2024.10.25
NUL.@初台DOORS
「NUL. TOUR 2024 “斑 -MADARA-”」
HIZUMI(Vo)、MASATO(G)、岸利至(Prog)によるNUL.が、過去二度のツアーを共にしたKOHTA(B/Angelo、PIERROT)、初参加となるHIROKI(Dr/D)をゲストに迎えた新体制で、7月にスタートさせた「NUL. TOUR 2024 “斑 -MADARA-”」。その最終夜が10月25日、初台DOORSにて行われた。
本ツアーは新体制のほか、ステージセッティングの変化、新たなSE、新曲の披露と、“新”尽くしとなったことは初日のレポートでお伝えした通り。新作アルバムを鋭意制作中だった彼らは、結果的にツアーと並行して制作を進めることとなり、3曲の新曲が初披露された初日、HIZUMIが「(このツアーで)どんどん新曲も入れていこうと思う」と述べていた通り、9月の名古屋・大阪公演ではさらに1曲、横浜公演でも別の1曲がラインナップに加わった。そして、このたび遂に待望のアルバム『AVA』が完成し、10月17日に配信開始、ツアーファイナルと同時にCD発売を迎えることとなった。
つまり、当夜はツアーファイナルでありながら『AVA』の始まり、ひいては新たなNUL.の始まりとも言えるものになったのではなかろうか。彼らのステージでお馴染みのHello1103によるVJの視覚的演出も加わり、「ツアーファイナル、本気見せてくれよ!」というHIZUMIの第一声からフロアが抜群のノリで応えた「Hyena」でフルスロットルのスタートを切ると、既存曲と見事な相乗効果を生み出しながら、本ツアー中最多の『AVA』収録曲が繰り広げられたのだった。
「Hyena」に続いた「INFERNAL」は、『AVA』収録曲ではあるものの昨年9月に発表されたHIZUMIとMASATOによる初の共作かつ岸がアレンジ参加した楽曲で、序盤の勢いづけには持ってこい。開けるサビのメロディが印象的な「God Alone knows」は、前後の「BLACK SWAN」「EVILA」との流れの中でドラマティックな展開を見せ、アタック感の強いダークサイドの2曲「八咫烏 -Yatagarasu-」「Cube」を経て奏でられたバラードナンバー「Gravity」は、宇宙を思わす空間系ギターサウンドと中低音域のHIZUMIの歌声が合わさり、儚くも体温を感じさせるものだった。
後半戦の入口となったのが、NUL.史上最も高速のハードチューン「Crumble」。HIZUMIのシャウトに、岸が打ち鳴らすドラムパッドとHIROKIのドラムのユニゾンが攻撃力を増し、続く「Kalima」「abnormalize」でフロアを揺らせば、「アルバムの制作に没頭していたら、いつの間にか5周年(1stライブが2019年8月)になっていました。ということで、始まりの曲です」(HIZUMI)と「XStream」を放ち、MASATOとKOHTAがスイッチしながらフロアには一際大きなOiコールが鳴り響いた。さらに「GREEDY BLOOD FEUD」「Plastic Factory」とNUL.流ダンスチューンで熱狂の渦へ。
当夜、ライブ初披露となったのが「THE LAST DAY」と「違法解放区」。なんと両曲とも当日リハーサルのみで、本番のステージを迎えたという。前者はアルバムのラストかつ本編を締め括った重厚なミディアムナンバーで、エモーショナルに歌い上げた〈いつか最期の日が来るから 君が泣かないように 言葉無き愛を 残された秒針が尽きるまで あとどれだけの愛込めた唄を残せるのだろう?〉というリリックが実に印象深い。後者はアンコール1曲目に配され、「問題曲やっちゃいます?」(HIZUMI)との発言もあったように、タイトルそのままのここには書きづらい歌詞の内容だが、リズムセクションが要の変則的な冒頭から、サビでは皆で〈Oh Oh Oh〉と歌い一体感を生む、NUL.に新たな風を吹かせる1曲であったと感じる。
また、時系列は前後するが、中盤で岸曰く「1年に1回のクラブver.」でのプレイで、フロアをトランス状態へと導いたメンバーコールを含む鉄板曲「Dictate」は、「今日は岸さんのバースデー名目(10月17日が誕生日)ということもあって、いつもと違う感じでやってみました」(HIZUMI)とのことで、さらにアンコールでは、「違法解放区」後に次曲に入ると見せかけて「Happy Birthday」のバンド演奏で岸の誕生日を祝うサプライズも繰り広げられた。
なお、ツアー初日の時点で早速NUL.との相性の良さを見せていた初参加のHIROKIだが、この日「NUL.の曲、本当に大好物なんすよ」(HIROKI)、「すごくNUL.に合っていると思うんすよ」(HIZUMI)といった微笑ましいやり取りがあった。そして、KOHTAのギャグ待ちをするHIZUMIという相変わらずの展開もあれば、MASATOは「HIROKIさんのスーパーポジティブと、KOHTAさんの癒しで、とても良いツアーが回れました。“楽しい”しか出てこないわ」と言い、「無理難題をこなしてくれたHIROKI君。KOHTA君もライブアレンジに積極的に意見を出してくれて嬉しかった。メンバーの二人も頑張ってくれて、新しい扉を開いた曲もあるし、4日間くらいでレコーディングを終わらせた曲もあるし」と岸。
当夜は「POISON EATER」「ジル」と終盤の盛り上がりに欠かせない2曲、フロアの声に応えたダブルアンコールでの「HYBRiD BEAST」で白熱の光景を描き出し、終幕となったのだが、このレポート冒頭に「最多の『AVA』収録曲」と記していたのは、全曲披露ではなかったから。やはり当夜はあくまで『AVA』の始まりだったのだ。ちなみに先述の「4日間くらいでレコーディングを終わらせた曲」とは、この日披露されなかった「DΦPE SHΦW」のことだという。NUL.の次回公演は11月14日、吉祥寺Shuffle。「New Album “AVA” Release Event」というだけあって、そこでは全曲を聴くことができるに違いない。さらに、12月28日にはMASATOのバースデーライブ(詳細は後日発表)の開催も決定した。何ともめでたい二夜をNUL.と共有し、2024年を締め括ろうではないか。
◆セットリスト◆
01. Hyena
02. INFERNAL
03. BLACK SWAN
04. God Alone knows
05. EVILA
06. 八咫烏 -Yatagarasu-
07. Cube
08. Gravity
09. SEED IN THE SHELL
10. Dictate
11. Crumble
12. Kalima
13. abnormalize
14. XStream
15. GREEDY BLOOD FEUD
16. Plastic Factory
17. THE LAST DAY
En1
01. 違法解放区
02. POISON EATER
03. ジル
En2
01. HYBRiD BEAST
(文・金多賀歩美/写真・@Lc5_Aki)
【リリース情報】
●New Album『AVA』
2024年10月17日(木)配信
2024年10月25日(金)CD発売
[配信リンク]
[CD]NUAL-003 ¥3,500(税込)
※ライブ会場&オフィシャルWEB SHOPにて販売
[収録曲]
01. Crumble
02. Hyena
03. God Alone knows
04. DIVE
05. DΦPE SHΦW
06. Gravity
07. 違法解放区
08. INFERNAL
09. HYBRiD BEAST
10. THE LAST DAY
【ライブ情報】
●New Album “AVA” Release Event
11月14日(木)吉祥寺Shuffle
※ライブ&トークイベント
GUEST MUSICIAN : DUTTCH(DJ/UZMK)
●MASATOバースデーライブ(タイトル未定)
12月28日(土)吉祥寺Shuffle