10月17日、数々の思い出を作り上げたZepp Tokyoでのラスト公演を行うvistlip。ライブ直前、5人の胸中とは――
まさかもう一度、Zepp Tokyoでvistlipのライブを観るチャンスがあるなんて!――今年7月7日のZepp Tokyoでの14周年ライブアンコールで、新型コロナウイルスの影響で中止になった13周年ライブ「vistlip 13th Anniversary Live “Screams under the Milky Way”」が、10月17日に開催されることが発表された。10年前から、七夕にZepp Tokyoでライブを行ってきた彼らだが、来年1月の閉館に伴い、これが最後のZepp Tokyoでのライブになる。彼らとファンにとっての「約束の場所」での最後のライブ、そしてハロウィンシーズンに蘇る幻になっていた13周年ライブ。今、彼らはどんな思いを胸にステージに立つのだろうか。
「vistlipがやるんだったらその日の会場を空ける」と言ってくれた(海)
今年7月7日に行われた14周年ライブのアンコールで、10月17日にZepp Tokyoで13周年ライブが開催されることが発表されました。あの日、vistlipがこの場所でライブをするのは最後だと思っていたので、「もう1回ここで観られるんだ!」と、とても驚きました。これはどういう経緯で決まったのでしょうか?
智:Zeppのおかげなんです。
海:昨年中止になった13周年ライブを「なんとかやりたいんです」とZeppに伝えていたんですよ。
Yuh:10月か11月にはやりたいと話したら、会場側で空いているスケジュールを探してくれたんだよね。でも、すぐには決まらなくて。なかなか連絡がこないなと思っていたら、Zepp側で「せっかくだから、日曜日を取ってあげたい」と良い日取りを探してくれていたらしいんです。
Zeppとの信頼関係があったからこそ、会場を押さえることができたということですね。
海:そうですね。決まったのは、七夕の3日くらい前でした。いきなり制作の人から電話がかかってきて、「今決めてください」と言われて。「即答で決めてくれたら、会場を押さえられるかもしれません」と言われたので、誰にも確認できない状態だったけど、「押さえてください」と返事をしました。その後、14周年ライブのゲネをしているときに、「大丈夫でした!」と、無事に会場が押さえられたという連絡がきたんです。
ということは、10月17日にZepp Tokyoでライブができると最初に知ったのは海さんだったんですね?
海:そうですね、僕でした。実はZepp側は「vistlipがやるんだったらその日の会場を空けます!」って言ってくれたらしいんですよ。vistlipは、ずっと7月7日にZepp Tokyoでライブをやってくれていたからと、結構無理矢理、空けてくれたみたいです。
昨年7月7日に行うはずだった13周年ライブ「vistlip 13th Anniversary Live “Screams under the Milky Way”」を、今年10月17日に開催するにあたり、昨年の当初決まっていたプランから、変更したり進化させたりしたところはありますか?
智:セットリストと演出を変えました。演出に関しては、当初予定していたものとは全然違うものになっています。
衣装も当初のプランから変わっていますか?
海:ライブのコンセプトが「13」で、『13日の金曜日』とか、13という数字には不吉なイメージがあるじゃないですか。そこから発想して、ホラーっぽいテイストにしようと思いました。なので、衣装は昨年もともと作ろうと思っていたデザインをそのままスタイリストに伝えて、どれだけ実現できるかという状況ですね。
今この時点(取材は10月11日)で、最終調整中ですか?
海:「明後日にはできると思う」と言われています。
昨年開催できなかった13周年ライブで演奏予定だったセットリストが公開されましたが、これを踏まえてメンバーとどんな話をしながら10月17日のセットリストを新たに決めたのでしょうか。
智:ライブの日が7月7日ではないので、七夕要素を抜いて、ハロウィン要素を強化しています。昨年公開したセットリストを改めて見ていて、時間が経ったからこそ見えてくるものもありましたね。「あの曲が入っていないな」「こういう意味合いで、この曲が入るよね」と、熟考して決めることができました。
結成して14年経ったからこその表現ができる(Yuh)
リハーサルの手応えはいかがですか?
Tohya:ほとんどの曲が同期を組んでシーケンスと一緒にやらないといけないので、リハの前に曲間とかを事前に想定して組んでいくんです。でも、実際にリハでメンバーと音を合わせることで、自分が思っている以上に、みんなが曲間をすごく細かく気にしていることを改めて感じました。「それだったら最初から指示してくれよ!」と(笑)。
智:しょうがない、やってみて気づくこともある(笑)。
Tohya:逆にごめん、と思って。僕がちょっと事務的に曲間を決めていた部分があって。雰囲気を考えたときに「ここではこれだけ間が欲しかったんだな」ということがリハーサルで改めてわかって。コンセプトの強いライブになっているので、曲間のこだわりのような細かい部分も楽しんでほしいですね。
智:今回のリハーサルは1回目と2回目の間を空けたんですよ。それがいい感じに効いているかな。時間に余裕があったので、気になったところをやり直せて良かったですね。
瑠伊:久々に演奏する楽曲が多くて、ちょっと不安になりながらリハをやっていったんですけど、ハロウィンぽさが全体にしっかり出ていて、楽しいライブになりそうだなという感覚がありますね。
海:リハーサルに入ったときに、当日使う映像でイメージと違うなと思うところがあって、今ちょうどその修正をしているところです。これは使えないなというものもあったから…。
智:何が使えなくなっちゃったの?
海:「Rosalia Lombardo」(2016年発売のアルバム『SENSE』収録曲)の演出。マジで1番難しくて困ってる。久しぶりに演奏して、実際に音を合わせてみたら音源からの変化を感じて。「これは作っていた映像と違う…ああ、どういう画にしよう!?」ってすごく悩んでる。
智:Rosaliaの似顔絵を描いてあげてよ。
海:似顔絵!?
全員:(笑)
Yuhさんはいかがですか?
Yuh:この「Rosalia Lombardo」付近は、僕自身グッと入り込めるんじゃないかなと感じています。リハーサルに入る前から思ってはいたんですけど、実際に自分のギターの音とみんなの音を合わせて、それをより強く感じました。自分としてもバンドとしても、結成して14年経ったからこそ、重ねてきた経験があるからこその表現ができる。これまでの楽曲を、以前よりもさらに良い感じに見せられるんじゃないかなという予感があります。ただ、7月からみんなで音を合わせていなくて、30曲くらいを一気にリハーサルで演奏したので、今回のリハではかなり体力を奪われましたね。
Tohya:僕は個人練習でスタジオにも入っているんですけど、全員で合わせるリハーサルは、やっぱり心構えが全く違うし、疲れ方も尋常じゃないんですよ。みんなで実際に合わせると音量も違うし、緊張感もあるので。いつもは「もっとやろー!」という気持ちになるのに、今回は「もうやめたい」と思っていました。
全員:(笑)
Tohya:「今日はもう終わりにしよう…」と(笑)。
智:みんな全力でリハーサルをやっていたので、僕も全力で30曲以上やっちゃいました。僕は、リハーサルはまずスタッフに観せるものだと思っているんです。小さなショーのような感覚というか。リハーサルで、彼らが良いと思うのか悪いと思うのかという部分を大事にしてやっているので、そういう意味ではいつもよりは疲れましたけど、楽しかったですね。
オープニングは今までやってこなかった新しい演出(瑠伊)
演出の部分でここを観てほしい!という注目ポイントは?
智:やっぱりオープニングじゃないですか?
瑠伊:今回のオープニングは今までやってこなかった新しい演出なんですよ。
海:遅刻しちゃダメだよね。遅れると、正直、価値が半減するな。
Yuh:そうだね。ぜひ観てほしいです。
Tohya:13周年のライブのコンセプトがかなり詰まっているよね。オープニングらしいオープニングになっていると思います。
海:可能ならば開演時間に間に合うように来てほしいですね。まぁ、演出が上手くいくかはわからないけど(苦笑)。
智:楽曲もライブならではのアレンジがあるので、そこも楽しみにしてほしいですね。
Tohya:「Rosalia Lombardo」の終わり方が音源と変わってるんですけど、Yuhのギターリードが1小節だけ残るんですよ。あれがたまらなくカッコいいんです。
瑠伊:めちゃくちゃネタバレじゃん(笑)。
Tohya:言わないと気づいてくれないかもしれないでしょ。リハのときに聴いて、「そう残すんだ…!」と鳥肌が立ったんです。
Yuh:来てくれるみんなは1回しか聴くチャンスがないからね。その聴きどころを先に教えてくれたのは、Tohyaのやさしさだよね。
Tohya:そう! 「Rosalia Lombardo」で何かあるんだ!と身構えていてもらえたらと思います。
今までの思いを全部詰め込んで、全力でやり遂げたい(Tohya)
vistlipが初めてZepp Tokyoでワンマンライブを開催したのは、2011年7月7日。バンドにとってもファンにとってもたくさんの思い出があるZepp Tokyoでライブができるのは、今回で最後になります。この日のライブに向けての意気込みをお願いします。
Tohya:僕は、Zepp Tokyoというステージにすごく憧れや夢を抱いていました。自分が好きなバンドがライブをしてきたステージに自分が立てるとは、かつては想像もできなくて。自分がそのステージに立てて、これだけ長い年月ライブができたこと自体がとてもすごいことだと思うし、誇りに思っているんです。その場所が無くなってしまうというのは、すごく寂しいですが、長くやれていたからこそ、Zepp Tokyoのみなさんも、僕たちを最後にもう1回そのステージに立たせてくれる。本当に奇跡のような、夢のような話だと思います。昨年13周年のライブができなかった分も含めて、今までの思いを全部詰め込んで、全力でやり遂げたいです。
瑠伊:10年ライブをやらせていただいた場所なので、すごく馴染みがあって、無くなってしまう実感がまだないんです。当日は、きっとそれをひしひしと肌で感じると思うので、最後に思いっきり良いライブができたらいいなと思います。今回、僕が好きな世界観がコンセプトなので、すごく楽しみなんです。この世界観を全力で表現できたらいいなと思います。
海:やり残したことがないようにしたいです。僕が今1番に考えているのは、最後だからというより、昨年できなかった13周年のライブができるようになって、色々と形を変える時間があって、しっかり準備もしてきたので、それをいかに形にして伝えられるかということなんです。今やろうとしている演出や予定しているものを、想像している形かそれ以上にできればと思っています。そして、多分最後の曲の途中くらいで、「あ、この曲で最後なんだな」と感じるんじゃないかなと思っています。
Yuh:僕もまだ最後だという実感はなくて、13周年のライブができるということがただただ良かったなと思っています。今回の衣装が今までのvistlipでもあまりやってこなかったヴィジュアル系っぽい感じになっているんですけど…。
海:衣装は超ヴィジュアル系っぽいよね。特に君は!
Yuh:そうだね。vistlipで、ゴリゴリのヴィジュアル系!みたいな衣装はやったことがないから、ファンのみんなにとってもすごくおもしろいと思うし、僕も楽しみです。そういうことを、ちゃんとZepp Tokyoでやれることが嬉しい。欲を言えば、キャパ半分じゃなくて、フルでちゃんと埋めて終わりたかったなっていうところはあります。
Zepp Tokyoでライブが開催されるたびに、Yuhさんはソールドアウトにしたいと言い続けていましたよね。ここがラストチャンスになりますが。
Yuh:Zepp Tokyoに関してはこれが最後ですけど、Zeppと名前が付く会場は他にもありますからね。Zeppにはこれからもお世話になっていけたらなと思います。
自分の人生は自分のもの。後悔しないでほしい(智)
それでは最後に、智さんの意気込みと今の思いを聞かせてください。
智:夢の終わりという感じがすごくあって。Zepp Tokyoには、長い間その夢を見させてもらったなという気持ちがあります。僕たちは、ついにそのZepp Tokyoを出なきゃいけない。だからこそ今回は、もっと大きい場所に行けるようなバンドのライブをしなきゃいけないなと思っています。
最後のZepp Tokyoでのライブが観たい、行きたい。でも、コロナ禍の今、迷っている人も多いと思います。そういう方に向けて、どんな言葉を届けたいですか?
智:僕たちが今までずっと発信してきた言葉があります。「会えなくなるときっていうのは、必ずいつか来るからね」。これは、僕らだからこそ言える説得力のある言葉だと思うんです。今直面している恐怖に打ち勝てるかどうか。周りの環境もあると思うので、どうしても来られない人もいると思うし、納得できたら来てくださいとしか言えないんですけど、自分の人生は自分のものなので。今これを読んでいるあなたには、後悔しないでほしいと思います。
(文・武村貴世子/編集・後藤るつ子)
vistlip
智(Vo)、Yuh(G)、海(G)、瑠伊(B)、Tohya(Dr)
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ライブ情報
●vistlip 13th Anniversary LIVE “Screams under the Milky Way”
10月17日(日)Zepp Tokyo