特集-Special Feature-

Alice Nine

Alice Nine

9th Anniversary Yearを迎え、3ヶ月連続シングルをリリースするAlice Nine。第1弾となる『Daybreak』に見るAlice Nineの今とは。

Alice Nineの新たな名刺代わりとなる『Daybreak』。“夜明け”を意味する今作が生み出された背景を紐解くと、彼らの今が見えてきた。8年間の活動を経て完成したこの作品には、過去を踏襲しながら確実に前進しているAlice Nineというバンドそのものが映し出されている。ありのままの自分たちの状況を綴ったという表題曲「Daybreak」、新たなチャレンジが伺えるC/W曲「秘密」について、様々な角度から将(Vo)と虎(G)に話を聞いた。

◆ギターに頼る曲にしたくない(虎)

――シングルとしては2011年12月の『虹の雪』以来久しぶりのリリースですね。2012年2月にはアルバム『“9”』のリリースがありましたが、新譜のリリース自体が1年以上ぶりということで。アルバムリリースからのこの1年はどんな1年間でしたか?

虎:『“9”』を引っさげて1年丸々ツアーを回っていたので、ライブを中心に活動した1年でしたね。

将:僕らが子供だった頃に見ていたロックバンドは、アルバムを1枚出したら1年くらいツアーをやっていたバンドが多かったんです。今回、#1から#4までコンセプトを分けてツアーを回ることによって、アルバムをがっちり表現できたらいいなと思って活動しながら…早くCDを出したいなと(笑)。1年間耐えていました。


――では、この1年の間に曲は結構たまっていましたか?

将:目標というか、ここでリリースするんだ、このための曲なんだっていうのがツアー中は明確にはなかったので、選曲会もやったんですけど…。

虎:結局意味がないというか。

将:何を選んで何を目指せばいいのかっていう感じだったので。

虎:日が経つと新しい曲を作りたくなるので、実際にCD出すよっていうときには前に作っていた曲はもう飽きていたりするんです。なので、それが決まってから曲を作り出す方が、新鮮な曲が作れますね。

――今作の「Daybreak」はいつ頃に決まったんですか?

虎:去年の秋くらいですかね。

――今回のシングルを出すに当たっての選曲会では、どのくらい曲が上がっていたんですか?

将:14曲くらいの中から5曲に絞って、その5曲に僕が歌を入れたもので聴き比べて、プロデューサーの平出さんと一緒に決めました。「Daybreak」は自分的にもサビのメロディは歌っていて気持ちいいし、これ歌いたいなっていう曲だったので、選ばれた瞬間「やったぜ」という感じでした。

――Alice Nineのシングル曲の決め方はどのような方法なのでしょうか? テーマやイメージを先に決めるか、各々自由に作った曲を持ち寄るか、どちらですか?

虎:自由に作ってきた曲の中から選ぶ方が多いですね。でもメンバー自体、「これがやりたい」って言う人がいたら、そこに乗っかるタイプが多いんです。「そこまで言うならそれで行こう!」と。

将:元々みんな音楽性が違うから、前もって決める感じではないですね。それぞれがやりたいものを持ってきて、その熱量やタイミングで決まります。でも、シングルはどちらかというと、Alice Nineの名刺だと思っているんです。単純に聴いてほしいだけだったらアルバムだけ出していればいいし。その方が十数曲聴いてもらえて、方向性の誤解が少ないと思うんですよね。でも、わざわざ「この曲です」というものをリリースしていくのは、1曲でもAlice Nineの強みとなる曲を聴いていただいて、何か共感してくれたらライブやアルバムに触れてほしい、そういうツールだと思っています。なので、選曲会で僕ら的にはこれというものを5曲に絞ったら、あとは大人の意見をどんどん聞きます。その上で選ばれた曲なので、余計重みがある。メンバーが良いと思っているものに周囲の人が共感してくれたものが、こうやって表に出て行く。そういう選び方ができた曲なので、思い入れがありますね。

――「Daybreak」は虎さん作曲ですが、どのようなテーマで制作したのでしょうか?

虎:メロディから作った曲なんですけど、テーマっていうテーマがなくて困りました。ギタリストなので、ギターフレーズから作る方が得意なんです。メロディラインから考えて、そこからどういう曲にしていこうかっていう方法は、あんまり好きな方じゃないし得意な方でもないんですけど、あえてそういう風にやってみたいなと。曲をずっと作っていると、ギターに頼る曲にしたくないと思ってきてしまうんです。バンドサウンドなんですけど、ギターはオカズ程度に入っている感じで、曲として成立しているものを作りたいという気持ちがあって、それに挑戦していく感じでしたね。

――作曲者として一番こだわった部分はどの辺りでしょうか?

虎:将くんのサビのメロディなんですけど、ギリギリの高いラインで歌ってほしいなというところですね。

――将さんとしては聴きどころを挙げるならどこでしょうか?

将:あえてメロディじゃないところを挙げると、この曲はギターソロらしいギターソロはないんですけど、1サビ後の間奏でヒロトがソロっぽいオブリを弾いているんです。あのすごく少ない小節数で、ギターで情景を伝えているのを感じました。たくさん尺があったらそれだけ自由度が広がるから、色々やりようはあると思うんですけど、コンパクトに何かを伝えるというのは表現の究極だと思うので、その素敵なアレンジを聴いてほしいと思います。

――レコーディングの際、他のパートに対して意見を出すことはありますか?

虎:レコーディングをする前にそういうことは全て終わらせて、録りの段階ではもう録るだけになっていますね。いわゆるプリプロで、みんなで集まっていろいろ意見を出し合ったりはします。そこでガラッと変わったりもしますね。今回はプロデューサーさんとのやり取りで変わった部分は結構多いです。

――「Daybreak」は平出悟さんがプロデュースされたということですが、平出さんとの初めての制作はいかがでしたか?

虎:最初はちょっと不安だったんですけど、やってみると、すごく考えていらっしゃるんだなということがわかりました。何を考えているか意外と読みづらい人で(笑)。もしかしたらこのまま何も決まらないんじゃないかと思っていたら、全てを持っているような人というか。

将:彼の頭の中には完成図が見えているんです。不安な人に限って言葉で濁したり説明したがると思うんですけど、そういうことをしないので、実際に作業に入るまで、「どうなっちゃうんだろう? 本当にこれ大丈夫なのかな?」と最初は思いました。プロデュースからトラックダウン、ミックスの作業まで、エンジニアもできる人なので、全てに意味があるんだっていう作業ができて、楽しかったですね。

――平出さんとの制作において、新たな気付きはありましたか?

虎:曲を作ることにものすごく詳しい人で、うちらが考えつかないようなアレンジを提案してくれるのは、やっぱりすごいなと思います。

将:プロデュースを頼むならこういう人がいいよねっていう、まさにそういう人。

虎:そうだね。

将:僕らが知ってることをわざわざ言われたくないんですよ(笑)。僕らが考えつかないことを提案してくれたら、やる意味がある。僕らには今までそういう視点はなかったけど素晴らしいと思う、というものを提案してくれる人なので、本当に出会えて良かったなと思いますね。

◆言葉は飾る必要はないなと思って(将)

――歌詞に関してですが、「Daybreak」はノンフィクションに近いのかなと思いました。

将:そうですね。本当はありのままの自分を歌うのって恥ずかしいというか、心の中を見られるようで照れちゃうんですけど、楽曲がすごく洗練されていてサウンドがクールに仕上がっていたので、言葉は飾る必要はないなと思って。こういうことを言ったら「いいな」と思ってもらえそうだっていう打算や計算みたいなものは、逆にかっこ悪くなっちゃう、バレちゃうなっていう感じがしたので。ありのままの自分たちの状況を、そしてそこから何をしていくのかということを、ちゃんと歌うべきなんじゃないのかなと。多くの人に共感してもらうための歌詞ではないんですけど、みんな日々生きている中で、スタンスや気持ちがリンクする部分は絶対あると思います。ありのままの自分たちの状況を歌うことによって、逆に聴いてくださる方を勇気づけられたらいいなと思って、こういう歌詞になりました。

――最初に生まれた歌詞はどの部分ですか?

将:〈消してはまた描いて 決して醒めぬ夢まで〉というフレーズは、デモで歌っている段階からありました。2006年、2007年頃に初めて高名なプロデューサーの方についていただいたとき、僕らも無知だったので先生みたいな感じでいてくれたんです。歌詞もセオリーから教えていただいたんですが、その中で韻を踏めと言われて。日本語で韻を踏むとダジャレになるじゃないか、と当時は思っていて結構嫌だったんです。でも、結局それは表現のスキルが低かっただけで、そのときは応えられなかったんですけど、そのときのハードルに応えたかったっていうのがどこかにあって。韻を踏まなくても、母音の位置や子音の位置をちゃんと合わせることによって、音楽的にはすごく覚えやすいものになったりするので。8年間活動してきて、そういうことを今ちゃんとやってみたいと思ったんです。過去の自分が越えられなかったハードルをちょっと越えて、響きも美しいし言いたいことも言えてる…過去の恩師に「ありがとうございました」ですね。中学校の先生に、当時はわからなかったけど今ではわかりますっていうような気持ちがある歌詞です(笑)。

――歌詞に関しては、他のメンバーが意見を出すことはあるんですか?

将:結構おまかせだよね。

虎:うん。たまに言ってる人もいるっぽいけど。

将:衝撃を受けるのが、ヒロトが「なんでもいいよ」って言って俺が歌詞書き終わったあとにフレーズを送ってきたりして(笑)。

虎:そうなんだ(笑)。

将:それを採用できたことはない(笑)。がんばって「どういう感じなの?」って作曲者に聞いて、「前向きな感じ」とかそういう情報があるくらいですね。

――「Daybreak」は虎さんはおまかせでしたか?

虎:今回は特に言ってないですね。

将:でも、これはラブソングではないというのと、前向きな感じ、とは言ってましたね。それぐらいのおまかせ感の方が僕はやりやすいですけどね。

――個人的に〈重荷は翼にもなるから〉という一節にハッとしました。

将:いろんな解釈の仕方があると思うんですけど、前を向いて進もうという気持ちが時に重荷になってしまうときもあるし、逆に過去のネガティブな体験から這い上がってやろうという気持ちが翼になることもある。このバンドを8年間活動してきた中で、たくさんくじけそうになることがあっても、周りの方たちから助けてもらって前に進むことができたという実感があったので、そういう言葉が自然と出てきました。良いこと言ってやろうとかではなく、無意識にこういう言葉が出てきましたね。

――そうなんですね。虎さんは「Daybreak」の歌詞で特に好きな部分はどこですか?

虎:……ここだっていうのは難しいですね。今回の曲はわかりやすいなと思ったんですよ。それがいいなと思いましたね。歌詞を見ながら考えるということもなく、普通に聴いていて前向きにがんばるんだっていうのが伝わったので、すごく良かったなと思いましたね。

――最後の〈形はなくとも 歌は消えずに そばに居るよ〉に全てが集約されているなという印象を受けました。

虎:確かに!

一同:(笑)

虎:将くんは歌詞を書くのがやっぱり上手いなと思いましたね。

将:やったぜ!

虎:ストレートに書くのって割りと簡単だと思うんですよね。そうじゃなくて、言葉を置き換えるのが上手いなって。