CHIYU

ソロアーティストCHIYUの主軸となる初のフルアルバム『SCREAM on the WALL』が完成。目の前を塞ぐどんな高い壁も君と乗り越えていく――

ベースヴォーカルとしてソロ名義での活動をスタートさせて3年を経たCHIYUが、前作ミニアルバム『Notice of Arrival』から約2年ぶりのパッケージ作品であり、初のフルアルバム『SCREAM on the WALL』を遂に完成させた。「ソロアーティストCHIYUの主軸を作りたかった」という今作に収められたのは、様々なモチーフで描かれた“壁”。新曲8曲に代表曲2曲の再録を加えた全10曲で、あらゆる表情を魅せながら、2021年現在の“ソロアーティストCHIYU”を確立させた。ソロ名義ではVif初登場となるCHIYUに、今作についてたっぷりと語ってもらった。


この1枚でやっと現時点でのソロアーティストCHIYUが完成した

2ndミニアルバム『Notice of Arrival』(2019年7月発売)から2年以上ぶりのパッケージ作品リリースということで、この2年間はどんな2年でしたか?

CHIYU:この2年は、自分は何をしているんだろうという期間が長かったですね(笑)。元々バンドがしたくて上京して、最初はバイトをしながらやっていたんですけど、あの頃に戻ったような感覚でした。コロナ禍になって動きが取れなくて、本当に何しに東京に来たんだろう感が。でも、自分の立場だったり、既存曲を見つめ直す良い時間にはなりました。そこから新しく生まれたもので、今作『SCREAM on the WALL』を作ったという流れもあります。

昨年、メンタル的に正直落ちたなという時期はありましたか?

CHIYU:コロナ前は先輩や友だちと飲みに行けていたので、そこで発散できたり、新しい情報をもらえたり、インプットが自然とできていたんだなと気付きましたね。それすらできなくなったので、1日中誰とも喋らない時間もありましたし、たまにツイキャスをやっていたんですけど、その時に初めて声を発するとか。人として腐っているなというのは感じましたね(笑)。

昨年3月の2周年記念ライブ後からライブ活動を自粛して、再開させたのは昨年末でしたよね。

CHIYU:ソロでの有観客ライブに関してはそうだったんですけど、配信のみだったり、サポートでちょこちょこステージには立っていたんですよね。でも、やっぱり実際にファンの子たちが目の前にいて、声は出せないにしろ表情で「あ、今楽しんでくれているんやな」とわかる瞬間は、すごく嬉しかったですね。声を出せなくて、登場しても拍手だけという切ない感じ、それすらも愛おしいというか。そこにいてくれて同じ時間を共有できるという、当たり前ではないことを今までできていたんだなと。そういう感謝も含め、コロナ前に早く戻ればいいなというのは、すごく感じました。

今作『SCREAM on the WALL』のテーマは「壁」ですが、今年8月のワンマンが「CHIYU 2021 ~The Wall~」だったというところで、早い段階でテーマが見えていたのでしょうか?

CHIYU:アルバムを作ること自体は決まっていたので、早い段階で大枠のテーマはあったんですけど、コロナ禍になって、そのテーマを変えたんですよ。今って写真を撮るにしても食事に行っても、パーテーションがあったりするじゃないですか。そういう色々な壁を全部取っ払いたいというのも今回のテーマに掛かっていたりして。8月のワンマンがあのタイトルだったのは、本当はその日がリリースライブ予定だったんですよ。ただ、せっかくリリースしてもライブができないという状況になりかねない時期だったので、それはすごく嫌だというところで、リリースしてからすぐにライブができるようなタイミングにしましょうと。それにより制作時間に余裕が持てたので、さらに追求して納得できるまで作業できました。

今回、ミニアルバムではなくフルアルバムにした理由というのは?

CHIYU:ソロの最初は、ライブをするために持ち曲が必要で、かといってすぐにはフルアルバムはできないので、とにかくライブができる数をと考えたら、6曲くらいあればイベントには出られるなと。まずそれで1stミニアルバム『Seven Deadly Sins』を出して、ライブをやっていく中でここが足りないなと思った部分を、次のミニアルバム『Notice of Arrival』で補って。それである程度ワンマンの構想ができたので、今度は自分の主軸になるものを3枚目で出したかったんですよね。それプラス、1枚目の「無限の風」、2枚目の「Egoistic GAME」、3枚目の「Keep it real」という各リード曲3曲セットで、CHIYUの主軸がやっと作れたなと。あと、色々な挑戦や自分にこういう要素を増やしたいなというもの、今までのパワーアップver.だったり、そういうものを踏まえて、この1枚でやっと現時点でのソロアーティストCHIYUが完成したんじゃないかなと。フルアルバムにすることによってちゃんと表現できるのかなと思ったんです。

なるほど。だから「無限の風」「Egoistic GAME」の再録が入っているんですね。

CHIYU:そうですね。ソロ活動3年を経たCHIYUが同じ曲を歌ったら、またちょっと気持ちの乗せ方や歌い方が変わるだろうなと。今のCHIYUとして見せたかったというのがあります。

「Egoistic GAME」の再録を今作の1曲目にした理由は?

CHIYU:初めて聴く人もいると思うので、1曲目にポップなものを持ってきて、掴みたかったというのがあって。「無限の風」と「Keep it real」は曲順を繋げたんですけど、バンドが解散してソロになった時の心情が「無限の風」で、「Keep it real」はこれまでを経ての現状だったり、ファンとの関係性を歌っているので、ここは絶対に繋げたいなという思いがありました。

ソロとしてはメロディーが最優先

「Keep it real」はキャッチーでお洒落な曲だなというのが第一印象でした。最初からリード曲にする前提で制作したのでしょうか?

CHIYU:この曲は最初、ドラムとメロディーしかなかったんですよ(笑)。でも、絶対にこれをリードにしたいという思いがあって、アレンジャーさん(梶原健生)との最初の打ち合わせで色々なデモを聴いてもらった時に、「これが絶対にリードになるので、こういう風にアレンジしてほしいです。ギターはこんな感じで…」と結構細かくお願いしました。それくらい、この曲は画が見えていたんですよね。前にも一緒にやっているアレンジャーさんだったので、絶対にプラスアルファすごいものを返してくれるだろうなという信頼があって、全く心配もしていなかったですし。「無限の風」がシリアス寄りで、「Egoistic GAME」がポップ寄りなので、曲調としてはその間を突きたかったので、そこを頑張って目指して、あとはアレンジャーさんに「お願いします!」という(笑)。

アレンジが緻密に考えられているのはすごく感じました。

CHIYU:そうですよね。梶原さんじゃなかったら、こんなに良い曲にはなってなかったと思います。

ピアノがとても効果的に入っていますが、この曲に限らず結構ピアノが多く使われていますよね。

CHIYU:今回、カッティングギターやピアノがメインで出ているのが多いかもしれないですね。コロナ禍になって、ファンに対して何かしら発信しないとなと思って、今までピアノをちゃんと弾いたことはなかったんですけど、ピアノでこの曲弾けるかやってみようという企画をファンサイトでやったりして、1ヵ月かけて1曲ゆっくり弾けるようになったんですよ。そういう流れもあって、ピアノって意外と面白いなと思ったのも頭のどこかに残っていたのかもしれないです。

アレンジャーさんにオーダーした際に、ピアノを入れることも希望として出していたんですね?

CHIYU:出していましたね。ベースはどうでもいいから、ピアノとカッティングギターさえちゃんとしていればOKと(笑)。そこが主軸として全面に出したいというのは伝えていました。

今作を聴いていて、ベーシストではあるけど、ベースをフィーチャーするわけではなく、あくまでソロアーティストCHIYUなんだということを強く感じました。

CHIYU:今まで2枚ミニアルバムを出していますけど、自分が作った曲でベースをフィーチャーしているのって1曲もないんですよ。『Seven Deadly Sins』に収録している玲夏(ダウト)が作った「apathy house」や、美月(The THIRTEEN)が作った「Regret」はベースソロが入っていたんですけど、自分でベースソロを作ったものはないですね。ソロとしては歌に重きを置いているというか、メロディーが最優先という形で曲を作っていて。今回はフルアルバムになったから、ちょっとベーシストの部分を思い出してもらおうと思って、ずっとスラップの曲を1曲入れてみたんですけど(笑)。

なるほど(笑)。「Keep it real」は「自分に正直であれ」「自分を見失うな」といった意味合いだと思いますが、どんな思いでこの歌詞を書いたのでしょうか。

CHIYU:上辺だけカッコつけるなよ、偽物になるなよみたいな意味合いもあったりして。コロナ禍で物理的に距離が離れたのもあって、ファンの存在ってすごく大事だなと思ったし、いないと今も活動できないというのが根本には絶対にあるので、そこをリード曲として全面に出してファンに伝えたかったという思いが一番大きいかもしれないですね。

「Own weapon」は直訳すると「自分の武器」ですが、ソロ活動3年を経た今、ご自身が思うソロアーティストCHIYUの武器は何だと思いますか?

CHIYU:音楽面で言うと、CHIYUの曲って歌やベース単体ではそんなに難しいことは実際していないんですけど、それを同時に演るのはすごく難しいんですよ。それを3年やって来て、ちょっとずつでも成長していっていると思います。なおかつ、このジャンルでスリーピースでベースヴォーカルという形はなかなかいないと思うので、そういう意味では武器かなと思います。これをもっと強い武器にするために、1曲だけでもいいんですけど、例えばセンターでアップライトベースを弾きながら歌っている画はなかなかこのジャンルで見たことがないので、そういう武器を作れるように磨いていきたいですね。

この曲はイントロのギターリフが印象的だなと思いましたが、CHIYUさんはデモ段階でそういう部分もキッチリ作り込むタイプですか?

CHIYU:いろんなパターンがあるんですけど、ギターは何となくしか弾けないので、その何となく弾いたものと、イメージした4~5曲の音源をアレンジャーさんに渡しつつ、あとは口頭で伝えて具現化してもらうんですよ。イメージ的に絶対にこうしたいというのがあれば、資料をめちゃくちゃ集めて、投げて、揉んでもらうという形が多いですね。

ちなみに、間奏が二段重ねなのが面白いなと。全体で約50秒もあって。

CHIYU:えっ、そんなにあったんすか(笑)!

前半がギターソロ、後半がシンセで、合わせて約50秒あります(笑)。

CHIYU:(笑)。この曲は割と最初のほうにできていて、サラッとできたし、サラッとした曲だったんですよ。あまりにも引っ掛かりがないなと思って、中間をカオスにしたいなという話になって…そしたら50秒のカオスになっていましたね(笑)。でも、あれでサラッとは終わらない曲になったと思いますね。