Sadie『GANGSTA』リリース記念企画インタビュー

Sadie

破壊と再生に挑んだ『bleach』を経て、新たに生み出されたニューアルバム『GANGSTA』。バンドにとっての分岐点となり得る、スタイリッシュかつアバンギャルドなSadie最新作に迫る!

新曲に加え、初期楽曲の再構築に挑んだミニアルバム『bleach』からわずか4ヶ月。来たる10周年を前に、Sadieのニューアルバム『GANGSTA』がリリースされる。彼らが元来もつ攻撃性とメロディックなサウンドはもちろん、楽曲「bleach」でその片鱗が見えていた、新たなSadie像を感じさせられる、スタイリッシュさが際立つ一枚。彼らにとってはあくまで自然な流れだったという今作について、真緒(Vo)&美月(G)に話を聞いた。

◆「ここまで行ったらSadieじゃないかもしれない」というのも考えなかった(美月)

――この1年の間に、アルバム『MADRIGAL de MARIA』発売(2013年10月)、ツアー(21公演)、ミニアルバム『bleach』発売(2014年5月)、ツアー(9公演)、今回のアルバム『GANGSTA』発売という流れは、Sadie史上、何番目に大変でしたか?

真緒:どう考えても一番(笑)。『bleach』は再構築という形とは言え、結局は一緒なので、年間で出した曲数は一番多いですよね。

――濃い1年でしたね。

美月:濃かったですねぇ。

――まず、今作のタイトル『GANGSTA』について教えてください。


真緒:10周年を前に、改めて一丸となろうというのがあって。ギャングというのは組織で、メンバー、スタッフ、ファンのみんな、自分たちを支えてくれている人たちと一緒に、Sadieという一つの組織として、全員で動いていこうという思いを込めました。“GANGSTA”って、ちょっと悪ぶった人たちのことを言うんですけど、着飾ったものではなくて、内面にある音や思いを込められたらなと。そういう色々な意味を込めて、このタイトルにしました。

――『bleach』での初期楽曲の再構築を経たことによって、その後の楽曲制作への影響はありますか?

美月:元々あったものを壊して、ほぼ新曲扱いくらいまで変えた曲もあるので、そういう意味では、制作していて色々な意見がある中、「これはやり過ぎちゃうかな?」というボーダーラインが『bleach』でとんでもないところまで行きました。変に守らなくなったというか、思い切れるようになったんじゃないかなと。

――今作にその影響がだいぶ出ているように思います。

美月:結構出てますね。今までだったらちょっと躊躇してたんじゃないかなと思うものも、やれるようになったので、本当に「ここまで行ったらSadieじゃないかもしれない」というのも考えなかったですね。

――今作はとにかく、新しさとスタイリッシュさというのが第一印象でした。

真緒:アルバムを作る時に、年間を通して次のアルバムをどうするかというのが先にあって、前の制作をするというのが実は結構多いんです。例えば前アルバム『MADRIGAL de MARIA』は、ものすごく世界観に特化したアルバムを作ろうというのが大前提にあったので、その前に出したシングル『双刻の艶』は、ちょっとダークだったり。だけど今回は、ツアーに照準を合わせたので、自分たちの中ではライブに特化した作品だと思っているんですよね。

――サウンド的なテーマは何か掲げていたんですか?

美月:『bleach』の全ての音の鳴りにすごく手応えがあったので、それをより良くするためにという感じでレコーディングしました。他のメンバーはわからないですけど、ギターを録る時にも、『bleach』の音よりこうしたいっていう基準になっていて、一つ一つ比べながらレコーディングしていきました。

――なるほど。ところで、「TOKYO GYPSY」は本当に驚きました。

真緒:あ、驚きました?

美月:でしょうね(笑)。

――Sadieでこういう曲が出てくるとは。

真緒:アルバムの中で、フックになる曲が欲しくなるんですよね。ストレートな曲もあれば、バラードもあれば、これは頭を振るんだろうなっていう曲もあるんですけど、1個なんか引っ掛かりがある曲というか。それが今回は「TOKYO GYPSY」なんです。

美月:うまく引っ掛かっていただいた。思惑通りなんじゃない(笑)?

真緒:良い意味か悪い意味かわからないですけど、引っ掛かるという部分ではね!

――良い意味です! 個人的には好きな楽曲です。

真緒:本当ですか。

美月:今までにやったことがない曲ですよね。

――「HOWLING」も新しいなと。

真緒:これはダンスミュージックのハモり方を研究したんですよ。たぶんライブを観ていただいたら、「あ、こういうことがやりたかったんだ」っていうのがわかると思うんですよね。

――ちなみに、「HOWLING」の仮タイトルは何だったんですか?

美月:「ダンス」! あとは、「祭」(笑)。

真緒:まんまですよね(笑)。

――まさに(笑)。「TOKYO GYPSY」は?

真緒:「スパイ」です(笑)。スパイっぽかったので(笑)。

美月:ミッションこなしてそうな(笑)。

真緒:あとは大体、曲のテーマですね。「DEAD END」は表題曲なので「表題」、「WELCOME TO THE UNDERGROUND」はシャッフルになっているので「シャッフル」でしたし。

美月:「GESSHOKU」は「メタル」って言うてたしね。変なのは「スパイ」くらいちゃいます? 前々回の「加●ちゃん」に続く…。

――「加●ちゃん」には負けますね。

美月:負けますねぇ。

真緒:そこはね(笑)!

――Sadieのヘヴィネスの王道、メロディアスの王道の楽曲がある中で、「DEAD END」はメイントラックになっているだけあって、一番バランスが取れている楽曲ですね。

真緒:そうですね。平均的なところですよね。

――メイントラックは結構すんなり決まったんですか?

真緒:割りとそうですね。

美月:色々と意見はありましたけど、何個か選択肢がある中で、みんなブレてはいなかったですね。バランスを取るなら「DEAD END」だろうな、ちょっと挑戦したいんならこっちの曲かなぁというのはありましたけど。

◆ファンの子へ向けて歌っています(真緒)

――『MADRIGAL de MARIA』では、真緒さんは音域の幅が広かったということでしたが、今作で挑戦した部分、がんばったぞという部分は?

真緒:今回は逆に言うと、特にメッセージソングは、自分が無理せずに一番素直に出せる域というところに、落としました。実は最初はもっとキーが高かったりして。特に「MESSAGE FROM HERE」はもうちょっと高かったんですけど、言葉の滑舌だったり、届けるという部分で考えた時に、ちょっと難しいんじゃないかなと。高さは出るんですけど、一番出しやすい域に落としました。ヴォイスという挑戦で言えば、キーとかあまり気にせずやるんですけど、しっかりとしたメッセージや歌詞を伝えたいものっていうのは、そこまでキーを高くしていないというのが、今回の傾向ですね。

――美月さんはいかがですか?

美月:『MADRIGAL de MARIA』の時は世界観を一つにしましょう、という感じだったので、曲は違っても空気感は似ていたんです。今回はその正反対というか、1曲1曲の個性がものすごく強くて、曲によってのジャンルも全然違うので、どういう音にしようかと。うちら、今までライブで暴れるというのがメインだったんですけど、今回はギターソロが二人とも多い。他のアーティストからしたら普通のことなんでしょうけど、今回はほとんどの曲にギターソロがありますね。普段あんまりギターソロとか録らないので、がんばりました。

――では一押しのギターソロを1曲挙げてください。

美月:1曲かぁ。

――では2曲でも(笑)。

美月:(笑)。「TOKYO GYPSY」のレトロ感みたいなものを出すのも、ああだこうだ言いながら作りましたし、「MESSAGE FROM HERE」はすっごく時間がかかりました。難しいことはやってないんですけど、例えば一番最後の音をどれくらい伸ばすかとか、ニュアンスの問題で結構何回も録り直して、こっちとこっち、どっちのテイクにしようというのを、ずーっとやってましたね。弾けなかったから弾き直したとかではなく。上手いこと繋げなあかんなぁとか考えながら(笑)。

――先に公開した動画リレーで、剣さんと美月さんが、正反対なツインギターというお話をしていましたが、真緒さんから見たSadieのツインギターとは?

真緒:どっちが明るいとか暗いっていう意味じゃないんですけど、月と太陽っていう感じがしますね。本当に違うものなんですけど、どっちも照らすものがあるという意味で。夜に照らすものなのか、昼に照らすものなのか、という二人だなと思いますね。まぁ、美月が夜を照らすって言うと、遊んでる子みたいだけど(笑)。

美月:(笑)。

真緒:本当にタイプは全く違うと思いますね。こっちが持ってないものは、あっちが持ってるという二人なんですよ。だから、ライブでも二人いないとバランスがおかしくなるんです。ツインギターって、圧倒的なスターと圧倒的な技巧派っていうイメージもあるんですけど、うちはキャラクター性と技量、引き出しが、50%:50%持ってるというイメージなんですよね。

――絶妙なバランスですね。歌詞に関しては、以前は体験談の日記を歌詞に置き換えて書くことが多く、『MADRIGAL de MARIA』は楽曲を絵に見立てて詞を構築したということでした。今作はいかがですか?

真緒:今回は色々なパターンがありますね。実体験や自分が思うこと、想像することを比喩的に例えたりというものが多いので、10年やって来てとか、10年へ向けてとか、そういうものに対する自分の思いや経験を書いたのかな。

――特に「MESSAGE FROM HERE」は、ファンの皆さんへ向けたメッセージソングなのかなと。

真緒:そうですね。この曲、文章だけで見るとちょっと変なんですけど、実は、頭から〈独り叫んでた言葉は「もういいよ…」〉までは、僕のことではなくて、ファンの子が僕にくれた手紙やメール、こういう自分がいましたっていうのを僕が要約して書いたんです。それに対して、ギターソロがあって間奏が明けたところから、僕のメッセージになっていて。僕がどう捉えてどう考えたかっていうのを、ファンの子へ向けて歌っています。ある程度こういうインタビューを読んでから聴いてもらった方が、「そういうことだったんだ」っていうのがわかりますよね。普通に文章を読んでいくと、誰が主人公なのかちょっとわかりにくいので。歌詞カードも、前半と後半でページを区切ってるんですよ。

――この後のエンディングSEがあの曲(SadieのライブのエンディングSEとして使用している曲)というのが、また泣けますね。

真緒:本当にライブを想定して作ったので。ライブ用には、途中までしか作られてなかったんですけど、それを完結させたのが今回のものです。

――この曲を使い始めたのは、いつからですか?

美月:8周年(2013年3月16日@なんばHatch)の時に、たぶん(真緒が)最後に話をするだろうなと思っていたので、そこで薄ら流れるBGMをピアノで作りたくて、亜季くんにお願いしたんです。僕は弾けないのでイメージだけ伝えて、彼が弾いてくれて。それが最初ですね。本人(真緒)はピアノの音が流れることを知らなかったんですよ。音楽が流れている中、自分で喋って自分で感動してましたけど(笑)。

真緒:持ってかれました(笑)。言ってくれたらいいんですけど、知らなかったんですよね。PAさん、すごい良い曲を選曲してきよったなって思ったんですよ(笑)。最後にMCするの?っていう話すらしてなかったので。僕が話をしなかったら、何の意味もなかったですよね。

美月:悲しく終わっただけっていう(笑)。

真緒:そういうのも読み合えるというか、10年近く一緒にいたらお互いバレバレですよっていうね。

――ライブを想定してということ以外に、今回この楽曲を収録した意図とは?

真緒:エンドロールが流れていそうなイメージがあったんですよ。作品が出来上がって、最後まで聴いてみて改めて思うんですけど、「MESSAGE FROM HERE」が終わり、ピアノがすっと入ってきて、そこからこの曲たちのダイジェストとか、これに携わった人たちの顔が思い浮かぶんです。そういう意味では、“GANGSTA”というSadieを支えてもらっている組織、仲間のエンドロールというイメージですね。

◆自信をもって胸を張って、これがSadieだと言える(真緒)

――前回、真緒さんに伺った質問を美月さんにも。結成当初の自分へアドバイスを送るなら、何と言いますか?

美月:当時、人見知りだったんですよ。本当に喋れなかったので、友だちもいなかったですし、暗い子だったよね。

真緒:こんなに社交的ではなかったですね。

美月:だから、「人付き合いを大切にしなさい」ですね(笑)。音楽も人間とやるものなので。聴くのも演奏するのも、スタッフの皆さんも大事なファンの皆も、人間なので、「音楽をするなら、人との付き合い方を考えなさい!」って言いたいですね(笑)。


真緒:Sadie自体も暗かったもんね。あんまり友だちもいなかった。ライブで東京に行っても友だちもいないし。

美月:対バンの楽屋が怖かった。大阪バンドなので、あんまり喋ってくれなくて。

真緒:こっちも、あんまりキャッキャしてナメられたらあかんと思って、隅っこで喋らずに。ライブして、終わったらスッと帰ってました(笑)。

――そんな過去があったんですね。そして今回、ヴィジュアル面も人によってはかなりイメージチェンジしていますよね。

真緒:美月くんは髪をバッサリ切りましたからね。

――どんな心境の変化があったんですか?

美月:僕、毎回違うねって言われてたんですけど、基本的にはロングの派生だったんですよね。短く切ったらどうなるんだろうっていう発想が、今までなかったんですよ。一回そこをやってみようかなと…なんで振り切れたのかわからないですけど。でも、FCライブで色々挑戦するようになって、恐れなくなったというか。こういうのは絶対ないなと思っていたものを一つずつやっていくと、意外と見ていてくれる人も反応をくれるので、あえてやったろうっていう考えになりました。なんか、今まで、がんばって色気出したろうっていう考えがあったんですけど、今回はそうじゃないのでいこうと思って、ギョーッとしたのにしました。色々やってきたからこそ、挑戦したくなりました。

――MVも今までにないスタイリッシュな感じが新鮮でした。色々な面で、今がSadieの変革の時なのかなと。

美月:変わりましたね(笑)。

真緒:でも偶然なんですよね(笑)。MVの監督さんも今までと一緒だし。

――そうなんですね!?

真緒:唯一、ジャケ写のデザイナーさんが違うくらいで、他のスタッフさんはみんな一緒なんです。

――MVは絶対違う方だと思っていました。

真緒:そう思いますよね。僕も、「こんなん出来んのかい! なんで今までやらなかったん!?」って言って(笑)。

美月:「斑-まだら-」と同じ人なんですよ。あのどす黒い、後ろに目がいっぱい出てきて怖いやつ(笑)。

真緒:色々な意味で、曲を理解してくれたんでしょうね。実は今回、客観的なご意見とは違って、自分たちからすると、そんなに何もしてないっていう(笑)。すんなり『bleach』の延長で、こういう楽曲が欲しいねって作っていって、MVも衣装も、いつも通り普通に考えて。それが、客観的には「新しく攻めてきよったな」っていう風に見られがちなんですよね。

美月:よく言われますね。でも、そう感じられるなら、きっとそうなんでしょうね(笑)。

――言われて初めて「あ、そうなんだ?」という感じですか(笑)。

真緒:ですね(笑)。でも、わからんでもないです。色々なマイナーチェンジがあって、でもちゃんと芯があって、その中でお客さんがどう反応してくれるかっていうバンドもいれば、ずっと同じことを長いことやる人もいますし。Sadieは色々仕掛けて前へ進んでいくタイプなので、自信をもって胸を張って、これがSadieだと言えます。新たにSadieを聴いてみようっていう取っ掛かりになるんだったら、有り難いことです。

◆「ライブやりに行ってくるわ」という心積もりで(美月)

――ところで、動画リレーの熱いキスについてですが…

真緒:まず、そういう関係じゃないですよ。ライブでのパフォーマンスとしてやることも多いですし。あと、よく友だちとお酒を飲んだ時にしたりして、慣れてしまっているんですよね(笑)。何の抵抗もない。ちょっとジュースちょうだいっていうのと同じ感覚です。

美月:紅をひいてやられたのは初めてだったので、それはびっくりしましたけど(笑)。女の子同士でもあるじゃないですか。それと変わらない。

真緒:美しいのか、汚いのかの違いで(笑)。僕らは後者ということで、すみませんでした(笑)。なんだかんだ言って、僕、全メンバー経験ありますよ。

美月:なんの自慢やねん(笑)。

真緒:亜季さんもあるんですか?って思うじゃないですか。ありますからね。ライブ中にどさくさに紛れてガッと行きました。

美月:むっちゃ嫌がってたもん。

真緒:だから結構……僕が悪いです、ははは(笑)。まぁ、そんなのも許される仲ってことですよ(笑)。10年も一緒にやってたらね、何とも思わないです。

――(笑)。さて、10月3日よりツアーがスタートしますが、全22公演ということで。

真緒:過去にある程度長くやると、逆に、少なくねーか?って思うくらいです。全国ツアーと謳いつつも、行けない地域が出てくるのが辛くて。本心は全部行きたいんですけどね。

――そんなツアーに向けて、Vifをご覧の皆さんへ熱いメッセージをお願いします。

真緒:『bleach』のツアーは本数が少なくて寂しかった部分もあるので、やっと満を持してアルバムを引っ提げてツアーに出られます。二つの作品を合わせてツアーをしたいという気持ちがあって今回のアルバムを作ったので、1年前からの計画がやっと実現できます。すごく楽しみにしているので、まずは『bleach』『GANGSTA』を聴いて、一緒に“GANGSTA”の一員として、ライブに来てくれたら有り難いです。全国の皆さん、待っていてください!

美月:今回はライブを想定してアルバムを作ったので、本当の完成はライブです。やっとこれからが本番という感じ。あなたたち、お忙しいですよ(笑)。結構参加型なので。そういう意味では、ライブを一緒に作れるというのが、より濃く出たアルバムのツアーだと思うので、「ライブ観に行ってくるわ」じゃなくて「ライブやりに行ってくるわ」という心積もりで、来てもらえたらなと思います。

(文・金多賀歩美)