2024.03.07
NUL.＠渋谷La.mama
「NUL. live 2024 “Distorted Circle #2″」
HIZUMI（Vo）、MASATO（G）、岸利至（Prog）によるNUL.が、2024年の初ステージとなる「NUL. live 2024 “Distorted Circle #2″」を3月7日、渋谷La.mamaにて開催した。「Distorted Circle」＝歪んだ・歪な円という冠が表すように、本公演は3月2日に誕生日を迎えたHIZUMIのバースデーライブであり、昨年から引き続き2回目の開催。本人プロデュースによるスペシャルな一夜が繰り広げられることとなった。
改めて近年のNUL.の活動を振り返ると、アルバム『EVILA』（2022年8月）のリリースと同時に、ベーシストとドラマーを迎えた5人体制で約1年間ステージを重ねた後、2023年10月の岸バースデー公演では原点回帰をテーマにオリジナルメンバーのみで純度100％のNUL.を、12月のMASATOバースデー公演では音と映像のユニットHello1103との初コラボレーションを展開してきた。
なお、2022年8〜10月、2023年6〜7月に行われた各ツアーでは、固定メンバーとしてKOHTA（B／PIERROT、Angelo）、石井悠也（Dr）が参加し、2023年9月のO-WEST公演はその5人体制NUL.での一旦の集大成と言えるステージとなったことは記憶に新しい。そして、HIZUMIバースデー公演は“5人体制”という部分ではツアーと同様の形ではあるものの、2023年はIKUO（B／Rayflower）、Sakura（Dr／ZIGZO、Rayflower、gibkiy gibkiy gibkiy）、2024年の本公演では人時（B）、himawari（Dr／DUSTAR-3 etc.）をゲストに迎えた初の組み合わせによるステージが実現したのだった。
かくして新たな布陣で迎えたこの日、「楽しんでいこうか」というHIZUMIの第一声を合図に「INFERNAL」で勢いよくスタートを切ると、エグいほどグルーヴィーな人時のベースプレイと、パワフルかつ華のあるhimawariのドラミングが、NUL.との良い化学反応を起こしていることが一瞬にして感じられたのだ。そこに聴く者を一気に惹きつけるどっしりとした「八咫烏 -Yatagarasu-」、ダークな怪しさと一体感を増すノリの良さを併せ持つ「DIVE」、さらに「バカになっちまおうぜ！ 一緒に踊ろうか！」とHIZUMIがステップを踏み、岸による〈JUST ROCK IT〉のコーラスも効果的な「GREEDY BLOOD FEUD」が続き、随所でMASATOが人時と笑顔でアイコンタクトを取るシーンも見られた。
なお、今宵の舞台となった渋谷La.mamaは1982年オープンの老舗ライブハウスだが、ヴィジュアル系シーンのアーティストの出演は極めて少なく、NUL.としても初の会場であることから、「関係者からもLa.mamaでやるんだ？って驚かれたけど、ロックスターのお二人をお呼びするにはロック箱だろうと思って。今日はロックモードでいくので、そこんとこよろしく」とHIZUMIがその真意を述べる一幕も。
この日、本編は4ブロックに分けられ、全14曲が披露されたわけだが、各ブロックがその3〜4曲の中で完結できるような起伏のある構成となっていたのが印象深い。例えば持ち時間の少ないイベント出演ならば、この日のどのブロックをチョイスしても成立するのではと思うほど。少し大袈裟かもしれないが、4ブロック＝4ステージ分＋アンコールを観たと考えると、何とも贅沢な一夜だ。
2ブロック目では破壊と再生を歌う「Kalima」でフロアを揺らしたかと思えば、咽び泣くMASATOのギターソロも印象的な「Another Face」、楽器陣の力強く鋭利なサウンドが突き刺さるダークでヘヴィーな「Cube」と聴かせる2曲を。そして「XStream」で再び熱量を上げ、〈枯れ果てた声刻め 生きた証を〉というリリックを体現するように、HIZUMIがシャウトを響かせれば、満場の拳で応戦してみせたオーディエンスに「最高。最高です」と告げたのだった。
この後に披露されたのが、HIZUMIが初めて作曲を手掛けた新曲「黎明」。これは2023年末公演において、彼が自身のバースデーライブに向けて新曲を作ると宣言し、有言実行と相成ったものだが、「まだ完成していない」と言うHIZUMIに対し、すかさず「いや、今日現在での完成だよ」と岸。シンプルな構成とキャッチーなメロが光る「黎明」は、インダストリアルロックを基軸にダークで複雑なナンバーが並ぶNUL.の中では、ある意味爽やかささえ感じる異質な楽曲で、バンドに新たな風を吹かせる存在となる予感。今後さらにブラッシュアップされ、どんな最終形態となるのか楽しみだ。
そのキャッチーな「黎明」から疾走感のある「abnormalize」が続いたのも実に自然な流れで、HIZUMIの「Are you ready？」にフロアが「Yeah！」と応え突入したメンバーコールを含むトリッキーな「Dictate」では、クラブさながらのトランス状態に。本編最終ブロックでは、〈まだ「生きたい」と願う ときに「死にたい」と放つ〉と心の揺れを描いた「死遊の天秤」をエモーショナルに届けた後、「From deep underground」「ジル」で白熱の光景を描き出した。
アンコールでは、「灯願華」に入ると見せかけて岸が「Happy Birthday」を流すというサプライズもありながら、全員でHIZUMIの誕生日を祝福。「皆さんに良い歌を歌っていただいたので、僕のほうからお返しをしたいと思います」（HIZUMI）と、改めてバラードナンバー「灯願華」を切々と歌い上げたのだった。
その後のMCではリズム隊の声も届けられ、himawariが「大変な曲が多いなと、昨日震えていたんですよ」と述べ場内に笑いが起これば、「『お題は“自由”です』と言われたので、楽しく自由にやらせていただきました。先ほどの『灯願華』、すごい曲だなと思って。大好きな曲になりました」と人時。また、MASATOからは「本当に楽しいです。1回で終わるのがもったいないなと…またやりたいです」と、二人との再演を熱望する言葉も。
「BLACK SWAN」「Plastic Factory」の連投、さらにダブルアンコールでの「POISON EATER」をもって最高潮を迎え、今宵のステージは幕となったが、今後のNUL.の動きとして、ニューアルバムを今年リリースすること（HIZUMIも作曲すると宣言）、各メンバーの地元公演（山形、姫路、柏）を含むツアーを開催することがこの日、新たに発表となった。本ツアーが7月13日にスタートすることから、おそらくその頃には音源が我々の手に届くのではないだろうか。「カッコいいアルバムを絶対作るので、皆さんよろしくお願いします」（岸）とのこと。NUL.新章の始まりとなるであろう作品の完成を心して待ちたい。
◆セットリスト◆
01. INFERNAL
02. 八咫烏 -Yatagarasu-
03. DIVE
04. GREEDY BLOOD FEUD
05. Kalima
06. Another Face
07. Cube
08. XStream
09. 黎明
10. abnormalize
11. Dictate
12. 死遊の天秤
13. From deep underground
14. ジル
En1
01. 灯願華
02. BLACK SWAN
03. Plastic Factory
En2
01. POISON EATER
（文・金多賀歩美／写真・@Lc5_Aki）