2013.10.19
Alice Nine@渋谷公会堂
「エルセーヌ Presents TOKYO MOSH HALLOWEEN NIGHT」
10月19日、一足早いハロウィンパーティーが渋谷公会堂で行われた。
これまでにもライブで様々なドレスコードを設けてきたAlice Nineだが、この日はハロウィンらしく「仮装」がお約束。客席を埋め尽くす妖精やアリスやカボチャの姿に、お祭り気分も高まっていく。
不意の暗転。ドレープを寄せた重厚な布を垂らし、まるで劇場のような設えのステージに、思い思いの仮装をしたメンバーが姿を現すと、大きなどよめきと歓声が沸き起こった。
Nao(Dr)はポップな柄の衣装に猫耳と黒い尻尾を付け、沙我(B)は自身初という白塗りで映画『ダークナイト』のジョーカーに扮している。虎(G)はこれまでにも披露したことがあるエレガントな燕尾服姿だが、ハロウィンらしく顔の右半分に骸骨メイクを施し“闇に堕ちた執事”に変身。ヒロト(G)はシルクハットをかぶったヴァンパイア姿で客席に恭しくお辞儀をして見せた。
「Trick or Treat! 始めようか!」
血のりの付いた軍服姿で颯爽と登場したヴォーカルの将が、クリーチャーたちのパーティーの幕開けを高らかに宣言すると、力強いギターリフで「the Arc」がスタート。オーディエンスは激しいヘドバンを見せ、高い熱量が会場内を満たし始める。
続く「RAINBOWS」でヒロトは両手を広げて客席を煽り、さらにヒートアップした中、沙我の滑らかな低音が響き渡る。目まぐるしく明滅するライトに、ステージのクリーチャーたちが現れては消え、消えては現れる様は、まるで映画のワンシーンのようだ。
「拳を上げて!」の叫びとともに「Drella」へ、そして「九龍-NINE HEADS RODEO SHOW-」では赤い閃光が会場を照らす中、将の伸びやかな高音と骨太なシャウト、そして強靭なバンドサウンドで会場を文字通り揺らして見せた。
「ちょっと早いけどハロウィンですね」
この日、最初のMCでそんな挨拶をした将は、「ライブにコスプレして来いって言ったり、白を着て来いって言ったり、黒を着て来いって言ったり。でもそうやってみんなの愛を確かめちゃうんだよね」と笑った。
オーディエンスの愛情をたっぷり感じた彼らが続いて奏でたのは、「WHITE PRAYER」。青い光の下、胸打つリリックを感情豊かに歌い上げる。続く「暁」では、その詩世界を具現化するように、朝焼けのような赤い光が会場を包み込んだ。
ここからの展開は実に鮮やかだ。
〈C’mon, C’mon, C’mon, C’mon〉エフェクトがかかった将の声が木霊のように響き、「Affection」へ。足元のライトが放つ幾筋もの光に、まるで不思議な森の中に迷い込んだかのような感覚に陥るも、空気は一転。バンド初のタオル回しソングならではの新鮮な盛り上がりを生み出した。
ふいにあたりは漆黒の闇に包まれ、その闇の中から柔らかなアコースティックギターの音色が響く。アコースティックアレンジされた「朱い風車」の旋律に大きな歓声が沸きあがった。2本のギターが美しく絡み合い、「全員で歌ってください」という将の声に、手を繋いだオーディエンスのシンガロングが重なって生み出された音は、ひたすらに優しく穏やかだ。そんな感動的なシーンで、沙我が照れたようにNaoのタムをいたずらし、会場の笑いを誘ったのはご愛嬌。将はオーディエンスに「最高でした」という心からの賛辞を送ったのだった。
ところで――、将曰く、この日のメンバーの仮装はアニメ縛りにするという案もあったそうだ。そんなMCでの前振りから、
「今日はイベントだから、俺たちが今一番カバーしたい曲をカバーしようと思う」
という言葉とともに荘厳な合唱が響き、アニメ『進撃の巨人』で人気を博した「紅蓮の弓矢」のカバーを披露! まさかのサプライズで、会場のヴォルテージを急上昇させ、「閃光」、妖艶さとヘヴィネスに磨きがかかった「闇ニ散ル桜」、そして会場の熱が最高潮に達した本編ラストでは、将が客席に降り立ち、激しくメロディアスに「G3」を魅せ切ったのだった。
アンコールでは、ギター陣が軽快なトークを展開。最後に登場する将がなかなか出られないほどの盛り上がりを見せ、ライブとはまた違ったAlice Nineの魅力をたっぷりと味あわせてくれた。
この日のアンコールを飾ったのは彼らのライブ後半の定番曲たち。「RED CARPET GOING ON」では、オーディエンスが飛び跳ね歌う中、沙我がフロアを気ままに歩き回り、ラストの「春夏秋冬」では会場に笑顔が溢れ、まさに大団円という言葉がふさわしいフィナーレでライブを締めくくった。
現在地下活動中のAlice Nineが、極上のセットリストで見せてくれた、とっておきのハロウィンパーティー。この上ないハッピーでトリッキーなひと時を存分に堪能させてくれた。
◆セットリスト◆
01. the Arc
02. RAINBOWS
03. Drella
04. 九龍-NINE HEADS RODEO SHOW-
05. WHITE PRAYER
06. 暁
07. Affection
08. 朱い風車
09. イレイザー
10. Daybreak
11. 紅蓮の弓矢(カバー)
12. 閃光
13. 闇ニ散ル桜
14. G3
EN
01. RED CARPET GOING ON
02. Heart of Gold
03. 春夏秋冬
(文・後藤るつ子)