2022.10.23
nurié@高田馬場CLUB PHASE
大角生誕単独公演 大角を祝ってよ!4th「僕を愛す為の幸福論」

nuriéのヴォーカル・大角龍太朗は晴れ男だ。この日も自らのInstagramストーリーズで、雲ひとつない青空を映した写真と共に「あたりまえに 今日も晴れ」という言葉を記していた。

今年で4回目となる大角の誕生日を記念して行われるワンマンライブ。幕開けは「生きてて偉い」。今年、活動を再開してからのワンマンライブでは締めくくりに演奏されてきた曲が、この日はステージの幕が上がる1曲目となった。

両手を広げて登場した大角は、少し声がうわずるところもあったが、今年の誕生日のライブの最初に「生きてて偉い」を歌うことに決めた、言葉にはできない彼の胸中を感じさせる一面だったのではないかと思う。

心の中を吐露するように歌ったこの曲からは、華やかに「今宵、未来の為に歌おう。」へ。髪を切り、また新たな魅力を醸し出すギターの廣瀬彩人は、プレイの合間に舌を出すなど、ギタープレイだけではなく、ステージに立つ存在として、客席からの目線を引きつけるしぐさを早くも見せていた。

イントロが鳴り響いただけでフロアの高揚感が上がる「ミルクティートリップ」は、発表されてからわずか3ヵ月でnuriéのライブには欠かせない、演奏されることでオーディエンスの心が弾む曲として煌めきを放っていた。

続く、「いっぱいいっぱいボーイ」は東京のライブでは久しぶりに披露ということで、サイレンのSEが鳴り響く中、エネルギーみなぎるプレイに、フロアはタオルを回して応戦していた。

大角龍太朗(Vo)

この日最初のMCは、生誕ワンマンらしい和やかなトーク。廣瀬から「誕生日やけど、どんな気持ち?」と振られて、「嬉しいよ!」と大角の顔がほころぶ。続けて、「いくつになりましたっけ?」と廣瀬が問いかけると、大角は「19歳です」と返し、すぐさま「嘘つけ!」とドラムの染谷悠太からツッコミが入るところも、関西出身の彼らならではのおもしろさであり、nuriéのライブには欠かせない楽しい時間だ。

ファンやメンバーからの愛を受けて、大角の「世界一幸せな気持ちで愛を歌わせてもらう」の言葉から「愛を歌わせろ人生へ」。オーディエンスが熱くこぶしを上げる「命に値段を貼られ生きる。」に続き、「クソ喰らえ。」は、これまでは渦巻く感情をただただぶつける印象があったが、この日は「確かに愛した人」への愛があるからこその光も歌声から感じられた。

染谷のドラムグルーブがフロアを揺らす「阿呆やん。」で、ライブハウスをダンスフロアへと一転させ、「カンセツショウメイ」まで、陶酔の時間へと誘っていった。

この「カンセツショウメイ」の際に、来場者から急病人が出たため、救護をしてからライブを再開。大角はその状況を的確に判断し、体調を崩した人をケアする言葉と共に、ライブに集った人たちの不安も払拭して「骨太もんちっちくん」へ。nuriéのライブで最も「振り」があるこの曲は、ワンマンライブの回数を増すごとに一体感が強化され、まさに曲のタイトルにあるように「骨太」な楽曲へと進化している。

身体を動かすことにより興奮はさらに高まり、迫り来る熱量となった「【ばいばい】」に、ファンも激しい折りたたみを見せ、「百鬼夜行」では大角がこの日最大のシャウトを響かせ、ライブのボルテージが最高潮に上がったときに放たれたのが「RooM-6-」。

現時点で、nuriéの代表曲となっているこの曲は、イントロが奏でられた瞬間に「待っていました!」と喜びを弾けさせている人たちの姿が数多く見られた。「RooM-6-」が聴きたくて、nuriéのライブに来たという人も多かったことだろう。ずっと音源だけで聴いていた曲を、ライブで聴けたときの嬉しさはひとしおだ。

「ライブに行く」意味には、それぞれ様々な思いがあると思うが、「好きな曲を自分の目の前で、生演奏で聴ける」という唯一無二の感動は、ライブ会場に行かなければ味わえない。

そして、nuriéはどんな楽曲もライブだからこその生きた音と共に、心にしっかりと届ける歌声で、楽曲の命を増加させる。だから、nuriéをライブハウスで観るということは、これまでの人生で味わったことのないような音楽体験へと導いてくれる。

ヴォーカリストとして「明日を生きる力を与えたい」という思いを持つ大角が歌う歌だからこその力。それは「人として人で在る様に」でもいかんなく発揮されていた。

廣瀬彩人(G)

この日のライブを前に、nuriéのオフィシャルサイトで大角龍太朗のインタビューを公開した。

この中で彼は、ライブへの意気込みとして「誰かの感動を見ているのではなくて、『これは間違いなく自分の感動だ』と感じてもらえるようなライブにしたい」と話していた。

筆者がnuriéのライブを初めて観たときに感じた、体の芯から痺れる様なあの感覚は私だけの感動だと思っている。きっと同じ様に、nuriéのライブは、観た人それぞれにしかわからない、自分の中で忘れなくない大切にしたい心の喜びがあるはずだ。

大角は、ライブタイトルとなった「僕を愛するための幸福論」を踏まえて、「自分自身を愛することに向き合いました」と語った。自分の弱さを認めた上で、今日より素敵な笑顔でいたい。バンドも、ここに集った人たちも、お互いに明日が幸せな顔をしている自分へと進んでいこうという思いを込め、「晴天に吠える」が歌い上げられた。

本編の最後の曲となったのは「透明に混ざる。」。ステージのライトが青く輝く。青は大角のメンバーカラーでもある。大角の誕生日を祝うライブのクライマックスにふさわしい青空のような眩しさは、確実に「自分だけの感動」が生まれた瞬間であっただろう。

染谷悠太(Dr)

アンコールではサプライズがあり、大角が曲に入ろうとした瞬間に、メンバーが本編ですでに披露した「骨太もんちっちくん」を演奏し、大角がとまどう中、バースデーケーキが登場。

「骨太もんちっちくん」の歌詞、〈絶好調なら、ヤーマン〉と言ったあとに、ふーという声と共に、大角はバースデーケーキのろうそくの火を吹き消した。ステージにいるメンバー、サポートベーシスト・NAOCHI(電脳ヒメカ)はもちろん、この場所にいる全ての人たちで、バースデーケーキで祝福したあとの「生き継ぎ」では、大角はこの日1番の笑顔を見せていた。

過ぎ去りし青春時代の自分を振り返りつつ、10代の初期衝動を忘れずに、未来へ向かってさらなる歩みを進める「15才」は、久しくライブでは披露されていなかった。

大角の誕生日を祝うライブのアンコールで選曲されたということは、言葉ではなく、歌で、彼自身が生まれてきてこれまで出会った大切な人への愛を伝えたかった証であろう。〈大切な人を愛して〉〈愛したモノは守れるよう〉といった歌詞が、一際響いていたように感じられた。

この日の全てを締め括ったのは「白を溢す。」。nuriéは結成してからすぐに、新型コロナウイルスのパンデミックに巻き込まれた。故に、筆者が彼らのライブでまだ観られていない景色がある。それは、オーディエンスが声を出すシーンだ。

nuriéの楽曲は共に歌うことで、その魅力がさらに開花するであろうと予測できるナンバーが数多くある。この「白を溢す。」もそうだ。メンバーのコーラスと共に観客の声が重なり合ったとき、確実にさらなる生命力を発揮するだろう。ライブでの規制が徐々に緩和されてきているだけに、早くnuriéのライブで、おもいっきり声が出せる日が来ることを心待ちにしたい。

大角龍太朗は晴れ男だ。それはただ、青空を呼び寄せるだけでなく、一人ひとりの人生を晴れにする力を天から授かってきたのだろう。彼がこの世界に生まれてきてくれたことに、心からの祝福を。

◆セットリスト◆

  1. 生きてて偉い
  2. 今宵、未来の為に歌おう。
  3. ミルクティートリップ
  4. いっぱいいっぱいボーイ
  5. 愛を歌わせろ人生
  6. 命に値段を貼られ生きる。
  7. クソ喰らえ。
  8. 阿呆やん。
  9. カンセツショウメイ
  10. 骨太もんちっちくん
  11. 【ばいばい】
  12. 百鬼夜行
  13. RooM-6-
  14. 人として人で在る様に
  15. 晴天に吠える。

En

  1. 生き継ぎ
  2. 15才
  3. 白を溢す。

(文・武村貴世子)


【ライブ情報】
●廣瀬生誕単独公演 はじめてのおたんじょうび会
12月12日(月)阿倍野ROCKTOWN
OPEN 17:30 / START 18:00
前売¥4,000 / 当日¥4,500

●nurié 4th Anniversary ONEMAN LIVE
2023年7月29日(土)新宿BLAZE

nuriéオフィシャルサイト