生熊耕治

生熊耕治

アコースティックアルバム『MONOLOGUE』が映し出す生熊耕治の人生。
忘れないで、僕がしたこと、君を愛していたこと――。

昨年、cuneとしてデビュー15周年、ソロ活動5周年という一つの節目を迎え、フルアルバム『12-Twelve-』をリリースした生熊耕治。今秋には期間限定スペシャルユニット“キュボン”、新プロジェクト“BLUEVINE”としても活動を行うことが発表されている中、ギタリスト、そしてヴォーカリストであるソロアーティスト“生熊耕治”の核とも言えるアコースティックアルバム第2弾『MONOLOGUE』(黒盤)が8月5日公演より発売となった。一人完結での制作をテーマに、生熊曰く「独り言みたいなもの」を詰め込んだという今作は、サウンド、歌詞、その一つひとつにこれまでの彼の人生が刻まれている。そんな43歳現在の“生熊耕治”そのものと言える今作について話を聞くと、この1年間の変化、音楽に対する思いを感じ取ることができた。

◆自分なりの愛の伝え方って何だろうと考えた

生熊耕治

――『12-Twelve-』の取材からちょうど1年経ちました。あの時、「5年活動していく中で、音楽や歌に対する気持ちが変わってきた。やっと気持ちをメロディーや言葉に乗せて歌えるようになってきた」と言っていましたが、そこからの1年は大きかったですか?

生熊耕治(以下、生熊):めちゃくちゃ大きかったと思います。バンドのツアーも結構やったし、アコースティックライブも含めて、この1年間で出会えた方もたくさんいて、自分で意識的に変えようと思っていたわけではないですけど、結果変わったと思います。

――最近、歌に対する思いがより大きくなっていますよね。

生熊:そうですね。元々ギタリストなので、言葉を持たない表現にこだわってやってきたんですけど、今それが良い方向に動いている感覚というか、言葉を超越したものというのがあるなと最近思っていて。毎回同じ歌詞で歌うわけなんですけど、日によって感情って違うし、その言葉の角度も違うんだなというのを学んだ1年ですね。自分で放った言葉なんだけど、時間が経過して初めて、本当に言いたかったことはこれなんじゃないのかなと、一つひとつのワードの意味も変わってきたような気がします。ギターってサウンドで言うとすごく抽象的なものですけど、本当は歌もそうなんだなと思いました。CDにして歌詞を文字に起こせば形になるんですけど、実際に歌っている瞬間というのは形がなくて、その形がないものを紡いでいっているので、すごく“音楽している”感じと言うのかな。

――先日、ギターは自信があるけど、歌だけで空気を変えられるようになりたいと言っていましたよね。

生熊:そこに向かっています。もうできているんじゃない?と思ってくれている人もいるかもしれないですけど、自分自身の到達点で言うと、まだちょっと掴んだくらい。むしろ掴みもできてなくて、触れている感じというか。今この瞬間、自分の言いたいこと、歌いたいことが表現できて、お客さんが引き込まれていっているなという感覚はわかるようになってきました。でも、もっとできるんかなって。ちょっと欲張りなんですよね。

――2017年2月リリースの『MONOLOGUE』(白盤)から1年半を経て、『MONOLOGUE』(黒盤)が8月5日にリリースとなりました。白盤に対して黒盤はどのような位置付けになるのでしょうか?

生熊:『MONOLOGUE』(白盤)は初めての試みで実験だったんですよね。打ち込みやミックスも含めて、どこまで自分一人で作品を完結できるかというのがテーマにあるので、『MONOLOGUE』というタイトルを付けているんです。『12-Twelve-』はバンドサウンドだったので、関わる人もその分多くて、プレイヤー、エンジニアさん、レコード会社さんとか、全部引っ括めると4~5倍くらいの人数になるんですよね。そういうものではなく、普段自分が持っている嗜好、感情に近いものを一人でどこまでできるんだろうと思って作ったのが白盤でした。で、作り終えた時に、やっぱりもっとできるなと思って(笑)。それに、楽曲自体も成長していくじゃないですか。

――そうですね。

生熊:この時の書き下ろしだった「RAT RACE」も「Eternally」もどんどん成長していって、今は白盤に入っているものとは全然違う表現ができている。そういう意味で、自分の独り言みたいなものを進化させたものを作りたいなというのが、今回の黒盤に詰まっているかもしれないですね。なので、白盤のバージョンがドンッと上がったのが黒盤という感じだと思っています。

――今作について、5月時点では「前衛的な作品に仕上がっている」「生熊耕治どこに向かっているのかと思われるかも」と言っていましたが、6月には「作ってから1~2ヵ月経ったら、もう、そうでもなく感じちゃって」と言っていましたよね(笑)。

生熊:言っていましたね(笑)。僕、そういう人なんです(笑)。

――さらに月日が経った今、客観的にどう思いますか?

生熊:生まれたての時は「おー、前衛的やな!」と思ったんですよ。特に「Reminder」はハードパッドが入っていたり、アコースティックとデジタルの融合みたいな感覚で作って、シューゲイザー、ノイズ、エレクトロ…自分の持っているいろんな趣味嗜好をサウンド的には詰め込めたなと思いました。改めて聴いても、詰め込めたとは思うんですけど、今はまた違うことをやりたくなっているというか(笑)。まぁ、ミュージシャンとしてはそれが正常だと思うんです。でも、歌は今掘り下げているところですね。

――「Reminder」は先にアコースティックライブで聴いていると、音源でビックリしますね。最初にCDの音を出した時、「あれ? 違うCDかけたかな?」と思ったんですよ(笑)。

生熊:それはわかる(笑)。だって、急にノイズみたいなのが入ってるからね。

――アコースティックアルバムという括りの作品の中で、こういうデジタルなアレンジを取り入れたのはなぜですか?

生熊:元々好きなんですよ。その基礎はcuneの時にあって。当時、渡辺善太郎さんにプロデュースしていただいたことがあるんですけど、善太郎さんの音楽って、アコースティックなんだけどコンプがバッキバキだったり、変なところで変な音が入っていたりするんです。実は「FISH」(『12-Twelve-』収録)で、水の音でリズムを作っていたりするのは、善太郎さんからインスパイアされていて。あと、善太郎さんのソロプロジェクトでatamiというユニットがあるんですけど、そこからかな…表現方法としてギターじゃなくてもいいんじゃないか?と思ったんですよ(笑)。

――まさかの(笑)。

生熊:でも、やっぱりギターが好きだから、融合を図るわけです。どうしたら面白く融合できるんだろう、アコースティックギターをどうやったら今っぽく表現できるんだろうと。白盤の1曲目「CRISPY」はアコースティックだけどコンプをバッチバチにかけて、遊んだ感じの曲になっているんですけど、「Reminder」はもっと行きたかったというか。でも、結局歌詞の世界がそういう世界なので。僕の「Reminder」のイメージはMVの通りなんです。ガキの頃から今の43歳の自分にバンッと行くスピード感をどうやったら表現できるかというので、ああいう感じにしたんです。景色も頭の中にあって、こういうサウンドになっているんですよね。歌詞を書くより、トラックを作るほうが時間がかかりましたね。

――そうなんですね。1曲の中でここまで緩急のあるものは、これまでの生熊さんの楽曲にはなかったのではと。

生熊:そうですね。しかもサビが1回しか出てこないし。変な曲を作りたかったんです。アコースティックってこうだよねと思っている人の固定概念を壊したかったというか。こういう表現の仕方もあるという。これはアコースティックじゃないと言われれば、そうなんですけどね。なので、アンプラグドと言っておきます(笑)。

――特にライブだと、歌とギター、優しさと激しさという、生熊さんの魅力が1曲に凝縮されているのを強く感じます。音源とライブ、それぞれに良さがあって、どちらも楽しめますよね。

生熊:そうそう、ライブ良いんですよね~。歌っていて、できた当時と全く違う表現になってきているなと。覚悟をもって作ったんですけど、今はその先にあるものを見ているような気がするんですよね。できた時は、タイトル通り残したいものを詰め込んだ、遺書みたいなものができたなと思いました。その時は前衛的だと思ったけど、今は何か違うというのは、もっとその先に行きたい、歌がそういう歌になってきているということなのかもしれない。だから、ライブだとちょっと違う歌詞を入れたりして、サビ終わりにしていないんですよ。サビ終わりにすると、あまりにも悲しいから(笑)。ちゃんと続くように表現しています。

――遺書のつもりで書いたということですが、そもそもこのテーマで歌詞を書いたきっかけというのは?

生熊:家族や親、兄弟とか、一番身近な小さな集合体の大切さに気付くというか。僕自身あまり親孝行できていないし、こういう生き方しかできないので、親はいつまでも心配していると思うんです。でも親は歳を取っていくし、年々小さくなっていく背中を見て、僕が音楽でできることはシンプルに愛を伝えることだと思ったんです。自分なりの愛の伝え方って何だろうと考えたのが、ここに向かわせたのかなと思います。僕はあまり口で言えないタイプで、大切な人ほど邪険にしてしまう癖があるので、シンプルに家族に届けたいと思って作ったのがスタートでした。でも、音楽も聴かないと伝わらないんですよね。

――ご両親はもう聴かれたんでしょうか?

生熊:どうなんやろなぁ。WEBは結構チェックしているので、MVを見ているかもしれないですね。撮影場所は僕が住んでいた大阪の街のようなところを探したんですけど、東京にはなかったという(笑)。でも近い景色は撮れたと思います。

◆荒野を旅していく中で気付いていくものってあるなと

生熊耕治

――2月に行われた「12-Twelve-」ツアーのファイナルで配布した「Mr.ベンダー」が今作に収録されていますが、今作を作る前提で制作した楽曲だったのでしょうか?

生熊:配布だけで終わるのは嫌だったので次の作品に入れようと思っていて、例えばフルアルバムになるともう違うアプローチになるだろうから、『MONOLOGUE』だと思っていました。配布音源からリミックス、リマスターしています。何であのツアーでこれが書けたのかと言うと、『12-Twelve-』を出して、いろんな葛藤があったり、自分の足りなかった部分や現実も思い知ったからなんですよね。ハッピーな感じの曲ですけど、全然ハッピーな内容じゃないんですよ。ファンの人たちには「裏テーマがあるから、ちゃんと読み取ってね」と言っています(笑)。そういう意味で言うと、『12-Twelve-』のアンサーソング的な部分もあるのかなと。あのアルバムを出してからすぐにできた曲ですからね。あとは、こういうアシッドジャズみたいな曲をやりたかったというのもあって。

――最近ライブでの登場率も高いですよね。

生熊:そうですね。結構マニアックな曲だからあかんかなと思っていたんですけど、意外とそうでもないみたいで。音楽好きな方が多いんだなと改めて思いました。自分が思っている以上に音楽をすごく勉強しているし、いろんな音楽を聴いていて、楽しんでくれているんだなというのがわかったから、堂々とライブでできるようになったというか。最初は、この感じわかるかな?と、ちょっとビビりながらやっていたんですけど、むしろ、こういう曲をいっぱい作ってほしいという声が多かったんですよね。

――自然と体を揺らしたくなる曲です。

生熊:ホンマですか。そう言っていただけると嬉しいですね。コード進行とかは相当マニアックなので、それを感じずに楽しんでいただけるというのは、僕の目論見が成功したということですね(笑)。この曲は、ギターはお茶の子さいさいなんですけど、ファンクでジャジーなベースを録るのが結構大変だったんですよ。自分で弾いたんですけど。こういう曲はベースが命なんだなというのがわかりました。

――ベンダー(売り手)とサプライヤー(作り手)がテーマの曲ですが、白盤の2曲目「RAT RACE」は経済を回すという内容なので、白盤と黒盤で1~2曲目の流れが近いなと思って。

生熊:あ、確かに。生きていかなあかんからねー(笑)。両親の時代=団塊の世代は資本論が流行の思想だったんですよね。実家を出るときに資本論の本を持って出たんですけど、1ページめくって断念しました(笑)。自分にとって資本論は恐ろしいものという感覚があるんです。両親からは民主主義、資本主義の時代だからちゃんと学びさないと言われていたのに、学べていなくて(笑)。でも、人間の本質ってそこじゃないから歌や音楽があるという理想論もあったり、とは言え現実論では皆、資本主義の中で生きているので、それはずっと僕のジレンマです。音楽とお金、人とお金。お金をたくさん持つことを幸福と思う人もいるし、そうじゃない人もいる。僕らは儲かったらお金をかけて良い作品を作ることができるけど、そうじゃない人は経済を転がしていくということをしているんだと思うし。…なんでお金がないと生きていかれへんのやろなぁ(笑)。

――永遠の難題ですね。そして、「MIDNIGHT RAIN」はまさに歌詞にある跳ねたリズムのミディアムナンバーで、「荒野へ」はベースラインがジャジーです。この2曲の流れがすごく自然だなと。

生熊:「MIDNIGHT RAIN」は書き下ろしで、「荒野へ」は随分と前に書いた曲で元々は普通のロカビリーだったんですけど、それをリアレンジしてアコースティックのサウンドに寄せました。僕のライブを初期の頃から観てくれている方は知っている曲だと思います。

――「MIDNIGHT RAIN」に〈ピエロ〉〈荒野〉、「荒野へ」に〈道化〉というワードが出てくるのは意図的なものですか?

生熊:偶然なんですよ。「MIDNIGHT RAIN」はファンタジーを書きたくて、最初は「MIDNIGHT TRAIN」にしようと思ったんです。真夜中の列車って何回か乗ったことがあるんですけど、独特の空気感があって、それを書いてみようかなというのが始まりでした。でもその時、雨が降っている夜だったんですけど、家でハイボールを飲んでいて酔っていたから、雨の音を聞いているうちに、ペンで書いていたら「MIDNIGHT…RAIN…あ、やっぱり雨の曲にしよう」となったという(笑)。

――状況と気分と字面が相まって誕生したんですね(笑)。

生熊:そうそう。たまたま変わってしまったという。その日に雨が降っていなかったら、「MIDNIGHT TRAIN」だったかもしれないです。これは結構好きな曲の一つですね。こういう曲も書けるんだなと思って。

――「Reminder」とは打って変わってサビの分量が多いですよね。

生熊:もうこれはサビの曲ですからね。Aメロは何回も作って壊しています。サビだけすごくキャッチーにできたんですけど、Aメロがなかなか自分の納得できるものができなくて。メロディーと言葉がハマらなくて、言葉を書いてからメロディーをぶっ潰して作り直しましたね。ここまでAメロに悩まされたのは珍しいです。

――そうなんですね。

生熊:「荒野へ」は当時読んでいた小説からインスパイアされているんですけど、本中毒だった時期があって、そういうのがフルに歌詞に入っていますね。今日、ここに来る移動中に改めて歌詞を読んでいて、「あ、俺、こんなこと書いていたのか」と思って(笑)。自分で書いているのに、面白いなぁと。

――何年くらい前に作った曲なんですか?

生熊:10年くらい前かもしれないです。

――2007年に書いたという「FISH」より前、後どちらでしょう?

生熊:同時期くらいかも。当時、cuneが活動休止したことが大きかったかもしれないですね。自分でここから戦っていかなきゃいけない怖さとか、いろんなものが入っているのかもしれない。

――だから〈荒野へ行く〉なんですね。

生熊:そう。寺山修司さんの作品に「荒野」という言葉が多くて、僕がこの言葉を好きなのは、そこにも繋がっているのかも。あと、アレハンドロ・ホドロフスキー監督の『エル・トポ』という映画があって、西部劇が舞台になっていて荒野を旅するんです。僕が見てきた映画や小説のイメージが強いのかもしれないですね。僕の中で「世界」というのはデカすぎるんです。「世界」だとすごくいろんな意味を持つけど、「荒野」だとシンプルに荒れ果てた土地を旅するというイメージがある。しかも、僕の中では、荒野は誰かと一緒に旅するイメージがないので、孤独感も満載な言葉なんですよね。「航海へ出よう」とも言えるけど、海よりも陸のほうがいいのかもしれない(笑)。

――「航海」だと何となく希望的なイメージで、「荒野」だと戦いに行くというイメージがある気はします。

生熊:そうですよね。『ギター弾きの恋』という映画で、ろくでなしのギタリストが旅をしていて、体に障害を持った女の子と行きずりの恋に落ちるんですけど、「俺はギター弾きだからまた旅に出るんだ。華やかな世界に帰るんだぜ」って言うんです。でも、旅の途中で、その人との恋と愛が一番大切だったんだなと、失ってから気付くという話で。自分にとっても、荒野を旅していく中で気付いていくものってあるなと。あとにならないと気付かないんですよね。まぁ、だから荒野へ旅立たないと(笑)。

◆俺には俺の歌があるなって、わかった

生熊耕治

――そして、ラストに収録されているのが「ひとつ」です。「Eternally」に続く名バラード誕生ですね。

生熊:そうしたいなと思っていました。でも、「Eternally」より規模がちょっと小さいかも。「Eternally」は大きな愛を考えていたけど、「ひとつ」は完全に家族の歌なので。両親が僕に抱いていた感情はこうなのかなとか。昔、僕自身が不安定な時期に、おばあちゃんに「おばあちゃんくらい歳を取っても、寂しいと思う?」って聞いたら、「あー、寂しいよ」と言っていて。「どういう時に寂しいと思う?」って聞いたら、「やっぱり夕方やな」と。昔は夕方になると家族が揃ったんです。つまり、亡くなったおじいちゃんとか家族が一番集まっていた大事な時間がそこに集約されていたからなんですよね。その会話をずっと覚えていて。僕にとって一番寂しい時間っていつだろうと考えたら朝で。実はそれを克服するために早起きするようになったんです。僕の場合は、家族が一緒にいられる時間は朝しかなかったんですよ。そう考えると、幸せな時間だったから寂しいと感じるのかなと。どうしてもそれを曲にしたくて、今回ようやく書けました。

――まさにその内容が歌詞に入っていますね。胸をギュッと掴まれるような、切なさのあるバラードも生熊さんの得意分野だなと思います。

生熊:ありがとうございます。自分が感動できる曲というのは必須なんですよね。自分が感動できないと、人を感動させることなんてできないと思うので。そもそも歌を歌うことがcuneのヴォーカルが脱退したことがスタートだったので、そういう意味では感謝です。新しい世界を見せてもらった。もうcuneの歌は、僕らの歌というよりは僕らの手を離れた歌というか。いろんな人がカバーしてくれるので、わざわざ僕がやる必要もないのかなと最近思ったりするんです。本気でcuneのカバーをやっているからこそ、俺には俺の歌があるなって、わかった。そういう意味では、歌をすごく理解しているのかもしれないですね。

――「Reminder」と「ひとつ」どちらも命、愛を歌っています。最初と最後の曲は作品の印象を大きく左右するので、そういう意味では、聴き終わった時に愛が強く印象に残る作品です。

生熊:人って絶対どこかに属しているんです。そういう属することへの愛というか、小さな集合体に向けた愛というか。愛の伝道師になりたいわけじゃなくて、「Reminder」みたいに思い出してほしいという感覚。そんなに壮大なテーマではないんですよ(笑)。偉そうに愛を語れるような人間じゃないので、僕にもわかる家族への愛を書いているんですよね。ちなみに、「ひとつ」は歌も挑戦したことがあって。地声と裏声の間くらいのハーフヴォイスを使っているので、絶賛練習中です。

――ライフワーク的なアコースティックライブの他に、今年はキュボン(cuneとSabãoの期間限定スペシャルユニット)、BLUEVINE(生熊耕治、亜季(B)、赤松芳朋(Dr)による新プロジェクト)の始動が控えていて、他にも様々な活動がありますが、今現在の“生熊耕治”としての展望とは?

生熊:『MONOLOGUE』に関してはライフワークになっていくと思います。僕が音楽を続ける限り、出していけたらなと。自分の独り言なので、できるだけミニマムに作っていけたらいいですね。キュボンは、今年cuneを活動できていなくてずっと悩んでいた中で、友達からこういうものをやってみないかと話をいただいたので、楽しんでできたらと思います。今、BLUEVINEの制作に突入しているんですけど、棲み分けをきっちりしないといけないというのもあって、『MONOLOGUE』がより濃く“俺”なのかなとも思っていて。BLUEVINEはよりバンドのサウンドにしたいんです。いろんな自分がいるけど、全部全力でやっています。まだまだやりたいことがいっぱいあるんですよね。でも器用貧乏にならないように、自分ができることをキッチリやっていかなあかんと思っています。できてしまうというのが一番良くないんですよね。

――良い意味で、本当に器用ですよね。

生熊:多分そうなんです。不器用なことは究極に不器用ですけどね(笑)。

――日々の生活の中に無駄がないというか、すごく効率的に時間を過ごしているイメージがあります。

生熊:めっちゃ無駄だらけですよ(笑)。二度寝好きだし、昼寝好きだしね。

――早起きなのに(笑)。

生熊:起きて一仕事終えて、昼寝するのがすごく好きですね。逆に言うと、無駄を大事にしています。お酒を飲む時間なんて、言ったら無駄じゃないですか。無駄をしたいがために効率良く動くという。いかに無駄をいっぱい作れるかです。

(文・金多賀歩美)

ARTIST PROFILE

生熊耕治

<プロフィール>

2002年、cuneのギタリストとしてシングル『リフレイン』でメジャーデビュー。2006年の活動休止を経て、2010年に再始動、現在はヴォーカル&ギターを担う。2012年、ソロ名義で活動開始。音源リリース、ライブ活動を精力的に展開し、近年ではアコースティックライブ、黒田倫弘とのカップリングツアー、田澤孝介との47都道府県ツアーなど、様々なステージを繰り広げている。2017年9月、1stフルアルバム『12-Twelve-』でソロアーティストとしてもメジャーデビュー。今秋にはcuneとSabãoの期間限定ユニット“キュボン”、亜季、赤松芳朋との新プロジェクト“BLUEVINE”としても活動を行うことが決定している。

■生熊耕治 オフィシャルサイト
https://kouji-ikuma.amebaownd.com/
■cune オフィシャルサイト
http://cune-official.com/

【リリース情報】

MONOLOGUE
2018年8月5日(日)よりライブ会場限定発売

MONOLOGUE
SSDG-0004
¥2,000(税込)

【収録曲】

01. Reminder
02. Mr.ベンダー
03. MIDNIGHT RAIN
04. 荒野へ
05. ひとつ

【ライブ情報】

●「Monologue Acoustic tour」
9月23日(日)大阪music bar S.O.Ra.
9月30日(日)名古屋ROLLING MAN

●「2018 live house tour【VORTEX】」
10月14日(日)大阪2nd LINE
10月27日(土)名古屋R.A.D
11月4日(日)渋谷TSUTAYA O-Crest

●生熊耕治×黒田倫弘 ぶらり旅2018『黒生』~千葉編~
8月18日(土)本八幡cooljojo jazz+art(二部制)

●「コネコレロック2018」
8月26日(日)大阪:海遊館、天保山マーケットプレース周辺 合計4ステージ
合計約20組出演予定

●「Katsu-Uda BAND 主催ライブ vol.13」
8月27日(月)京橋Arc
出演:Katsu-Uda、大橋タカシ、生熊耕治、S☆RUSH、平岡優也

●「西日本殴り込み旅 2018」
8月28日(火)名古屋Spazio-rita
出演:RYO(KING)、我孫子神音會
Guest:生熊耕治

●「SHADOW NET 3man LIVE‼︎」
9月8日(土)上野音横丁(昼公演)
出演:WHITE SHADOW、生熊耕治、石井卓とジョン中村

●生熊耕治×涼木聡 Acoustic Tour 『TWO PEACE』
9月9日(日)学芸大学APIA40

●生熊耕治×黒田倫弘 ぶらり旅2018『黒生』~夏の思い出編~
9月15日(土)江ノ島 虎丸座(一部)

●生熊耕治×黒田倫弘 ぶらり旅2018『黒生』~夕暮れの江ノ島編~
9月15日(土)江ノ島 虎丸座(二部)

●キュボンLIVE ONLY TWICE
9月24日(月・祝)大阪RUIDO
10月5日(金)青山RizM