其の十一 ~みくる追悼 ONEMAN「Bora Bora Blue」レポート~
2016年10月26日に永眠した、レイヴのギタリスト・みくる。その初めての追悼ライブが、彼の4回目の命日に、彼らが最後に5人でライブを行った目黒鹿鳴館で開催された。今なお4人が抱き続ける「会いたい」という気持ち。それを音にして、天高く届けたこの追悼ライブの模様、そして4人のみくるへの思いをお届けする。
2020.10.26
レイヴ@目黒鹿鳴館
レイヴ Gt.みくる追悼 ONEMAN「Bora Bora Blue」
レイヴのギタリスト・みくるが亡くなって4年の月日が経ったこの日、レイヴが初の追悼ワンマンライブ「Bora Bora Blue」を開催した。ライブに冠された「Bora Bora Blue」とは彼のギターの色、タヒチ・ボラボラ島のブルーラグーンを模した色で、彼が生前綴ったブログのタイトルでもある。雨男の異名をとっていたみくるの献花式は、彼の死を悼む多くの人の心を映したかのような土砂降りで、以降も10月26日はいつも雨。しかし今年は、常夏の青い海のような、暖かく澄んだ秋の空が美しく広がっていた。
会場は、4年前の6月4日に5人で最後のワンマンライブを行った目黒鹿鳴館。コロナ禍において彼らの「終活」が延期を余儀なくされる中でも、「追悼ライブはあの日あの場所だから意味があるので、延期にはできない」とnisaがパーソナルインタビューで語ったように、このライブは4人にとって特に思い入れの強い、特別なものだった。
時計が開演時間を指すと場内が暗転。まばゆい光と共にステージを覆っていた紗幕が落とされ、ステージに姿を現した4人から最高の手向けとして、みくるが愛してやまないSIAM SHADEの「1/3の純情な感情」が奏でられた。
「さぁ行こうか、みくる!」
レンの絶叫と凪の力強いドラムで「SETSUDAN」へとなだれ込み、レン、nisa、悠がステージの際に居並ぶと、客席からタオルの風が巻き起こった。続く「ラヴストーリーは突然に(悲)」ではハンドクラップと一糸乱れぬフリで応えるフロアに、レンが「届けるぞ、俺らで!」と力強く宣言。さらにこの日は、みくるのギターやコーラスが全て同期で流され、ギターソロでは、「下手ギターみくる!」とレンがコール。このライブならではの心憎い演出で、ファンを歓喜させた。
爆発的なパワーが炸裂したアップテンポなナンバー「コロシアムガール」、レンが高らかにピースを掲げてスタートした「オヒトリセレナーデ」と、ライブが進むにつれ、フロアの熱はますます上昇していく。コロナ禍での感染症対策の兼ね合いでコールやモッシュはできなくとも、アグレッシブなメンバーのアクトにハンドクラップや拳で果敢に応え、互いの熱量が交錯する様は眩しいほどだ。
そんな様子に、レンは目を細めながら、「みんな飛ばすねー!」「素晴らしい!」と賛辞を送り、「今日は真っ青な空の下、こうしてライブを届けられることがとても嬉しい。ありがとう!」と感謝を伝えた。そして、この日のセットリストを組む際、みくるが作った曲を中心に、みくるがギターを弾いた曲のみを選んだことに触れ、「あいつ、5~6曲の中に、すげー名曲残しとるやん。尾崎豊みたいなことするやん!」と語って、会場を和ませたのだった。
「曲たちは生きていて、それを覚えている人たちも生きているので、今日はとことん楽しんでいきましょう!」という言葉でスタートした本編後半。前半の勢いそのままに、鳴り響くフロアタムと共に「アイコトバ」をドロップし、轟音のベースがうなりを上げる「dramatic show」へと続いていく。ふいに暗転した会場に響き渡った哀愁たっぷりのギターが、みくるが参加した最後のシングル曲「ナミダヒロイン」の幕開けを告げると、空気は一変。〈外も曇り空から涙 私のようで 明日は晴れるのかな〉と囁くように優しく歌い、ラスサビで感情を爆発させ、アウトロのnisaの情感豊かなギターの余韻の中で再び暗転した。
沈黙の中、凪の刻むカウントで華やかな「ノスタルジック」へ。そこから、レンの特大の煽りと、nisaと悠のシャウトが響き渡った「フラチズムディナー」へとなだれ込み、ステージと客席の一体感は否応なしに増していく。飛び切りのアッパーチューンを立て続けにお見舞いし、高揚感たっぷりに駆け抜けた本編。そのラストをみくる作曲の「アクメ狂詩曲」で盛大に締め括ると、客席からは大きな拍手が沸き起こった。
アンコールで姿を現したのは、アコースティックギターを手にしたレン。単身ステージに立った彼の口から、みくるのお父さんと今でも親交があること、そのお父さんから、みくるがレイヴを始める前に「ヤバいヴォーカルを見つけた。自分はこのメンバー、あのヴォーカルでバンドは最後にする」と家族に話していたというエピソードが語られた。
「それが嬉しくてね。僕はみくるの人生の中で最後のヴォーカルになれて、本当に幸せです」と話し、「みくるに届いたらいいな」という言葉と共に奏でたのは、この日のために彼が書き下ろした新曲「かくれんぼ」。暗いステージに差す一筋のスポットライトの下、〈まだ行かんでよ もっと一緒におろうよ〉〈見送ったふりをしてるだけ〉――澄んだ声で優しく、まるでそこにいるみくるに語り掛けるように、声を震わせ歌い上げたレンの姿に、客席からは涙と共に惜しみない拍手が送られたのだった。
そこからは、レンに呼び込まれた3人と、みくるの思い出話に花を咲かせ、場内は和やかな雰囲気に。さらに、「5人で笑っているものが一番いいかなということで、イラストレーターの方に描いてもらいました」というnisaの説明で、このライブのために制作された5人(+みくる考案のレイヴのオフィシャルキャラクター「サディスティッくん」)の描かれたTシャツとキーホルダーができるまでの経緯も語られ、「こういうライブを商業的なものにはしたくなかった。亡くなった当時は僕らも余裕がなくてできなかったので、僕らのエゴみたいなものなんですけど」という言葉を添え、その売り上げをみくるのご遺族に渡すという説明がなされた。
そんな和やかなトークで心を温めた後は、「もっともっと、オゾン層を突き抜けてあいつに届けてやろうぜ! 全員でレイヴしようぜ!」という言葉と共に、「サブカル」「人生つらみちゃん」「有頂天バブル」というキラーチューンを次々投下。そして、この日のラストを飾った、みくるがギターヴォーカルを務めた楽曲「Miracle☆るんるん」で、ファンの盛り上がりも最高潮に達し、後日悠が「何よりみんなのMiracle☆るんるんのフリが完璧すぎて驚きました」とSNSで発したように、素晴らしい一体感でフィナーレを飾ったのだった。
この曲を聴きながら脳裏をよぎったのは、2015年のクリスマスに行われたライブでのみくるの姿だった。天真爛漫に歌い、ギターをかき鳴らした後、彼が口にした「レイヴってチャラチャラしとって誤解されやすいんだけど、音楽を言葉で伝えたいって思っているバンドだから」という言葉。今4人が、みくるに思いを伝えるべく音を奏でている姿は、まさにその言葉を体現しているのではないだろうか。
涙など吹き飛ばすように、どこか粗削りで、ド派手に明るく、まるであの頃に戻ったかのようなセットリストで届けられた特別な一夜。彼らの最初で最後の追悼ライブは、しめやかな弔いではなく、全員が笑顔で、幸せな空気に包まれながら幕となった。
ライブ直前、nisaに「今みくるに伝えたいこと」を聞いてみたところ、「バンドを守れなくてごめんって言いたい」と話してくれた。現在レイヴは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、2020年12月18日に行われるレイヴ 終活再開前 LAST ONEMAN 「5×1=レイヴ」で一旦全ての終活を休止することを宣言している。その再開の目途が立った暁には、彼らの活動終了への進撃が始まることだろう。そして、先行き不透明な状況下でも“ファンに誠実にありたい”という彼らの正義を掲げて迎える活動の終わりはきっと、みくるが優しく笑いながら頷いてくれるものになるに違いない。
温かな気持ちで心が満たされたこの日。終演後、ふと見上げた空には、綺麗な月が浮かんでいた。
Photo Garrary
セットリスト
- 1/3の純情な感情(cover)
- SETSUDAN
- ラヴストーリーは突然に(悲)
- コロシアムガール
- オヒトリセレナーデ
- アイコトバ
- dramatic show
- ナミダヒロイン
- ノスタルジック
- フラチズムディナー
- アクメ狂詩曲
EN
- かくれんぼ(レン solo)
- サブカル
- 人生つらみちゃん
- 有頂天バブル
- Miracle☆るんるん
追悼ライブ密着ムービー
4年越しに行われた追悼ライブ。その舞台裏の模様を、4人のコメントと共にお届け!
追悼ワンマンに寄せられたメッセージ
ライブ終了後にファンの皆様から寄せられた追悼ワンマンの感想や、みくるさんやメンバーへのメッセージ。たくさんお寄せいただいた中から一部をご紹介します。
こんなに愛されるるんさんの人生に少しでも関われて嬉しいです。みんな大好き!
出来ることならば今すぐにでもみくるんに会いに行きたいです。みくるんとさよならした時は高校生だった私ももう20歳になります。やっぱり凄く寂しいけどこっちでぼちぼち頑張ってるよ!いつかそっちに行く時はジャックダニエル持って行くね。
みくるさんへ
いつまでずっとずっとだいすきです
幸せをくれてありがとうございます!
みくるんもレイヴメンバーみんな大好きです
本日のライブお疲れ様でした!
もう4年かと早くも感じましたが当時は多分こんな感じのライブが出来る心境ではなく、これからの活動はどうなるのだろうとばかり思っていました。
当時もきっとメンバーさんが一番辛く悲しい思いをしたのだと思います。
私たちファンが今日の様な追悼ライブを体験できたのは当時から4年間メンバーさん達が乗り越えて、レイヴを続けて来てくれたお陰だと思っています。
何度かうるっときた場面もありましたが終始笑顔で参加できました!
ありがとうございました!
私はみくるさんが大好きで、亡くなって4年経ちますがそれでもレイヴが大好きでずっと応援を続けて来ました。生前の思い出が溢れるLIVEでしたが、4年の間に亡くなった寂しさで潰されそうになった時支えてくれた友達にも感謝が溢れて涙が止まりませんでした。5人のメンバーが久々に揃ったイラストも、本当に嬉しかったです。
レンさん、nisaさん、みくるさん、悠さん、凪さん、お疲れ様でした!! 私がレイヴを知ったのは1年とちょっと前でしたが、レイヴの曲やメンバーさん全部にとても惹かれました。その日から今日まで、そしてこれからもレイヴを好きです!そして、今日、追悼の時私は行けなかったのですがきっととても良い素敵なステージだったでしょう。みくるさんにも会いたいという気持ち、思う大切な気持ち、絶対に届いたと思います! 文章を書くのが下手なので言いたい事などを上手くまとめられませんでしたが、私は本当にレイヴというバンド、レイヴのメンバーの皆さん、レイヴという存在が完全になくなってしまうその日までずっとずっと好きでいます。改めてお疲れ様でした! そして、みくるさんありがとうございました。
間違いなく、今の私があるのはみくるさんのおかげ、レイヴのみんなのおかげです。一生忘れることは出来ないです。交わした言葉、表情、声、姿、今でも鮮明に覚えています。いまだに実感が湧かない時もあるけど、それはそれで良いのかなと思います。みくるさんが守ろうとしたレイヴをずっとずっと残していけたらいいなぁと思います。
みくるさんに出会えて本当に良かった!
ずっと大好きです。
追悼ライブ、行く気でチケットも取ってましたが結局行けませんでした(T_T)
めーちゃ行きたかった(;_;)
コロナが憎いです(T_T)
コロナのせいで12月のライブも行けず、、、、、、
いつか開催される里帰りツアーとラストワンマンツアーは行けますように(T_T)
レイヴのこと大好きだし、レイヴに出会えてよかったです。
出逢ってくれてありがとう
まずメンバーの皆さんみくる追悼ワンマンお疲れ様でした!凄く素敵な時間すぎてあっという間に終わってしまいました。
この時間がずっと続いたらいいのになーなんて(笑)。
4年前にノスタルジックを演奏された時は悲しくて泣いてしまったけど笑顔で聴くことが出来ました。
前なら悲しいって気持ちが先行していたけど、今笑顔で聴けるのは今居るメンバーがレイヴを続けてくれてるからだと思います。
もしも続けてなければきっと悲しいままだったんだろうなって思います。メンバーが笑顔で演奏してる所を見るとこっちまで笑顔になりますね!
メンバーの皆さんはライブを終えてどんな心情ですか?
そして活動一時休止を発表されましたが、いつ再開出来るかわからない状況で不安な気持ちも有ります。でも再開を楽しみに終活前ラストワンマンまで全力で応援させてもらいます!
楽しい時間をありがとうございました!
レイヴのライブを見ると、やっぱりライブって、音楽っていいなって思わせてくれるのですが、私にとって半年以上ぶりのライブハウスでのライブ鑑賞もあり、より強く心に響きました。
めちゃくちゃ熱量を感じたし、メンバーみんなの笑顔を見れてたまらなく嬉しかったし、この場所に居れてよかったって思いました。
レンさんの作ってきたかくれんぼ、とても良かったです。人は忘れていく生き物ってだれかが言ってましたが、レイヴやみくるさんのことは忘れたくないなぁって思います。
今年残り少ないですが、これからも応援しています!
<編集後記>
連載11回目となる今回は、みくる追悼 ONEMAN「Bora Bora Blue」のレポートをお届けした。
4年越しに開催された追悼ライブは、温かく、そして優しい空間だった。
「追悼ライブ」という特別な時間は、あの場にいた全ての人、そして残念ながらあの場にはいられなかった人たちが、それぞれの記憶の中のみくるを、もう一度鮮やかに思い返すきっかけになったのでないだろうか。
混迷を極めた2020年も、残すところ1ヵ月半。
誰もが予想しなかった1年となったが、この追悼ライブを終えて一つ前進した4人が、レイヴとしての日々を引き続き全力で駆け抜けることだけは間違いない。
11月16日の2MAN LIVE SERIES『戦友-ライバル- vs Chanty』振替公演、21日(土)の「帰ってきた耐久レース!全曲ワンマン – 2016~2020 -」、そして12月18日にTSUTAYA O-WESTで行われる終活再開前 LAST ONEMAN「5×1=レイヴ」――そこで彼らが見せてくれる光景を目に焼き付けていただきたい。
(写真・小野千明/文・後藤るつ子)
レイヴ
レン(Vo)、nisa(G)、悠(B)、凪(Dr)によるロックバンド。2012年8月に福岡県で結成し、1stシングル『ALIVE』をリリース。2016年10月にみくる(G)が病気のため永眠。2017年3月に1stフルアルバム『不幸福論』をリリース。2018年3月、24RECORDSに移籍し、5月に移籍第1弾としてミニアルバム『メンブレさん通ります。』を、その後シングル『ハラスメント』『スーサイドBABY』『BOTEKURI』『初恋』、2020年2月に会場限定シングル『ドリップ』をリリース。2月25日に年内をもって活動を終了することを発表し、「終活」を宣言した。
オフィシャルサイト
リリース情報
無観客ライブ映像作品『レイヴ 8周年記念 無観客ライブ「フラチズム -∞-」』
2020年8月21日(金)デジタルリリース
¥5,000(税込)
¥3,000(税込)
¥3,000(税込)
¥3,000(税込)
¥3,000(税込)
収録曲
- ナミダヒロイン
- 人生つらみちゃん
- サイコフラチズム
- UKIYO
- ドリップ
- 形ないモノ
- メレンゲ
- わりきりララバイ
- 君がアバズレ
- オヒトリセレナーデ
- アクメ狂詩曲
- フラチズムディナー
■販売サイト
レイヴ終活一覧
#1 ONEMAN TOUR「序章」※開催済み
#2 6月 8周年ファン感謝祭『帰ってきた耐久レース!全曲ワンマン』開催
#3 2MAN LIVE SERIES『戦友-ライバル-』開催
#4 夏 8周年里帰りTOUR『原点回帰』開催 (開催予定地:長崎県・宮崎県・福岡県)
#5 秋 LAST ONEMAN TOUR開催
#6 10月 Gt.みくる追悼ライブ開催
#7 冬 LAST LIVE開催
ライブ情報
●2MAN LIVE SERIES『戦友-ライバル- vs Chanty』振替公演
11月16日(月)渋谷REX
●レイヴ 8周年ファン感謝祭「帰ってきた耐久レース!全曲ワンマン – 2016~2020 -」振替公演
●レイヴ 8周年ファン感謝祭「帰ってきた耐久レース!全曲ワンマン – 2012~2015 -」振替公演
11月21日(土)池袋EDGE
●レイヴ 終活再開前 LAST ONEMAN「5×1=レイヴ」
12月18日(金)渋谷TSUTAYA O-WEST
[“終活”再開後に延期]
●8周年里帰りTOUR「原点回帰」
宮崎公演、長崎公演、小倉公演
●LAST ONEMAN TOUR「Day×Bye×day」
東京公演、仙台公演、広島公演、大阪公演、名古屋公演、福岡公演
●LAST ONEMAN
※本来とは別の形での開催の可能性もございます
[協議中]
●2MAN LIVE SERIES「戦友-ライバル- vs ベル」
●2MAN LIVE SERIES「戦友-ライバル- vs DOF」
●2MAN LIVE SERIES「戦友-ライバル- vs NEVERLAND」