2015.8.23
A9@豊洲PIT
11th Anniversary Live「Re:birth-飛翔–」
2014年8月23日、富士急ハイランドコニファーフォレストでの10周年記念ライブを最後に、所属事務所から独立し、地下活動に入っていたA9。そこからちょうど1年となる2015年8月23日、START-UP EP『銀河ノヲト』を引っさげ、彼らがついに私たちの前に帰ってきた。
原点回帰をコンセプトに掲げながら、最新の5人のサウンドと思いが凝縮された最新音源『銀河ノヲト』。そこに収録されたインスト曲「PRAY」を奏でるメンバーのシルエットが、白布に覆われたステージに次々と浮かび上がる。将(Vo)が手を前にかざすと同時に幕が下り、純白の衣装に身を包んだ5人が姿を現すと、大歓声が彼らを迎えた。先立って3月1日にMVが公開された、A9の復活の狼煙「Phoenix」が1曲目を飾る。背景に映し出された、黄金に輝く不死鳥が力強く羽ばたく様は、今のA9そのものだ。この記念すべき日に掲げられたタイトルは『11th Anniversary Live「Re:birth-飛翔-」』。A9の11周年を祝うと共に、彼らの完全復活となる舞台が幕を開けたのだ。
「暴れる準備はいいか!」という将の第一声と共に「RUMWOLF」で早くも前方へと繰り出すフロント4人。この1年の空白を埋めるように、バンドとオーディエンス双方の熱が行き来する。続いて披露された「Daybreak」は当時9周年イヤーを迎え、レーベルを移籍し、3ヶ月連続シングルリリースの第1弾として発表された曲。ありのままの自分たちの状況を歌詞に綴ったと、当時の将が語っていたこの曲が、今、この新たな始まりを表しているようだった。重荷は翼にもなる、そして今日という日はA9にとっての夜明けでもある。
「この1年、短かったようで長かった。まずは君たちに言いたかった言葉を言っていいかな? ただいま!」という将の挨拶に、会場いっぱいに「おかえり!」の声が響いた。「会いたかったぞ! 全てを解放してぶつけていくから、お前らもぶつけてくれ!」という言葉を口火に、「百花繚乱」「道化師」でフロアの熱を更に上げていく。ステージがピンクに染まった「闇ニ散ル桜」では、虎(G)&沙我(B)が音を紡いだ瞬間に歓声が上がり、次いで、ダークな世界観が際立つ「Scarlet」をじっくりと聴かせた後、鉄板曲「ハイカラなる輪舞曲」ではカラフルな光が彩る中、弦楽器陣は縦横無尽に動き回り、将は「踊れ!」と叫び自らもクルクルと回転。曲中にメンバーコールを挟み、沙我、虎、Nao(Dr)がそれぞれソロパートを披露した。
ここで、楽器陣がステージを後にし、A9のライブで初の試みとなる将のDJタイムに突入。オーディエンスのクラップを煽り、ヒロト(G)を呼び込むとDJ&ギターセッションへ。そして虎、ヒロト、両ギタリストの個性が溢れ出た各ソロセクションでオーディエンスを魅了した後、ステージには再び5人の姿が。最新作収録の壮大なバラード曲「フリージアの咲く場所」を披露した。さらに、沙我が1スネア、1タム、1シンバルという小セットでリズムを刻み、Naoとまさかのドラムセッション。掛け合いもあったりと完璧にこなしてみせ、ファンを湧かせる一幕も。もちろんスティックをベースに持ち替え、ソロも披露。時にメロディアスに時に激しく魅せるベースプレイに、フロアもクラップと拳で応えた。この1年の間に各々様々なことに挑戦し、スキルアップした彼らならではのブロックとなった。
続いて最新作から、フロアいっぱいにタオルが舞った「流星群」、〈今、目の前に在る事が僕達の答えさ〉というまっすぐな彼らの思いが詰め込まれたリード曲「Spiegel」をプレイし、将は現在の胸の内を語った。
「去年の8月23日に「解散しねーよ!」「絶対戻ってくるから!」とか言って、その通りちゃんと戻ってきたんだけど、みんなが待っていてくれなかったらダメだったと思う。俺らはお互いに愛し合ってリスペクトし合っていて、最高にまとまっているバンドだけど、帰ってこられる場所を君たちが作ってくれたから、帰ってこられました」
そして「大事な曲」だと言い「RAINBOWS」をスタートさせると、オーディエンスのOiコールとヘドバン、ジャンプで場内はこれまで以上の白熱ぶりを見せる。さらにここから「DEAD SCHOOL SCREAMING」「銃弾」「開戦前夜」と暴れ曲を連投し、「俺たちは本当に幸せです! ありがとう!」という将の言葉をもって、本編は終わりを迎えた。
アンコールの声に迎えられ、再びメンバーが姿を現す。「今のお前たちに最高の曲があるので、聴いてください」と披露されたのは「Heart of Gold」。〈僕らの物語を今 描いてゆこう ここがスタートさ〉というメッセージが胸を打つ。そして――
「今日を待ち望んでいた気持ちは、みんなから届いています。俺たちは宇宙一幸せだなと思います。無駄なものなんてなくて、一人ひとりがいてくれたから、A9は歩いていけます。心配かけたけど、ありがとう。これからも着いてきてください。5人で話し合って、今の気持ちに一番ふさわしい曲を最後に届けることにしました」
1年前の同日、1曲目を飾った曲が、1年後のこの日のラストを締め括ることとなった。背景には歌詞が映し出され、ヒロトが奏でるギターの音色に合わせ、オーディエンスと共に歌う「すべてへ」が場内に響き渡る。そして5人の音が重なり合い一つになった時、銀テープが宙を舞った。オーディエンス一人ひとりと会話をするかのようにプレイするメンバーの姿は、一様に晴れやかな表情をしていた。
最後に将は「みんなとこの日を過ごせたことを、誇りに思います。本当にありがとう!」と告げた。終演のアナウンスが流れても、鳴り止まないアンコールを求める声。それが、この日を待ちわびていたファンにとっての一つの答えだろう。この夜、将は「幸せ」「ありがとう」という言葉を幾度も口にした。そのシンプルな言葉は、メンバー5人の思いが詰まった最上級の愛のメッセージなのだと思う。見事に蘇生を果たし、自らの足で着実に歩みだしたA9。その新たな門出を祝福すると共に、過去最高の結束力で動きだした彼らの快進撃に期待したい。
(文・金多賀歩美)