SLAPSLY

CHIYUソロプロジェクト“SLAPSLY“が生み出した新作EP『EXCITED』の全貌、そして次なる展開とは――

ベースヴォーカルCHIYUによるソロプロジェクト“SLAPSLY”が、このたび新作EP『EXCITED』を世に送り出す。9月27日に開催されたアニバーサリーライブをはじめ、名義を新たにしてから1年を経た現在の思いと、作品について話を聞いた今回。序盤からまさかの新情報が飛び出しながら、『EXCITED』のみならず、今後のSLAPSLYの展開にも期待が高まるインタビューとなった。


ここでSLAPSLYとしての一つの世界観を形作れたらなと

まずは9月27日に開催された、SLAPSLY としての1周年記念ライブの率直な感想を教えてください。

CHIYU:いきなり1曲目に新曲を持ってくるのが初めてだったので、めちゃくちゃ怖かったですね。しかも俺のリード曲って、これまでも「Egoistic GAME」や「Keep it real」とか、実は歌いながら弾くのは結構無理があるものが多くて。歌だけとか、ベースだけだったら全く問題ないんですけど、合わせてやるのがムズいんですよね。今回の「fleek=fleek」もそんな感じだったので、大分しびれましたね(笑)。

とはいえ、初披露でも自然とファンの方々の手が揺れていたのが良かったなと思って。

CHIYU:そうですね。ただ、イントロからAメロに入るぐらいまで、「なんやこれ?」っていう顔がちょっとおもろかったですけどね(笑)。人がポカンとしているって、こういうことなんやと(笑)。ライブ自体が約3ヵ月空いていたので、多分「あれ? この曲なんだ?」って自分の脳内で探していたんだと思います(笑)。探してもないぞ、と思いながらやっていました(笑)。でも、結果的に1曲目っぽかったというか、周年の1曲目で良かったかなとは思いましたね。ドラムが久々のYASU君というのもあったので、周年の意味合いも含めて、元々はソロ最初のアルバムから2曲ぐらい頭に入れていたんですけど、それを変えて、逆に2年目に繋がる選曲になったんじゃないかなと思います。

確かに、新しい年の始まりという感じが出ましたよね。ところで、SLAPSLYとしてソロ活動をリスタートして、1年経過した実感はありますか?

CHIYU:ライブ感はちょっと変わったんじゃないかなと思いますね。衣装も揃えたりして、バンドとして見せようというのがメンバーにも明確に伝わって。もちろん以前も、サポートだけどメンバーみたいな感じでやってほしいとは言っていたんですけど、やっぱりどこかしら遠慮みたいなものを感じていて。でも、バンド名にしたことによって、良い意味でCHIYUのソロっていう感覚もなくできたんじゃないのかなとは思いますね。

昨年9月27日にリリースしたSLAPSLYとしての初作品『OUTBURST 〜The best of the CHIYU〜』が、新曲5曲+ライブ定番曲9曲を合わせた、セットリストのようなベスト盤だったわけですが、相変わらず様々なサポート業で多忙を極める中、今年も新作を出したいという気持ちは強かったですか?

CHIYU:ソロをやり始めて、今までは出せる時に出す感もちょっとあったんですよ。で、なんかそういうのもな…と思っていて。4月25日がソロ初期の周年ではあったんですけど、PENICILLIN(サポート)が大体その時期に入るし、サポート業が入ったら自分の周年をずらすという意味不明な状況が続いていて。そういうのも払拭したいというところで、名前も変わって9月27日にリリースしたから、もうそこを周年としてリスタートして、その前後辺りにリリースを立てると、周年ライブでいち早くファンの子に曲も聴かせられるなと。そういうのが良い感じに今回はまったので、来年以降も大体、周年を目掛けてリリースして、その後ツアー、聖誕祭っていう流れが作れたらいいなと思っています。で、上半期はいろんなイベントに出られればいいなと。

今後の年間スケジュールの流れが固まってきつつあるという雰囲気ですか。

CHIYU:そうしようとしていたんですけど、早くもイレギュラーなことが発生していて(笑)。もう言っちゃいますけど、実は2枚で1枚のアルバムにしようとしていて、今回の『EXCITED』の後、また近いうちに次の作品をリリースするんですよ。だから、その時点でもう流れが変わっているので、さあどうしようという感じなんですけど(笑)。とはいえ、この流れに乗ってちゃんとコンスタントに活動していきたいですね。1年に数回というライブ本数は体にも曲が馴染まないし、お客さん的にもそうだろうから、来年はもうちょっと本数を増やせればなとは思っています。

今回、『EXCITED』収録の5曲全てがCHIYUさんの作詞作曲ですが、そこはマストで制作に臨んだのでしょうか?

CHIYU:いや、誰か書いてくれるんだったら全然それでもいいんですけど(笑)。でも確かに、SLAPSLYに名前が変わってからのフル新曲の作品は今回が初めてなので、ここでSLAPSLYとしての一つの世界観を形作れたらなというところからスタートしましたね。実は作品の方向性や歌詞の内容だったり、当初の計画から結構ガラッと変わっているんですよ。ただ、リリースするためにはとにかく曲を作らなきゃダメなので、もうマジで死にそうになりながら作りましたね(笑)。

(笑)。方向性が変わったということですが、今作のとてもシンプルなタイトル『EXCITED』は、収録する曲が出揃って、それを象徴する言葉として決めたのか、ここに向かって曲作りをしたのか、どちらでしょうか?

CHIYU:まず曲をいっぱい作って並べてはみたものの、それだとアルバムのテーマが明確にならなくて、自分の中で腑に落ちなくて。じゃあ、こうしたら世界観をちゃんと作れるんじゃないかみたいなところで、当初より曲を減らしているんですよ。実は当初8曲あって、もう全曲アレンジャーにも送って、ほぼ出来上がっている状態になっていたんですけど、なんかなと思って5曲にしました。で、今まで『Seven Deadly Sins』(2018年4月発売)、『Notice of Arrival』(2019年7月発売)とか、ちょっと長いタイトル縛りみたいな、三つの単語でできているタイトルがいいなと思っていたんですけど、逆に今回はわかりやすくシンプルにというのは第一としてありましたね。

なるほど。

CHIYU:とりあえず8曲あって、フルアルバムとも言えないし、EPにしては多いしっていうところから始まっているんですよ。で、5曲と3曲に分けた時に、あと2曲追加で書けば、各5曲のEPを2枚出せるんじゃないかと。そこから、それを対の作品にしようと膨らませていきました。で、次のタイトルももう決めています。二つを合わせて一つの作品にしようというところで、今回『EXCITED』にしました。緊張と緩和とか、男性と女性とか、『EXCITED』の対になるのは何だろうとか、この曲に対しての対ってどんな曲だろうとか、そういうものを結構散りばめていて。それを次どうちゃんと拾っていこうかなというのは今の課題ではあります。

次の作品が出た時に、いろんな答え合わせができるわけですね。

CHIYU:できると思いますね。これだけ忙しいけど、止まることなくちゃんと頑張っていますよっていうことを伝えておきたい(笑)。今作のジャケットにも伏線を散りばめているので、考察しておいてほしいんですよ。次リリースする作品も全部集めたら、こうなってたんだって、視覚、聴覚、全部でわかるようにはしようと思って今、色々考えて動いています。

王道のところをちゃんと貫こうと思って

当初から色々変更になったとはいえ、『EXCITED』はとてもCHIYUさんらしさが詰まっていて、起承転結もあって、イベントのセットリストはこのままでいけますよね。

CHIYU:確かに、25分ステージだったらこれでいけますね。基本、今までもフルアルバムだったら、これ一つでワンマンができるみたいな形は取ってきているので、今回もこれ一つでイベントに出られます。

各曲について伺っていきたいと思います。まず1曲目「Slayyyyy」の読み方はどうなるんでしょう?

CHIYU:「スレイ」で大丈夫です。yが5個ありますけど、あまり深い意味はなく。カッコいいとか、成功を収めるみたいな意味合いでつけているタイトルです。

SLAPSLYの語源になったSlapsとも近い意味合いなので、ChatGPTにSlayとSlapsの違いを聞いてみたところ、Slayは個人の行動や見た目、パフォーマンスを称賛する際に使って、Slapsは主に音楽や食べ物など、感覚的に素晴らしいと感じた時に使うとのことで。

CHIYU:なるほど。ちょうどいいはまり方をしていますね。

「Slayyyyy」の歌詞に描かれているのは、CHIYUさん自身が感じたことでもあるのでしょうか?

CHIYU:特に「Slayyyyy」と2曲目の「Anser indicus」もそうですけど、応援ソングというか、背中押すソングですよね。日々いろんな人がいろんなことを頑張っているわけで、自分も当てはまるし、もちろんファンの子も当てはまると思うんですよ。だから、自分にエールを送る意味もあるかもしれないですね。こうやって活動しているけど、本当にこれでいいのか?っていう、自問自答みたいなものもあるでしょうし。〈頭の中が 既にパンクしそう〉って、まさに今の俺の状況(笑)。〈苦しくても耐え抜くんだ 全力で息が切れるまで〉って、まさに今の俺にピッタリの曲っすよ(笑)。

(笑)。

CHIYU:そういうのを含めて、成功をちゃんと収めますっていう1個の枠組みとしてできたんじゃないのかなと。で、最後には、次のステップに高く飛んでいきましょうというところで、次の曲に繋がっていくわけなので、良いオープニングの曲になったんじゃないかなと思います。

しかも、「Slayyyyy」は聴いた瞬間にイントロの音数の多さと派手さ、インパクトがすごいです。

CHIYU:今までの俺の曲であまりなさそうなジャンルのイントロというか。そこで結構ハッとしてくれると思うんですよ。しかも偶然、アレンジャーが女の人の声で「Are you ready?」と入れていたんですけど、思いのほかそれがはまって、1曲目にめっちゃピッタリやなと。それで「Are you ready?」を俺が言って差し替えたんですけど、これがいろんなとこで使える使える(笑)。すごく良い。サビはファンの人との掛け合いもあるし、カッコいい+ライブ感で盛り上がるっていうのはしっかり出せる1曲目になったんじゃないかなと思います。

ちなみに、間奏に入るところの「ロー」のシャウトはCHIYUさんですか?

CHIYU:基本的に俺の曲に入っているシャウトは全部、美月(Sadie、The THIRTEEN)ですね。なんならこれは「ロー」って言えと指定しましたね(笑)。歌録りする時に、通常の歌詞と裏版歌詞という2枚があって、裏版に美月が歌うセリフやフレーズとか、ここに入れろっていうのを書いているんですよ。これは本来の歌詞の隣に、ピンク文字で「ロー」って書きましたもん(笑)。

(笑)。作曲以外でもCHIYUさんの曲は必ずどこかに美月さんがいるんですね。

CHIYU:今回は確か、Screaming Voiceか何かでクレジットに入っていますね。あと、〈Wow〉とか、「アマランヴ」の〈乱舞 乱舞〉のコーラスとか、一人の声だと重ねても大人数にはできないんですけど、二人いると8人ぐらいの声にはできるんですよ。だから、そういうコーラスも入れてもらったり。その他シャウト系は基本的に美月に任せようと思って、もうぶっつけ本番です。

ところで、「Slayyyyy」はバンドサウンドの音色が、CHIYUさんの曲の中で過去最高にラウド系の重めな印象があったのですが。

CHIYU:はい。なぜ重いかわかります? これ、ギターを結構前には出しているんですけど、ベースも実は出ていて。しかも、弾いているベース+シンセのめちゃくちゃ下のベースも同じフレーズで重ねているんですよ。だからベース自体の音が結構太くなっていて、そこにロー強めのギターも出ているから、結構パンチが出たんじゃないのかなと思って。人には聴こえないベースまで入れているので。ライブもその低音の部分だけちょっと同期で出したら、パンチが出るかなと思っているんですけど。こういうふうにベースを重ねるって、意外とレコーディングで今まであまりやったことがなかったので、そういう意味では新しい試みかもしれないですね。

前作では、リードは「Infinity & Beyond」と迷ったけど、曲としての勢いよりメッセージを重要視して「Diary of Life」にしたとのことでした。今作で言えば「Infinity & Beyond」の立ち位置が「Slayyyyy」、「Diary of Life」の立ち位置が「fleek=fleek」だと思うのですが、今回、リードの選曲は迷わなかったですか?

CHIYU:今回は一切迷ってないですね。もう「fleek=fleek」をリードにするって決め打ちで作っていました。デモの段階から、並べた時にこれが一番リードとして映えそうだなと。いつも頼んでいるアレンジャーにイメージを伝えたら、絶対こういう感じで返ってくるだろうなっていう絵が浮かんでいて。マストでこれがリードだから、そういう歌詞をはめようと思って書きましたね。

なるほど。個人的には「fleek=fleek」はCHIYUさんの王道だと思っているのですが、ご自身としてはいかがですか?

CHIYU:王道と思ってもらえるのは良かったですね。リードにするってことは、SLAPSLYの芯の部分ではあるので。他の曲はそこからの枝分かれなので、いろんなジャンルがあると思うんですけど、王道のところをちゃんと貫こうと思って。明るすぎず暗すぎないリード曲が目標ではあったので、ちゃんと切ない部分も明るい部分もあって、結構良いバランスの曲にはなったかなと思います。

先日、ファンの方々に向けた歌詞はスッと書けると話していましたが、この曲も早かったですか?

CHIYU:早かったですよ。最終的にまとめるのはちょっと時間がかかりましたけど。サビや落としのフレーズは、もう最初に出ていたので、あとはAメロとか他の部分をどうしようかなっていうところぐらいで。 テーマとしては迷わなかったですね。で、MVもファンの子に当てはめた感じで作っているんですよね。歌詞は「Anser indicus」が一番迷いました。

メッセージ的には「Slayyyyy」から「Anser indicus」の流れがすごく綺麗だなと思ったのですが、これは意識的に繋がるようにしたのでしょうか?

CHIYU:他の4曲はもう書けていて、「Anser indicus」だけどうしようとなっていたんですけど、できている箇所を並べて読んでいった時に、空いている部分って何だろうというところから始まって。「Slayyyyy」の最後に〈しゃがみ込んで 高く 高く 高く〉と言っているので、高く飛べばいいんだとなって、そこから広がっていきましたね。だから、「Anser indicus」のキーワードは「飛ぶ」でしたね。

「Anser indicus」を調べると、曲の意味合いとしてなるほどなと思って。そもそもこの名称自体、知っていたのでしょうか?

CHIYU:いや、全く知らないです(笑)。「飛ぶ」というキーワードが出たから、それを広げるために、いろんな「飛ぶ」を調べたんですよ。で、世界一高く飛ぶ鳥を調べてみたら、インドガンが出てきて。ヒマラヤ山脈も超えていける鳥なんですよ。だけどタイトルに「インドガン」はダセーなと思って、違う言い方を探したら「Anser indicus」が出てきました。そういう意味では、迷いはしなかったですね。

調べないとわからないという点では、今作の中で最もひねりのあるタイトルですね。

CHIYU:確かに。2個ぐらい何か門を飛び越えたら、答えに辿り着けるかなっていう。わかると腑に落ちますよね。だから、サビ頭の歌詞は絶対に〈翼〉からスタートしようと思いました。わかりやすくていいかなと。

世界一高く飛ぶ=酸素の少ない地でも飛ぶことができると。

CHIYU:そうそう。だから、1曲目「Slayyyyy」の〈苦しくても耐え抜くんだ〉にも繋がるんですよね。ここもいい感じにはまったかなと思って。確かにこの2曲、意外と対かもしれないですね。結局、応援ソングって、言いたいことなんてもう言い尽くしていて、いかに言い方を変えるかってところもあるじゃないですか。でも、ひねりすぎは自己満で終わっちゃう時が多かったから、良くないなと思って。「Anser indicus」だから〈翼〉ね、くらいでいいかなと。で、たまにもうちょっと深いとこまで行ったらわかるよ、みたいな何かを散りばめておけば、もう少し作品がわかりやすく、聴いたファンの人の腑に落ちやすいのかなと思いますね。