2025.11.07
NUL.@横浜みなとみらいブロンテ
「NUL. TOUR 2025 “IMAGICAL TATOO”」

2025年、春の3ヵ月連続リリース&ライブ開催を皮切りに、これまでほとんどなかったイベント出演も積極的に行うなど、例年とは異なるアクティブな動きを見せているNUL.。そんな彼らが11月7日、横浜みなとみらいブロンテで「NUL. TOUR 2025 “IMAGICAL TATOO”」の最終夜を迎えた。
HIZUMI(Vo)、MASATO(G)、岸利至(Prog)から成るNUL.は、オリジナルメンバー3人でのステージのほか、これまでに多彩なゲストミュージシャンを迎えてライブを重ねてきた。この日は人時(B)、DUTTCH(Dr/UZMK)に加えて、NUL.のライブではお馴染みながら普段は客席後方で映像を操るHello1103(VJ)もステージ上に並び、6人による特別編成でのパフォーマンスとなった。

初の映像化も事前告知されていた当夜は、ツアーファイナルであると同時に活動6年を経た現時点でのNUL.の集大成となることは間違いなく、実際この日のステージ上で「今、NUL.ができる最大限の表現をぶち込もうとやってきました」(HIZUMI)、「集大成のNUL.を見せようと、激しい曲だけじゃなく、感情的な曲、ダークな曲など、いろんなものを詰め込みました」(岸)と述べる場面があった。



〈黒い羽〉〈折れた羽〉という印象的なリリックが響くドラマティックな「BLACK SWAN」が幕開けを飾ったこの日。続く「Hyena」で早くもフロアを揺らし、さらにNUL.史上最速のハードチューン「Crumble」を放つと、MASATOによる鋭利なギターリフ、岸が打ち鳴らすパッド、HIZUMIの邪悪な咆哮が交錯し、場内の熱を一気に沸点へと導いた。
重厚な「八咫烏 -Yatagarasu-」では背面に浮かんでは散っていく文字、ダンサブルな「KaliMa」では〈破壊と再生〉といったインパクトの強いワードが大きく映し出されるなど、視覚からも歌詞の世界観がダイレクトに突き刺さる演出を経て、中盤では「COMA」「THE LAST DAY」とNUL.の真骨頂とも言えるヘヴィーかつダークサイドのミディアムナンバーが並んだ。DUTTCHの強固なドラミングに、MASATOのギターと人時のベースが厚みのあるユニゾンを響かせれば、いずれの楽曲にも通底する、いつか訪れる最期の日を思うリリックが、HIZUMIの感情ほとばしるヴォーカリゼイションによって静かな熱を帯び、胸に迫った。



岸が操るノイズが際立ち、独特の一体感を生むミクスチャーナンバー「違法解放区」でギアチェンジを図ると、続くキラーチューン「ジル」ではフロアに特大のOiコールが響いた。かと思えば、暗転を挟み、本編折り返しのブロックでは、再び聴かせるナンバーが並ぶことに。闇を切り裂くようなMASATOのギターが響いた「残光」では、yukako(Hello1103)の浮遊感漂うコーラスが加わる場面もありながら、照明とVJ演出によって会場が赤と黒のみの一つの世界に包まれたのが印象深い。
さらに無数の光の粒が舞い上がる映像を背景に、突然消えてしまった人への思いを切々と歌い上げたバラード「灯願華」、〈まだ「生きたい」と願う ときに「死にたい」と放つ〉と心の揺れを描いた「死遊の天秤」が続いた流れは、そのメッセージ性の強さも相まって、何とも忘れがたい余韻を残した。

ここで岸による4つ打ちインタールードを挟み、一気にクラブモードへと場面転換すると、メンバーコール&ソロ回しを含む「Dictate」を皮切りに後半戦に突入。〈誰の為のそのSTORYだ?〉というフレーズで締めくくられるハードなライブチューン「Awakening」に続き、「GREEDY BLOOD FEUD」でフロアが踊り明かした。余談だが、5月に「Awakening」を初披露した際、「いずれライブの後半に持っていきたい」とHIZUMIが語っていたわけで、その配置が今、現実のものとなっていることも感慨深い。
そして、「ここにいるって叫べよ!」(HIZUMI)という絶叫もありながら「POISON EATER」で暴れ倒したのち、〈最期の瞬間に笑える その為に今を〉〈枯れ果てた声刻め 生きた証を〉と歌うNUL.の始まりの曲「Xstream」での存在証明をもって、クライマックスを迎えた。



アンコールでは和やかなMCが繰り広げられ、岸が「『灯願華』で泣きそうになりました。今日こんなにすごいと、自分たち自身も今後が楽しみになりますよね」と語る一幕も。また、MASATOが「6人いると、バンドが強くなった気がしますね」と言えば、HIZUMIも「誰とやっても負ける気がしない」と応じる。揃って全3公演だった今ツアーを「物足りない」と口にし、「またこのメンツでツアーを回りたい」という言葉も飛び出したことを記しておきたい。
NUL.のロゴを背に、「Plastic Factory」「HYBRiD BEAST」で再びフロアの熱を急上昇させた後、HIZUMIは次のように述べた。
「メンバーと本気でぶつかり合って、今まで見たことのないライブにしたいと思ってやってきました。今、別のプロジェクトも動いていますが、一度歌えなくなった自分がまた戻って来られたのは、このメンバー、スタッフ、ファンの皆のおかげです。そんないろんな感情を込めて、曲を書いてきました」

かくして本公演のラストナンバーを飾ったのは、この夜が初披露となる、ツアータイトルと同名の新曲「IMAGICAL TATOO」。エモーショナルなミディアムナンバーに乗せ、HIZUMIのリアルを詰め込んだ歌声が力強く響き渡り、フィナーレとなったのだった。
年内のNUL.のライブは残すところ2公演。「あの憎っくきLuv PARADEと全面対決します(笑)!」(HIZUMI談)という12月6日のツーマン「SYNCROSS」、そして12月27日に開催されるMASATOのバースデーライブ「Resonance of Noise #3」だ。賑やかなステージになること必至の二夜で2025年を締めくくり、NUL.はまた新たなフェーズへと歩を進めていく。

◆セットリスト◆
01. BLACK SWAN
02. Hyena
03. Crumble
04. 八咫烏 -Yatagarasu-
05. KaliMa
06. God Alone knows
07. COMA
08. THE LAST DAY
09. 違法解放区
10. ジル
11. 残光
12. 灯願華
13. 死遊の天秤
14. Dictate
15. Awakening
16. GREEDY BLOOD FEUD
17. POISON EATER
18. Xstream
En
01. Plastic Factory
02. HYBRiD BEAST
03. IMAGICAL TATOO(新曲)
(文・金多賀歩美/写真・Yumiko Kishimoto)
【ライブ情報】
●Luv PARADE vs NUL.「SYNCROSS」
12月6日(土)渋谷REX
出演:Luv PARADE、NUL.
●NUL. LIVE 2025「Resonance of Noise #3」
12月27日(土)吉祥寺PLANET K
●NUL. FC発足記念ライブイベント「違法解放区」
2026年1月9日(金) 吉祥寺SHUFFLE
●NUL. LIVE 2026
2026年2月6日(金)下北沢ReG
●Verde/ 2MAN LIVE 「TWIN RESONANCE II」
2026年2月13日(金)高円寺HIGH
出演:Verde/、NUL.
●「Distorted Circus」
2026年3月1日(日) EDGE Ikebukro
