インタビュー

Sadie

より複雑に、より重厚に、より濃密に深化を遂げたSadieサウンド!
渾身のニューアルバム『MADRIGAL de MARIA』の全貌に迫る!

コンセプチュアルなロングツアーを経て、さらに強力さを増したSadieが世に送り出す4枚目のフルアルバム『MADRIGAL de MARIA』。一見複雑なワードでありながら、そこに内包されているのは“届ける”というシンプルかつ根本的な思い。それは、まさに今作を象徴するにふさわしい。とことんまでこだわり抜いた濃密なサウンドで表現された今作について、メンバー5人に話を聞いた。

◆「“マドリガルデマリア”って!」と思いました(美月)

――まずアルバムタイトル『MADRIGAL de MARIA』について教えてください。

真緒:何個か候補はあったんですけど、アルバムのタイトルってシンプルなものから細かいものまで色々ありますけど、今回は楽曲の空気感的にすごく混沌としたものが多かったので、タイトルも複雑なものにしたいなというのがあって。日本語でもイタリア語でもない複合させたものにしようと思いました。“MADRIGAL”というのが、2声3声が重なり合って歌唱する手法なので、自分なりの声のアプローチもそうですし、たくさんの楽曲の重なり合っている音色を、“MARIA”をオーディエンスに例えて届けるという意味合いも込めています。色々な感情が重なり合っていることを自分の中で“MADRIGAL”と表現して、相手に届けるという意味合いが今回のタイトルにはあります。

――なるほど。アルバムのタイトルというのは他のメンバーに相談するんですか?

真緒:いや、ないですね。もう任せられているというか。メンバーは後で知ることが多いと思います。

――では、皆さん今回のタイトルを聞いた時の印象はいかがでしたか?

剣:また小難しいタイトル付けはるなぁっていうイメージです(笑)。あと言いにくい(笑)。よく考えはったなぁという感じです。

美月:最初は文字じゃなくて口頭で聞いたので「“マドリガルデマリア”って!」と思いましたけど(笑)、文字で見てみると良いし、一回聞き返すとは思いますけど響きも良くて意味合いも…さすがです(笑)。

――今作の制作というのは色々と並行して行われていたのでしょうか? いつ頃から始まっていたんですか?

亜季:構想はもう年始の頃から。

――ロングツアー(4月~7月に行われた全35公演の「謳歌乱舞」ツアー)をまたいでの制作だったと思いますが、一番大変だったのはどの時期ですか?

真緒:ツアー前から各々制作に入っていたり曲の選抜とかはしていたんですけど、ツアーをしながら曲を作れるというのは逆に良かったなと思いましたね。ライブに関してどんな曲が必要なのか、どういうアプローチが良いのかというのを目の当たりにできたので。その分しんどかったですけど。あとは、ライブを挟みながらMVを作る流れだったので、髪の毛をどうしようっていうのが大変でした(笑)。

――(笑)。ツアーが制作に良い影響を与えたんですね。

亜季:そうですね。今インディーズというシーンでやらせてもらっている利点って、そういう旬な部分をパッケージできるところだと思うんです。まさに「謳歌乱舞」ツアーで自分たちが成長できた部分が音源に活かされているんじゃないかなと思います。

◆唯一「加●ちゃん」だけがわからない(景)

――今回の収録曲は、それぞれ原曲はどなたですか?

美月:「Demons cradle」「THE REQUIEM」「官能とParadox」「嘘にまみれた真実の底」「STARRING」「斑 -まだら-」が真緒&美月で、「Jealousy」「viper」「雪月花」がつるちゃん(剣)、「Decadence」「優シク殺シテ」が亜季さん。

――原曲から一番変化したものはどの曲でしょうか?

剣:ほとんど変わってるよね。全般的に変わっていますが、おそらく「優シク殺シテ」が一番変わってるかもしれないですね。ん? ちゃうか。

亜季:何が一番時間かかったかな。

剣:まだ曲とタイトルがマッチングしないんですよね(笑)。…どれやろ?

美月:「Jealousy」とか?

剣:「Jealousy」も変わってるのかなぁ。Aメロとか。

亜季:構成の変化で言うと「Decadence」だからね。

剣:そうやな。全体的に変わってますね。

亜季:そのままっていうのは逆にあまりないですね。原曲っていうのは一人のメンバーが作るコンセプトだと思っていて、そのコンセプトに沿って皆でリアレンジというか、組み立て直していく作業が結構多いんです。

――作曲者の名義がバンド名というのが納得できますね。

亜季:そういうことなんです。インタビューで「誰が作ったんですか?」ってよく聞かれるんですけど、俺らにしてみたらあんまり意味がないんです。別に隠すことはないから答えるけど。

――ちなみに、仮タイトルは全然違うものが付いているんですか?

美月:もう、ひどいっ!

剣:全員ひどいですよ(笑)。

真緒:「加●ちゃん」とか?

美月:そう、「加●ちゃん」がありますよ(笑)。「官能とParadox」なんですけど、ライブできっとピンクの照明で真緒さんが怪しい感じでやるだろう、というところから付けました(笑)。「ちょとだけよ」みたいな(笑)。

真緒:でも、ざっくりが多いですね。「オープニング」とか「エンディング」とか「メタル」とか(笑)。ジャンルカテゴリー分けが多いですね。わかりやすいので。

剣:「亜季メタル」とか。

真緒:「ライブチューン」とか。

――わかりやすいシンプルな感じなんですね。

真緒:もうシンプルです。

――異質なのは「加●ちゃん」くらいですね(笑)。

美月:変なのはそれくらいですね(笑)。

真緒:メンバーに聴かせた後は「ダークミドル」ですけど。

景:唯一「加●ちゃん」だけがわからない。俺は加●ちゃんっぽくないから(笑)。「なんでこれが“加●ちゃん”!?」っていう感じ、俺は。

真緒:ライブの絵面だね。

美月:どんなことをするかっていう。

景:そうなんだ。

亜季:全然イメージ浮かぶけどね。

美月:次行こう(笑)!

◆結局は個人のスキルだと思う(剣)

――今作は全体的に音数が多くて展開の仕方も複雑ですね。サウンド構築にとてもこだわりを感じたのですが、細かいところだけどすごくこだわったなという部分を教えてください。

美月:そうですね。音作りと言いますか、今までだとギターの音色にしても曲ごとにそこまでめちゃくちゃ違いはなかったんですけど、今回はがっつり話し合いながら、ああでもないこうでもないと言いながら最終的に二人で決めたので、曲によって結構変わって聴こえる感じにはなっていますね。ギターを録音している時間より、音をどうするかみたいな時間の方が圧倒的にかかってます。細かーいところ、ここ上げてここ下げてっていうのをずっとやっていました。パッと聴かれる方はそんなに伝わらないかもしれないですけど、これ半日くらいかかってるんですよっていう曲もあるので。

――ちなみにどの曲ですか?

美月:タイプによって違うので「Demons cradle」と「Jealousy」と「STARRING」かな。

剣:そうだったと思う。それはギターだけじゃなくて全体としてもそうなんですけどね。

亜季:ベースから録り始めるわけだけど、俺も基軸になる3種類の音をまず決めて「この曲はこのカテゴライズでいきます」と。あとは皆の音が入って微調整という感じで。俺はプレイ自体にはあんまり時間はかかってないんですけど、ゆとりのあるレコーディングだったのですごく音に集中できましたね。

剣:音は美月とだいぶこだわりましたけど、スタジオで各曲をアレンジするじゃないですか。同期関係は自分が原曲の曲は任されるというか、そのさじ加減はよろしくねっていう感じなんですよ。わざわざクレジットにプログラミングは誰っていうのは書いてないんですけど、わりとみんな自分の曲には責任みたいなものがあって。そういう意味では、自分が原曲の曲は他の楽曲に比べて手掛けている音は必然的に多いですよね。だからこだわったというか、自分が『MADRIGAL de MARIA』に出した「Jealousy」「viper」(※「雪月花」はシングル曲)に関しては、その曲に適切な同期、最終的な仕上がりに持っていくメンバー以外の音を構築するのを頑張りました。もちろん全曲アレンジしていますから、どの曲が特別というのはないんですけど。

――景さんはいかがですか?

景:全部こだわりました。どれがとか無いですね、本当に。

――真緒さんはいかがですか?

真緒:今回キーの高いところに挑戦しているので、今までの作品の中でもトータル的に考えて音域の幅が広いです。僕の中で声って楽器だと思っているんですよ。だから自分の声で今表現できること全てを盛り込みました。

――皆さんも今作で新たに挑戦したことはありますか?

亜季:新たにではないですけど、今回の楽曲と過去の楽曲でチューニングの比率が逆なんです。Sadieの楽曲には二つキーがあって、今まではほとんどが前者の方のチューニングだとしたら、今回は後者の方のチューニングがほぼメインなんです。真緒がこのキーに挑戦したいという部分があって、全体的にもキーがシフトしました。バンドサウンドとしてもより重厚になったかな。Bチューニングが多いんですよ。

剣:元々はC#に統一されていたんです。

――今までC#メインだったのがBメインになったんですね。

亜季:そうなんです。より重厚になりました。個人的には今回指弾きとスラップが異常に多いですね。今までほぼピック弾きでやってきたんですけど、個人的にスラップがブームなところもあって、それが皆から求められるタイミングとも一致して。やる曲やる曲入れてみようかなと。

美月:俺はアコギ。アクセントで入っているのは今までもあったんですけど、「嘘にまみれた真実の底」は2コーラスぐらいまでアコギメインなので。指がもげるかと思いましたけどね(笑)。エレキギターより弦がすごく硬いんですよね。

剣:僕もアコギなんですけど、個人的プレイとしては早いパッセージとかフレーズですね。今までSadieというのはソロというソロがなかったんですよ。今回楽曲によっては美月もソロを弾いていたりするんですけど。個人のアプローチという面ではベースもドラムもヴォーカルも、自分たちが今まで作ってきた楽曲のタイプから幅を広げるにはどうしたらいいかとなった時に、結局は個人のスキルだと思うんです。それぞれの技術を足していくと言うと変ですけど、削るところもあれば足していくところもある、という感じで差別化していかないと、同じ楽曲ばかり生まれていくことになるじゃないですか。そういう意味では、それぞれメンバーが試したいことが詰まっているなと思いますね。僕で言えば早弾きの部分なのかなと。ま、細かく言えばたくさんありますよ。ここのクリーンのアルペジオはすごくこだわってるんだとか、アルペジオとアルペジオが重なっているこの部分がすごく綺麗なんだとか。色々ありますけど、そこは聴いていただいて。

景:俺は太鼓のサウンドですね。今までのSadieのCDとはちょっと違うかなと。皆で相談しつつ音を作っていきました。

◆1曲1曲に絵を思い浮かべた(真緒)

――今作のMVは「THE REQUIEM」ですが、この楽曲がメイントラックという位置づけと捉えてよいのでしょうか?

亜季:アルバムなのでシングルとは違って“1”ではないんですよね。1曲で表現できないので11曲あるわけで。入口として考えてもらえたらと思います。

――ではこの楽曲でMVを制作した経緯というのは?

亜季:『MADRIGAL de MARIA』の全体像を1曲に凝縮している…ヘヴィーさだったりスピード感であったりメロディアスさ、フレーズのマニアックさ、全部の要素が1曲に凝縮されている曲かな、というジャッジですね。

――真緒さんは今作の歌詞制作で苦労したものはありますか?

真緒:なんでしょうね。今までは体験談の日記を歌詞に置き換えてっていうことが多かったんですけど、今回は1曲1曲に絵を思い浮かべたんです。絵の解説じゃないですけど、楽曲を絵に見立てて詞を構築したんです。「もしこの曲を絵で描いてくださいと言われたら、どんな絵を描きますか?」というのを先に頭に浮かべて、必要な言葉や文の流れを埋めていったという感じですね。書き方が今までと違うので、歌詞もちょっと難しい感じになったと思うんです。キャッチーだな、わかりやすいなというのは、あっても1曲の中で一節二節くらいで。すごく難しい言葉とか表現の仕方だと捉え方がどうなんだろうって部分はあると思うんですけど。まぁでもこの歌詞に関して共感してくださいっていう強制はしてないので。例えばAメロからエンディングまでの歌詞を読んだ時に、その物語が自分に当てはまらなくても、1フレーズだけ当てはまることってあると思うんですよ。歌詞ってそういう方が意外と響いたりして。例えば高校野球の甲子園のテーマソングを書いて〈グラウンドの上でどうのこうの…いつか君とあそこに行きたいね〉という歌詞があったとしても、お客さんが触れるところって〈いつか君とあそこに行きたいね〉だけでいいと思うんですよ。別にみんな甲子園の主人公じゃないですし。そういう感じで、随所随所に引っかかるところがあったり、何か思っていただければなと。今回は本当に自己満での歌詞の世界ですね。

――確かに今作はちょっと難しい歌詞が多い中、「嘘にまみれた真実の底」は比較的わかりやすいですよね。絶望と希望が描かれていてSadieらしいなと思いました。

真緒:曲ってメッセージを残すもの、響きを重視するもの、情景を浮かべやすいもの、という大きく3つに分かれるんですけど、そこに当てはめていくこともありますね。「嘘にまみれた真実の底」であれば、素直なメッセージを残すということを自分の中で当てはめました。

◆アルバムやライブって結局は人間なんだなと(亜季)

――10月20日から今作を引っさげたツアーがスタートしますが、「謳歌乱舞」ツアーを経たことでライブへの姿勢に変化はありますか?

美月:「謳歌乱舞」が2days公演で、絶望と希望をあえて分けて全国回ったんですけど、終わってみて結局はSadieはその二つが一つになって本当の姿なんだなというのが改めてわかりました。一つの公演で表現してきたものをあえてぶつ切りにして各々特化させることができたので、今度はまた合わせるのが楽しみです。最終的な流れがどういう風にできるかなと。

――では最後に、ツアーへの意気込みをお願いします。

美月:アルバムツアーは曲数的に新しい曲がほとんどになるので従来通りにはいかないですよね。すごく良いものになることは頭の中ではイメージできているので、楽しみにしてもらえればなと。あとは結構複雑な曲が多いので、準備が大変だなと(笑)。

亜季:話が大きくなっちゃうんだけど、アルバムやライブって結局は人間なんだなと。ほとんどが辛いことや悲しいことで、ちょっとだけ希望や喜びがあって、そのために色々なことを頑張れる…そういうバランス感が今回のアルバムなのかなと俺は思っていて。パッと聴いてもよくわからないことや、ヘヴィーで激しいこと悲しいことが多いと思うんです。でも、ふわっと救いが何カ所かにある。そういうことをアルバムで表現してライブで表現して、みんなの生活の中でそのふわっとした救いになればいいなと思っています。

剣:今回のアルバムはただドーンとストレートな楽曲ばかりじゃなくて、場面をすごく大事にしている楽曲が多いんですよね。ということは、その場面を切り替える演出、精神性がライブですごく大事なのかなと思います。そこがぬるっとなっちゃうと、たぶん聴いてる側からすると「大丈夫か?」ってなっちゃうと思うんですよね。今回のアルバムでは特にそこをちゃんとしないといけないなと。それだけ場面転換が大事ということですよね。例えば舞台をやる人たちって、感動するものを人に見せるためにすごく練習すると思うんですよ。オーディエンスからはなかなか分かりにくいでしょうけど、そういうこだわりが重なって磨き上げられて商品になっていると思うんです。ロックバンドなので今までは「細かく考えなくていいんじゃねーの?」って思っていた部分もあったんですが、もちろんライブ感はありつつ、より完成度を高めたライブをやらなきゃいけないなと思います。

景:良いアルバムができたので、それ以上に良いライブをしたいです。そしてこのアルバムがより深く良いものになればなと思います。

真緒:アルバムツアーってシングルのツアーとは違って、一つの物語を作ったアルバムの中で出来上がっている起承転結を再現できるツアーだと思うんですよ。そういった面で作り込むところは作り込むけど、音源とは違うライブならではの表現というものを提示できる、そういう部分を皆に見てもらいたいなと。アルバムを聴いてもらって、また別の『MADRIGAL de MARIA』を提示できるようなライブを心がけていきたいです。

(文・金多賀歩美)

Sadie

<プロフィール>

2005年に大阪で結成された、真緒(Vo)、剣(G)、美月(G)、亜季(B)、景(Dr)によるロックバンド。2011年リリースのシングル『Rosario-ロザリオ-』は、オリコン週間シングルチャート12位、インディーズシングルチャートで1位を獲得。2013年3月、地元大阪のなんばHatchにて、全38曲を披露する8周年アニヴァーサリーライブを成功に収めた他、両A面シングル『双刻の艶』をリリースし、全35公演に渡る全国ツアーを開催した。10月リリースの4thアルバム『MADRIGAL de MARIA』を引っさげ、全21公演の全国ツアーが決定している。


■オフィシャルサイト
http://www.sadie-web.com/


【リリース情報】

初回限定盤
(CD+DVD)
MRS-0055
¥3,675(tax in)

通常盤
(CD)
MRS-0056
¥3,150(tax in)


『MADRIGAL de MARIA』
2013年10月16日(水)発売
(Majestic Records)
Sadieの4thアルバム。3月にリリースしたシングル『双刻の艶』のダブルA面曲「斑 -まだら-」「雪月花」を含む全12曲(※通常盤)を収録。

【収録曲】
[CD]
01. Demons cradle
02. THE REQUIEM
03. Decadence
04. Jealousy
05. 官能とParadox
06. 嘘にまみれた真実の底
07. viper
08. STARRING
09. 斑 -まだら-
10. 雪月花
11. 優シク殺シテ
12. face to face (unplugged ver.) ※通常盤のみ

[DVD]※初回限定盤のみ
MUSIC CLIP「THE REQUIEM」