Ruiza

今の自分が全部入っている、これを聴いてくれたらわかるよって感じ

7月のRuiza solo worksワンマンのタイトルが「生々世々 〜Endless Circle〜」でしたが、今作『Alive』の1曲目である「生々世々」が最初にできた曲だったのでしょうか？

Ruiza：遡ると、これは原曲を作った時期はDの時なんですよ。表には出ていない曲で、そのまま消えるのかぁ…と思っていたんですよね。で、自分が新しく活動するにあたって、心機一転、生まれ変わった気持ちでやりたいなと思っていますし、やっぱりRuizaという競技をやっているので、それ以上でも以下でもないんです。自分がこれから生み出していくというところでは、新鮮な気持ちでやりたいなと「生々世々」という言葉に辿り着きました。ただ、この曲を今回やろうと思う前に「深層」を作っちゃったので、今後一番やりたい方向性の曲が既にある状態だったんですよね。そこから、バンド編成のソロで自分はどういう曲をやりたいんだろうって考えたら、本当にこれまでと何も変わってないなと思ったので、だったら今必要だと感じる曲があるなら、やりたいなと思ったんですよね。

そういう流れでしたか。

Ruiza：もちろん全然そのままの形じゃないですけどね。その曲から感じる匂いや感覚が「生々世々」だな、これをやりたいなと思ったので作り直しました。Sethさんが歌うならこうしたいなと感じたところを足して、ガラッと作り直した感じです。

冒頭の煌めく雰囲気も、まさに新たな始まりという感じがあります。

Ruiza：最初、音がフェードインしてくるのは、生まれ変わりみたいなものをイメージしていて。真っ暗な水面に水滴が落ちて波紋が広がっていくようなイメージで、生命の始まりみたいなものを入れたいなと思いました。

アルバムタイトルが『Alive』になったのは、「生々世々」から派生したものか、「Alive」というワードのほうが先にあったのか、はたまた最終的にこのワードになったのか、どれでしょう？

Ruiza：曲のタイトルも歌詞も全部揃った後に決めました。「生々世々」はライブのタイトルにもしましたし、曲にもなっているので、割と大きなテーマだったんですけど、元々コンセプチュアルなものを作ろうとは全く思っていなくて、こういうライブを作りたいなみたいな視点で曲を作っていったんです。それで実際曲が出揃った時に、割と言いたいことが一貫しているなと、その内容が生きるということだったので、『Alive』にしました。

それこそライブのセットリストのような構成だなと思いました。

Ruiza：これも本当にたまたま、できた順なんですよ。全然狙ってなかったんですけど。やっぱり最初の作品なので、名刺代わりになるものにしたいというか、もうこれを聴いてくれたらライブもイメージできると思うんですよ。今の自分が全部入っている、これを聴いてくれたらわかるよって感じですね。

参加ミュージシャンの方々のアイデアも反映されているとのことでしたが、例えば「生々世々」や「深層」のベースの動きとか、もう完全にTsunehitoさん節がすごいなと。

Ruiza：そうですね（笑）。Tsunehito以外あり得ない感じ。「もう何してもいいよ。ツネに弾いてもらいたいんだよ」ってお願いしたので、できてきたものを聴いて「あ！　ツネを感じるから、これがいい！」と思って。長年一緒にやってきて、すごいベーシストだなとずっと思っていたし、自分の作る音楽に一番合うベーシストの一人だろうなと思います。僕が自分でベースを弾くというアイデアもあったんですけど、それよりも他のミュージシャンが入ったほうが理想のバンドサウンドになると思ったんですね。ほんと、めちゃくちゃカッコいいベースだと思います。

ちなみに、「深層」のギターソロ明けのブロックの転調や、サビに入るきっかけの駆け上がるギターフレーズもすごく効果的だなと思って。

Ruiza：ありがとうございます。すごく自分っぽいなと思います。これまで僕の音楽を好きでいてくれた人は、僕のギターフレーズや音色も好きでいてくれた人だと思うので、そういうニヤッとしてもらえる、ワクワクしてもらえるような部分はたくさん入れたいなと思って。それこそやりたいことは全然変わってなくて、当たり前ですけど100％僕なので、これまで以上に自分らしさが伝わるんじゃないかなと思います。

「奈落」のギターソロからのベースソロもたまらない部分ですし、アウトロのユニゾンもカッコいいですよね。

Ruiza：ありがとうございます。この曲のベースは華凛ちゃんなんですけど、彼にも自由にやってほしいと言いました。元々僕がデモで作っていたフレーズももちろんあるんですけど、それを踏襲してくれたので、イメージは原曲のまま、さらに良い感じのベースを弾いてくれましたね。

そして、「魔儀」は相当テンポが速いなと（笑）。

Ruiza：（笑）。これはライブのことを歌っています。ライブって魔法のようだなと思うんです。日常生活ではこの感覚って味わえないじゃないですか。会場に来て、ライブを観ようとしないと味わえない感覚。だから、悪いという意味じゃなくて、魔法の魔ですね。その儀式ってことで「魔儀」というタイトルにしました。

収録順のちょうど真ん中にはインストゥルメンタルの「alma」が入っていますが、バラード「Swallowed」からの繋がりがとても綺麗だなと思いました。

Ruiza：タイトルの「alma」は魂の意味なんですけど、「Swallowed」「alma」「奈落」の3曲は世界観が繋がっていて、同じ物語のようになっています。地球ができてから現在までの46億年の間、ほとんどのことがわかってないじゃないですか。だから、こういうお話があったとしてもおかしくないのかな、みたいな感じで。「Swallowed」は今の人類が現れた起源よりも遥か昔のお話で、ムー大陸とかアトランティスみたいなものがあったらいいなという感じで考えましたね。過去に今よりも発達した文明があったとして、それが滅ぶお話。その滅んでしまった魂が、次に生まれ変わるイメージで「alma」を作りました。

「alma」が心音で終わっていくのも印象的です。この3曲の流れはストーリー性がありつつも、最終的には生きることに辿り着くわけですね。

Ruiza：全てが結局生きるとか自分の心情はもちろん、自分が感じることだったり…だからライブに近いのかもしれないですね。LIVE＝生きるじゃないですか。意識していたわけではないですけど、作っている段階で自然と頭のどこかにあったのかもしれない。

なるほど。ラストの「with you」は多幸感溢れるライブ終盤の画が思い浮かぶ曲です。

Ruiza：やっぱりライブで希望を感じたいなと思うんですよね。なので、こういう幸福感に包まれるようなものは絶対に提示したいなと最初から思っていました。最後を〈ラララ〉で歌っているじゃないですか。そこは皆で歌いたいなと思っていて。どんな人でも聴いてすぐ歌えるように歌詞はつけませんでした。

きっと皆で歌うことを想定しているんだろうなと思っていました。

Ruiza：本当ですか（笑）。そういうのもライブの醍醐味だと思いますし、参加できる、体感できるものって、ライブでしかないと思うんです。実際に声に出せなかったとしても、心の中で歌うこともできるじゃないですか。誰でも全員参加できる曲を絶対に作ろうと思っていたので、それができて良かったです。

新人の気持ちで、地に足をつけて活動したい

長年ツインギターで活動してきて、ソロではシングルギターですよね。音源とライブでの再現性のせめぎ合いの話をよく耳にしますが、その点はいかがですか？

Ruiza：作っている時にシングルギターだからというのはあまり考えてなくて、今の自分が表現したいもの、削ぎ落とした感じの、より伝わりやすいものにしたかったですね。あと、何度も言いますが、バンドサウンドを出したいなと思ったんですよ。同期の音を取っ払ってもちゃんと形になっている状態、それが大前提にあるようなものにしたいなと思ったので、そういう意味では割とシンプル目というか。細かく入れすぎるとバンド感が薄れてくると思ったので。バンドの一体感は必須だろうなと思っていました。

シングルギターを意識したわけではなく、今やりたいものが結果的にシンプルな形だったと。

Ruiza：そうなんです。ただ、ライブは同期にギターも入れちゃうと思います。音源で言うと、例えばギターが同時に4本鳴っている箇所もたくさんあるんですけど、それはその表現と、映像をイメージしやすいものだったり、世界観を構築するうえでのフレーズ多重録音なので、あまり気にしていないというか。でも、自分がこう弾いたらこの曲はライブで完成するなというイメージが僕の中では既にあります。ライブでは、よりダイレクトな演奏を感じられるものになるとは思いますね。

いよいよ2月22日には「Ruiza Birthday Live「Alive」」が行われます。一部「深海で眠る私」と二部「天空で目覚める君」はどのような違いになるのでしょうか？

Ruiza：この日がRuiza Bandとしての初ライブなので、初めてというところと、それを超えたところを1日で見せたいなと思ったんですよね。4月に東名阪ワンマンツアーがあるので、そこに向けて1回じゃ嫌だなと。そんなに甘くないというか、自分自身の曲の理解度として1回じゃダメだろうなと思ったので、噛み砕くには内容の違う2ステージをやりたいなと思いました。なので、一部は目覚めるところ、二部は目覚めた後を出したいなと考えています。

セットリストも多少変わってくるのでしょうか？

Ruiza：そうですね。もちろん『Alive』の7曲が中心ですけど、さらなる曲を今、作っています。このライブをするにあたって、こういう曲があったらいいなと思ったもの、それとは別に今回作品に入らなかった曲、今後こういうのをやりたいなとか、元々こういうのやってみたかったなみたいな曲があって、今何をすべきか選択して曲を作っている段階です。このアルバムの中に深海と天空を感じるものはあると思うんですけど、割と海や大地に近い曲がたくさん入っていると思うんですよね。だから今、天空を感じられるものを生み出しています。

また楽しみが増します。東名阪ツアーの前に、4月13日には主催イベント「BURNING SOUL vol.2」が行われますが、この日はDistrayの1日復活もあります。

Ruiza：Distrayの話は3年ぐらい前にリーダーから、おそらく彼の周りの環境も含めて、皆が元気でできるんだったらやりたいなという打診があったんですよね。別に疎遠だったわけではなくて、メンバーも時々Dのライブに来てくれていたんですよ。ただ、音楽を今やっていないメンバーもいるので、すぐには決められなくて、Dの活動が落ち着いたタイミングかつ皆の予定が合うところで決めました。だから、話自体は割と前からあったんですけど、ここに来てという感じです。

アーティストの皆さん、割と50歳前後で「元気なうちにやれるならやろうよ」という感情を抱く方が多いようですね。

Ruiza：まさにそうですね（笑）。しかもDistrayは青春時代を過ごしているので、印象が強烈に残っているんですよね。当時の半年って、今の2〜3年分ぐらいの感覚というか。そんなに長い活動期間でもなかったんですけど、めちゃくちゃ強烈に刻まれていて。だから、その熱量を再び感じたいという気持ちは、すごくわかります。

Ruizaさん個人としてはサポート出演も続々決定していますが、Ruiza Bandとして2025年中にやりたいことはありますか？

Ruiza：東名阪以上の場所に行きたいなと思っています。どこまで行けるかわからないですけど、2月の東京、4月の東名阪で止まらないように。とはいえ、身の丈にあった活動がしたいなと思っていて。どこにも所属してないですし、自分一人で決めてやっていることなので、全部目が届くようになりたいというか。なので、自分のキャパシティを超えないという意味で、あまり大きすぎることはやりたくないなと思っています。

地に足をつけた活動を。

Ruiza：はい。地に足をつけることって、なかなか難しいんですよ。自分自身が気付けていないこともあれば、周りとのギャップもあるというか。もちろんキャリアもあるんですけど、そこはあまり気にしていなくて。僕は今、新しく始めようとしているので、新人の気持ち、ここからスタートするよっていう気持ちでしかないんです。そういう意味で、ちゃんと地に足をつけてやりたいなと。その最初の1年ですね。ぜひ始まりのライブを観に来てください！

（文・金多賀歩美）