2023.03.08
Luv PARADE@duo MUSIC EXCHANGE
「Luv PARADE Tour PANDEMONIUM」

バンドというのは不思議なもので、やはり1ツアーを回ると変化と進化を遂げるらしい。それがどれだけ短いタームであったとしても。Karyu(G)、ZERO(B)、TSUKASA(Dr)、TAKA(Guest Vo/defspiral)によるLuv PARADEが、初の東名阪ワンマンツアー「Luv PARADE Tour PANDEMONIUM」の最終夜、duo MUSIC EXCHANGEで見せてくれたのは、昨年の再始動後に行ってきたどのステージとも異なるものだった。

改めて振り返ると、昨年11年ぶりに再始動したLuv PARADEは、6月と9月にSpotify O-EASTにて主催イベント「DEVIL’S PARTY 2022」を、12月にはLuv PARADEと同時に動き出したKaryu率いるH.U.Gとのツーマン公演を赤羽ReNY alphaで行い、今ツアーの3公演が4〜6本目となるステージ。4人が旧知の仲であり盟友であるという前提と、ワンマンであることや環境(今ツアーから観客の声出しが可能となった)に起因するところもあるにせよ、彼らからすればわずか3公演のツアーであろうと、バンド力の向上には十分な時間だったようだ。

Luv PARADEは2009年にセッションバンドとして誕生し、2011年のステージまではヘヴィーロックに振り切った洋楽のカバーをプレイしていたが、再始動を機に自分たち自身と全く異なるジャンルかつ女性ヴォーカルの洋楽を多くセレクトしてきた。今ツアーはワンマンであることから当然レパートリーの曲数を増やす必要があったわけだが、演奏予定曲のラインナップを事前にアナウンスするという斬新な試みがなされることとなった。Luv PARADEのアレンジ力と表現力には毎回驚かされるわけで、それこそが彼らの魅力ゆえ、オリジナルを予習した上でその変化を楽しみにしていたオーディエンスも多かったはず。さらには名阪公演の映像の一部をSNS等で即公開し、ファイナルへの期待を高めていったのもツアーという形だからこそ。

事前の発表通り新カバー曲6曲、既存カバー曲10曲(内セルフカバー5曲)の全曲が披露されたこの日。前者の中でも意外性No.1と言えばやはり「Dub-I-Dub」(Me & My)だろう。KaryuとZEROがコーラスを担ったサビの〈Dub-i-dub-i-dub-i-dub-dub-dub〉のリフレインが印象的なダンスチューン、盛り上がらないわけがない。姉妹デュオによるキュートなポップソングが、Luv PARADEの手によってどこかアダルティな色を纏い、あれは最早18禁と言ってもいい。

映画『タイタニック』のテーマ曲として大ヒットした悲劇のラブバラード「My Heart Will Go On」(Celine Dion)はTAKAの圧倒的な歌唱力が発揮され、よりエモーショナルかつ壮大に響き渡り、同名映画の主題歌として生まれたエレクトロ要素を多分に含んだシンセポップ的な「The NeverEnding Story」(Limahl)は、特にBメロあたりでLuv PARADEらしいヘヴィーサウンドを前面に出しながらも、多幸感溢れるキャッチーなロックナンバーへと昇華してみせた。

そして「HURT」(Nine Inch Nails)、「Don’t Look Back In Anger」(OASIS)、「凍える夜に咲いた花」(D’ESPAIRSRAY)の3曲についてはアコースティック形態で披露。この形でのパフォーマンスを取り入れたことは、今ツアーの中での大きなトピックスの一つと言えよう。TSUKASAによるハモリのコーラスを聴くことができたのも新鮮であったし、男性ヴォーカルの海外ロックバンドの楽曲をバンドアレンジではなく、あえてアコースティックブロックに選曲するというアイデアが彼ららしい。なお、「凍える夜に咲いた花」を歌う直前、TAKAが「メンバーとマニア(D’ESPAIRSRAYの呼称)の皆さんが大切にしている曲を歌わせてもらって、そんな中で皆さんが楽しそうに騒いでいる光景は本当に嬉しいですし、とても美しいです」と告げていたことも付記しておきたい。

また、時系列は前後するが、例えば「Toxic」(Britney Spears)の間奏で4人が向き合い円になった場面、「DEVILS’ PARADE」(D’ESPAIRSRAY)でZEROとTAKAがエロティックに絡んだ場面、TSUKASAが刻むビートから「DEATH POINT」(D’ESPAIRSRAY)に突入しコール&レスポンスが鳴り響いた場面、「MIRROR」(D’ESPAIRSRAY)の間奏でKaryuとTAKAが対峙し、さながらギターと歌のバトルのような展開を魅せた場面、こういったバンド然とした様々な点が冒頭に記したものへとつながったに違いない。本編最終ブロックにおいて「LOVE IS DEAD」(D’ESPAIRSRAY)、「BITE THE BULLET」(the Underneath)、「MIRROR」と彼ら自身の歴史を彩ってきたライブチューンを立て続けにプレイしたシーンはまさに圧巻で、その熱量とフロアとの一体感は大袈裟ではなく涙が滲むほど美しい光景だった。

「このツアーで3人のことが、より大好きになりましたし、Luv PARADEの世界観にどっぷり浸かることができました。またすぐに一緒に音を出して旅にでも出たいなという気持ちです。平たく言うとカバーバンドではあるけど、それだけではないものがあると思っています」というTAKAの言葉の後、この日のラストを飾ったのは事前発表の楽曲一覧には記載されていなかった「KAMIKAZE」(D’ESPAIRSRAY)。昨年6月の「DEVIL’S PARTY 2022」でOFIAMとしてZEROがまさかのギターヴォーカルでプレイしたことはあったが、現Luv PARADEとしては今ツアーが初披露。〈生きた意味を残したい〉と歌うこの楽曲で締め括ったことは、彼らからのメッセージだと受け止めたい。

この日、Karyuの「ツアー短かったなぁと。もうちょっと回りたいんですけど、メンバーの皆さんどうですか?」という問い掛けに、TSUKASAから「47都道府県回りたいです」という発言も飛び出したが、まずは7月9日、新宿BLAZEにて主催イベントを開催することが新たに決定した。現時点では詳細は明らかにされていないが、次なるパレードが一体どんな景色を見せてくれるのか、心して待ちたい。

◆セットリスト◆
01. Toxic/Britney Spears
02. Poker Face/Lady Gaga
03. Dub-I-Dub/Me & My
04. BAD GUY/Billie Eilish
05. DEVILS’ PARADE/D’ESPAIRSRAY
06. DEATH POINT/D’ESPAIRSRAY
07. Hyperballad/Björk
08. My Heart Will Go On/Celine Dion
09. LOVE IS DEAD/D’ESPAIRSRAY
10. BITE THE BULLET/the Underneath
11. MIRROR/D’ESPAIRSRAY

En
01. HURT(Acoustic)/Nine Inch Nails
02. Don’t Look Back In Anger(Acoustic)/OASIS
03. 凍える夜に咲いた花(Acoustic)/D’ESPAIRSRAY
04. sk8er boi/Avril Lavigne
05. The NeverEnding Story/Limahl
06. KAMIKAZE/D’ESPAIRSRAY

(文・金多賀歩美/写真・小山美里(ODD JOB LTD.))


【配信情報】
●Luv PARADE Tour PANDEMONIUM
3月8日(水)duo MUSIC EXCHANGE
アーカイブ配信中

【ライブ情報】
●Luv PARADE主催イベント
7月9日(日)新宿BLAZE
※詳細は順次発表

Luv PARADE オフィシャルサイト