“メロディアス”と“ヘヴィネス”、the GazettEを形作る「二つの核」。その威力を深化させたニューアルバム『DIVISION』に見る、彼らの新境地。
自らの極限を際限なく塗り替え、作品ごとに新たな“究極”を突き付けるthe GazettE。前作『TOXIC』から10カ月の時を経て、今回世に放たれたのは、極上のアートワークとコンセプチュアルな2枚組CD、そしてMUSIC CLIPを収めたDVDで構成されるニューアルバム『DIVISION』。全て新曲のみで構成され、バンドの持つ「2つの核」を、実に深く、力強く、そして多彩に描き出したその世界に、想う様、浸っていただきたい。彼らの根幹を余すところなく具象化した作品の魅力を、RUKI(Vo)、戒(Dr)に聞いた。
◆配信曲も、アルバムに混ざったものを聴いてもらいたい(RUKI)
――話題の初回生産限定盤の現物を初めて見ましたが、予想を上回るボリュームのアート作品ですね。それぞれの曲ごとのイメージが写真とイラストで表現されているということですが。
RUKI:はい。あとは(アルバム)全体のイメージです。
――the GazettEのアートワークと、そこからの世界観のスケールには毎回驚かされるのですが、今回はまた意表を突かれました。
RUKI:どんどんすごくなっていくっていうね(笑)。
――確かに(笑)。サウンド面に関しては今回どんな想いで作品に挑みましたか?
RUKI:どちらかというと前作『TOXIC』では勢いを意識していたんですが、今回はCDが2枚に分かれているので、それぞれのイメージを全うしている感じです。
――バンドの2面性を出したいというコンセプトは早い段階で決まっていたんでしょうか?
RUKI:いや、元々ミニアルバムを2枚出そうかという話から始まって。だったらアルバム1枚にまとめちゃおうかと。
――なるほど。それにしても、前作『TOXIC』からわずか10カ月で、間にロングツアーを挟みつつ、これだけのボリュームのものをリリースするのは、かなりハードだったのではないかと思うのですが。
RUKI:でも、間にシングルを挟まなかったので、実は制作期間的にはあまり変わらなかったんですよ。
戒:今回初めてアルバムとアルバムの間にシングルを挟まないというリリース形式をとったんですけど、これまではシングルリリースから、それが入るアルバムリリースまで1年越しだったりしたので、アルバムの曲と組み合わせた時に若干の違和感があったりもしたんです。でも、今回は全曲新録なのでイメージが固めやすかったというか。
――今回のように、シングルを間に挟まないリリース形式もありですか。
戒:俺は良いと思いました。今まで、シングルを出して(その曲を中心に)ツアーやライブをやっていたんですけど、アルバムのツアーの方がその時のイメージや世界観が出しやすいんですよね。そういう意味では、自分たち的にも納得できるものができる。曲数が違うと見せ方も違ってきますし。
――では、今度のツアーは『DIVISION』の世界観一色ですね。
戒:そうですね。『TOXIC』でメンバーそれぞれが思うところがあって、それを活かして今回の『DIVISION』、という流れなので、そういった意味でも。
――今回のアルバムは、初回生産限定盤のDisc1とDisc3がCD、Disc2がDVDという構成ですよね。Disc1は“静脈”を意味する「Fragment[VEIN]」、Disc3は“動脈”を意味する「Fragment[ARTERY]」と名付けられていますが、これは“二つの対極のもの”を意味しているんでしょうか? それとも“二つで一つ”という意味合い?
RUKI:どちらかというと“二つで一つ”の方ですね。バンドの大きな核である、“メロディアスなもの”と“ヘヴィなもの”、この二つはいつも一つなんだけど、今回それを分けたんです。アートワークはその後で考えたんですが、人で表すと双子のイメージだった、と。
――元は一つの遺伝子のものを二つに分けたことで、何か見えたことがありましたか?
戒:振り切れたなと。メロディアスなものもヘヴィなものも、それぞれ特化できましたね。一方が特化したからもう一方も特化したという。
――相乗効果的な作用もありましたか。
戒:そうですね。でも二つともthe GazettEが元々持っているものなので、例えば今回どちらかに偏ったアルバムだったとしたら、もっと違ったものになったと思うんですよね。あえて二つに分けて、それぞれ特化したものを出せるっていうのは、今だからできることでもあるだろうし。
――今まで積み上げてきたものがあるからできたという感じでしょうか。よりクリアになった面もありますか?
戒:サウンドに関してはそうですね。
――実際にレコーディングをしてみていかがでした?
戒:俺は今までのレコーディングより緊張しました(笑)。出来あがるものがどうなっていくんだろうっていう。Disc3に関しては、新しい事を試みようということで、デジタル系の打ち込みと俺のドラムとの混ざり具合が見えない状態でのレコーディングスタートだったんですけど、録りの段階からどうすればいいのかなという不安はあって。でもレコーディング初日に試しにやってみて、今までの流れでドラムを録って、その音をどうしていくかという考えに切り替わりました。その後は、俺と言うよりも作曲者とエンジニアが苦労したんじゃないかと(笑)。ドラムのサウンドをどっち寄りに持っていくかによって、ベースも大分変わるので。
――かなり実験的な要素も多かったんですね。
戒:結構みんなわからない状態から録っていましたね。もちろん想像では「良いものに仕上げよう」というのはありましたし、特に作曲者は「こういう音にしたい」というイメージはあったので、そのイメージに近づけるために、録った後に細かい作業があって、そこが一番大変だったんじゃないかなと。録りの段階ではいつもと一緒でしたけどね(笑)。
――そんなに苦しんだりもせず?
戒:いや、苦しみましたけど、それはいつものことです(笑)。
――(笑)。RUKIさんは、今回のアルバム制作はいかがでした?
RUKI:歌や作詞の面で特別に大変ということもありませんでしたね。
――今回、Disc1は日本語のタイトルで歌詞も日本語が主ですが、Disc 3との対比を狙ってのことでしょうか?
RUKI:そうですね。全てにおいて2分割という。ただ、Disc1の方が、より内容が深いです。
――既にDisc 1とDisc 2、それぞれ1曲ずつアルバムから先行して楽曲の配信が始まっていますが(Disc 1から「歪」、Disc 2から「DERANGEMENT」)、聴いたファンの方から何か感想は寄せられたりしていますか?
RUKI:メインの2曲なんですけど、現時点では、あくまで曲の感想です。今回はアルバムなので(配信曲も)アルバムに混ざったものを聴いてもらいたいです。
――ところで、通常盤の曲順は、初回生産限定盤の流れに沿ったわけではなく、Disc 1とDisc 3の内容がランダムに入っていますよね。これはちょっと珍しいなと思ったのですが。
RUKI:そうですね。ただ、『DIVISION』の基本はこっち(初回生産限定盤)なんですよ。通常盤はどちらかというと、「曲だけでいい」という、あまり深いところまで知りたくない人用です(笑)。
戒:初回生産限定盤はストーリーがしっかりしていて、本来自分たちが表現したかった『DIVISION』の世界が出ています。通常盤は、どうしても簡易的にならざるを得ないので。
――なるほど。基本形の初回生産限定盤から色々引き算をした結果が通常盤、と。
戒:はい。俗に言う初回生産限定盤と通常盤という考え方ですね。初回生産限定盤と通常盤、それぞれで表現しているというより、初回生産限定盤ありきの通常盤です。