイメージで、日々それにベストな答えを出していくことが大切なんじゃないかなと僕は考えていますね。やっぱり前向きに考えていかないと、乗り越えていけないと思うので。今はたとえライバルであっても、有益な情報を共有して、一緒にこの音楽シーンの中でウイルスという強敵と戦っていかなきゃいけない状況だと思うんですよ。なので、前を向いて道を開いていくという強い意志を持っている人たちは、なるべく大きな声を出して旗を振ったほうがいいと思いますね。皆がネガティブになって下を向いている状態だと、旗を振るだけでは見つけてもらえないし、声が大きいだけではどこにいるのかハッキリわからないですから。

――このコロナ禍で、Dは様々なアクションを起こしてきましたが、まずは3月27日情報解禁で、オーストラリアの森林火災へ向けたチャリティーソングとして、シングル2作『ACACIA ~Pray For Australia~』(以下、『ACACIA』)、『Hard Koala』の同時リリース(4月6日先行配信、リリースは4月29日から5月8日に延期)と、日本初となるダウンロード&サブスクリプション楽曲収益からの自動的な寄付「#あなたの1再生が自然と命を救う」プロジェクト始動を発表しました。これはかなり前から動き出していたのでしょうか?

ASAGI:そうですね。かなり前から動いていました。森林火災のニュースを見て、何かできないかなと思いながらも、悲しみの中ですぐには曲を作ろう!という風には思えなかったんですけど、ある日、焼けた黒い木から新しい芽が出てきている画像を見て、すごく希望を感じたんですよね。その時に感じた思いを込めた曲を、チャリティーソングとして作りたいなというところから始まりました。森の復活には100年くらいかかると言われているし、僕らだけでは微力ではあるので、なるべく持続的に支援できないかなと考えた時に、2019年秋頃から音楽配信サービスのバージョンアップで自動分配できるシステムができていたので、それを寄付に活用できるんじゃないかと思い付いたんです。元々配信サービスには寄付というものはなかったんですけど、サブスクで聴けば聴くほど寄付できるというシステムにすることが可能なんじゃないかと。まずは配信サービス側に寄付に使うことのOKをもらって、その後WWFジャパン、次に日本ユニセフ協会に連絡して、受け皿になってもらえるか相談したのがコロナ禍になる前でした。電話やメールでの何十回という細かいやり取りをして、ようやく立ち上がったという流れです。ファンもチャリティーとなると構えてしまう人もいるかな?とも思ったので、なるべく気軽に、ただ聴くだけで参加できるという風にしたかったんですよね。

――この仕組みを成立させるまでに時間がかかったわけですね。

ASAGI:前例のないイノベーション的なことだったので、時間はかかりましたね。でも、仕組みはできたので、例えばここから誰かがこの仕組みを活用するには断然早いと思います。なので、環境問題や動物、または日本ユニセフ協会に寄付したいというアーティストの方がいらっしゃったら、ぜひ参加していただきたいなと。これはDだけのプロジェクトではなくて、今の時代に適している新しい寄付の形だと思いますね。自分たちもこの活動をすることで、環境や動物、命が少しでも救われるという目標があるほうが日々頑張ろうとより強く思えるようになった部分もあります。

――この発表の時期と新型コロナウイルス感染拡大という状況が重なってしまったことに戸惑いはありましたか?

ASAGI:何も知らない人からすれば、このコロナ禍にオーストラリアや子どもたちへの支援の企画が被って立ち上がっているので、こういう場でのタイムラグの説明は少し必要なのかなという思いはありました。コロナ禍で自分たちが最初に起こしたアクションは、もちろんメンバー、スタッフ、ファン、会社のことを一番に考えた行動だったので、まずはライブの延期、そしてマスク不足を予測してファンクラブ会員全員にプレゼントしようと考えてすぐに手配したり、さらにオリジナルマスクを作ったり。こういう状況なのでなるべく様々なコストも抑えたいということで、会報や通販と一緒にマスクを送ることでマスク単体での送料を0円にしたり、そういう細かいことも含めて色々なことをやって、同時にライブハウス支援の企画も立ち上げました。発表の順番的には、WWFジャパン、ライブハウス支援、日本ユニセフ協会という順でしたけど、実際にコロナ禍になってから動いたのは、身近な存在であるファンに向けた様々なことと、ライブハウス支援だったんですよね。もちろん医療機関への寄付も考えて、実は同じように自動分配の形を提案しているんですけど、とても興味は示していただきつつも、皆さんものすごく忙しいので今は保留になっているという状況です。

――そうだったんですね。ちなみに、DのFC会員へのマスク配布の発表と、政府のマスク配布の発表が同日だったんですよね。しかも同じ2枚で。

全員:(笑)

ASAGI:あ、そうでしたね(笑)。本当にたまたま被ったんですけど、このことに関して、政府とヴィジュアル系バンドが同時にマスク2枚配布を発表…というライターさんのツイートが割とバズったみたいなんですよね。それで、「そいつらはどこからマスクを手に入れたんだ?」とか「どうせ買い占めだろ?」とか言っている人もいたみたいで。普通に通販で売っていたものを頼んだだけなんですけどね。やはり、何も知らない人は一つの側面だけで判断するんだなということを改めて感じたし、オープンのSNSでのツッコミ文化というか、揚げ足取りみたいなものが多いんだなと思いましたね。だから改めて考えさせられたのは、世の中に対して色々と思うことがあっても、批判をするならなるべく深く真実を知らなければダメだし、ある一つの物事だけで判断するのは本当に良くないなということですね。

§

――作品について伺っていきたいと思います。まず、2作品にした経緯というのは?

ASAGI:最初は『ACACIA』だけの予定だったんですけど、2月のルイちゃんのバースデーライブのリハ時に、「Hard Koala」という曲を作ろうと思っているとメンバーに話しました。コアラは怒ったら割と怖かったりするので(笑)、そういうコアラの強い一面を描きたいと思ったのと同時に、環境破壊に対する怒りみたいなものをメッセージとして伝えられたらいいなと。その時点では、いつかそういうものが作れたらいいなという感じだったんですけど、その後コロナ禍になって、自宅で集中して急ピッチでデモを仕上げたところ、『ACACIA』と同時リリースになりました。自粛期間がなかったら、『ACACIA』の後に『Hard Koala』をリリースすることになっていたと思います。

――元々は異なるリリース時期を想定しつつも、「ACACIA」と同様に「Hard Koala」も支援プロジェクトの楽曲という前提で制作したわけですね。

ASAGI:そうですね。同じくチャリティーソングにしたいなという思いがありました。ただ、ハードコア+コアラということで激しい曲なので、WWF的に大丈夫かなという心配は多少ありましたけど、結果、大丈夫でした(笑)。

――(笑)。それにしても、「ACACIA」はまさに名曲ですね。永遠に聴いていられるなと思って。

ASAGI:おー(笑)、ありがとうございます! めっちゃ嬉しいですね! ぜひサブスクで聴いて、思いを一緒に届けましょう!

Ruiza:よろしくお願いします!

――皆さん、最初にASAGIさんのデモを聴いた時はどのような感想を持ちましたか?

Ruiza:オーストラリアの森林火災チャリティーに向けての話をASAGI君から聞いていたので、その思いがすごく伝わって来る楽曲だなと思って、グッと来ましたし、良い曲だなと思いました。

HIDE-ZOU:ASAGIさんがイメージ映像を作ってくれて、視覚と聴覚で包まれるような温かい曲だなというイメージと、メッセージ性がすごく強い曲になるんだろうなと感じました。「こうできたらいいな」ではなく「こうするんだ!」という強い意志を感じたので、素晴らしいなと思いましたね。完成した今でも聴いて感動できて、森林火災に限らず、未来の地球環境に対してもすごくメッセージ性が強いんじゃないかなと思いますね。

――デモ段階から完成した現在も、ずっと変わらず感動が続いているんですね。

HIDE-ZOU:名曲というのはこういうことなのかなと思いますね。

Tsunehito:テーマを聞いてからデモを聴いたんですけど、悲しさもありながら愛で包まれていて、すごく温かさもあるなと。森林火災についてはニュースで見たくらいしか知らなかったので、もっと深く調べてみたら被害はものすごいものでした。そういうことも自分の中で思いながらまたデモを聴いてみたら、曲の深さ、偉大さ、愛に溢れている感じが、とてつもなく大きく感じたんです。完成した作品を聴いてもやっぱりそう感じますし、それを皆に届けられることが嬉しいですね。

HIROKI:本当にデモの段階から壮大なスケール感の楽曲だったので、ドラムアレンジに関しても生命の力強さを出したくて、音数を極力減らして、メッセージ性を強く打ち出すためのアプローチを心掛けました。楽曲に良い感じに命を吹きこむプレイができたので、自分でも大満足かつ、たくさんの人に聴いてもらいたい曲になったなと思いますね。

――突き抜けるような規模感の大きいドラムの響きがとても印象的で、特に1サビがカッコいいなと。

HIROKI:ASAGI君とディスカッションして、音が遥か遠くに飛んでいくような、より広がりを感じるアレンジというのを最大限に表現しましたね。

ASAGI:〈願いは空と海を越え〉という歌詞通りのイメージです。

――この楽曲は徐々に様々な音が重なっていき、最終的に大人数をイメージできて、スケール感もより壮大なものになっていきますよね。

ASAGI:世界中にいるDのファンが楽曲に思いを乗せてオーストラリアに届けるというイメージで、最後のほうにクワイアを入れました。アレンジに関しては大まかな全体像は最初からあって、そこに向けて皆でブラッシュアップしていきましたね。

――そして、ギターソロがたまらなく感動的です。

Ruiza:ありがとうございます! 火災やコアラの映像、画像をたくさん見てきて、もちろん助けたい気持ちがあって、今回のプロジェクトで少しでも救える命や自然があるなら喜んでやりたいと素直に思った気持ちを形にしていきました。自分が作ったフレーズに、ASAGI君とプロデューサーの岡野(ハジメ)さんからアドバイスをもらって、再構築していきましたね。

――タイトルと歌詞に使われているアカシアはオーストラリアの国花ですが、ASAGIさんの中では早い段階でこのワードが浮かんでいたのでしょうか?

ASAGI:そうですね。国花でもあるし、希望というイメージがアカシアの黄色の花にピッタリだなと思っていたんですけど、歌詞のどこに入れようか悩んだまま後半を迎えようとしていたんです。その時に、クワイアの入口にはめてみたら、ここしかないなという風に思って。たくさんの希望が集まって来るイメージが、たくさんのクワイアによってそれぞれの思いが重なって、そこにアカシアというワードが入るのがすごく気持ちよかったので、これをタイトルにしようと思いましたね。

――最後の一節〈春色の希望を咲かせよう〉がとても素敵な言葉だなと。「明けない夜はない」と同じような意味合いとして「春は必ず来る」と言ったり、春は希望や新たな始まりの象徴でもあると思いますが、この〈春色〉にはそういう意味合いも込められていますか?

ASAGI:まさにその通りです。アカシアに感じる希望と、100年後の森の復活に向けての思いを絶やしたくないというのが強くて。日本ではこの森林火災のニュースは少なかったと思いますし、さらに世界中がコロナ禍で一色になってしまったので、持続的に寄付できる形をスタートできて本当に良かったなと改めて思いますね。

§

――「Hard Koala」は本当に強烈です。ASAGIさんの作曲段階で、ここまでの激しさを想定していたのでしょうか?

ASAGI:ハードコアというくらいなので、結構な激しさを求めていたんですよね。なので、想定はしていたんですけど、最終的に想定以上の激しさになりました(笑)。岡野さんも「怖いくらいカッコいいね」と(笑)。

――最高の褒め言葉ですね。リズム隊が要の楽曲だと思いますが、地鳴りのようなベースが強烈だなと。アレンジやレコーディングはどのようなことを意識しましたか?

Tsunehito:この曲のテーマがハードコア+コアラですし、音楽のジャンルとしてハードコアは好きでよく聴いているものではあるので、そういった部分の勢いや激しさは存分に出したいなと、弾き方や音作りは意識しましたね。とにかく激しい。やっぱり「ACACIA」と「Hard Koala」でコントラストがあって引き立て合っているので、すごく楽しめますよね。

――レコーディング前に、リズム隊でディスカッションすることはあるのでしょうか?

HIROKI:お互いやりたいことやアレンジで目指しているものが似ているというか、特に詰めることはないですね。結構プライベートでも仲良しなので…意識せずともお互い言わんとしていることがわかるというか。

全員:(笑)

ASAGI:もう言葉は必要ないぞと(笑)。

HIROKI:必要ないです(笑)。アプローチやお互いの駆け引きがわかっているんですよね。「あぁなるほどね、わかるわかる」みたいな。

Tsunehito:この曲に限らずデモの段階でASAGIさんのイメージがハッキリあるので、それをさらに良くすることを目指して皆で作り上げていっていますね。

――この楽曲に取り入れられているオーストラリアのディジュリドゥという楽器は、すごく低音の特徴的な音色ですね。

ASAGI:かなりパンチが効いているんですよ。オーストラリアの民族楽器を調べていてディジュリドゥの音を聴いた時に、これはすごいなと。ハードコアと融合させたいなと思ったんですよね。そしたら相当強烈なものになりました。

――まさかの組み合わせですけど、最強の組み合わせですね。

ASAGI:ディジュリドゥをロック、ハードコアと組み合わせたバンドって他にいるんですかね(笑)? HIDE-ZOU君はこのヴォーーという音が得意なんですよ(笑)。

HIDE-ZOU:ヴォーー。

HIROKI:ヴォイパで(笑)。

HIDE-ZOU:実際は入ってないですよ(笑)?

――(笑)。しかも、ユーカリの木から作られるそうですね。このディジュリドゥとベース、ドラムの相乗効果で、ドラムが実際のテンポよりもさらに激しく聴こえるような気がします。

HIROKI:そうですね。Aメロとサビは16分で取っているので速いですけど、Bメロやギターソロは8分で取っているので、逆に難しいテンポ感ではあるんですよね。そこに疾走感をプラスするには、音の置き所がすごく重要になりますし、上半身と下半身の兼ね合いがバッチリ合っていないとダメで。自分はツーバスも、拍の頭にキックを置いていくのも得意なので、ミドルテンポかつ疾走感のあるプレイというのは上手く昇華できたと思いますね。Aメロとサビは否が応でも勢いを感じるので、そこに行き着くまでにどれだけ持続させるかというのを最重要視してレコーディングしました。

――ギター隊のお二人が特に気を付けた点は?

Ruiza:まずはリフですね。細かく16分のノリと8分のノリが混在しているので、それを上手く弾くのが難しかったです。気を付けないと置いていかれるというか、重くなっちゃうので、その辺は意識しました。とてもハードな楽曲なので、ガツンと聴かせるためにピッキングのニュアンス、リズムの取り方も色々と意識しましたね。

HIDE-ZOU:この楽曲のパンチ力は、まずリフから出ていて、ちゃんと楽曲に求められるパワーが出せるようにということと、この曲は疾走感が大事なので、そこを気を付けてレコーディングしました。あと、ギターソロは前半後半で分けてルイちゃんとバトンタッチしているんですけど、僕は後半を弾いていて、トリッキーなフレーズを入れてみたので、そこは聴かせどころですね。ハードコアラ感を出せたと思います。

――この楽曲はほとんどが英詞ですが、ASAGIさんは日本語で歌詞を考えてから英語にするという方法ですか?

ASAGI:そうですね。英詞にする場合は、普段よりもさらにストレートな歌詞にすることを意識していて、先ほど言った通り、これはハードコアラからの視点で環境破壊に対する怒りだったり希望を歌詞にしました。

――製品版にも和訳は入っているのでしょうか?

ASAGI:和訳はメンバー、関係者用で、製品版には入っていないですね。近々、オンラインサロンでは公開しようかなと思っていたところです。

――〈Are you messing with me?〉の和訳が〈舐めてんのかこあら?〉なのが面白くて(笑)。

ASAGI:ちょっとユーモアをこっそり忍ばせてみて誰か気付いてくれるかなと。気付いてもらえて良かったです(笑)。ありがとうございます(笑)。それと、イメージキャラクターを作ったんですけど、そのハードコアラが歌っているイメージだったので、新しいキャラクター=新しい歌い方になりましたね。ディストーションヴォイスというか。HIROKI君に違う人だと思われました(笑)。

HIROKI:仮Mixを聴いた時に、これ誰だろう?と思って(笑)。サビまで聴いてやっと「あ、ASAGI君だ」と(笑)。新しい歌い方だったのでビックリしました(笑)。

§

――日本ユニセフ協会へ自動寄付できる「#あなたの1再生が子どもたちを守る」プロジェクトに割り当てる楽曲を、シングル『鳥籠御殿 ~L’Oiseau bleu~』(2011年7月発売)収録の3曲にした理由というのは?

ASAGI:元々は東日本大震災に向けたチャリティーソングだったんですけど、当時は限定販売だったんですよね。これも救いを求める人たちへ音楽で何かを届けるという思いが強かったので、このコロナ禍になって歌詞を見直した時に、改めて配信という形で世界に向けて羽ばたくべき曲たちなのかなと思えたんです。「鳥籠御殿 ~L’Oiseau bleu~」の〈小さな子らが眠る扉を叩け〉という歌詞やMVに子どもたちが出てくるのも含めて、今なのかなと。Dの曲は未来を描いているものが多くて、その世界観と時代の流れが重なってきている部分が多いなと感じたのもあります。「羽根をひとひら」の〈病と争いの中(今も)挑み続け〉もそうですし。それと、幸せの青い鳥が羽ばたいていくイメージだったので、このプロジェクトには相応しい3曲なんじゃないかなと思いました。日本ユニセフ協会は今も新型コロナウイルスとも戦ってくれていますし。

――同じく自動分配の仕組みを活用したライブハウス応援企画「#LiveHouseNeverDie」は3月30日発表で、とにかく早かったという印象があります。

ASAGI:寄付の仕組みは出来上がっていたので、それをライブハウスに当てはめるだけということで、本当に早かったですね。コロナは今だけに限らず、第二波、第三波が来る可能性もありますし、今後自粛期間が解けたからといって、ライブハウスの「3密」というイメージはなかなか拭えないと思うんです。それに加えて環境破壊によって未知のウイルスが出て来るかもしれないと、かなり前から言われているので、今回に限らずこういう状況は起こり得ると考えた時に、やはりこれも持久力が必要だというところで、この自動分配の仕組みは有効だなと思いました。ファンとの待ち合わせ場所を守るために、僕らが微力だとしても何か行動を起こしたかった。たとえ小さなことだとしても、自分に出来ることをするという「ハチドリのひとしずく」という南米の寓話にすごく勇気をもらった時期でもありました。

――50ヵ所を超える各ライブハウスにそれぞれ楽曲が割り当てられていますが、曲の選定はどのように?

ASAGI:これはまだ発表してないんですけど、実はそれぞれちゃんと少し理由があるんですよ。時が来たら徐々にお知らせできればと思っています。

――そして、4月17日には新曲「Hang in there」をYouTube公開、4月21日にダウンロード&サブスク配信を開始しましたが、やはり結成記念日には何かアクションを起こしたいという思いがあったのでしょうか。

ASAGI:ファンの子たちも結成記念ライブに向ける思いは強かったでしょうし、バンドからファンに向けてメッセージなのか、映像なのか、生配信なのか、何かしらしたいねという話はしていました。この時期ずっと、ファンのために音楽で何かしたいなと考えていたんですよね。コロナ禍で疲れている人も多いでしょうし、今こそ少しでも元気付けられるような楽曲を、すぐに届けたいというところから始まりました。かつ、僕らミュージシャンは自宅にいても世界に向けて発信できるんだということをプライドにかけて証明したかったという思いも強くて。もちろん音楽がなくても死なないですけど、あるからこそ生きていけるというような音楽の力を信じて、ファンへの感謝の思いを伝えたいなと考えながら制作しました。

――どのくらいの日数で仕上げたのでしょうか?

ASAGI:自宅で集中して制作に取り組めたので、割と早かったんじゃないかな。どのくらいだろ…?

HIDE-ZOU:1週間~10日くらいじゃないですかね。

全員:早かったね。

――(笑)。リモートで制作したということで、やってみていかがでしたか?

HIDE-ZOU:いつもDTMでファイル共有してやっているんですけど、今回は岡野さんともZoomを使ってオンラインでアレンジミーティングをしたのは新しかったですね。ものすごく発展的な機会で、やって良かったなと思いました。

Tsunehito:新たなチャレンジだったので楽しかったですね。アレンジ作業をZoomでやった時に、ギター隊の押さえているポジションの確認とか、画面上で目で見て作業ができるのはすごく便利だったし、これからそういうものがどんどん主流になっていくんだなと、ワクワク感みたいなものもありましたね。

Ruiza:皆が自宅でレコーディングして、こんなすごいものが仕上がるんだというのも感動でした。Zoomを使ってのやり取りは新鮮で、今もそうなんですけど、ちょっと緊張するというか(笑)。普段と違ってすごく不思議な感じで、まだちょっと慣れないです(笑)。

ASAGI:皆で集まって喋る時って、誰かが話している時はその人のほうを向くけど、これって皆と目を合わせている感じがするから、なんか緊張するというのはあるかもしれないですね(笑)。1対全員という感じになるから。

Ruiza:そうそう。ひょっとして視線集中しているのかしら?と思いながら(笑)。でも、逆に集中できる環境でもあるのかなと。これはこれで楽しくもあり、現代的だなと思いましたね。大変な状況ですけど、沈んでいるだけじゃないというか、プラスになっていることもありますね。

HIROKI:自分は今まで電子ドラムは自宅での練習でしか使っていなかったんですけど、今回レコーディングで使ったことによって、電子ドラムならではの使い方を最大限に引き出せたかなというのもありますし、電子ドラムだからこそできることを今も研究中です。やっぱり生ドラムが恋しいなとは思いつつ、この研究によって自分自身ちょっとずつ成長できていると思います。もっと追求していきたいですね。

――音源のサビのコーラスはメンバーの皆さんでしょうか?

ASAGI:そうです。最初の段階から、ヴォーカルに対してのメンバーのコーラスというものをイメージしていましたね。リモートだからこそ、コーラスで一つになるという。かつライブでファンの皆が歌ってくれたらいいなというイメージもあって、追い掛ける感じのコーラスにしました。

――とてもまっすぐで温かなメッセージソングですが、この楽曲もわかりやすい言葉で伝えようという思いがあったのでしょうか?

ASAGI:歌詞の作り方としては、自分の心のコアにあるものをなるべく純度高く伝えようとすることはどんな楽曲でも同じで、「Hang in there」の場合も、それが自然とストレートな言葉遣いになったということですね。様々な物語、世界観、ストレートな曲…色々ありますけど、根本的に音楽がリスナーの心の栄養や活力になってほしいというのは変わらないんですよね。だからこそDの一貫した世界観、メッセージというものがあるんだと改めて思った期間でもありましたね。

§

――コロナ禍でのDのアクションは、スピードはもちろん、数も多くて、これだけのことを実現させていくには気力、体力、発想力、行動力…様々な力が必要だと思いますが、皆さんにとってこの中で最も手強い“力”は?

ASAGI:うーん、あまり意識したことがないですけど、全部ですかね(笑)。でも、明日どうなるかわからないという今の時代の流れの中だと、行動力が一番必要なのかなと。それは、恐れや不安が付き纏う分手強い。でも、何かしたいと思っているうちに時間が経ってしまって、結局何も出来なかったのでは意味がないし、実際に前に動き出してから多少方向転換するのは全然良いと思うんですよね。動いてみないとわからないことってたくさんあると思うので。Dには旗を振る「Night-ship“D”」という曲もあるので、バンドを船に例えてみます。ここに向かうという目標を設定したとして…Dで言うと20周年で最大領域を目指すというところに進んでいこうとしている中、突然コロナ禍がやって来て、急に深く濃い霧がかった状態になったんですよね。そうなると、先に何があるか見えないし、明日もしくは1時間後、1分後、どの方角から障害や強風がやって来るかわからないという状況で、危険を察知してすぐに舵を切るというのはすなわち行動じゃないですか。もし目の前にレーダーに映らない何か危険なものが現れたら、まず何をするべきかと言えば舵を切ることだと思うんですよ。乗組員の中ですぐ近くに危険があることをまだ知らない人たちからは、真っ直ぐに行く予定だと航路を決めていた船が突然方向を変えたら「何でこんなに急に舵を切るんですか?」ということが起こり得ますけど、その時に近くにいるメンバー以外の全員に隈なく説明している時間ってないんですよね。まず全力で舵を切ることに集中しないと、全員の命が危ないから。全員を納得させるための説明から入ると、その間に危険と衝突してしまう。Dはもう17年やっているから、メンバー全員一丸となって荒波も超えて前に進むことが出来ていますが、これは17年の賜物なんです。生きていたらいくらでもやり直しはできるし、安全な場所に辿り着いた後、みんなで船の修理もできますよね。

Ruiza:本当にその通りだなと思います。船の例えもまさにそうで、ASAGI君が言ってくれたことって、本当にいつも僕らのことを考えてくれているんだな、ファンのことを思っているんだなというのがすごく伝わって来るんですよね。

HIDE-ZOU:僕も今のASAGIさんの話ですごく納得しましたね。状況によって、そのバランスは変わるのかもしれないですけど、今一番求められるのは行動力なんじゃないかなと。ここまでのDの流れを改めて見直しても、やっぱり行動力があったからこそ、色々な発想の具現化が早く進行したんだと思います。コロナ禍じゃなかったとしても、発想力を求められることもあるだろうし、体力も必要ですし…。そう言った意味で状況により変わってくるのかなと思います。

Tsunehito:もちろんどれも大事だと思うんですけど、日々状況が変わっていくので、やっぱりスピード感のある行動が大事だなと思いますね。

HIROKI:Dは自社なので瞬発力もあるんですよね。そのスピードは他のバンドとは違うと思うので、そういったバンドの行動力もDの強みでもありますし、皆が同じ方向を向いているからこそ上手くいっていて、ファンの皆も納得してくれるんだと思います。

――新型コロナ終息後、エンターテインメント業界も以前のようには戻らず、変わっていく可能性が高いと言われています。たまたま前回、この事態とは関係なく「この激変する時代を生き残るために、良い意味で変わり続けなければいけない。それが出来なければもう未来はないでしょうね」とASAGIさんが話していましたが、ある種、その変化のスピードがさらに加速しただけと捉えればいいのかもしれないなと。

ASAGI:その通りですね。僕らはオンライン化に対応できるように以前から準備していた部分もあるんですよね。今回のコロナ禍のようなものや自然災害も含めて、いざ中止や延期など何かあった時に、メンバーとファンがオンラインで身近に繋がっていられる場所があったほうがいいなと考えていて。普段にしても、Dというものに特化したコアファン向けのコンテンツがあったほうが絶対に良いだろうなと思っていたんです。結果、今オンラインサロンがすごく重要なものになっていますね。DMM.comは独自アプリがあるので、ファンはニックネームでも参加できますし、改めて早めに取り組んで良かったなと。

――なるほど。

ASAGI:変わり続けなければいけないというのは、自分たちの音楽の提供方法ですよね。自分やDの中にあるコアの部分、Dが打ち出す音楽そのもの=材料は何も変わらなくて、時代がどんなに急激に変化していったとしても、自分たちらしさという変わらないものをこれまで以上に意識して大事にしていくことが、すごく重要じゃないかなと最近強く思うようになりました。もちろん、コアのエネルギーに直接触れられるのはライブだと思うんですよ。ただ、今のオンライン化の中ではエネルギーの伝達経路が違うということですよね。色々なシステムが出て来てスタンスが変わったように見えるかもしれないけど、実際のところ何も変わらないということこそが大事。自分たちが持っている音楽という材料そのものの美味しさは変わらない。その美味しさを生かしたまま、皆で料理して、レパートリーは増やす。増えたメニューを如何に提供し、それを自由に選んでもらい、如何にお客さんに喜んでもらえるかというところを考えていかなければならないと思っています。

――こういう考えが常に念頭にないと、バンドとして生き続けていけないんだろうなと思います。

ASAGI:そうですね。自分たちらしさを大事にしないと、様々なものに翻弄されてしまうので。それと、この時期、アーティストを支えたいと思う音楽ファンはたくさんいると思うんですけど、例えばサブスクで聴くこと自体がアーティストを支えることにもなりますよね。無料のものもありますし。あと、バンドの公式サブスクであるオンラインサロンがこの時代にいかに有効かということは、1年以上やっている僕らが改めて体感したことでもあります。多くの人の目に触れるオープンのSNSはメリットもありますが、デメリットも大きい。SNSが成熟した今だからこそ、クローズドのSNSはとても重要だと思います。オープンな場所でのストレスや危険から、自分と仲間やファンを守る大切なものになっていく気はしますね。ただ、最後にひとつだけ。音楽は自由に楽しんでほしいし、どんな形であれDが好きで応援してくれる人は、みんな大事なファンなんだということはお伝えさせてください。皆さんの健康を心から願っています。

(文・金多賀歩美)

ARTIST PROFILE

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<プロフィール>

2003年4月、ASAGI(Vo)とRuiza(G)を中心に結成。2005年に現メンバーASAGI、Ruiza、HIDE-ZOU(G)、Tsunehito(B)、HIROKI(Dr)となる。2008年5月、シングル『BIRTH』でメジャーデビュー。これまでに世界10ヵ国のワールドツアーや47都道府県ツアーなど、ライブ活動も精力的に展開してきた。2018年4月、結成15周年&メジャーデビュー10周年を迎え、記念作品『Narrow Escape』を発表。その後、ヴァンパイアストーリー第2章としてシングル2作、初の組曲を立て続けにリリース。2019年、シングル『道化師のカタルシス』『UNCROWNED KING』をリリース。2020年、コロナ禍におけるライブハウス応援企画や、オーストラリア森林火災へ向けたチャリティーソング『ACACIA ~Pray For Australia~』『Hard Koala』のリリース等、様々なアクションを起こしている。

■オフィシャルサイト
http://www.d-gcr.com/

■オフィシャルYouTube Channel
https://www.youtube.com/user/DofficialJP

【リリース情報】

New Single『ACACIA ~Pray For Australia~
2020年5月8日(金)発売
(GOD CHILD RECORDS)

ACACIA ~Pray For Australia~
GCR-197(Limited Edition)
¥1,000+税
amazon.co.jpで買う

【収録曲】

01. ACACIA ~Pray For Australia~
02. ACACIA ~Pray For Australia~(Instrumental)

New Single『Hard Koala
2020年5月8日(金)発売
(GOD CHILD RECORDS)

Hard Koala
GCR-198(Limited Edition)
¥1,000+税
amazon.co.jpで買う

【収録曲】

01. Hard Koala
02. Hard Koala(Instrumental)

New Song「Hang in there
2020年4月17日(金)公開
2020年4月21日(火)配信

Hang in there
amazon.co.jpで買う

【ライブ情報】

●「D 17th Anniversary Special Premium Live 2020「duo MUSIC EXCHANGE」」
※4月17日(金)公演延期により振替日程調整中

●二部制ライブ「Tsunehito Produce Birthday Live」「Dワンマン~Tsunehito Birthday Live~」
7月5日(日)目黒鹿鳴館
※3月8日(日)の振替公演

●「D 17th Anniversary Special Premium Live 高田馬場」
2021年
4月29日(木・祝)高田馬場AREA
4月30日(金)高田馬場AREA
5月1日(土)高田馬場AREA
5月2日(日)高田馬場AREA
5月3日(月・祝)高田馬場AREA
5月4日(火・祝)高田馬場AREA
5月5日(水・祝)高田馬場AREA
※2020年同日の振替公演