2022.05.05
D@川崎CLUB CITTA’
D 19th Anniversary Special Premium Live「Dearest you 2022」

今年4月に結成19周年を迎えたDが、2020年2月以来、実に2年3ヵ月ぶりの有観客ライブとなるアニバーサリー公演「D 19th Anniversary Special Premium Live「Dearest you 2022」」を5月5日、川崎CLUB CITTA’にて開催した。

コロナ禍に見舞われたこの2年間余り、もちろんDは立ち止まっていたのではなく、様々なアクションを起こし続けてきた。まずは、その主な動きを改めて振り返りたい。2020年には、オーストラリアの森林火災へ向けたチャリティーソングとして、シングル2作『ACACIA ~Pray For Australia~』『Hard Koala』の同時リリースと、日本初となるダウンロード&サブスクリプション楽曲収益からの自動的な寄付プロジェクト、同様のシステムを活用した日本ユニセフ協会への寄付プロジェクトとライブハウス応援企画を始動、リモートで制作した新曲「Hang in there」を発表。ここまでの出来事は全て2020年4月までに行われたものであり、その行動力とスピード感に驚かされた人も多かったことだろう。

その後、自社スタジオStudio Rosariumでのアコースティックライブ生配信やイベントの実施等、オンラインを活用した様々な発信を続ける一方、2020年末からは歴代MV撮影場所を巡る無観客公演の配信企画「Music Live Video」(以下「M.L.V.」)を新たにスタートさせた。「M.L.V.」とは、オーソドックスな生配信ライブとは一線を画すものであり、ロケーションありきでMVとライブをミックスしたような表現方法。ASAGI(Vo)曰く「コロナ禍で色々悩んだ末に見つけた一つの答え」だったそうだが、世界観と高クオリティにこだわるDならではの映像作品は、さすがの一言に尽きるものであった。また、2021年GWには高田馬場AREAでの7日間連続ライブ生配信を実施。そして、「M.L.V.」第3弾のテーマとなった2017年発売のミニアルバム『愚かしい竜の夢』の楽曲に、新曲3曲と再録曲1曲、2021年4月にFC限定リリースした1曲を加え、全11曲収録のコンセプトフルアルバム『Zmei』を2021年11月にリリースした。

かくして迎えた2022年5月5日、CLUB CITTA’。Dが2008年にインディーズラストライブを行った日付であり、近年ではGWに連続公演を行うことが恒例となっていた彼らにとって、最終日に当たる5月5日は周年アニバーサリーのグランドフィナーレのような意味合いも含んでいた。また、CLUB CITTA’はDの正式始動ライブ、そして2007年にファンと共に「Dearest you」のMVを収録した地。つまり、日程、会場、待望の有観客ライブの再開…と、あらゆる要素が重なった極めて大切な公演であることは言うまでもない。

タイトルにあるように、シングル『Dearest you』の世界観をテーマに衣装やヘアメイクも当時を踏襲した形で行われることが事前にアナウンスされていた本公演。SEとともにステージを覆っていた幕が上がると、「旗上げろー! 我らの航路に!」というASAGIの声を合図に、代表曲の一つ「Night-ship“D”」で勢いよくスタートを切った。ステージには白煙が噴出、ソールドアウトの場内には早くもDのライブの象徴とも言えるオーディエンスが旗を振る光景が広がり、メンバー5人も喜びを隠しきれない様子で笑みを浮かべた。

続く「花惑」ではフロアのヘドバンの嵐、センターお立ち台にフロント4人が集結する姿も見られ、ASAGIの美しいアカペラが響いた「闇より暗い慟哭のアカペラと薔薇より赤い情熱のアリア」では、Ruiza(G)とHIROKI(Dr)、HIDE-ZOU(G)とTsunehito(B)が、それぞれ向かい合い演奏する場面も。そんないつもの光景がただ純粋に嬉しい。

2年3ヵ月ぶりの有観客ライブであることから、ASAGIは「ただいまー! そして皆もDの領域へお帰りなさい!」と、愛するファンへ挨拶。「皆を見ていると、有観客で今日を迎えられて本当に良かったなと思います」と実感のこもった言葉を述べ、「3年ぶりに春を一緒に感じましょう」と「春の宴」が奏でられたわけだが、〈来る日も来る日も私は励まされた おまえ達がいたからここまで来れた〉という歌詞は、今とリンクするようで胸を打つシーンだった。ステージはピンク色に染まり、優しく温かな空気が充満していた。

「7th Rose」で再び場内の熱量を上げると、キャッチーなサビのメロディーが印象的な「闇の国のアリス」へ。そしてHIROKIのドラムソロを経て、最新作『Zmei』収録の「Zmei~不滅竜~」「Venom immunity」を披露。無論、この2曲については有観客ライブでのプレイは初となるが、ステージ、フロアともに抜群の一体感を見せていた。

「声は出せずとも全身で感じてくれ!」(ASAGI)と、ハードナンバー「In the name of justice」を皮切りに後半戦に突入すると、オーディエンスは満場の拳を突き上げ応戦。Ruizaによるメロディアスなギターソロも堪らない。「黒薔薇の騎士」では「沈黙の忠誠を示せ!」と煽るASAGI。また、フロアを見渡しながら胸に手を当て頷くASAGIの姿も。鉄板曲「Guardian」では赤く照らされたステージに再び白煙が噴出。メンバー全員が順にオーディエンスを煽り、さらなる熱狂を求めたのだった。

「皆の拍手が胸に沁みます。15年前のあの日、ここCLUB CITTA’で最愛なるあなた達と満天の星空の下、未来を誓い合いました。コロナ禍でもやって来られたのは、あの日のことを思い出せたからです。だからこそ、ここで有観客ライブを再開することに意味があります。信じられるものがあるから、生きる意味がある。また今日を思い出すことで、生きられる。俺たちの未来へ向かおう」というASAGIの言葉から、本編最後の楽曲「Dearest you」を披露。銀テープが舞ったフロアには色とりどりのペンライトが輝き、まさに星空のような美しい景色を描き出したのだった。

アンコールでは、各メンバーの思いが伝えられた。

「『Dearest you』最高の星空でした。本当に最高過ぎて、まだまだ頑張りたいなと思いました。声が出せない中、一生懸命僕らに思いを伝えようとしている皆の姿を見て、本当に胸がいっぱいです。不安な毎日を過ごす中で、こうやってDのために集まってくれて、本当にありがとう! 有観客でこの日を迎えられて本当に嬉しいし、メンバー皆思っていることだと思うんですけど、皆の前で歌ったり演奏することがこんなにも楽しい、嬉しいことだったんだなと感じています。感極まるよね…。コロナ禍でも何とかしてDの音楽を届けて少しでも元気になってもらおうと、オンラインで可能な限りファンの皆と過ごしてきて、どれも楽しかったし励まされてきたけど、やっぱり有観客で生演奏を聴いてもらうのは最高です。ありがとね。長い間、お待たせしてしまったんだけど、この19年間に出会った全ての人たちに捧げるつもりで今、ライブをしています。20周年に向けて頑張っていきます」(ASAGI)

「今日を迎えるにあたって、自分が一体どんな気持ちになるのか考えていたんですけど、全然想像がつかなくて。イメージはできても、自分の心の中がどんな動きをするのかは、今日ステージに立って音を出して、皆に届けて初めてわかるんだなと思って、それをすごく楽しみにしていたところもあるし、皆とどんな感じで分かち合えるのかなと考えてきました。今、すごく幸せです。拍手がものすごく嬉しいです。心に刺さりました。皆の表情や楽しんでくれている姿、忘れられない景色が広がっています。集まってくれて本当にありがとうございます! 今この瞬間を大切に楽しんで、素敵な時間を皆と作っていけることが何より幸せなので、これからもどうかよろしくお願いします!」(Ruiza)

「色々な思いを抱えながら足を運んでくれた皆さんもいると思うんですけど、俺も少なからず不安はありました。久々のライブですし、あの頃とどういう違いがあるか、やってみないとわからない部分があって。だけど、やっぱりDだなと。そして、俺たちを支えてくれる皆だなと。信じ合える心が共鳴し合っているなという感じが今、すごくしているので、この素敵な空間を心から楽しませていただいています。2年経つと、各々が取り巻く環境や状況、心境の変化も色々あると思うけれど、こうやって俺たちのライブを待っていてくれたこと、そして足を運んでくれたことがすごく嬉しくて。続けてきて良かった、有観客ライブを絶対にやるんだという強い気持ちを信じてこられて良かったなと改めて思います。心から感謝しています。ありがとうございます! 川崎生まれ、川崎育ちの俺は、ここCLUB CITTA’でライブができたことがやっぱりね…ハッピーだぜ!! 笑顔たまんねーな!」(HIDE-ZOU)

「今日はライブの空気感としてどんな風になるかなと思っていて。良いライブになるようにバンドとして全力を尽くすことは当たり前なんですけど、実際やってみて、皆の楽しそうな顔を見られてめちゃくちゃ嬉しいです。ありがとうございます! いつも思っていることではあるんですが、バンドをやっていて、音楽を皆に聴いてもらえることは、皆の人生の一部になることだと思っていて。曲を聴いたりDのことを思い出した時に、あの時のDのライブはああだったなとか、友達に会えたなとか、人生の1ページになることだと思っています。なので、今日という日がとても素晴らしい思い出になるように、もっともっと盛り上がって楽しんでくれたら、自分もめちゃくちゃ嬉しいです。アンコールも最高の空間にしましょう!」(Tsunehito)

「自分のバンド人生の中で、これだけ皆に会えない時間が長く続いたことはなかったし、制約のある中ではありますが19周年という記念すべき日を皆さんと一緒に迎えられたことを本当に嬉しく思います! どうもありがとうございます! 不安な日はまだしばらく続くとは思いますが、こうしてライブができることを嬉しく思いますし、また皆で全力で声を出し合える日が必ず来ると思うんです! 思い出を振り返った時に今日という日もまた素敵な思い出になるじゃないですか? あんな日もあったなと。やっぱり人生は前向きに生きないとね! 前を見ていれば絶対に光は見えるからね! 僕たちDはこれからも前進していくので、皆さんもしっかりついて来てください!」(HIROKI)

そして、「コロナ禍のステイホームと言われていた中で、なんとしてもファンの皆にDの音楽を届けたい。そして、いつの日か皆と再会した時に歌いたいという思いから生まれた曲です。歌詞に〈痛みさえ希望に変えて僕らは誓う 生きて逢おう〉とありますが、ここでやっと生きて逢えたね」(ASAGI)と奏でられたバラードナンバー「Hang in there」、〈明日は今日より少し平和になりますように〉という歌詞が印象的な疾走感のあるメロディアスな「Day by Day」と、光り輝く未来へ導くようなメッセージ性の強い2曲を。さらに、「たとえこの世界が混沌としていても、僕らの思い、愛は何も変わりません。思いや願いや愛、そして音楽は決して無意味なものじゃない。この祈りが空に届くように、祈りを込めて歌いたいと思います。心の中で一緒に歌ってください」と、通常であればオーディエンスのシンガロングとなる箇所をASAGIがアカペラで歌う場面もありながら、愛に満ちた「EDEN」をもって、この特別な夜はラストシーンを迎えたのだった。

『Dearest you』をテーマとしながらも、新旧様々な楽曲がラインナップされたこの日。それは周年というアニバーサリーであることはもちろん、『Dearest you』の本質を軸に、今現在のDの思いを表現した結果だろう。19周年を迎えたこと、すなわち活動20年目に突入したD。“最愛なるあなた達”と共に20周年へと向かうDの快進撃に期待したい。

◆セットリスト◆
01. Night-ship“D”
02. 花惑
03. 闇より暗い慟哭のアカペラと薔薇より赤い情熱のアリア
04. 太陽を葬る日
05. Sleeper
06. 春の宴
07. 7th Rose ~Return to Zero~ / 7th Rose
08. 闇の国のアリス
~ドラムソロ~
09. Zmei~不滅竜~
10. Venom immunity
11. In the name of justice
12. 黒薔薇の騎士
13. 迷いの森
14. Guardian
15. Dearest you

En1
01. Hang in there
02. Day by Day

En2
01. EDEN

(文・金多賀歩美/写真・TAKUYA ORITA)


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