『[evolve]』が示す絶望の中にある一筋の光。決して創造を止めずに未来へ向かう。必ず君が待っていると信じているから――。
6月以降、「NEOPHASE」と掲げたスタジオライブの生配信や有観客での東名阪アコースティックライブを行い、10月には大宮ソニックシティ 大ホールでのアニバーサリー公演を完遂するなど、コロナ禍においても常に前進し続けてきたAngeloが、待望のニューアルバムをリリースした。そのタイトルに冠されたのは「進化」を意味する『[evolve]』。未曾有の2020年の中でAngeloが感じてきた様々な思い、決して創造することを止めずに未来へ向かう様が示されていると同時に、Angeloと彼らを愛する人々が共に乗り越えてきた日々が詰め込まれた作品でもある。そんな力強くも優しさと愛情に溢れた最新作、Angeloの2020年について、Karyu(G)とKOHTA(B)にじっくりと話を聞いた。
未知のところに飛び込む前の緊張感が充満していた(KOHTA)
早くも11月になりました。コロナ禍は時間の経過は早く感じていましたか?
KOHTA:早いですね。あっという間です。
Karyu:いつもより忙しく活動していたので、かなり早く感じています。
新しくやらなければいけないことが多かったですもんね。
Karyu:特にアコギには結構時間を割いたので、経過が早かったですね。
Vifでは総括記事Angelo「NEOPHASE」-4ヵ月間の記録-を8月に公開しましたが、コロナ禍の活動を振り返ってお話を聞きたいと思います。まず、4月に緊急事態宣言が発令されて、5月1日から開催予定だったツアー全公演が中止になり、その後5月22日には6~7月のホールツアー全公演中止が発表されました。この辺りでいよいよ先が見えなくなり、メンバー、スタッフともにテンションが落ちた感があったそうですね。
KOHTA:あの辺りは正直、精神的にもきていた感じはありますね…。先が見えないというよりも、アコースティックライブに向けての準備をしつつも、これをやっていていいのかどうかという疑問は自分の中でありました。そういう葛藤が春夏はすごくあったかなと。
何が正しいとか、誰も何もわからない状況でしたからね。
KOHTA:そうですね。春の時点で一応予定はしているけど、それすらできるかわからない、だけどやらなきゃいけない準備はある中での葛藤ですね。
Karyu:誰もが理解できない状況の中やらざるを得ない、自分が何をできるのかというのを突き詰めたりというところで、割と一人でやる作業が多かったので、精神的には良くない方向には向かっていましたね。その中でも作曲はあるので、そこでストレス発散というか、自分の気持ちを浄化させていったりしていました。
正直メンタルが落ちたなというのは、4~5月辺りでしょうか?
Karyu:どうかなぁ…。ずっとでしたね(笑)。ライブがなくなるとか今まで考えられなかったことで、それがどんどん先までなくなったので、とにかく表に出る機会がなくなって、人と接する機会もなくなってというのが…なかなかですよね。
KOHTA:4月で落ちて、5月でそれでもやらなきゃと準備して、6月に入ってちょっと色々あって…さらに複雑な…。父が亡くなったのもあって、精神的にちょっと。まぁでも、やらなきゃいけないこともたくさんあったので、落ちてもいられないということで、だからこそ頑張らないとというのが6~7月でしたね。
ホールツアー中止が発表された翌日5月23日に、YouTubeでキリトさん一人による弾き語り生配信が行われましたが、「普段親切な言葉をかけたりはしないので、行動で示すという意味で、メンバーやスタッフに向けても何か伝わればいいなという思いがあって」とキリトさんが後日話していて。ご覧になってどう感じましたか?
KOHTA:バンドもそうですけど、新しい見せ方を模索するということを先頭に立ってやってきた中での彼なりの葛藤があるのもわかりますし、すごく響きましたよ。楽しいとか嬉しいというのとはまた違う感情を覚えました。
Karyu:時間がない中、プライベートスタジオで自分で用意して、なりふり構わずやるというスタンスは、見ていてやっぱり勇気付けられたし、やらなきゃなという気持ちにもなれました。そういう意味で、率先してやってくれるのは僕にとってもすごく助かることで、自分のやる気に繋がった気はしています。
6月7日にリハーサルスタジオからの生配信「Angelo -Acoustic Live Streaming「NEOPHASE」」が行われました。
KOHTA:初めての配信で、あの日の緊張感はすごかったですね。スタジオにカメラマンさんと最低限のスタッフしかいない中で、カウントダウンしていきなり始まるんですよ。普通のライブでは得られない緊張でした。15分くらい前からスタンバッていたんですけど、誰も喋らないんですよ(笑)。
Karyu:本当に(笑)。
KOHTA:始まっちゃうとのめり込むので、一気にガーッとやって、終わったあとにフーッという感じなんですけど、始まるまでの15分間が一番鮮明に覚えていますね(笑)。本当に誰も喋らず、無の状態でした(笑)。
Karyu:無ではないですよ(笑)。すげー緊張感でしたけどね。
KOHTA:あの15分間は、練習も誰もしていなかった気がします。TAKEO君なんてほぼ瞑想していたし。本当に、目を瞑ってこう…(笑)。
Karyu:なんか皆、覚悟しているような感じでしたよね。これから未知のところに戦いに行くような(笑)。
KOHTA:そうそう、未知のところに飛び込む前の緊張感が充満していて、すごく覚えています。
かつてない空気感だったんですね。そして7月5日には、レコーディングスタジオからの生配信「Angelo Studio Live Streaming「NEOPHASE Ⅱ – The switched world -」」が行われましたが、この日の本番直前生配信でKaryuさんは「リハをやって、バンドで音を出す楽しさを思い出した」と言っていましたよね。
Karyu:そうですね。しかも、バンドで音を合わせるのがこんなに間が空くのって、これまでのバンド人生でなかったんですよね。
KOHTA:それまでアコースティックに没頭していた中でのバンドスタイルだったので、やっとできるという喜びもありました。僕はアコースティックの時よりやりやすかったですね。ただ、あのスタジオでのライブ形式というのも初めてで、ヘッドフォンもしていたので横の動きができない中、どう見せていこうかなというのは、やりながら探っていくしかないなと思ってやっていました。
Karyu:僕はそもそもアコギをあまり弾いてこなかったので、6月の配信でアコギの良さも知れたのは知れたんですけど、やっぱりバンドサウンドのエレキの音の魅力はすごいなと、この日改めて思いましたね。一発の気持ち良さみたいなのは、段違いでエレキのほうが好きです。
アルバム『CORD』(2016年9月リリース)初回盤のDVDで、全曲スタジオセッションをやっていましたよね。スタジオで5人が向き合ってライブさながらに演奏するという部分では、7月5日の生配信は近い形だったんじゃないかなと。
KOHTA:そういうのもありましたね。あと、7月の配信の時は僕としては若干懐かしい感じもしたんですよね。そんなに広い空間ではなかったので、昔こんなふうにやっていたなと、皆でスタジオセッションをしていた頃を思い出して。アコースティックの時は広くて、あの感じがまた緊張感が漂ったし、そういう意味ではそれぞれ違った楽しみ方ができました。
素朴な疑問なのですが、この2回の配信では立ち位置が違ったのが気になっていて。
KOHTA:あー、なるほど。そういえばそうですね。
Karyu:僕ら発信ではないですね。多分、一番やりやすいようにしてくれていたんだと思います。
KOHTA:正直、メンバーはあまりそこは気にしてないかも(笑)。
Karyu:そうですね(笑)。すごい着眼点ですよね(笑)。
やる側としては、あまり立ち位置のこだわりはないですか?
KOHTA:円形の場合は、こだわりはないですね。普通のステージならやっぱり上下とかはありますけど。
人としての愛情みたいなものをすごく感じて(Karyu)
7月18日~8月2日には、5ヵ月ぶりの有観客公演となる東名阪での「Angelo Acoustic Live circuit & Streaming「NEOPHASE Ⅲ – The quantum method -」」が行われましたが、完全なる静寂の中でのステージとなりました。声援はまだしも、拍手もなしというのは斬新でした。
KOHTA:忘れもしない一発目の六本木。ステージに出て行った時に、あのお客さんの数と、全員配布したマスクと手袋をして、パントマイムみたいな感じで(笑)。これはこれで、最初の配信の時とはまた別の意味で、「あれ? ライブってこうだったっけな?」っていう不思議な感覚に陥りましたね。
皆さん「未知を楽しむ」「違和感を楽しむ」ということだったと思いますが、目の前に人はいるのに無音というのは、アーティスト側は一体どんな感覚なんだろうと思っていて。
Karyu:なかなか精神力のいることですよね(笑)。
KOHTA:ステージに出て行って自分の立ち位置まで歩いていく時の、あの画が忘れられないです(笑)。もちろん、ここまでしても来てくれる人たちがいるんだという嬉しさもあったんですけど、すごい光景でしたね。でも、足がかりになればいいなという色々な願いも込めて。演奏が始まってしまえば、やっぱり配信の時と同じく気にならないんですけど、MCの時や曲と曲の隙間に不思議な感じはありました。
Karyu:今でしか経験できないことですけど、あまり経験したくない雰囲気ではありましたね。1曲終わって反応がないというのがやっぱり…。通常のライブでもバラードの後とか、何かの曲と曲の間で静かになる時ってあって、そういう時って多分皆、感動していたりするんだと思うんですけど、その静かな感じが僕はちょっと苦手で。それが今回全曲そうなので、「うわー…でもそうなるよな」って思いましたよね。なので、自分の想像力で皆の声を聞いていました。
それは確かにものすごい精神力が必要ですね…。
Karyu:アコギなのに、めちゃくちゃ疲れましたからね。
あの日は泣いている方も結構いたように思います。
Karyu:そうですね。
KOHTA:ああいう形でもライブを開催することができて、カメラ越しじゃなくて肉眼で見られるファンの方がいるというのは、すごく励みになったし嬉しかったですね。当たり前の光景が見られない日々が続いて、ライブはできたけど当たり前の光景ではなくて、やっぱり今までどれだけ恵まれてやって来られたのかというのは、すごく感じましたね。
個人的にもあの日がコロナ禍になってから初めての有観客ライブで、実は泣きました。Angeloは歌詞が刺さり過ぎるというのもあって。
KOHTA:歌もすごく感情的になっていた部分もあると思うので、聴いている皆も余計突き刺さったんじゃないかなと思いますね。
10月4日には7ヵ月ぶりのバンドスタイルでの有観客公演となった、恒例のアニバーサリー公演Angelo 14th Anniversary「THE GROUND OF REUNION」が大宮ソニックシティ大ホールで行われましたが、ようやくお客さんも拳やハンドクラップ、ヘドバンなどができて、久々の光景が見られましたね。
KOHTA:そうですね。やっとここまで戻ったかというのはありました。あの時も観客数は50%以下に制限していましたけど、声がないだけで、思っていたより普通に楽しくできたなと。客席の見た目も50%以下には見えない感じだったし、僕はほぼいつものライブと遜色ないテンションでできたなと思います。
皆さん、ようやく「辿り着いた」と言っていたのが印象に残っています。
KOHTA:周年ライブではありましたけど、何年続けてきたということよりも、あの場に立てたことがすごい喜びでしたね。
Karyu:今、パッと思い出すのは、やっぱり普段よりも感謝の気持ちがより大きいのを感じましたね。お客さんもそれなりのリスクを負って来てくれているので、ライブ云々というより人としての愛情みたいなものをすごく感じて、こっちが励まされるというか。メンタル的なところで、この日をやれて良かったなととても感じました。
とても力強いライブだったなと思います。
Karyu:お客さんは普段通りにはできない、少し抑え気味というか、声を出せなかったりしたので、個人的にはステージングの見せ方をちょっと変えていかなきゃなという思いはあったんですけど、なかなか難しくて。そこは今後探るべきテーマかなと思っています。