『怪物園』に名前負けしないものになっている(maya)
それでは、収録曲について詳しく教えてください。
01.開園
Aiji:1曲目はインスト曲で、ジャケットを手に取って初めてプレイボタンを押す瞬間ということで、すごく大事ですね。作品にグッと入っていけるようなムードにしようと思っていました。大事なのは、音を聴いて画が見えるのかとか、ワクワクさせられるのかというところですね。
ちょっと不穏で不気味で、ここから何がくるのかとてもワクワクしました。
maya:『怪物園』というタイトルを決めたときに、Aijiさんに歌のないSE的なもので始まって終わりたいですと伝えたんです。タイトルはまだ伝えていなかったんですけど、不気味な感じにはしたい、でもホラー的ではなくてと話しました。とある映画を例に出して、こういう雰囲気でと伝えたんです。ヒントがなさすぎると思ったので(笑)。
Aiji:エキゾチックであり、ある意味ファッショナブルでもある映画なんですけど。
maya:何の映画かということは教えませんが、最近のものではないです。誤解されずに伝えるにはこれかなと閃いたので。不気味さを例えるならこういうような、ということで一つ参考までに伝えました。
02.Elephant in the Room
これは「触れてはいけない話題、タブー」を意味する慣用表現ですね。こういう言葉を選ぶのはmayaさんらしいなと思いました。
maya:LM.Cには、タイトルに動物を持ってくるというシリーズ的なものがあって、遡れば「Bell the CAT」(2007年リリースのシングル)もその一つです。それと同じ発想の最新版ですね。
そういえば「Bell the CAT」もハンドクラップから始まりますね。
maya:そういえばそうですね! 全く計算外でした(笑)。いつも、語感や言葉の乗り方は最新でありたいと考えているんです。最新であるということは、今までのものを継承している部分がありつつ、新しく響くものにしたいということなんですよ。タイトルは今までやってきた手法、名付け方をすることによって、色々繋がったり、飛びすぎなかったり、枠からはみ出しすぎないバランスになっていると思います。
Cメロの〈目を開いてちゃんと見てごらん そこにある黒い光と影を〉は秀逸ですね。
maya:自分でも、素晴らしいと他人事のように思いました(笑)。アルバム発売前なので、まだ出産前のような感じなんですよ。自分と繋がっているというか。リリースされて時が経つと、より客観的に他人事として感動できるようになるんですよね。今はその間くらいなので、ある意味一番楽しい時でもあります。
Aiji:自分もそうですね。今回は形にしてから随分時間が経っている曲もあるし、最新のものもあるし、だからまだフワッとしています。
ちなみに一番早くできた曲はどれですか。
maya:曲と歌詞は違ってしまうんですけど、曲全体の完成としては「End of the End」が先にできていましたね。『Brand New Songs』よりも前でしたから。
Aiji:元の曲としては「Montage」が歌詞以外は2018年にできていたよね。歌以外はレコーディングも終わっていたから、何だか変な感じがする(笑)。
maya:この曲、最初はサビが違いましたよね。
Aiji:そうだね。作りが違って、サビは全く別のものに作り直しました。この曲ではサビまでギターと歌だけで、あえてベースやドラムは入ってきません。パーカッションが一つ鳴っていて、そこにギターと歌だけで始まるということが大事でした。15周年だし、この二人で始まったということで、改めてそのストーリーが楽曲に投影されればいいかなと。初めからアレンジや流れを決めた上で作曲しました。
03.Valhalla
maya:これは割と最近歌詞を書いて完成させた曲です。
何となく現在の世界情勢を想起させるテーマだと思ったのですが。
maya:確かに、客観的に聴くと大分重なる部分がありますよね。歌詞を書くときは、Aijiさんから渡された曲にヒントがあるので、まずそこに沿っていくんですけど、世界の流れや自分たちに起きていることは自然と反映されます。それをどこまで具体的に言葉にするのかというところはありますけどね。これは結果的に反映されている部分が色々あります。
Aiji:サビがいい感じですよね。言葉もキャッチーで、掴みがある。これぞジャパニーズロックという感じのメロディーと歌詞の乗っかり方というか。楽曲は、何か狙ったというよりも、静寂からの爆発のような、そんなコントラストをイメージして作っていました。
メロディーと歌詞の組み合わせが素晴らしいです。
maya:今回はどの曲も自分であり、自分たちに歌っているところがあります。そのタイミングや色々な事柄が重なると違う響き方をするし、先程おっしゃっていたように、最近の世界の流れとも重なる部分が大いにある。意図せずにそうなったのかというとそうでもないですし、そこだけを見据えて歌っているわけでもないんですが、そこの抽象度合いは上手く表現できている気がします。
ドンピシャではないけれど、何となく「もしかして?」と思わせられるのがミソですね。
maya:そうなんです。今回は、数ヵ月後に自分で素晴らしいなと思うんだろうなと思いながら、作詞作業に臨みました。
そこまで見据えていたんですね(笑)。
maya:そうですね。15年もやってくると、そこの答え合わせですね。
それにしても、〈愚かさとは 正しくあるということだけに 憑りつかれること〉というのは真理だなと思いました。
maya:ありがとうございます。一つの答えではあると思います。
こういうことを歌詞にするのは難しいのではないかと思うのですが、mayaさんは毎回易々と超えてくる感じがあります。
maya:歌に乗せる言葉なので大変ですけど。いわゆるポップス的な表現をしているグループで、言葉はやっぱり期待されていると思うんです。今回その期待には応えられるものになったと思います。この先は好みの問題で、完成度としては問題なく仕上がりました。『怪物園』に名前負けしないものになったと思います。
04.No Emotion、06.Campanella、09. Happy Zombies
maya:『Brand New Songs』の3曲は、このアルバムに必要な曲であり、この曲たちがなければフルアルバムにならないし、『怪物園』というタイトルもつきませんでした。いわゆるセオリー的な部分で、シングル的な役割を3曲がちゃんと担ってくれていると思います。曲調、タイトル、歌詞、色々含めてちゃんとリード曲というかシングル曲というか、そういうイメージになっています。
この3曲の有無で印象がガラリと変わりますよね。
Aiji:そうですね。ちゃんとこの3曲が活きている作品ですね。
05.Panic Time
maya:アルバム曲としては、「End of the End」は別枠かと思うくらい、TDなども先に完成していたんです。それを経てアルバムを作ろうという意味では、「Panic Time」が最初の曲ですね。歌詞的にはアルバムを作ろうと向き合い出したときの1曲目という感じです。選曲もここで似合うということを確信して選びました。
Aiji:「End of the End」と同じ時期に作っていて、デモとしては2021年に作った曲です。自分的には「End of the End」と同じ流れのモードで作っています。作るにあたってはあまり悩むことはなくて、先程話したように時間がすごくあったので、悩んでいい、悩む時間だからと思いながらやっていました。だから特に苦労はしていません。苦労は締め切りとか、何かしらのプレッシャーがあるから生まれると思いますし、その辺は時間という制約からも解き放たれて生きていたので、難産ということはありませんでした。自分の感覚で素直に作っていった結果かなと思います。
ご自身がやりたい音楽への原点回帰なんですね。
Aiji:そうですね。メロディーも一回覚えると口ずさみたくなるようなものを常に目指して作っています。サウンドも、アレンジ的に必要以上に厚くはしていないんですよ。すごくシンプルにして4ピースのバンドサウンドという感じでやっています。
一度聴くとすぐに頭の中で曲が鳴る、とても入りやすい曲です。
Aiji:作り方としてはいわゆるAメロ→Bメロ→サビのようなことではなく、童謡的な感じですね。わらべ歌って1番でひと塊じゃないですか。サビしかないというか。作りとしてはそれです。この曲ではインパクトもあって、短い中でドラマがあればいいと思ってました。
歌詞についてはいかがでしょう? LM.Cの曲は特にメロディーが頭に残りやすいので、いつも歌詞だけ最初に読むようにしているのですが、曲を聴く前に読むとより深く理解できる気がします。
maya:その向き合い方は素晴らしいですね。自分もやるパターンです。良い曲、良い歌詞は字面もいいんですよ。よその曲を見ても「これはよくできた曲だな」というものは歌詞の字面を見ただけでわかります。他の曲同様、「Panic Time」もそうなっています。
これまで個人的なLM.Cの歌詞No.1はアルバム『VEDA』の「AVOCADO」の〈六識全て捧げたい〉でしたが、今回のアルバムではそれを更新している気がします。
maya:そう言われて振り返ると『VEDA』の頃から違うところに向かい出した感じで、今回はその先にあるような気がします。
特に気に入っている歌詞はありますか?
maya:今回隙がないんですよ(笑)。『Brand New Songs』の曲を含めて全曲そうだと思います。歌詞には流れがあるから、切り抜いてここというのは難しいので、やっぱり全曲のタイトルですね。基本的に作詞するときはそこから入るし、そこがないと自分的には何も始まらないので、いつも仮でもいいのでテーマ、スローガン、ヒントのためにタイトルをつけます。「Panic Time」は、タイトルが閃いた時点で割とできたというタイプの曲です。
お二人は曲を作るとき、頭から作っていく派と、盛り上がるところから手をつける派で分かれているそうですね。
Aiji:mayaはイントロから作る派です。
maya:作詞にもそういうところがあります。いつも自分とすごく会話するんですよ。その時は自分のことを作詞家の先生として扱います。「先生! 歌い出しは大事ですよ!」「先生お願いします!」「歌い出しは決まりましたね。それでいいですか? 大丈夫そうですね」という感じで。Aメロ→Bメロ→Cメロの構成だとすると「サビの歌い出しも大切です」「サビに対してのBメロのあり方も大切ですし、それを経たAメロが一番大事ですよ!」ということをやります。「Panic Time」もこんな感じでした。
面白い…!
maya:大体こういうふうにやっています。そうしないとダメ、ということではないですけどそれが完成に近いというか。
こうやって一つひとつやっているから、曲にストーリーがあるんですね。
maya:そうですね。自分としてはまず歌い出しは決まってほしいです。皆大事ですけど、まずはそこからなので、歌い出しが決まらないとずっと気持ちが悪いんです。稀に決まらないことがあって、何となくサビはこれかな…という時もあるんですけど、やっぱり決め手になるのは歌い出しですね。何しろ〈脈拍の狭間で孤独は押し寄せる〉ですから。天才です(笑)。
明るい良い未来を見て感じてもらえるツアーに(Aiji)
07.Montage
〈えも言われぬような夜の片隅で〉という秀逸な歌い出しで始まる「Montage」は、とてもスタイリッシュな曲ですね。
Aiji:この作品の中ではちょっと異質で、クラブミュージックというか四つ打ちの曲です。こういうのは得意なパターンですね。冒頭でも話しましたが、今回自分の得意なことに改めて向き合ってみようという気持ちがあって。ただ、2018年の曲なので、mayaからもオーダーがあってサビを作り直しているんです。自分でも時間が経ってしまうと、何か足りないと思ってしまうんですよね。その時の瞬発力で作っている曲は特に、冷静になるとそうなりがちです。でも、より良くなったので、作り直して良かったです。
Aijiさんは最近デジタルに投資するよりもアナログモードだそうですね。今回のアルバムでも活かされていますか?
Aiji:そうですね。ただこの曲は古すぎて、アナログモードになったときには既にレコーディングが終わっていたので、一部分でしか活きていないんです。でもサウンドや楽器一つひとつの佇まい、音響的な部分の説得力という意味では、おっしゃる通り最近になってアナログ回帰をしていたので、そういう部分があるなと。最近は基本的にリズム関係の自分のギターは、必ずアナログの機材を通して録音するようにしているので、今までとはちょっと違うかもしれませんね。ただ専門的すぎるので、ファンの人が聴いたときに「何か違う」とはならないかも(笑)。自己満足ももちろんありますし。ただミュージシャンとして、サウンドをデザインする人間として通るべき道というか、作曲家とは別にサウンドデザイン的な部分へのこだわりがあります。そこの答えが、今回の作品になっているのかなという気がしますね。
歌詞は、この曲が一番最近書かれたものですよね。
maya:最新の思うことがバランス良く入っています。書いていた時のことをすごく覚えていて、この曲でアルバムの作詞作業は最後だったので、ちゃんと終えたい!と思っていました(笑)。
最後となると気分的に違うものですか。
maya:今回はそれほど変わらなかったです。以前は「あと○曲…あと○曲…」という感じだったんですけどね(笑)。経験もなかったし、今と同様に締め切りもシビアで勝手にプレッシャーを感じていたんです。もしかすると、前はもう少し真面目だったのかもしれないな。
Aiji:当時は歌録りを外のスタジオでやっていたから、確実にそのリミットがあったよね。絶対的に逃れられない締め切りが。
maya:あー確かに! 今は場合によっては夜中に録っちゃいますし、録れなかったら明日でいいかという気楽さもあります(笑)。
以前Aijiさんが、mayaさんは絶対に自宅で録るほうが向いていると言っていましたね。
maya:そうなんですよ。自宅なら一生やっていられます。自分の声が好きすぎて(笑)。この周波数、このメロディーに対して、この声はすごくいいなと思いますし。確か「No Emotion」だったと思うんですけど、ずっと同じ曲ばかり歌っていたこともあります。
そういうこともできてしまうコロナ禍ですね(笑)。
maya:そうですね(笑)。「Montage」に関してはちゃんと録りました。歌のレコーディングとしては最後の曲だったので、歌唱は、それぞれの曲のキャラがちゃんと立つようにして、他の曲とのバランスをとることを意識しました。
08.Lost Summer
とても綺麗な歌詞が展開される一方で、タイトルがとても意味深でした。
maya:お、そう感じましたか。歌詞に関しては2020年の夏のことを歌っています。スタートはそこですけど、他のタイミングにも当てはまればいいなと思って。でも改めて見ると、2020年の夏そのままという感じですね。
2020年夏と言えば、コロナの感染がより深刻になった頃ですよね。
maya:そうですね。歌詞はそのとき書いたわけではないんですけど、こういう気持ちもあったなという内容です。これまでこういうふうにピンポイントで書いたことはなかったので、そういうものもいいかなと思ったし、受け取り方によって色々受け取れる曲になったらいいなと思って。
〈今となっては 砂を噛んだような日々も 満たされてた時間も夢より素敵な当たり前だったよ〉というところは、まさに多くの人の心境を代弁していますね。
maya:天才に感じましたか?
天才が炸裂しているなと思いました(笑)。気持ちがものすごく伝わってきて。
maya:確かに炸裂していますよね。他の曲に比べて言葉としては一番わかりやすいかもしれません。何を言わんとしているかが、一番素直に言葉になっている気がします。
これは共感する方が多いだろうなと思いました。
maya:そうだろうと思ったから、これくらい素直なテーマ、直接的なものでまとめることができたのかもしれません。出来事として共有していくことが多い事柄だと感じていて、そのまま言葉にしてもいいんじゃないかなと思った気がします。
今このタイミングの曲としてベストな気がします。冒頭で雨音がしますが、これはAijiさんの案ですか?
Aiji:季節や情景の見える曲を作りたいと思って、デモの段階から入れていました。LM.Cで雨にまつわる曲でいうと「レインメーカー」(2016年リリースのシングル)があるんですけど、それはどちらかというと作った段階では雨という感じでもなかったんです。歌詞が乗った結果、雨にまつわる曲になったという感じでした。でも、この曲は、デモのときから雨の景色、アスファルトに雨が落ちた時の独特の匂いだったり、そういう雰囲気、情景を曲にしたくて作った曲です。自分の中で映像がまずあって、その見えているものに似合うメロディー、曲想をそこにアジャストするんですけど、今回は自分の中で雨の風景があって、そこを目指しました。
確かにこの曲を聴くと景色が浮かびます。
Aiji:雨音がなければ別の景色になっていたかもしれませんけど、あれがサウンドエフェクト的に入ることによって、より楽曲的に聴く人のトリガーになればいいし、呼び水になればいいと思っています。
雨の音がこの曲の肝なのでしょうか?
Aiji:いや、デモの段階から入れてはいましたけど、歌詞が全く関係のない世界観だったら抜こうと思っていました。あくまでも自分だけのヴィジョンであり、サウンドスケープの話なので。でも「Lost Summer」というタイトルがきて、より深まった感じがしましたね。さすがにmayaも、雨の音が入っているのに〈今日は晴天〉という歌詞は書いてきませんでしたから。空気を読んでもらえて良かったです(笑)。
描いたヴィジョンが聴き手に伝わるとても美しい曲で、曲中の鍵盤も彩を添えています。
Aiji:そうですね。登場するそれぞれの楽器の音色の質感にこだわって仕上げた曲です。
とても綺麗なだけに寂しさのようなものも際立つ、情感豊かな曲ですね。
Aiji:この曲は、グルーヴ的に人間味のようなものが欲しくなってきて。うちの場合はリズムは大体打ち込みで作るので普段はやらないんですけど、この曲だけはPlastic Treeのケンケン(Dr)にスタジオに来てもらって、ハイハットだけ叩いてもらいました。それをマイクで拾ってレコーディングしてます。リズムに人間味のあるものを入れたいと思ってトライしましたが、結果メチャメチャいい仕上がりになりました。
10.End of the End
これは昨年10月に行われた「LM.C LIVE 2021 -The Best Live Ever Vol.9- End of the End」@長野JUNK BOXと、12月に行われた同「”JUST LIKE THIS!!”」@川崎CLUB CITTA’でお披露目済みで、YouTubeで映像も公開されています。そのコメント欄で、特に海外の方の反応が目につきました。
Aiji:海外のファンの人はコロナ禍でライブも観られていないので、LM.Cの新しいものにようやく触れることができたと思ってもらえたのかなと。コメントを通してそれを伝えようとしてくれる気持ちが嬉しいです。
今回の作品は、海外でも入手できるように調整しているとオフィシャルのSNSで発信していましたね。
maya:そうです。しばらく海外に行けていないので、アルバムを手に入れて喜んでもらえたらいいなと思います。
この曲は、いわゆるリード曲の位置付けなのでしょうか?
maya:そういうわけではないんですけど、そういう意味でも『怪物園』は特殊なアルバムだと思いますね。既存曲としてあった3曲もシングル的なポジションになっていますし。リード曲は現状決めていないんですよ。でも、言われてみると「Elephant in the Room」か「End of the End」あたりがリードしていくアルバムなのかもという感じがします。
Aiji:曲を作っていた時期的には「Panic Time」とか「Elephant in the Room」と同じ時期なので、モードとしてはそれらの曲は同じというか、今LM.Cがやるべきカッコいいと思うロック、そういう15周年なりの自分たちのロック感がそこにあればいいなと思って作っていました。自分的には「End of the End」というタイトルを聞いて、当時はまだアルバムを出すとは決めていなかったんですけど、ミニアルバムなのかフルアルバムなのか、収録されるなら作品の最後のほうに入ると合いそうだなとは思っていました。歌詞がない段階ではアルバムの序盤でもいいという感覚だったんですけど、結果として最後にふさわしい曲になったと思います。
この曲の配置で、作品の印象がかなり変わる気がします。
Aiji:この曲が10曲目に来たことで、「ここにハマるだろうな」という前提のもとに最後のインスト曲も作っているので、収まりもいいと思います。
11.閉園
最後は、「開園」とは全く違う美しさで幕を閉じるんですね。
Aiji:少しずつグラデーションで何か変わっていく様、先に進んでいく様が見えればいいという思いとストーリーがあります。自分的に『エヴァンゲリオン』の楽曲の使い方がすごいと思っているんですよ。あるシーンで「翼をください」が突然流れるんですけど、あの感覚に近いというか。劇中の緊張感ある中に一瞬のフワッとした感じ、感覚的にはそのイメージがかなり近いかもしれません。
かなりイメージしやすいです。それにしても、内容のとても分厚いアルバムでした。
Aiji:結果としてすごく壮大なものになったと思います。トータル分数的に43分で聴けるので、長くて疲れちゃうということもなく、アルバムの中で色々な旅ができるような作品になっていると思います。
予約は終了してしまったのですが、完全生産限定盤の特典であるハイレゾ音源が気になっています。
Aiji:今作のハイレゾは、配信サイトで今後配信をしていこうと思ってます。今は音が良いイヤホンやヘッドホンが増えてきたので、CDとはまたちょっと違った感じで楽しんでもらえると思いますよ。
CDになると全く違ってしまうんですか?
Aiji:そうですね。音の違いがわかるかどうかは、聴く人の感覚や環境にもよりますが、厳密にいうと劣化しています。ハイレゾは、我々がスタジオでレコーディング、ミックス、マスタリングした音そのままなんですよ。それを聴いてもらうことが、我々的には一番ストレスがありません。
ベストな形をそのまま聴いてもらえるわけですね。
Aiji:そうです。純度的には作ったそのままの音なので。ちなみに、完全生産限定盤はある程度在庫を用意しているので、実はまだ手に入ります。
maya:限定品ではあるんですけど、ライブの会場では販売します。
Aiji:買い逃してしまった人はぜひ、ライブ会場で。
ところで、今回はアルバムのリリースを挟んでツアーが前後半に分かれるという初の趣向ですね。
Aiji:確かに、アルバムのリリース前に先行して生で聴かせるというのは多分初めてです。
maya:今までやったことがないからやってみようかという感じなんですけど、これだけまとまった曲を初披露することは今までなかったですからね。
maya:経験としてはお互い素敵なものになると思います。ファンの皆さんもなかなか経験することではないと思うので、初めて披露されるという感覚を楽しんでもらえたらいいなと思っています。
以前、アルバム『VEDA』で「AVOCADO」がツアーですごく化けたとお聞きしましたが、今回はどの曲が化けそうでしょう?
maya:全曲化けてほしいですね。進化系の曲たちで、ポケモンのようになってほしいです(笑)。でもやってみないと想像できないんですよね。曲が求める形に成長していってくれたらいいなと思います。
昨年はこれまでの歴史を総ざらいするようなライブやMV集のリリースなどがありましたが、今年LM.Cはどんなふうに進んでいくのでしょうか。
maya:とりあえず秋までライブが決まっているので、そこまではアルバムと共にライブを行いつつ、9月25日の15周年記念ライブ@LINE CUBE SHIBUYAで何か決着をつけられたらいいなと。気分はずっと15周年のお祝いという気分でいて、色々な状況を経て、15年を超えてまだ活動できているということへの感謝、自分や、自分たち、仲間たちへの感謝を持ってツアーができたらと思っています。
Aiji:2年くらい前からコロナ禍になって、去年も生でライブができるありがたみや、奇跡のような瞬間を毎回感じてきました。去年はツアーがいつできるのかまだ見えていなかったんですけど、ようやく規模感を含めてツアーといえるものができるようになったなと。とはいえ、まだ県外移動はできない人もいると思いますし、来ることができない人もたくさんいることも感じています。それも含めて、ライブができるって事は決して当たり前ではないんだという、そんな奇跡の瞬間に対して感謝を持って日々過ごしていきたいですし、ライブ1本1本を大切に臨めたらと思っています。最近は、イベントも人数制限なしでできる雰囲気になってきているので、そういうことも含めて明るい未来を感じてもらえるツアーになればいいなと思っています。
(文・後藤るつ子)
LM.C
maya(Vo)、Aiji(G)
オフィシャルサイト
リリース情報
New Album『怪物園』
2022年4月6日(水)発売
(Wonderholic Records)
[通常盤](CD)WHR-0003 ¥3,300(税込)
収録曲
[CD]
- 開園
- Elephant in the Room
- Valhalla
- No Emotion
- Panic Time
- Campanella
- Montage
- Lost Summer
- Happy Zombies
- End of the End
- 閉園
ライブ情報
●LM.C TOUR 2022 「怪物園」
3月24日(木)大阪 ESAKAMUSE
3月25日(金)名古屋 Electric Lady Land
4月8日(金)仙台darwin
4月10日(日)川崎セルビアンナイト
4月16日(土)名古屋 ell.FITS ALL
4月17日(日)大阪 ESAKAMUSE
4月21日(木)柏 PALOOZA
4月22日(金)白金高輪 SELENE b2
4月26日(火)恵比寿 リキッドルーム