2013.8.16
Angelo Presents@SHIBUYA-AX
「THE INTERSECTION OF DOGMA」
昨年に引き続き2回目となるAngelo主催イベント「THE INTERSECTION OF DOGMA」が開催された。今回の出演アーティストはAngeloの他にINORAN、MUCC、lynch.、heidi.と、昨年に負けず劣らず豪華かつ意外なラインナップとなったわけだが、会場は昨年同様にSHIBUYA-AX。もちろんチケットは即完、会場のキャパシティ最大1700名に対しての申し込み総数はなんと1万名を超えたというのだから、その注目度と期待度は言うまでもない。
定刻、客電が落ちスクリーンに映し出されたのは「天地創造」をモチーフとした映像。昨年のモチーフ「七つの大罪」、イベントを全面的にプロデュースするAngelo・キリト(Vo)の詞世界においても一貫して掲げられているのは「物事の根源」である。
ライブはheidi.のステージから幕を開けた。「飛ばしていこうぜ!」(Vox.義彦)と、お馴染みの楽曲「泡沫」で勢いづける。中盤で投入したのは意外にもバラード曲「彼方」だった。一音一音に魂を込め奏でる4人の姿に圧倒される。すると、ガラリと空気を変え、ライブには欠かせない「おまえさん」でオーディエンスの掛け声が響けば、続く「流星ダイヴ」では義彦のシャウトにフロアはOiコールと拳で応え、「やべっ、めっちゃ最高だ! ありがとう!」という義彦の言葉と共にheidi.のステージは幕となった。「トップバッターは盛り上げることが重要」と自ら話した通り、その役割を十分に果たしたステージであった。
2番手は、今イベント唯一の連続出演アーティストであるlynch.の登場。「lynch.です。よろしくお願いします」という葉月(Vo)の挨拶が硬派を貫くlynch.らしくもあり、真正面から勝負しようとする彼らの意気込みを感じた。「ALL THIS I’LL GIVE YOU」でスタートを切ると、その轟音とデスヴォイスで一気に彼らの気迫がフロアを支配する。晁直(Dr)が土台を支え、フロント4人が前方に横一列となりプレイする姿は得も言われぬ迫力を持つ。まさに初っ端からトップギアだ。轟音の強襲は留まることなく「lynch.を初めて観る人もいると思います。非常に簡単です。好きなように暴れてください!」という葉月の言葉から「EVILLY」「I BELIEVE IN ME」を連投、さらに「ヤリたくないか!? S●Xしようぜ!」を合図に「pulse_」へと流れ、ラストの「NIGHT」まで終始とてつもない熱量を放出しステージを後にしたのだった。
次なるステージ、“INORAN”の文字が映し出されると、その出演順の意外さに場内がどよめいた。幕が開くとシャンソン調のSEと共に電飾が煌めき、なんともムーディーな空気が場内を包み込む。だが、バンドメンバーそしてINORANが登場し「smoke」でライブが始まれば、一気にロックモード全開だ。「こういうイベント大好きです。前のバンドを観ていて早く(ステージに)出たかった」とINORAN。彼のエネルギッシュなプレイとその言葉に、枠に捕われず常に刺激を求めるINORANだからこそのイベント出演なのだと納得させられた。そして、ハンドクラップがステージを更に盛り立てた「grace and glory」に続き、〈Get Laid!〉〈OH YEAH!〉の掛け合いが響き渡った「Get Laid」で最高潮に達したところで、INORANのステージは幕を下ろした。曲中にINORANが発した「楽しもうぜ、音楽を!」という言葉が忘れられない。
続いては、MUCCの登場だ。最新アルバム『シャングリラ』の1曲目でもありバンドサウンドが全面に打ち出された「Mr. Liar」でスタートを切るあたり、彼らの戦闘モードを感じた。シンプルなステージを裸足のフロント3人が縦横無尽に動き回る。かと思えば、実に怪しげに「テリトリー」を披露。「ニルヴァーナ」では合唱が響き渡り、ミヤのギターが奏でられた瞬間歓声が湧いた「蘭鋳」ではフロアはモッシュ&ダイブと、ワンマンさながらの盛り上がりを見せる。「フロアが揺れると楽屋も揺れるんだ。Angelo大先生にやきもち焼かせよう作戦」(Vo.逹瑯)と、揃ってのジャンプを促す一幕も。そしてMUCCが元来持つドロドロとしたダークさと、美しいメロディ、逹瑯の圧倒的なヴォーカルが聴衆を引き込む「リブラ」で、壮大なラストを迎えた。短い持ち時間の中でバンドの持ち味を存分に発揮しながら起承転結を作り上げることができるのは、彼らのキャリアの成せる技だろう。
大トリはもちろん主催者のAngelo。ステージ中央から順に登場するメンバーのシルエットに歓声が湧く。爆発的威力を持つ「RIP」で一気にフロアの熱を上げ、最新アルバム『RETINA』メイントラックである「シナプス」、先頃リリースされたばかりのシングル曲「OUTBREAK」を立て続けに披露。続く「Script error」では満場の拳が上がり、キリトがギル(G)を指差せば「Manic State High Pressure」の始まりだ。銀テープが舞い場内はさらに熱を帯びると、ラストは「PLOSIVE」でオーディエンスが一体となったジャンプでフロアを揺らした。メンバーがステージを後にすると、すぐさまアンコールを求める声が響く。再び登場すると、キリトは「持ち時間は一緒なのでアンコールをやるのはとても心苦しい」と言い、参加アーティストへの感謝を述べ「不完全燃焼だと思うので、残り1曲でぶち壊そうぜ!」と暴れ曲「SCRAP」を投入! すると、曲中になんと逹瑯(MUCC)と葉月(lynch.)が登場! 目の前で繰り広げられるレアなステージにフロアの興奮は絶頂に達したのだった。
「基本的に無表情だと言われますが、心の中での喜怒哀楽は激しい」と話していたキリトだが、この日は短い出演時間の中でも時折見せる笑顔が印象的だった。それはこのイベントがいかに充実したものであったかということの表れだったのではないだろうか。キリトの言葉を借りれば「単なる見本市ではない」真剣勝負のイベントであるということは不変だが、参加アーティストや演出面において昨年とは異なる意外性でも私たちを堪能させてくれた。次なる開催がいつになるのか、どんなものになるのか、全てはまだ不確かだが、それが実現する時は揺るがない本質と意外性に満ちたものになることだけは、間違いないだろう。
◆セットリスト◆
【heidi.】
1. 泡沫
2. 月光ショータイム
3. 彼方
4. おまえさん
5. 流星ダイヴ
【lynch.】
1. ALL THIS I’LL GIVE YOU
2. -273.15℃
3. MIRRORS
4. EVILLY
5. I BELIEVE IN ME
6. unknown lost a beauty
7. pulse_
8. NIGHT
【INORAN】
1. smoke
2. SuperTramp
3. no options
4. Hide and Seek
5. grace and glory
6. Get Laid
【MUCC】
1. Mr. Liar
2. G.G.
3. テリトリー
4. ニルヴァーナ
5. 蘭鋳
6. リブラ
【Angelo】
1. RIP
2. シナプス
3. OUTBREAK
4. Script error
5. Manic State High Pressure
6. PLOSIVE
En. SCRAP
(文・金多賀歩美)