2023.07.07
H.U.G@白金高輪 SELENE b2
「H.U.G TOUR 2023 -LOVE THAT NEVER ENDS-」TOUR FINAL

セッションバンドとしてryo(Vo)、Karyu(G)、横山和俊(Mani&Key&Per)の3人編成で初ステージを踏んでから約1年、H.U.Gとして正式始動してちょうど10ヵ月、そしてNAOKI(B/FANTASISTA、ex.Kagrra,)、TAKEO(Dr/PIERROT、Angelo)をサポートに迎えた5人編成でのステージとなり約7ヵ月。初のワンマンツアー「H.U.G TOUR 2023 -LOVE THAT NEVER ENDS-」の最終夜、白金高輪 SELENE b2を舞台に彼らが示したのは、圧倒的なスピードで進化し続ける一つの塊としてのバンドの姿だった。

始まったばかりのバンドであることから、彼らはことさらに自らを“新人バンド”と強調してはいるものの、各々キャリアを持つベテラン揃いの新人であることは周知のとおり。それぞれのスキルと対応力、さらにはそこに起こる化学反応をも味方につけ、この短期間で真の意味でのH.U.Gというバンドの形を確立させたのだ。無論、そこに到達できたのは今ツアーあってこそだと言って間違いない。

梅雨の季節真っ只中の6月10日に開幕した今ツアーではあるが、1日たりとも雨は降らなかったという。実際この日も晴天の真夏日となったわけで、「きっと、僕らが作って皆が一緒に育ててくれた、太陽という名前の『HELIOS』というアルバムが授けてくれた行程だと思います」というryoの言葉もあったように、今ツアーは開催と同時に発売となった『HELIOS』を引っ提げ行われたもの。楽曲のレパートリーは基本的に共通(持ち曲の全て)ながら、その配置は各地で様々な試みがなされてきたようだ。

ryo

5人の登場からryoが両手を広げたのを合図に、この夜の幕開けを飾ったのはアルバムのリード曲である「SEEDS」。早速KaryuとNAOKIが勢いよく前方へ飛び出せば、横山は鍵盤とパッドを駆使、TAKEOの的確かつ華のあるドラミングはさすがで、Karyuのギターソロが見られるのもやはり嬉しい。LEDビジョンに映し出される赤の花びらが舞う映像も鮮烈で、白の衣装で統一した5人とのコントラストが実に美しかった。ちなみに、ヘアメイクも各地で変化させてきたようだが、中でもこの日、まさかのモヒカンヘアに目元周辺を鮮やかな青緑で塗った横山の姿は、TAKEOからも「今日の横さん、すげーカッコいい」という発言が出るほど目を引くものだったことを付記しておこう。

楽器隊のバチッと重なるユニゾン始まりの「HUG」に次いで、どっしりとした音と妖艶さが融合した「DON’T DOUBT」、緩急のある展開が特徴的な「BLOOD PIN」と、ヘヴィーなサウンドを武器にしたロックナンバーが続いた後、「太陽に感謝しよう」というryoの言葉から「DROP」、そして「HEART」とH.U.Gの中では最もキャッチーと言えるナンバー2曲をプレイ。Karyu、横山、NAOKIによるコーラスとともにオーディエンスが合唱を響かせ、フロアに対してKaryuが笑みを浮かべる場面も。

Karyu

横山作曲による「BUTTERFLY」は、メインコンポーザーであるKaryuの楽曲が並ぶ中で、良い意味で異質な存在であり、1ステージにおけるフックにもなる。と同時に、この後に配された「熾-OKI-」「Marry of the blood」といったD’ESPAIRSRAYを起源とするダークサイドの楽曲との親和性も高い。これらの楽曲はryoの低音ヴォイスやファルセット、シャウトなどあらゆる声色と、繊細な身振り手振りを交えたパフォーマンスを含め、その表現力が遺憾なく発揮されるという点でも見応えのあるブロックだ。

さらに、やはり今ツアーの大きなトピックスと言えば、初日には存在しなかったメンバーコールの楽曲と「HELIOS」という新曲が追加されたこと。そのどちらも、オーディエンスと一緒に楽しみたいというメンバーの思いから生まれたものだが、アルバムに収録されている「WHO IS THE ROMEO」とともに最強のライブナンバーの誕生により、バンド力の向上とフロアとの一体感を増幅させる結果となった。

もちろん新曲に関しては現時点では未音源化ながら、既にフロアが完璧な暴れっぷりを見せていたこともさすがで、それは彼ら彼女らがバンドと共にこのツアーを作り上げてきたことを証明する光景だった。それを象徴するように、後のMCでKaryuから「初めてのツアーというのは結構貴重だと思うので、それを一緒に回れた皆さんは特別な関係なのかなって。すごく大事に思っています」という言葉があったことも記しておきたい。

横山和俊

本編ラストは、歌詞の世界観を表現したストーリー性のある映像をバックに、ツアータイトルにも冠された愛の歌「LOVE THAT NEVER ENDS」でドラマティックなエンディングを迎え、「皆のお陰で、とても素晴らしいツアーになりました。心から御礼を言います。どうもありがとう」とryoの挨拶で締め括ったのだった。

アンコールでは事前に発表されていた通り、「SEEDS」のレコーディングに参加したベーシスト、燿〜yo〜(摩天楼オペラ)がゲスト出演し、同曲を披露。本編とは異なりMVをバックにプレイし、ryoとKaryuが燿〜yo〜に寄り添ったり向かい合ったりしながら、アウトロでは3人が集結する一幕も。燿〜yo〜をハグで見送った後、NAOKIの再登場で「DROP」「HELIOS」を再びプレイし、最後は満場のH.U.Gコールをもって終幕を迎えたのだった。

NAOKI

なお、この日のメンバーらの口ぶりから察するに、今ツアーのキーマンはNAOKIだったのだろう。「一番愛されている男だと思います」というryoの言葉もあった通り、技術面だけでなく、パフォーマンスや空気感、ステージ以外の部分も含め、あらゆる面で重要なポジションを担っていたに違いない。その影響もあってか、特にMCの随所でツアー前とは明らかに異なる柔らかなムードが漂っていたことも、バンドとしての一つの変化だろう。

また、例えば「HUG」で見られた、横山とTAKEOが同時にスティックを天に向けた場面、「HEART」の冒頭、同期からメインイントロに入るキメの一打で、横山がスティックをパッドに突き刺すように大きなアクションを見せた場面、「DROP」でryoがKaryuの脚に絡みついたり、アンコールでKaryuがNAOKIの背後に立ち戯けてみせた場面や、ryoがKaryuに寄り添いマイクを向けた場面、こういった様々なシーンが自然発生していたことも、バンドとして良い状態にあることを象徴するものであったように思う。

TAKEO

「本当に小さな火種から始まったこの動きは、Karyu君の情熱であったり、色々な人たちの力を借りて、今、本当に熱量の高い、大きな太陽みたいな輝きを持つことができ始めていると思います」とはryoの言葉。元々このバンドの首謀者はKaryuであり、彼のやりたいことをメンバーがバックアップする形から始まったわけだが、確かに今、その形は変化し、それぞれの個性が際立ちながら一つのバンドとして確固たるものへと進化していることが感じ取れた一夜だった。

この後のH.U.Gの動向として、10月に東名阪ツアーを、12月9日にKaryuのバースデーライブを開催することが新たに決定した。「この一つの波紋がどんどん大きくなるように頑張りますので、応援よろしくお願いします」(Karyu)、「これからも僕らと僕らの音楽と、君たちの人生を抱き留めて、一緒に生きていきましょう」(ryo)とのこと。H.U.Gは今、また新たなスタート地点に立ったと言える。ここから先も進化し続けていくであろう彼らから目を離さないでいたい。

◆セットリスト◆
01. SEEDS
02. HUG
03. DON’T DOUBT
04. BLOOD PIN
05. DROP
06. HEART
07. BUTTERFLY
08. 熾-OKI-
09. Marry of the blood
10. Flash dancers
11. WHO IS THE ROMEO
12. HELIOS
13. LOVE THAT NEVER ENDS

En
01. SEEDS(ゲストベーシスト:燿〜yo〜)
02. DROP
03. HELIOS

(文・金多賀歩美/写真・岡本麻衣(ODD JOB LTD.))


【ライブ情報】
●H.U.G TOUR 2023 -HELIOS-
10月9日(月・祝)名古屋 SPADE BOX
10月10日(火)大阪MUSE
10月13日(金)赤羽ReNY alpha

<サポートメンバー>
MASASHI(B/Versailles)
TAKEO(Dr/PIERROT、Angelo)

●Karyu BirthDay Live
12月9日(土)横浜Bronth

【配信情報】
●8月9日(水)【ハグの日】Wrap-up party
「tour 2023 -LOVE THAT NEVER ENDS-」を共に回った5人でお届けする、初ツアー終了打ち上げ & H.U.G 結成1周年記念配信

【音源配信情報】
●1st Album『HELIOS』
各配信サイトでストリーミング配信

H.U.G オフィシャルサイト