Sadie『bleach』リリース記念企画インタビュー

Sadie

破壊と再生に挑んだ最新作『bleach』。
初期楽曲の再構築を経て見えてきたSadieというバンドの過去と現在。

2014年、結成9周年を迎えたSadieが放つ第1弾作品は、ハイブリットなアッパーチューンである新曲「bleach」に加え、バンドが結成された2005年から2008年までに発表された楽曲たちのリアレンジが収められたミニアルバム。「ただ録り直しただけ、というものにはしたくなかった」(亜季)と語る過去曲は、大幅なリアレンジにより楽曲の魅力を最大限に引き出した、“現在のSadie”が映し出された作品。そんな最新作について、そしてSadieの過去と現在を、真緒(Vo)&亜季(B)に語ってもらった。

◆「そういう楽曲を作っていてくれて、ありがとう」かな(亜季)

――昨日のライブ(4月29日@高田馬場PHASE)はすごかったですね。

真緒:疲れ果てましたね。

亜季:ファンクラブライブならではのセットリストでした。

――新曲「bleach」も昨日披露されましたが、ライブでの初披露はいつだったんですか?

亜季:名古屋でのファンクラブライブ(4月20日@HOLIDAY NEXT NAGOYA)ですね。

――初披露の名古屋と2度目の東京では、変化はありましたか?


真緒:初披露の時は、オフィシャルサイトに上がっているSPOTくらいしかヒントがないので、わからないのは想定していたんですけど、もうちょっとわかりやすくしていこうということで、ここでみんなで一斉に跳ぼうとか、随所にライブでこうしたら一緒に体感できるというポジションを作りつつやっていきましたね。イントロのところで声出させようとか、そういう仕掛けは1回目と2回目の差は作りました。

――楽曲としての「bleach」のテーマを教えてください。

真緒:今回タイトルから付けたんですけど、“bleach”という言葉にかけて、物を染め上げるというか、剥脱させて変わっていく姿という状況を作りたかったんです。表題曲はアッパーチューンの明るい曲で、Sadieの中ではあるにはあるタイプなんですけど、よりハイブリットに、スタイリッシュでスマートな楽曲を作りたかったというのが一番にありましたね。過去曲のリアレンジとのバランスをとったというか。1枚の作品を聴いた時に、Sadieのいろんな色が見えるんだろうなと思います。その中でも一番ライトな、一番はっきりと白に近い部分の楽曲ですね。

――過去曲のリアレンジをメインにしたミニアルバムを制作したきっかけというのは?

亜季:ライブで演奏することだけが、その曲にとっての価値ではないですけど、やっぱりライブで演奏する、しないというのは大切な要素だと思うんですね。音源のリリースを重ねていくうちに、どうしても演奏する曲、しない曲というのが出てくるんです。でも、メンバーにとってはどの曲も大切で、やっている曲だから大事とか、やってない曲だから大事じゃないとか、そういうことはなくて。あまり演奏する機会がない曲を次のツアーで演奏するには、と考えた時に、今のSadieだったらどういうアレンジにして演奏するのかなと考えて、じゃあそれをちゃんとレコーディングしてパッケージしてみようと。

――では、最近ライブでやっていなかった曲というのが選曲基準だったんですね。

亜季:まずはそうですね。

――2005~2008年という、初期の楽曲ばかりになった理由というのは?

亜季:去年出した曲に関しては再構築する必要もなくツアーでやれる。できるだけ古い曲…何て言うのかな…理由というよりは感覚的なもので、メンバーミーティングで曲出しをしたんですけど、自然と初期の時代の楽曲が多かったんですよね。本当にあと数曲くらいしか候補が挙がらなくて、「これ、やってみたいんだよね」というのが「あ、俺もそれを考えてた」っていうくらい。

――アレンジはかなり大幅に変わっていますよね。

亜季:当時、その曲でSadieと出会ってくれた人が聴いても、変わってなきゃ意味がないと思うんですよね。じゃなかったら、絶対にオリジナルの方がいいじゃんっていう話になるし。過去に出会ったことがない人は、新曲として聴いてもらって全然構わない。これがきっかけで遡ってくれた時に、昔のSadieはこうだったんだって思うような。今のレコーディング技術でただ録り直しただけ、というものにはしたくなかったんです。

――今回のリアレンジで一番時間をかけたのはどの辺りですか?

真緒:ぶっちゃけ言うと、新譜を録り下ろす方が楽なんですよね。あったものを破壊して再生するというのは、自分たちの中でも、ここは欲しい、ここは生かしたいというものが出てくるので。歌詞はその時の思いがあって書いたものなので、できる限り残したいし、今ならこの言葉を入れたいとか、塗り替えたいとか、自分の中での判断が意外と難しかったです。

――「Sexual affection」(※オリジナル:2008年7月発売6th Maxi Single『Greiving the dead soul』収録)は特に違いますよね。

真緒:そうですね、びっくりすると思います。

亜季:再構築した5曲の中で、変化の度合いのバランスも考えちゃうんですよね。特にこれは一番変化している楽曲で、これ以上はやっちゃだめだっていうボーダーラインなのかなって(笑)。

――歌詞も全然違いますね。

亜季:日本語入っちゃってるからね。(※オリジナルは英詞)

真緒:残っているのは1割くらいですね。1割もないかな(笑)。

――なぜここまで変化させたんですか?

真緒:曲の構成を変えたのが一番大きかったですね。同じ歌詞を乗っけてもよかったんですけど、元々の楽曲の雰囲気と全然違うバックの構成になったので、違うメロディラインを付けたくなったんです。でも、実はサビに行く直前のところは全く一緒で、プラスアルファのヴォイストラックが入っているんですけど、全然違うじゃんって思うくらいまで行っちゃったかもしれないですね。言葉の言い回しの語尾とかアクセントを生かすAメロが欲しくて、元々のものは全部ずらーっと並べた英語だったので、そういうところもあって歌詞をガラッと変えました。

――サウンド的なテーマは何だったんでしょう?

真緒:我々の楽曲って、5人の生音のみの楽曲から、シーケンスを入れた楽曲の幅というのが結構あって、その中でも割りと5人のメンバー以外の音が詰まっている、デジタル色が強い楽曲ですね。

亜季:原曲を聴きながら、どういう風に再構築しようかなと思い付いたのが、シーケンスを交えたサウンドで。ざっくりとした形のデモを真緒に聴いてもらって、元々は原曲に近い形というか、もう少しわかりやすかったんだけど、「やるならやっちゃった方がいいよね」という話をして…こうなりました(笑)。

――今回、当時の音源を改めて聴いてみて、何を思いましたか?

真緒:当時はすごいヘタクソなんですけど、今は絶対無理だろうなと思う部分もありますよね。変に尖ってる感だったり、勢いだけで歌ってる感だったり。今はもっと考え込んでしまったりして、直感のみの動物的発想でドンッといった感じの空気感は出せないですね。そういう意味で過去は過去で良い部分もあるなと思いつつ、ここのメロディを一つ変えただけで10倍良くなるのになとか、この何年間という時が自分に与えてくれた経験値で気付けた部分もあります。でも、僕は過去を否定するのは好きじゃなくて、過去は過去でその時に応援してくれたお客さんだったり、自分もこれで行こうと思って録った歴史というのがあるので、変化を楽しんでほしいですね。リアレンジやリテイクしたものって、昔のファンの方たちは「昔の方が良かった」ってよく言うじゃないですか。それは僕はわからんでもなくて。

――当時の思い出もありますからね。

真緒:そうそう。あとは粗さが良かったり。聴いて面白かったですね。

亜季:正直、もっと悪いイメージだったんですよ。一度全部曲を聴いてリストアップして、再構築する曲を決めてから、より聴き込むじゃないですか。そうするとね、聴いていくうちに「これ再構築する必要あるのかな? この曲かっこいいよね」って結局なっちゃうんですよね(笑)。だから感覚としては、Sadieというバンドのオムニバスに参加させていただいたような感じ。

真緒:あーなるほど! そうだね。

――常に自分たちがかっこいいと思えるものをやってきたという証ですね。

亜季:本当にね、想像以上の出来でしたよ(笑)。

――当時の自分へ感想やアドバイスを送るなら、何と言いますか?

真緒:なんでしょうねぇ(笑)。聴いていて思ったのが、随所にSadieの基軸というものが生まれているんですよね。Sadieはこういう構築をしていって、こういうメロディがあって、こういう歌詞があるという基軸。それは「でかしたな」って褒めてやりたい(笑)。そこによく気付けたなと。アドバイスするならば、「もう一つ、何かその中で進化させる部分が実は隠されているのかもよ」っていうことですかね。その「かもよ」っていう部分を今回出してあげた感じですね。もしかしたら、5年10年先の未来の先輩・真緒さんから、また同じことを言われるかもしれないですけど。

――亜季さんはいかがですか?

亜季:この楽曲を発表したそれぞれの時代の自分自身に「この曲、もうちょっと自信持ってやったら? いい曲だよ」って(笑)。自画自賛になってしまうので、くすぐったいですけど。アドバイスというのはないけど、むしろ、今こうやって5曲再構築することができて「そういう楽曲を作っていてくれて、ありがとう」かな(笑)。

◆一色でありつつも五色あるっていう絶妙なバランスと関係性(真緒)

――ところで、真緒さんの音域は確実に広がっていますよね。

真緒:そうですね、昔に比べたら。

亜季:チューニングも「追恋の華」(※オリジナル:2006年8月発売3rd Maxi Single『GRUDGE OF SORROW』収録)以外は全部一音下がっているので。「サイレントイヴ plugless ver.」(※通常盤のみ収録。オリジナル:2007年7月発売3rd Mini Album『THE BULLET STORM』収録)も半音下がっています。

真緒:下がったから上のメロディが使えるというところもありますし、最上も昔に比べたら全然上がってますね。何より、昔はシャウトができなかったんです。結成して2年くらいまでは、今のように叫ぶ声のバリエーションもなかったので、長年の歳月で培ったものが出せたという点でも、今回のリアレンジは今しかできないものだなと。


――動画リレーでは、景さん(Dr)の…(笑)。

真緒:はい、景さんのキスの魔法で、僕はシャウトができるようになりました(笑)。

――(笑)。アルバム『MADRIGAL de MARIA』(2013年10月発売)の制作時、亜季さんの中でスラップがブームと言っていましたが、今も継続中ですか?

亜季:ベースも奏法によってそれぞれサウンドが変わってくるので、どの奏法もちゃんと使いこなせるようにと思って、今も続けていますね。「bleach」でも少し入っています。真ん中のみんなでジャンプする部分、ちょうどラップの部分かな。あとは「溺れる魚」(※オリジナル:2005年12月「溺哀 ~As a sad matter of fact~」at OSAKA MUSE無料配布音源)でちょっと入っています。

――「サイレントイヴ plugless ver.」のピアノは亜季さんということですが、よく聴くと、ペダルを踏む音も聴こえるんですよね。

亜季:そうですね。あと、低音寄り高音寄りで重心が動くので、イスの軋む音まで入っていて。そこで弾いている音を本当に綺麗にレコーディングさせてもらいましたね。

――ピアノのレコーディングの際、他のメンバーはスタジオにいるんですか?

亜季:誰もいないです(笑)。ベースを録った時は美月(G)がいたかな。この時間までは俺っていう大体のタイムスケジュールがあって、その次が美月だったので。

真緒:リレーですね。なので、順番的に僕は景ちゃんとは絶対に会わないですね(笑)。マスタリングの時まで会わないので、「おー、久しぶりやん。元気やった?」って(笑)。

――(笑)。ちなみに、亜季さんは子供の頃からピアノを習っていたんですか?

亜季:そうですね。ただ、レッスンは4~5歳から始めて、中学校の時に一度やめてるんです。触ってはいたんですけど、趣味程度で。Sadieを始めてから、もう一度始めたんです。ベーシストが弾くピアノっていう位置づけじゃなくて、こうやってパッケージしてリリースする以上、ピアニストが弾いたのと比べて劣るようではダメだなと。僕にとっては二番目の楽器ですけど、だからと言って言い訳したくないなと思って、今も練習はしています。

――今作をきっかけに、バンドやご自身の過去を振り返ることが多くなったと思いますが、改めて気付けてよかったことはありますか?

真緒:10年というのが目の前に見えていて、何にしてもこの5人のバランスがすごいなと思うようになりましたね。楽曲の構築もそうですし、ライブでの立ち位置、各々のキャラクター、何て言うんですかね…髪の毛の色は五色バラバラではないんですけど、5人の戦隊になっているのが素晴らしいなと。昔はわからずに個性を追求した時期もあったし、逆に一色にまとまってやっていこうとした時もあったし。でも、一色でありつつも五色あるっていう絶妙なバランスと関係性というのは、誇れるものがあるなと思いますね。

亜季:良い意味でも悪い意味でも、あまり過去に興味がないんです。基本的には過ぎてしまったことをとやかく言っても…だったら次どうするか。その中で過去を振り返るということも意味がないことではなくて、だからこそ次に見える未来もやっぱりあるんだなって。「10」というのも俺にとってはあんまり意味がなくて、ちょうどの数字だから周年が大事だとかも思ってなかったんだけど、「10」という一つの節目に向かって、こういうことをしようと思えたことは、今だからかなぁっていう。これが5周年6周年の時にやっていたら、ちょっと違ったのかなぁ。不思議な感覚にはなりましたね。音源1枚1枚、それで簡潔しているストーリーだけど、その積み重ねが『bleach』に繋がっていたんだなと。自分たちが意識しているよりも深いところで。音楽って不思議だなと思いました。

――動画リレーに出たお話で、昔は真緒さんが一切喋らずに、5人でのコメント時は亜季さんがメインだったというのは意外でした。

亜季:なんでだったかな…。

真緒:なんでやろな(笑)。

――真緒さんはなぜ喋らなかったんですか?

亜季:俺が喋るなって言ったんですよ(笑)。

真緒:根は基本的に喋る人なので、自然なのは今なんですよね。性格が変わってきたのもあるんですよ。昔はバンドに対する考え方も、歌詞を書くスタンスにしても、割りと自分主体でやっていたんですけど、途中でそれがオーディエンス主体に変わったんです。書き殴りたいというよりも届けたい方になった、ということによる変化ですね。

亜季:過去を否定することはないけど、バンドのカラーやイメージだったり、歌詞も含めた真緒のキャラクターだったり、最初は今よりも暗かったし、わかりやすく“V系”な感じだったんです。きっかけは、『a holy terrors』(2007年3月発売4th Maxi Single)の頃かな、真緒が変わってきたのを俺も感じていて。本当の真緒が今オーディエンスの前で見せている真緒であるならば、それを出さずに届けたいものだけ届けるって、伝わらないし、都合のいいことだなと思って。肩肘張らなくてもいいのかな、もっと素直に届けたい、そういうスタンスでいいんじゃないかなと……思ってしまった故に、あんな動画になりましたね(笑)。

全員:(笑)

亜季:リーダーである僕の責任かもしれませんね(笑)。

――バンドに歴史ありですね。

真緒:そういうことですね(笑)。

亜季:Sadieを始めて1~2年目だったら絶対NGだよな、あの動画(笑)。

全員:(笑)

真緒:みんな変わったよね。美月なんて引っ込み思案な子でしたからね。今や前へ前へ、特攻隊長みたいになってますけど(笑)。昔は「どうなの?」って振らないと喋らなかったですから。

――今では考えられないですね(笑)。

亜季:彼が喋ると尺が押して押して…(笑)。

――今回の動画も一番長かったですしね(笑)。

真緒:まだ行くか!? なげーな!って思ったよね(笑)。

――(笑)。さて、今作を引っさげたツアーが5月16日から始まりますが、どんなツアーにしたいですか?

真緒:「これ昔の楽曲やん」って思う人もいると思うんですよね。その人からすると、当時の記憶がフラッシュバックするのか、また別の世界となって目に映るのかわからないですけど、そういう楽しみ方もあるでしょうし、過去の曲を知らない人からすれば、通常のSadieの新曲としてライブを観るでしょうし。今回は、お客さんも一人一人ライブに対する意気込みが違うなっていうのが、なんとなくわかりますね。それをひっくるめて、昔だからとか今だからということよりも、等身大の今のSadieという現状を、改めて全員で分かち合いたいなと思います。

亜季:1本1本のライブ、頭の中や胸の中が真っ白になるライブにしたいなと。きっと真っ白になった時に一つ伝えたいことを僕らがアウトプットするので、それをインプットして帰ってもらいたいなと思います。

(文・金多賀歩美)