国立代々木競技場第二体育館を経て、さらなる飛躍を約束するvistlip。ニューシングル『CONTRAST』、そしてミニアルバム『SENSE』で彼らが描く、次なる未来とは――
昨年12月、国立代々木競技場第二体育館でのワンマンライブ「Right Side LAYOUT[SENSE]」を成功させ、次なる一歩を踏み出したvistlip。今回のシングル『CONTRAST』では、あの日、智(Vo)が口にした「『IDEA』から『SENSE』へ」、という言葉の意味を知ることができる。彼らが、ニューシングル『CONTRAST』、そして3月にリリースを控えたミニアルバム『SENSE』で描くものとは何なのか、智、海(G)、Tohya(Dr)の3人にたっぷりと語ってもらった。
◆一歩先に進めたライブができた(Tohya)
――アルバム『LAYOUT』以来、約1年ぶりの3人での登場です。
Tohya:そうですね。あと、誕生日プレゼントありがとうございます!
――どういたしまして! さて、昨年12月に国立代々木競技場第二体育館でのライブが行われましたが、振り返っていかがでしたか?
智:これまでやった大きな会場の中では一番いいライブができたと思います。みんなもそう思ったんじゃないかな。そういう意味ではすごく重要なライブでした。
Tohya:代々木はステージの作りが他とちょっと違って花道があるんですけど、積極的に花道を使いたがっているメンバーを見て、新しい見せ方が自由にできるようになったんだなと思いました。あの日は音楽関係の友人も来てくれて、たまに厳しい評価をしてくれる人からも、「メンバーがすごく変わったね」「パフォーマンスとか見せ方とか、今までと全然違うね」って言ってくれたんです。その時に、そういうライブができるようになったんだな、一歩先に進めたライブができたんだなと思いました。
――とてもスケールの大きなライブでした。会場の大きさに全く負けていませんでしたよね。
海:アルバムでツアーを回った上でやった大きい会場での単発ライブだったので、これまでのライブとは考え方が違ったし、構築する時間もあったからちゃんと詰められたのが大きかったかな。あの日、会場の都合で色々弊害はあったんです。いつもならすんなりできる部分ができなかったり、直前でダメになった演出もあって。でも、それをやらないとライブの意味が変わってくるから、「ダメになったからナシで」とはしたくなかった。じゃあ違う方法でやろうと制作の人間と話し合って、抜け道を見つける感じでしたね。花道に関しては、ライブ直前に、照明を置ける場所が元々聞いていたものと違うことがわかって。俺らが勝手に行くと真っ暗で危ないということで、入念に打ち合わせをしました。照明や制作スタッフからもこの曲では花道に行かないでほしいという話もあったり。…まぁ行かないでくれって言われていた曲で、ベースの方が花道を端っこまで駆け抜けて行ったんですけどね…。
――瑠伊さん…!
海:あの人は天然なんでね…。俺とYuhは「あ、行っちゃった…」と思ってました(笑)。でも結果的には良かったかな。ガチガチにしちゃうとダメなところもありますから。
――そんなことがあったとは。そして、あの日の智さんのMCがとても印象に残りました。バンドの根本に立ち返った話をしていましたよね。
智:『LAYOUT』の時から一人でMCをするようになって、色々考えたり、時には台本を書いてみたりもしたんです。詰まっちゃうとカッコつかないなと思って。でもカッコつけるっていうことの見方を変えて、一つだけライブのテーマを決めて、それに対して普通にファンと語り合う…そういうスタンスに変えたんです。そういう意味でも素直な自分でいたいって気持ちをすごく大切にしていて。あの日はそんな自分でいられたから、ああいうMCもできたと思う。
――「誰かの首を縦に振らせる存在にならないといけない」「見たこともない景色を共有するっていうのが上にいくってことだってわかった」と素直な言葉で語っていましたね。
智:そうですね。変に飾ることはやめて、そう生きていこうと思ったんです。
◆それぞれ好きにしてもらって、それを最終的にvistlipにする(智)
――代々木で、今回のシングルについて「『IDEA』から『SENSE』への流れがシングルに入っているっていうのが伝えられるんじゃないか」と言っていましたが、今回の作品は次のミニアルバムまでを一つの流れとして作ったんでしょうか?
智:流れというより、歌詞では『LAYOUT』から『SENSE』まで、すごく変わっていくことが多かったんです。今回、音の面では、vistlipが昔から持っていたバラエティ性を大事にしていて、この3曲でそれが表現できたと思う。次の『SENSE』でも、『LAYOUT』の時とは真逆の、それぞれのメンバーの個性が出ているバンドになりたいなと思っていて。うちって、一つに収まっちゃいけないバンドだと思うんです。一つのことに向かうにしても要素が違うというか。今までいろんな経験をしてきて、それぞれの個性が伸びて、全員の好みも違うところにいる。それをvistlipの一つ一つの曲で表現するってだけのことなんですよね。一つのところに戻ってくるってことは、きっとバンドを殺すことになる。それぞれ好きにしてもらって、それを最終的にvistlipにするってことなんだなと思ったんです。なので、『LAYOUT』は原曲の時点から全員で一つのところに向かっていったけど、『CONTRAST』からは曲について俺は何も言いませんでした。
Tohya:昔はあんまり言わなかったもんね。
智:そうだね。言うようになったのは『SINDRA』あたりからかな。よっぽどのことがあれば言うけど、基本的には何も言わないことにしたんです。
――そのせいか、今回の3曲は見事に個性の違う楽曲が揃いましたね。シングルという枠には収まらない感じがしました。
智:それがバンドの持ち味だからシングルもそうなったんだと思います。例えば瑠伊の曲(c/w「Which-Hunt」)もシングルに激しい曲を入れたいから選んだわけじゃない。うちは、こういうスタイルが似合うんじゃないですか。全部それぞれの気分で作って、その中から良い曲だけ選ぶ。そのかわり、作り変えるってことをしないから、ボツはめちゃめちゃ多くなりますけどね(笑)。
――今回は、2月にシングル、3月にミニアルバムと、2008年の1stシングル『Sara』~3rdシングル『drop note.』以来の連続リリースですが、どんな意味を持っているんでしょうか。
智:実は元々、シングルを出す予定はなかったんです。
海:『SENSE』を作る段階でタイアップの話をいただいて、そこで曲が通ったので急遽シングルを出すことになったんですよ。
智:『SENSE』のティザー映像まで作って発表した直後にシングルを出すことが決まったからね(笑)。割り込んで来ちゃった。代々木の時に言った「『SENSE』が薄れちゃってると思うんだけど、タイトルの通りだから楽しみにしててね」って言うのはこういう理由からです。
――久々の連続リリース、きっと深い意味があるんだろうと思っていたら…
智:でもさっき言ってくれたように、シングルの枠に収まらない作品だからこそ、繋ぐという意味では良い橋になるなと。そういう歌詞も書けたし、結果的にはすごくよかったです。
◆「CONTRAST」はすごく馴染みやすい曲(海)
――あの日のアンコールでタイトル曲「CONTRAST」が初披露されましたが、この曲は、Tohyaさん曲の王道!という感じですよね。
Tohya:お、さすが。その通りです!
海:「CONTRAST」はすごく馴染みやすい曲だと思うんです。だからファンの子たちも自然に体が動いたんだろうなと。でも「みんなしっかり聴いてるな~」と思って見てました。
――シングル『COLD CASE』のインタビューで、3時間で1曲作ったという怖い話をしていましたが、今回はそういう事態にはならなかったんですか?
Tohya:あれは酷かったですよね…今回は大丈夫でした(笑)。
智:でも、Tohyaは仕事が早くなりましたよ。『SENSE』に入れる曲のサビが既存曲に似ていたから、「似てるからちょっと変えたほうがいいなー」って言ったら30分くらいでやってくれたし。
Tohya:打ち合せをして、みんなで飲んで、帰ってきたのが1時くらいになって。別の用事で智とLINEのやり取りをしていたら、「あの曲のサビ、こうして」って。智は最近犬の絵文字を使っていて、可愛い感じで言ってきたんですけど、俺としては「…マジか!」と(笑)。
智:(笑)。でも、サビを変えて、LINEで話していた時に、Tohya自身が自分で勝手に納得してたんで、変えてよかったんじゃんと。
Tohya:まぁね。夜中に死ぬ気でやった甲斐あって、自分でも「できるんだ!」と思いました。実は最初、今回の智の“何も言わないスタンス”を知らなかったから、何も言わない=OKなのかなと思っていたんです。でも、あんまり完全に納得していたわけじゃなかったんですよ。だから、やっぱり智様のお告げがないと本来の曲の姿にはならないなと。
海:お前だけじゃねーか(笑)。
智:良くなりそうなときはやっぱり言いますよ。Yuhなんかは自分で勝手に変えてるし。この前、「Yuhの曲は時間が経つと歌いやすくて沁みるんだけど、何なんだろうね」「歌いやすいと歌いにくいってなんだろうね」みたいなことを話していたんです。そうしたら勝手に変えてきました。
――作曲者によってそれぞれ個性がありますか?
智:メロはそうなりますね。例えば今回の海の曲(通常盤収録のc/w「Mob Character」)は難しい。メロディとかに個性が強いんですよね。
海:俺は歌って作っちゃうから、自分の歌の癖が出るんです。そこに歌詞があったら歌いやすいのかもしれないけど、そこに言葉をはめるのが大変なんだろうな…すいません、と。
智:デモを聴きながら自分の解釈で音数を決めるんですけど、それもやっぱり結構大変で。元々の音があるから増やしたり減らしたりするのも大胆なアレンジになってくる。文章を当てはめるのがすごく難しいんですよ。俺は語るように歌うから、譜割りもすごく早くて、その中で言葉をはめるんだけど、5文字だと思っていたところが実は4文字だったり。「例えば」が「たとえ」までしか入らない!とかね(笑)。それを把握するのが難しい。
――Tohyaさんの曲は?
智:Tohyaはもう、いつもの感じ、ですよ(笑)。
Tohya:ちなみに「CONTRAST」は「雰囲気はいいけど、サビはもうちょっとできるだろう」って言われました。
――「もうちょっとできるだろう」って良い表現ですね(笑)。
Tohya:ね(笑)。その時の絵文字は、その頃智の中で流行っていた笑い泣きの絵文字でした。
海:この人、絵文字の使い方が間違っていて、「。」だと思って使うんですよ。う○この絵文字の時は酷かったな~。それが「ちょっと待って」って意味だって言われてびっくりしたもん。
智:「う○こだから待って」って意味に受け取れるでしょ。
Tohya:深いな…。
海:そう思って待っていると「まだ?」って言われるんですよ。その日は「OKって意味だ」って言われたからね。
――謎すぎますね…。
Tohya:こんな意味で絵文字使うの、多分日本で3人くらいですよ(笑)。