待望のニューアルバム『proof』を完成させたNoGoD。彼らが今やりたいこと、やれること、可能性を“証明”した新たな作品、その全貌に迫る!
今年4月に『Missing』、7月に『Arlequin』という2枚のシングルを世に放ったNoGoDが、“証明”を意味するフルアルバム『proof』をリリースする。意味深でありながら普遍的なタイトルを冠したメジャー5枚目となるこの作品は、インストゥルメンタル「In the cage…」の息をのむ幕開けから、緻密さと大胆さが織りなす全12曲(初回限定プレス盤は11曲)が約45分に渡って我々の心を鷲掴みにする。そして、この作品と共に全国を駆け抜けるワンマンツアー NoGoD TOUR -2017 AUTUMN [prùf]では、さらなるバンドの可能性を提示してくれるに違いない。現メンバーで迎えた10年目のNoGoDが作り上げた最新作、その全貌を5人が聞かせてくれた。
――遂にニューアルバム『proof』が完成しました。今回のアルバムはシングル『Missing』からの流れの一区切りという位置づけなのでしょうか?
Kyrie:『Missing』や『Arlequin』は先行シングルカットに近いんです。去年末にアルバム『Renovate』を作り、ツアー後に配信限定シングルを二作出す中でNoGoDとして新たなチャレンジをさせてもらい、その上で2017年はどういうものを作ろうか、どういうふうにNoGoDというバンドを進めていこうかと考えた結果の“証明”となるものがこの作品です。楽曲を並行して作っていく中で、「4月のシングルは『Missing』にしよう」ということで先駆けて録音したんです。
――そのせいか、アルバムの中のシングル曲が作品の流れの一つになっている感じがしました。
団長:そうですね。同時にレコーディングしている空気感の近さが、パッケージングしたことでよりわかりやすくなったのかもしれません。
――今回は、アルバムタイトルありきで曲を作っていったんですか?
Kyrie:アルバムタイトルよりも先に楽曲の「proof」があったんです。この曲は今回の制作で最初に書いた曲でもあったので、そこをポイントにして作品を作っていこうという指針ができていました。それで、アルバムタイトルを決め込むときに、これでいこうということになったんです。
――アルバムの中で〈証〉という具体的な言葉が歌詞に入っている曲は「proof」だけですが、収録されたそれぞれの曲に共通するテーマだと思いました。
団長:確かに全てに当てはまりますね。基本的にNoGoDはメッセージのベクトルがポジティブだし、強めに設定しているからなのかな。
Kyrie:普遍的なテーマだしね。でも、あまりテーマで縛ろうとは思っていなかったんです。デビュー前後はコンセプチュアルなものが多かったんですけど、それ以降は作品としてのコンセプトは掲げても厳密にテーマで縛ることはしていないんです。僕たちは割と適当なところがあるので、できたものをどうこう言うより、どんなものが出てきてもいいように設定しておいたほうが健康かなと(笑)。だから「proof」というテーマも自分の中では特別斬新なものではなくて、本当に単純に、作品を出す、ライブをやる、NoGoDとして活動するということが、今NoGoDというバンドが生きていることの証になるだろうと思ったので、それをタイトルとして掲げたらどうか、と思ったんです。
――では各曲の聴きどころについて教えてください。
01.In the cage…
――NoGoDはアルバムの7曲目にインストゥルメンタルが収録されることが多いですが、今回は1曲目にも収録されているんですね。
Kyrie:これはインスト曲というより、オープニングトラックという位置付けなんです。最初に選曲をした時はもっと展開があったんですけど、ドラムのパターンから始まるヘヴィで閉鎖的な感じの方がオープニングにふさわしいんじゃないかということで今の形になりました。
――これは華凛さんが原曲を作っていますよね。
華凛:曲出しの時は、ワンコーラスは作るというのが基本なんですけど、この曲には歌は入れていなかったんです。いかんせんまだまとまりきれてなくて(笑)。でも、団長やKyrieがすごく気に入ってくれたんです。曲出しの時、意外とそういう曲が気に入られたりするんですよ。逆に、自分は推しているけどそんなに気に入られないものもあるんですけどね(笑)。
全員:(笑)
華凛:ただ、採用されたもののワンコーラス作った先が全く思いつかなくて。最後まで見えてない状態で持っていったんですけど、「そのままでいいよ」と言ってくれたので渡したら、アルバムの1曲目になりました(笑)。
――ご本人としては、予想外だったんですね。
華凛:大分予想外でしたね(笑)。もちろん自分の作った曲で、MVを撮りたいなという夢はあるんですけどね。僕の曲は独特なものも多いから、1曲でもみんなに引っかかるといいな、というスタンスで。アルバムの真ん中ぐらいに変な曲があるぞ、みたいなね。
――『Arlequin』の取材のときに、団長さんKyrieさんが「他のメンバーが書かない曲をピンポイントで書いてくるからありがたい」という話をしていました。
華凛:そこは小さい頃に聴いていた音楽も影響していると思います。自分の好みが書く曲にも出てると思いますね。Kyrieとはずっと一緒に音楽をやってきて好みがかぶっている部分もあるんですけど、タイプ的には理系と文系なんですよ。Kyrieは賢い音楽をやるんですけど、僕は思い付いたものをそのままという感じで。
――理論派(Kyrie)と感覚派(華凛)なんですね。
華凛:僕は完全に感覚派ですね。団長も感覚派だと思うんですけど、ちゃんと感性があるというか。僕は感性も結構ぶっ飛んでいるので(笑)。
団長:華凛ちゃんは、いい意味で作曲では空気を読まないですからね(笑)。でも、こういうモダン・へヴィネスな曲を作ってくれるのは華凛ちゃんだけです。曲が強いから入れどころはしっかり考えなきゃいけないですけどね。ということで今回はトップバッターかなと。アルバムの1曲目はやっぱり大事じゃないですか。今回リード曲が「break out!」になることは決まっていたんですけど、いきなり歌始まりでイントロがないので、例えばアルバム『現実』(2011年リリース)のときは「神風」にシングルにはないイントロダクションが付いていたり、アルバム『欠片』(2010年リリース)の「心臓」には「鼓動」というイントロダクションが付いていたように、どうしてもオープニングSEがほしかったんです。アルバムを再生して1曲目にあのゴリゴリのサウンドが聴こえたら、「何だ何だ!?」と思ってもらえるんじゃないかと思って。
――ゴリゴリのサウンドはKさんのドラムから始まりますね。
K:…死ぬかと思いました(笑)。基本的に俺も感覚でやる人なんですけど、決まったものを叩くのがすごく苦手で。これとこれは似ているなという部分でごっちゃになったりしたんです。できないことに憤りを感じてスネていました(笑)。
華凛:ちなみにドラムの足のパターンを難しく変えたのはKyrieなので、俺は関係ないです。
Kyrie:え、俺のせい!?
華凛:最初はシンプルでしたよぉ~(笑)。
全員:(笑)
Shinno:俺は、この曲は自分の通ってきたジャンルではないので、Kyrieが考えたものを「へぇ~」と思いながら弾きました。基本的に重い曲や激しい曲は音域を出せる人が出したほうがいいと思うんです。
Kyrie:基本的に、俺と華凛ちゃんとK君の3人で屋台骨を作って、シンちゃんにはその上に乗るアルペジオや空気作りをしてもらっているんです。ドラム、ベース、バッキングのベーシックトラックだけだと出せない、空気がどのぐらいシックなのか、明るいのか暗いのかをよりはっきりさせるためのパートを弾いてもらっています。こういう曲は作り方がLRじゃなくて下か上かという感じなんですよ。
団長:ところでこれ、ライブではどうするんでしょうかね。
――Kさん、ライブは大丈夫そうですか?
K:…多分。ちょっとふてくされているかもしれないけど(笑)。
Kyrie:オープニングから!?
団長:ご安心ください。万が一ふてくされててもすぐ復活しますから(笑)。
02.break out!
――「In the cage…」からの曲間の長さが絶妙ですね。
団長:マスタリングの時に秒数は非常に重要なんです。0.1秒で印象が変わってしまうので、今回はいつもよりも特に曲間がシビアだった気がしますね。
――この曲をリード曲に選んだのはなぜですか?
Kyrie:リード曲を選ぶのと同時期に「Arlequin」をシングルにすることが決まって、じゃあリード曲は必然的に「break out!」じゃないかと。作っている側からすると、リード曲には言い出すとキリがない部分が色々あって。『proof』というアルバムタイトルなのであれば「proof」がリード曲でもいいじゃないかということにもなってくるし。今回決め手になったのはやっぱり派手さですね(笑)。プレイやコーラスワークに勢いがあるし、「Missing」や「Arlequin」とはまた違った意味でNoGoDらしさもある。リード曲が一番人目に触れるものであるならば、それはわかりやすくNoGoDであるものの方がいいと思うので。
Shinno:この曲に関しては、俺はギターよりもみんなでやったコーラスが大変で、印象深いものがありました。「これはいつまで続くんだろう…」と思うところから始まりましたからね(笑)。
Kyrie:曲の中でコーラスの占める割合が多いから、「何パート録ったら終わるんだ、これ」ってなるよね(笑)。
Shinno:やっていくうちに倍々ゲームでどんどん増えていくし! もちろん、ヴォーカルはもっと大変なんでしょうけど、普段やっていないことをやるのは大変だなと思いました。
――あのカッコいいコーラスは、そんな苦労の元にできていたんですね。
団長:そうなんです。うちのバンドはみんな声がそんなに低くないので、ジャニーズみたいなコーラスになっちゃうんですよ。曲のパワフルさに対してコーラスが甘くなっちゃうので、外部のストロング要員も呼んで録りました。
――Kさんは、「In the cage…」ではかなり苦戦されたようですが、この曲はいかがでしたか?
K:これは大丈夫です。ふてくされませんでした(笑)。自分の中では、ナチュラルなイメージです。MVではまさかパンダの姿で叩くとは思っていませんでしたけどね(笑)。
華凛:この曲のベースは、ほぼKyrieのデモのまま弾いています。「ここでベースはこうなっているから動いて」という感じで提示されたものを、まず再現する方がイメージが崩れないだろうなと思って。ソロもデモにかなり忠実にやっています。Kyrieのデモは打ち込みではなく、ちゃんと本人が弾いているんですけど、フレーズもカッコいいし、ベーシストかなっていうくらい上手いですからね。
Kyrie:いやいや、そんなことはないですよ(笑)。相手に伝えるときにどうするのが一番手っ取り早いかという話で。できる限り本物に近いもののほうが伝わりやすいから、ギターもベースもできる限り自分で入れますし、歌えるものは自分で歌います。そのほうがテンションや気持ちが伝わりやすいんじゃないかと思うんですよ。
04.蜃気楼
団長:早い段階から、絶対にアルバムに入れようと決めていた曲です。でもこれも位置が難しくて。これが1曲目の壮大な始まりでも良かったんですけど、これだけオリエンタルで広がりのある曲だと、他の曲がついていけなくなっちゃうんですよね。結果、ここに収まって良かったです。
――オリエンタルな間奏がとても印象的です。
Shinno:その間奏が大変だったんですよ。ナマステコードが!
Kyrie:ナマステコードというのは、オリエンタルっぽい感じのコードの通称なんですけど、コード一発でそれを表現するとなると、さてどうしたらいいんだろうとずっと悩んでいました。そこはシンちゃんに丸投げしたんですけどね(笑)。
Shinno:エンジニアの方も含め、思い描くナマステがみんな違って。でも通じるものになったかなと思います。
団長:だから俺が言ったんですよ。筋肉少女帯の「日本印度化計画」を聴けって!
Kyrie:でもあの曲、コードは入ってないよね。
団長:うん。単音のソロ。
Shinno:参考にならないでしょ(笑)! でも、最終的にチューニングをいじるからとか、ニュアンスでとか言っても、なかなか思い描くところに行きつかなくて。そういう雰囲気を出すのは本来ギターじゃないんだろうね。シタールを借りてくれば早かった。
Kyrie:シタールだったら、そのまま一発ジャラーンと鳴らせば正解になっちゃうからね。
Shinno:音にして一瞬のことなんですけど、それにどうやって近づくのかをサウンドで変えたりしながらひたすら探究していました。
――こだわった箇所だけあって、曲の雰囲気を決めるとても重要なパーツになっています。
Shinno:言わないとわからないですけどね(笑)。どうしても、まずリードに耳が行きますから。
Kyrie:でもギターは、聴こえないところにどれだけ注力できるかということが大切だったりするんですよ。耳の届くところのパートはわかりやすくてイメージもしやすいんですけど、何となく聴いたことのある空気を出すというのはすごく難しい。でもそれがないと薄っぺらいというか、説得力がないんです。だからこういうオリエンタルな感じを出すのであれば、耳の行かないところに入っているような空気感を大事にしないといけないんです。
Shinno:ヴォーカルはより大変だと思いますよ。俺たちは最終的にはエフェクターをかけるということもできますけど、ヴォーカルはそうはいかないじゃないですか。
団長:いやいや、この曲は俺なんか比べものにならないぐらい君たちのコーラスが大変ですよ。最後のサビをどうにかして全員で歌っていただかないと。ここは楽器隊が踏ん張って歌わないといけないところだと俺は思っているので。
K:3人くらいコーラス隊を置いたら?
団長:そういうソウルフルなコーラスのイメージじゃないんだよな(笑)。
――ベースはいかがでしたか?
華凛:この歳になってやれて良かったなと思います。昔だったらノリを出すことができなかったと思うし。これもKyrieのデモのベースを再現しつつも、微妙な溜めだったり、破裂の仕方だったりという細かいところにこだわりました。あと、昔ならベースが動きすぎて、ギター二人を困らせることもあったんですけど、今回はそういうことより、作曲者のイメージに寄せることに注力しているんです。
K:この曲はバラードなんですけど、自分の感覚的にはすごく熱量があって。最初ベーシックだけを録るときはそこまで感じなかったんですけど、ヴォーカルが入ると、ものすごく熱量が上がるんです。これをやる時はいかに団長と同じ熱量でいけるかということが課題でした。行き過ぎても引き過ぎても良くない。きっと日によっては合わないんだろうなって(笑)。メンタル的なものが一番如実に出る曲のような気がするので、これをやる日は濱守君(団長)をよく観察しておこうと思います(笑)。
全員:(笑)
団長:ちなみに最後の〈僕を壊して〉は今回のアルバムの中の俺のベストショットですね。頑張ったで賞のノミネート作品です。
華凛:あとこの曲、デモからすごくいいんですよ。そのまま出してもいいんじゃないかと思いました。
――じゃあいつか初回限定盤特典に入ったり…
Kyrie:入らないです(笑)! これは団長が歌っているから普通に聴こえるんですけど、僕が歌うとものすごく高くて。逆に言うと団長はこのキーをこの熱量で歌うのは、すごく大変だと思います。
団長:キーが高ければ自動的に刹那テック…刹那的に聴こえるんです。刹那テックでいいや(笑)。
全員:刹那テック(笑)!
05.ヘンリエッタ
――曲名がとても気になっていたのですが、これはヘンリー・リー・ルーカス(映画『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクターのモデルになった実在の殺人犯)の話ですよね。
団長:そうです。前作アルバム『Renovate』に収録した「キラー・クラウン」でも実在したシリアルキラーを歌っていて、俺の中で勝手にシリーズ化しているんです。
――シリーズは続いていくんでしょうか。
団長:今後も猟奇的な曲があれば狂気的な歌詞を乗せていこうかなと。ここしばらく実在する人をモチーフにした歌詞というのをやっていなかったんですけど、前回「キラー・クラウン」で歌詞を書いて結構楽しかったんです。良い意味で曲との相乗効果が出るんですよね。だから、今回もちょっと突き詰めてみようかなと思って。
――深い闇を感じさせる歌詞の世界観はもちろんですが、団長さんのハイトーンヴォイスも印象的です。
団長:この曲は楽曲のパワーが強くて、歌の抜きどころがないんですよ。NoGoDがよくやるようなプログレッシブな曲は完全に落としのポイントがあるんですけど、この曲は落とさずに目まぐるしく変わり続ける力技の展開が多くて隙がない。でもパートによって情景が微妙に違うので、歌い方をセクションごとに変えないといけないんです。
Kyrie:パートごとに熱量を変えていく必要があるので、この曲は歌を録るときに低いところから録ったり、より歌っぽいパートのところから録っていきました。頭から録ってしまうと、そこの熱量が基準になってしまうじゃないですか。どこまで熱量を上げてもいいかというテンションコントロールに、すごく気を付けて録りました。
Shinno:この曲は、ヴォーカルは大変そうでしたけど、ギターは比較的苦労はしなかったですね。…俺何か変わったことやったっけ?
団長:ギターで女性の悲鳴をやったでしょ(笑)。
Shinno:そうだった! みんなの悲鳴の定義が違ってかなり錯綜したんですよ。
団長:この歌詞はヘンリー・リー・ルーカスの青春時代の話なので、最後は母親を殺すところで終わっているんです。それで最後にギターで女性の悲鳴を入れようということになったんですけど…
Shinno:そこにも個々の音楽性の違いがありまして、「悲鳴になりすぎ!」って、却下されたんだよね。「本当に恐くなっちゃうからダメ!」って言われたり(笑)。
団長:一口に女性の悲鳴と言っても難しいんですよね。
華凛:ベースは最初に聴いたとき、これはヤバいなと思いました。難しいという意味で。でもフレーズがすごく面白かったので、そのまま弾きたいと思ったんです。それでKyrieにベースだけのデータをもらおうと思ったんですけど、なぜか出し惜しみをされて(笑)。照れているのか全然くれないんですよ! でも、ギタリストが弾けてベーシストが弾けなかったら恥ずかしいじゃないですか。なのでデータなしで挑戦したんですけど、その工程も楽しみながらできました。
――意外な発見はありましたか?
華凛:途中ピック弾きと指弾きが混ざっている部分があったんですけど、それが聴き分けられたんです。それを言ったらKyrieがちょっと恥ずかしそうにしていました。でもそういう部分って、ギタリストはピックで弾くほうが絶対に得意だと思うんです。でもあえて指で弾いているということは、Kyrieも楽しんでいるんだなと思って(笑)。
――色々な仕掛けが施されているですね! Kさんはいかがでした?
K:…カオスですよ。
――(笑)。確かに、この曲と「煽動」はカオスのような気がしましたが。
K:「煽動」なんて全然優しいですよ! この曲はカオスです! 鬼畜の所業ですよ(笑)! 勢いで突っ走れないというのが一番大きくて。さっきも言ったように、自分は決まったことを叩くのがすごく苦手なんです。この曲は自分の中では同じところがほとんどなくて、全然理解ができない。理解するとちょっと叩けるようになるという節があるんですけど、その節が一つも見えなかったんです。憤りを通り越して、初めて泣きそうになりました。それで、Kyrieのところに「これはどうしたらいいんだろうか」と聞きに行ったら優しく教えてくれました。まだ人の血が通っていることがわかってよかったです。
全員:(笑)
06.proof
団長:これはKyrieが歌詞を書いているのでKyrieの仮歌が入っていたんですけど、原曲の雰囲気を出すのに一番苦労しました。
Shinno:刹那テックが?
団長:そう、刹那テックが(笑)。Kyrieのキーに合っているから、すごく刹那テックな歌い方をしていたし、歌詞もちょっと刹那気な感じなんですけど、俺がそのまま歌うと楽に歌っている感じに聴こえるんですよ。Kyrieが伝えたかった叫びを俺が伝えるためにはどういう歌い方をすればいいんだろう、というところで苦戦しました。ニュアンス、声の歪み方、強弱、声は若いのか老けているのか、癖はどうつけようか…「ヘンリエッタ」とは違った意味で細かいことを色々やりました。重い道着を着て戦うような、いつもと違った部分に重きを置かなくてはいけなかったんです。
K:俺は入口がわからなかったな。
華凛:俺も。でも俺、こういうのが本当に好きなんです。パッと聴きで取れないというか、表裏が逆というか。ただ、ダラランと入らなくてはいけないんですけど、どうしても聴き取れなくて本当に入れない。なので、自分でドラムを打ち込んでカウントを入れたりして、わかりやすくしたりしました。抜こうにも、最初の印象が強すぎてどうしても抜けられなかったんですよね。
――かなり大変だったんですね。
華凛:俺は「break out!」のベースよりも、この曲のほうが大変でした。まだ完璧に理解しているとは言えないので、今から頑張って完璧に理解しないと、ツアーを回れないです(笑)。
Shinno:俺らは何かエピソードあったっけ?
Kyrie:正直俺はギターは何をやったとか、全く記憶にないんですよ。リズム録りのときは結構覚えているんです。3人一緒に録るので、自分がどんなものを弾いたのかがベースやドラムに直接影響を与えるので。だからベースの感じとかドラムの感じを聴くと、自分がこんなことを弾いていたというのがわかるんですけど、その後のソロやリードギターの時には曲の全体像しか見ていなくてパーツパーツになっちゃっているから、どんなもので苦労したというのは自分のプレイそのものについては全然思い出せんないですよ(笑)。
07.矜持と共に
――NoGoD恒例の7曲目に配されるインストゥルメンタル曲ですね。
Shinno:この曲でギターソロをやったんですけど、色々考えて持って行ったら全却下されました!
全員:(笑)
Shinno:もっと「ゴミ」みたいなフレーズをやろうということになって、色々試行錯誤したのがとにかく大変でしたね。
Kyrie:ゴミみたいって言わないで、ダーティーな音とかにしておきなさいよ(笑)!
Shinno:じゃあ、ノイジーな音にしよう。ノイジーな音から、どうやって引っ張っていくかというスタートラインが、テレビのホワイトノイズのようなところから始まる感覚で、「ゴミ」みたいなところからスタートするんです。その「ゴミ」の感じがみんな捉え方が違うわけで、大変でした。
――Shinnoさん、また「ゴミ」って言ってます(笑)。
K:俺はこの曲は楽しかったです。
団長:俺は大変だったな。
Shinno:団長はちょっとギターを持ったりしてたもんね。「俺、弾いてみるから」って(笑)。
08.forever
Shinno:この曲の間奏は、Kyrieから弾いてほしいと言われたフレーズを弾きました。
Kyrie:基本的に僕たちはユニゾンをしないんです。しなくていいようにアレンジしているし、僕たちの良さはユニゾンすることではないとお互いに思っているので。ただ、この曲に関しては、こういう歌モノだからこそ普段やらないこういうことをやろうと。激しい曲でユニゾンをするのは、すごく一般的だったりするんですけど、こういう曲でそういうエッセンスを出すのは面白いんじゃないか、ということでやったんです。二人で合わせるのは結構難しかったですけどね。
Shinno:激しい曲中で合わせるのと、世界観がある中で合わせるのとでは違うし、その人のニュアンスに近づけていかないといけない。それに、自分が顔を出していくことで雰囲気を壊してしまうこともあるんです。そういうところが難しかったですね。
――Kさんは、このぐらいのテンポはお得意ですか?
K:余裕です(笑)。でも、ちょっと抜く作業をやってみたりして、自分の中にないフレーズになると難しかったです。落ちのところで、ああでもないこうでもないとやっていました。それ以外はナチュラルな感じですね。
華凛:ベースはサビが難しかったです。ドラムが、ドンダンドンダンとやっていて、そこでどっちで、ダダダダダなのか、ドンドンドンドンなのか。…これ文字で伝わるかな(笑)。要は、ドンとパンに全部合わせて弾くのは相当大変で。例えば打ち込みであれば、勝手に突っ走ってくれているのでそれに乗ればいいんですけど、やっぱり僕らは全て人力なのでK君が出すノリがあったりするんですよ。それにどう合わせていくのかというのが毎回ポイントなんです。わかりやすく言うと、サビでドーンと入っていって、ドンスタンタタタンだったらやりやすいんですけど、ドンドンドンドンという感じでドンがずっとなんです。それに毎回ぴったり合わせないといけない。ちょっとコケたら勢いが死ぬし、一人で勝手にやっていると絶対に合わないし。
――そんな細やかな調整をしているんですね。
華凛:これは難しかったです。しっくりくるものを大分模索しました。わかっているんだけどできないし、録って聴かないとわからないし。これは弾いた時はいいかもと思っても、聴いてみたら全然違うということもよくあるので。面白いという意味で大変でしたね。
09.煽動
――歌モノの「forever」からの展開ということで強烈なインパクトがありますね。団長さんは歌う上で得意不得意はありますか?
団長:自分は歌モノのほうが得意ですね。歌心を生かせるので(笑)。むしろ、「煽動」みたいなスラッシーな歌は通っていないんです。スラッシュメタルの時は楽器の一つにならなきゃいけないんですよね。だから、歌っていて表現を活かせているなと思うのは「forever」みたいな歌モノですけど、「煽動」のような歌に関しては、ヴォーカルも煽る楽器の一つとしてライブで楽しいんだろうなと。ちなみにこの曲は歌の修正が一切加わっていない、録りっぱなしなんです。
――すごい! 熱量がそのまま伝わってきます。
Kyrie:テンポ的にはそんなに速くないんですけど、速く感じる曲だし、感じさせるようにしなきゃいけない曲で。一発一発が結構強くなるといけないのかな、と思うし。その中でスピードとか、パワーのコントロールが大事かと思います。
――先ほどKさんは、「煽動」なんて全然優しいと言っていましたね。
K:「ヘンリエッタ」に比べたら、ということですからね(笑)! これはずっとワーッといっているので、息ができない曲です。だから息が切れた瞬間にこの曲は死んじゃうと思います。あと、変則でリズムというか動きが面白いです。
Kyrie:Aメロはクリックを使わずに5人の音だけでやっている甲斐がある曲だなと思います。
華凛:俺、この曲も難しかったです(笑)。難しいにも色々あるんですけど、「煽動」はピック弾きのほうが合っているだろうな、指じゃないなという感じの難しさと言うか…。最近ジャンルに合った弾き方は大事だなと痛いぐらい思っているので、すごく勉強になりました。
11.Tonight!
Shinno:これは濱守君の渾身の英語力が光る曲です。
団長:33年間生きてきた俺の全ての語学力がここに詰まっていますからね。
Shinno:歌詞はかなり揉めていたよね。一番苦労してた気がする。
団長:揉めたよ…。サビの〈Tonight! Tonight! Tonight! Ready!?〉を最初〈Baby〉にしていたら、みんなが「お前にBabyって言われたくない」って言い出して! そこから落ち付いた結果がここですね(笑)。
Kyrie:最初は〈Shake it up Baby〉だったよね。
団長:そうそう! そこから色々単語を当てはめた結果、俺が言っても大丈夫な言葉になりました。
Shinno:濱守英単語辞書から出てきた数々の単語の中から採用されたのがこれです。
Kyrie:そんな珠玉の英会話です(笑)。
――一見シンプルにも思えるサビの歌詞ですが、言葉のセレクトに並々ならぬこだわりを感じます。
Shinno:相当揉めていましたからね。色々篩(ふるい)にかけて出た英単語で、サビを埋め尽くしたという。
団長:シンプルな曲にしたくて。ライブですぐ使える曲にしたかったので、なるべく内容を薄く…
Shinno:今、薄くって言ったな(笑)!
団長:…簡単にしたかったんです(笑)。誰にでもわかるようなパーティーソングにしたかった。だから正直ノリも俺の中で見えていますし、ライブではこういうふうにさせたい、こういうふうにしてほしい、というものがあります。本来のデモでは落としの部分がしっかりコール&レスポンスの場所だったんですけど、音源化した時にメンバーでコール&レスポンスするのもダサいから変更したり。そういうのも含めて全部ライブ用のものとして出来上がっている曲です。この曲の完成版はライブでお届けしますので楽しみにしていてほしいです。
12.DREAMER
――「DREAMER」はシングル『Arlequin』にライブバージョンが収録されていましたが、今回初の音源化ですね。
華凛:スタジオで録りました。…以上です(笑)。
全員:短い(笑)!
――改めてスタジオで録ってみていかがでしたか?
Shinno:これも刹那テック全開でしたよ。
団長:でも先にライブをしてからのレコーディングなので、歌が元々のデモとは若干変わっています。ライブでこうしたい、ああしたいということで色々試行錯誤しました。言ってしまえば、レコーディングしたものは最初にライブでやったものとも違いますし、細かい違いですけど、ライブで精査していって、ここだろうという落としどころを見付けるのがレコーディングですから。
Shinno:この曲も最後に英単語が出てくるね。
団長:あ、これは俺じゃありませんからね。Kyrie英単語です(笑)。
――どの曲も、ライブでの展開が楽しみです。9月30日からは今回のアルバムを掲げた「NoGoD TOUR -2017 AUTUMN [prùf]」がスタートします。
団長:このアルバムで今のNoGoDのやりたいこと、やれること、可能性を証明していると思うので、ワンマンツアーではそれらを全て、皆様の前で証明できると思っております。ツアーのファイナルが渋谷CLUB QUATTROですが、現メンバー10周年ということで、このメンバー5人で初めてやったワンマンの場所で、10年前と何が変わったのか。10年前にそこにいた人にも観ていただきたいですし、最近はなかなかNoGoDを追えていないという方にも、今NoGoDがどれだけ仕上がっている状態なのか是非観ていただけたらと思います!
(文・後藤るつ子)
NoGoD
<プロフィール>
団長(Vo)、Kyrie(G)、Shinno(G)、華凛(B)、K(Dr)の5人によるロックバンド。2005年に「新興宗教樂團NoGoD」として結成。2007年より現メンバー構成となり、2010年6月にシングル『カクセイ』でメジャーデビュー。2010年8月、メジャー1stアルバム『欠片』をリリースし、2013年2月に5thアルバム『V(ファイヴ)』を、2015年4月に結成10周年を記念したベストアルバム『VOYAGE』をリリースした。2017年4月にシングル『Missing』、7月にシングル『Arlequin』、そして9月20日にニューアルバム『proof』をリリースし、全国ツアー「NoGoD -2017-SPRING ATTACK W/O-U」を展開。9月30日より全国ワンマンツアー NoGoD TOUR -2017 AUTUMN 「prùf」をスタートさせる。
■オフィシャルサイト
http://www.nogod.jp/
【リリース情報】
『proof』
2017年9月20日発売
(KING RECORDS)
【収録曲】
[CD]
01. In the cage…(Instrumental)
02. break out!
03. Arlequin
04. 蜃気楼
05. ヘンリエッタ
06. proof
07. 矜持と共に (Instrumental)
08. forever
09. 煽動
10. Missing
11. Tonight!
12. DREAMER ※通常盤のみ収録
[DVD]※初回限定プレス盤のみ同梱
「Missing」「Arlequin」「break out!」Music Video 収録
【ライブ情報】
【NoGoD TOUR -2017- AUTUMN- [prùf]】
9月30日(土)横浜BAYSIS
10月1日(日)町田THE PLAY HOUSE
10月7日(土)苫小牧ELLCUBE
10月8日(日)札幌cube garden
10月14日(土)高崎CLUB FLEEZ
10月15日(日)浦和ナルシス
10月21日(土)仙台HOOK
10月22日(日)新潟GOLDENPIGS-RED STAGE-
10月28日(土)名古屋Electric Lady Land
10月29日(日)神戸VARIT.
10月31日(火)広島SECOND CRUTCH
11月3日(金)福岡DRUM Be-1
11月4日(土)熊本B.9 V2
11月5日(日)鹿児島SR HALL
11月12日(日)長野CLUB JUNKBOX
11月18日(土)本八幡ROUTE14
11月19日(日)水戸LIGHT HOUSE
11月23日(木)金沢AZ
11月25日(土)KYOTO MUSE
11月26日(日)OSAKA MUSE
12月2日(土)渋谷CLUB QUATTRO