2022.03.21
The THIRTEEN@新宿ReNY
The THIRTEEN tour2022「GLITTER WITH CURIOSITY」TOUR FINAL&6th Anniversary
「ライブをする、ツアーを回る、皆と一緒に時間を過ごすということが、バンドマンにとって最高の贅沢」――これは3月21日、新宿ReNYのステージ上で真緒(Vo)が発した言葉。2020年のコロナ禍以降、現在もツアーの開催は決して容易なことではないが、ライブを行うこと自体が叶わなかった期間を経たからこそ、再開後の1本1本の重みは増し、改めてその喜びを噛み締めた彼の本心から出た言葉だったに違いない。
この日は、今年1月リリースの最新EP『GLITTER』を手に行われたツアー「GLITTER WITH CURIOSITY」のファイナル兼The THIRTEENの活動6周年を祝う記念公演。作品の収録順と同様に、たっぷりとしたテンポ感が心地よいアダルトなムード漂う「Tokyo Sympathy」で幕を開けたわけだが、この楽曲自体が意外性のあるオープニングを目指したものであることが、ライブにおいてもThe THIRTEENの新たなスタイルを構築する一つのキーになっていたと言える。次いで、カラフルな照明とミラーボールが光るなか披露されたリード曲「Focus」をはじめ、今作はテクニカルな要素と遊び心が際立つナンバーが並んでいるが、そのトリッキーな楽曲たちも既にオーディエンスに浸透し、完璧なまでの一体感のあるノリを見せていたのも印象的だった。
実のところ、The THIRTEENは常にライブを想定した曲作りをしており、コロナ禍以降に生み出されたEP『ICY』『GLITTER』は、通常通りのライブが不可能である現在の状況を加味した上で制作された。シャウトを一切排除し、美月(G)がジャズマスターを使用することによってギターフレーズの表現に変化が生まれた『ICY』。『GLITTER』はそれをさらに発展させ、ヘヴィーサウンドという概念ではない、すなわちそれ以前のThe THIRTEENとは異なるベクトルに振り切った作品であり、本人たちもその意識で制作に臨んだそうだが、それは作品単体でのこと。EPの全6曲という曲数は、その全てを違和感なくライブのセットリストに組み込むことができる。むしろ、The THIRTEENの新たな一面を見せる楽曲たちが適材適所に散りばめられたことにより、1ステージとしての表現が、よりブラッシュアップされる結果になったのだ。
また、本公演は周年ライブに相応しく、この6年間に生み出された新旧の楽曲たちが満遍なくチョイスされていたのもポイントの一つ。その中で『GLITTER』の楽曲たちは、既存曲と実に見事に馴染みながら、自らも光り輝き、ステージ全体をより鮮やかなものへ進化させていった。事実、真緒は今作の楽曲たちについて「The THIRTEEN前期と後期の曲を繋いでくれる」と述べており、つまり彼らはそれも計算済みで楽曲を作り上げていたということになる。The THIRTEENの新境地を開いた作品は、彼らの主戦場であるステージにおいて、本領発揮と相成ったわけだ。
「声を出せない、ReNYはジャンプができないという悪条件の中、どうするか。不安になったら僕を見てください」と、真緒が自らお手本となり、キレッキレのステップを踏んだ「GAME」に続き、美月のシャウトとメロディアスなギターフレーズのイントロから始まった「シンデレラ」ではフロア中にタオルが旋回。初期The THIRTEENがメインとしていたメジャーコードを多用したハードナンバー「13’s BLOOD」「LIAR.LIAR.」でヘドバンの嵐が巻き起これば、「心の声をここまで届けてくれ!」という真緒の叫びを合図にスタートした「Rhapsody in Blue」では、オーディエンスが手にするペンライトが場内を青色に染め上げた。
また、The THIRTEENにとってなくてはならないのが、6年間を共に歩んできたサポートメンバーのkazu(B)とRyö(Dr)の存在。「LADYBUG」「moody blues」などベースが要となる楽曲は、思わず釘付けになってしまうkazuの演奏力があってこそのものに違いないし、コロナ禍での葛藤から自分自身にとっての原動力を見つめ直し、諦めずにリスタートするんだというメッセージが込められた「Reset」は、Ryöのエモーショナルなドラミングが相まってあまりにもドラマチックだった。
1stアルバム『PANDEMIC』のリード曲である「CHAINSAW」、キャッチーなパーティーソング「GAMUSHARA」、高速ハードナンバー「STUPID」の連投で騒ぎ倒した本編最終ブロックのラストを飾ったのは、制作時点でまさにこの配置を想定して作られた「Flare」。今を感じるリアリティーのある歌詞が聴く者の胸を打つ。〈随分待ちわびた未来に幸あれ〉という、期待を込めたポジティブなメッセージをもって本編を締め括ったのだった。
MCでは6年間の活動に触れ、真緒が3人に様々なクイズを繰り出す場面も。「The THIRTEENで初めて作った曲は?」(正解:「犯行声明」)、「初めて4人で食べたごはんは?」(正解:渋谷ハチ公口を出て左手のビル4階の居酒屋)、「初めて機材車でツアーを回った時、kazuさんが買ったパンは?」(正解:塩パン)…など笑いを交えた和やかなトークがありつつ、「The THIRTEEN全楽曲中No.1は?」という気になる質問には、kazuが「Reset」、Ryöが「サイレン-siren-」、美月が「Lament」と答えていたことを記しておきたい(真緒は「僕は言わない」とのこと)。また、「6年間で一番思い出に残っているシーンは?」という真緒からの問いに対して、美月は岡山でのライブ後にバンドセットが置いてある居酒屋で、酔っ払いながら皆で演奏したことだと、実に楽しげに答えたのだった。
立て続けにプレイした「Sinister Design」「daydreamer」「WHITE DUST」で、熱量高くハッピーなムードを充満させたアンコールだったが、この日のラストナンバーに選ばれたのは「memento mori」。全身全霊のエモーショナルなパフォーマンスで、この記念公演を締め括るというのが、何ともThe THIRTEENらしい。そのタイトルが示す通り「自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな」という警句も含め、自分を変えられるのは自分でしかないのだと、そんなメッセージを感じ取った。
最後に、二人の言葉を残したい。
「この4人で無事に6周年を迎えることができたのも、こうやって駆けつけてくれる皆と、どこかで見守ってくれている皆のおかげだと思っています。辛い時期もありました。やめてしまおうかなと思ったこともたくさんありましたし、会えない間に皆がどこかに行ってしまうんじゃないかと…人生観なんていうのは道の中で変わっていきますし、一生死ぬまで一緒に生きるなんて、難しいとわかっています。君たちも人生の中で転機となる色々なことがあると思います。「一生ついてこい。一生俺の側にいてくれ」って、リアリティーがないなと思ったんです。だからこそ、僕は今を一緒に生きてほしいと思っています。今日という瞬間、3月21日、皆に見守られて歌えたこと、この3人と一緒に演奏ができたこと、楽しい時間が過ごせたこと、温かいスタッフに囲まれたこと、たくさんの関係者に恵まれたこと、色々なことがあって今日というステージに立てたと思います。改めて御礼を言わせてください。ありがとうございました! あとは皆が元気で、幸せな人生を送ってもらって、またいつかどこかで俺たちに会いに来てください。その時は必ずこの4人で、めちゃめちゃ幸せな楽しい時間、忘れられない瞬間、思い出に残る一瞬を届けますので。それは約束します」(真緒)
「もう6年ということで。最初、始める段階で色々な選択肢がありました。その中で僕らはやっぱり続けたかったですし、最初は偉そうに「居場所をなくしたらあかん」なんて言っていたんですけど、続けているうちに段々と自分の居場所になってきて、一番大事やなと本当に思う日々です。改めて、そう思わせてもらったというか、気付かせてもらったというか。6年変わらず愛を分けていただいて、自分の中で一番になったなと、ここ最近特に感じたんです。本当にありがとうございます!」(美月)
今後のThe THIRTEENの動きとしては、5月に怪人二十面奏、ナナとの東名阪スリーマンツアー開催、そして本人から「44歳のゾロ目を祝ってください」という言葉もあった通り、6月7日には再び新宿ReNYにて、真緒のバースデーライブが控えている。永遠は存在しないからこそ、彼らにとっての“最高の贅沢”を一つでも多く共有してほしい。そしてそれが、あなたにとっての“幸せ”のピースになったら幸いだ。
◆セットリスト◆
01. Tokyo Sympathy
02. Focus
03. LADYBUG
04. HUSKY
05. GAME
06. シンデレラ
07. PSYCHOPATH BILLY
08. 13’s BLOOD
09. LIAR.LIAR.
10. Rhapsody in Blue
11. shallow
12. Reset
13. moody blues
14. CHAINSAW
15. GAMUSHARA
16. STUPID
17. Flare
En
18. Sinister Design
19. daydreamer
20. WHITE DUST
21. memento mori
(文・金多賀歩美/写真・Jun Tsuneda)
【リリース情報】
●New EP『GLITTER』
2022年1月12日(水)発売
[豪華盤](CD+DVD)GR13-0037 ¥10,000(税込)
※外付けブックレット&スリーブケース仕様、32Pブックレット(インタビュー付き)
※通販&会場のみの販売
[限定盤](CD+DVD)GR13-0038 ¥3,080(税込)
[通常盤](CD)GR13-0039 ¥2,530(税込)
<収録内容>
[CD]
01. Tokyo Sympathy
02. Focus
03. GAME
04. moody blues
05. Flare
06. daydreamer(※豪華盤、通常盤のみ)
[豪華盤DVD]
「Focus」Music Video & Member Solo Music video & off shot
[限定盤DVD]
「Focus」Music Video
【ライブ情報】
●ROUTE40 20+13+7
出演:怪人二十面奏、The THIRTEEN、ナナ
5月14日(土)OSAKA MUSE
5月15日(日)名古屋ell.SIZE
5月28日(土)高田馬場CLUB PHASE
●真緒バースデーライブ(タイトル・詳細未定)
6月7日(火)新宿ReNY