10周年を迎え、かつてないほど明確なテーマを掲げて作られたフルアルバム『VEDA』をリリースするLM.Cをフィーチャー!
今年10月、舞浜アンフィシアターで結成10周年という大きな節目を迎えたLM.C。そのライブの終演直後、ニューアルバム『VEDA』のリリースが発表され、会場を歓喜の渦に巻き込んだことは記憶に新しい。リリースに先駆けて届けられたリードトラック「The BUDDHA」とアーティスト写真、そしてジャケット写真から伝わる“仏教”というモチーフ。かつてないほど明確なテーマを掲げて作られたフルアルバムには彩り豊かな10曲が収められている。2016年を駆け抜け、新たな10年への第一歩を踏み出した二人に、この作品の魅力、そして2017年への決意を聞いた。
◆いつも通りのLM.Cでありながら、あの会場ならではのライブに(maya)
――10月16日に舞浜アンフィシアターで「Go to the 10th Anniversary TOUR FINAL」が行われました。初の会場で行われた節目のライブを振り返っていかがですか?
maya:いつも通りのライブができた、という印象ですね。舞浜を目指して1年かけてやってきたんですけど、5周年のときの武道館とは違って落ち着いて臨めたという印象が強いです。個人的に、初めてのホールや武道館は感覚を掴む前に終わっていく印象があったんですけど、今回は初めての会場で、しかも特殊な形のステージなのに必要以上に意気込むことなくライブができた気がします。
Aiji:特別に気負うことなく、良くも悪くもLM.Cらしいライブになって良かったと思います。5周年の武道館のときは、どこか気負いがあったような気もするし。そういった意味で、とてもニュートラルな、自分たちらしいライブになったのではないかなと。
――特殊な形状を活かした、あの会場ならではの演出もありましたね。
maya:そうですね。舞台装置が色々あったので、何を使い、何を使わないでおくかは打ち合わせました。いつも通りのLM.Cでありながら、あの会場ならではのライブになったと思います。
Aiji:ライブ専用の会場ではないから、お客さんとの物理的な距離は埋めようがなくて若干のタイムラグは出てしまったんですけど、LM.Cのショー的な部分にはすごく合っていた気がします。
――あの日のMCでも触れられましたが、ライブの前日には「VISUAL JAPAN SUMMIT 2016」(以下VJS)に出演しましたね。
Aiji:ポジティブな意味ですごく良いゲネになったと思います(笑)。今年は4本のツアーを回って来たんですけど8月からライブの無い期間が空いていたので、10周年記念ライブの前日に「VJS」のステージを踏めたことで良い感じで舞浜を迎えられた気がします。
――前日の「VJS」で初めてLM.Cを観て、翌日の舞浜に駆け付けたという人もいました。
Aiji:ありがたいですよね。「VJS」のたった30分間のステージを観て、翌日のワンマンを観に来てくれるなんて、出た意味がありましたよね。
maya:次の日のライブって、なかなか来づらいと思うんですよ。出会いがあって響くものがあったとしても、せめて1週間とか1ヵ月くらいは噛みしめたいじゃないですか。
Aiji:場合によっては、そこで冷めちゃったりするしね(笑)。
maya:そのパターンもあるし、もっと燃え上がるパターンもあるけど、次の日というのはなかなかね(笑)。予定もあるだろうし。だから、その勢いで何人もの人が来てくれたというのは素敵なことだと思います。
――観る人の心に響くライブだったんですね。ところで、話題の完全生産限定盤のジャケットが気になっていたのですが。
Aiji:遂にできたんですよ! LPサイズの3Dのレンチキュラー(※シート状のレンチキュラーレンズを使って、見る角度によって絵柄が変化したり立体感が得られる印刷物)。でも、「今これをアナログLPサイズでやる人はいないだろう!!」と話していたら、たまたま『VEDA』と同日リリースのL’Arc〜en〜Cielのシングルの完全生産限定盤が同じサイズのレンチキュラーらしくて。「あらら…」と(笑)。
(※ここで『VEDA』の完全生産限定盤ジャケットが登場)
――これはすごい! ものすごいインパクトですね。
Aiji:ヤバイですよね(笑)。この上に手を置くと距離感が崩壊します(笑)。
maya:俺は今日初めて見たんですけど、これはすごいな。
Aiji:これはきたよね。
maya:きましたね。こんなの世界初じゃないですか?
Aiji:そうかもね(笑)。最近の音楽業界ではあんまりこういうことをやる人も少なくなってきてるよね(笑)。レンチキュラーはシングル『MONROEwalk』のときにもやったんですけど、このぐらいカオスなグラフィックだと迫力ありますね。レンチキュラーは、最大14枚のレイヤーが組めて立体感をつけられるらしいんです。印刷会社の方に一応指示はするんですけど、最終的にはその会社の人のセンスで決まる部分もあるらしいですよ。
maya:そういえば『ジュラシック・ワールド』のジャケットの3Dチェンジングを見たんですけど、あれも半端なかったです。「あ、3Dだ」と思って近くで見たら、「あれ? 絵が変わった!」と思って。うちのジャケットも動くともっと面白かったかも。
Aiji:じゃあ(中央下部の)手が開くようにしようか? もう入稿しちゃったけど(笑)。
maya:(笑)
――今回もLM.Cは時代を先取っている感があります。
Aiji:これがお店にあったら、とりあえず手に持ってみますよね。でも平置きじゃなくて棚に差されちゃったりしたら全く意味ないっすけどね(笑)。
maya:(笑)
Aiji:とにかくすごく良い出来なので、ぜひとも完全生産限定盤をGETしてほしいです!
◆こういうムード感のアルバムになると定まったのは、「The BUDDHA」から始まる作品にしようと決めてから(Aiji)
――舞浜のライブの最後に、最新のアー写と共に「The BUDDHA」がフルで流されました。かつてない仏教というモチーフにファンの方々も驚いたと思うのですが、今回のアルバムでこれを掲げた理由は何だったのでしょうか。
maya:4~5年前、自分の思想や物事の捉え方に決着が付き始めた頃に、自分の発想が仏教の考え方に似ていると感じたのが始まりなんです。中でも一番シンプルな、初期の仏教にシンパシーを感じて。それをすぐに作品のテーマにしようと思ったわけではないんですけど、始まりがあるとするとそこですね。
――実際に作品に反映したのはどういう経緯だったんですか?
maya:「The BUDDHA」というテーマとタイトルで曲を作りたいと思ったんです。その少し前からアルバムの制作が何となく始まっていたので、まずタイトルありきで曲を作ってみました。当初はアルバム全体をそのテーマに沿わせたいとは考えていなかったんですけど、作ってみたらLM.Cにハマったので、そのままアルバムのテーマにしたんです。
――今回収録されているシングル曲「MONROEwalk」や「レインメーカー」も含め、アルバム全曲に仏教にまつわる言葉が入っていますよね。2枚のシングルの制作段階から、アルバムのテーマを見据えて作っていたんでしょうか。
Aiji:「The BUDDHA」ができたのは、去年の夏を過ぎた頃、「MONROEwalk」の曲出しのときだったよね。
maya:そうですね。未来を見据えて曲作りをしていく中で、次のLM.Cの候補としてという感じでした。「The BUDDHA」という曲を作りたいなと思うようになってからは、それぞれの曲に仏教の思想が由来になっている言葉を最低でも一つは忍ばせようと思っていたんです。でもそれぐらいですね。このモチーフを宗教的なことというより、もっとキャッチーでポップなものとして考えているんですよ。無理矢理インドやネパールのような音楽の要素を感じさせたいということではなく、「仏教の思想が由来になった言葉を1ワード入れる」という縛りを作って、あとは自然にやればいいかなと。
Aiji:選曲の時も同じで、そのときに出た曲の中から、今まで通りこれは良い曲になりそうだなというものをピックアップした感じですね。でも、こういうムード感のアルバムになると定まったのは、「The BUDDHA」から始まる作品にしようと決めてからです。
maya:今回、制作期間がかなり長かったんです。バンドのスタイルにもよりますけど、例えば集中して3ヵ月でアルバムを作るのって大変じゃないですか。LM.Cは今回ゆっくり走り出して、その中で「The BUDDHA」ができて、このテーマでいこうと決まったら、すぐにジャケットの話も進んで。「The BUDDHA」をやると決めた時点でこの曲を1曲目にしようという話もしたし、そこからアルバムの形が見えた気がします。「阿修羅」なんかは結構前からある曲で、作業自体はその前からやっていたんですけどね。
――舞浜で「The BUDDHA」を聴いたときに、一体どんなアルバムになるんだろうとワクワクしました。それに加えてmayaさんはアーティスト写真で阿弥陀仏の下品下生のポーズ(人には九つのランクの往生があるという浄土教の考え方を表した像のポーズ)をしていたりと、モチーフがより強く感じられました。
maya:これは意識して選んだ写真ではないんですけど、『VEDA』に引っ張られるんでしょうね。自然とこういうポージングになって、その写真を選んじゃったという(笑)。
――タイトル、アーティスト写真、アートワーク、歌詞と、振り切っている作品ですね。
maya:今まで10年やってきて、特にアルバムでは、こういうあからさまなテーマを掲げたことはないですからね。
――10周年というタイミングでのリリースということで、何かしら意味合いを持たせようとしたんでしょうか?
maya:結果的にですけどね。10周年を意識したら、もうちょっと違うものになった気もします。LM.Cの活動のダイジェスト的なヴィジュアルイメージや曲を並べてもいいのかなとか。
Aiji:もしくは新譜は出さずの、録り直しベストとかね。
maya:案外大変なやつね(笑)。
Aiji:そうそう。やらなきゃ良かったって思うやつね(笑)。頑張って作っても「前のほうがいい!」ってファンに言われちゃうやつ…よくあることですよ(笑)。
――(笑)。ところで、この『VEDA』というタイトルはバラモン教の「聖典」を意味しているんでしょうか?
maya:いわゆる宗教文書の総称みたいなものらしいんですけど、どちらかと言うと語源と言われている「知識」のイメージでつけました。ただ、意味合いよりもこの言葉の響きや字面で選んでいます。とにかく響きがカッコいいし、字面的にもLM.Cっぽくない。でもこうやって形になると、LM.Cっぽさも感じられるような気がするんですよね。
――この世界観には「CHEMICAL KING-TWOON」(2008年リリースのアルバム『GIMMICAL☆IMPACT!!』収録曲)の香りを感じました。
maya:確かにそうですね。ちょっと日本から離れた感じというか、今回それをやり切ってみました。
――こういうテーマをLM.Cのフィルターに通した作品というのは、とても新鮮です。
maya:テーマと言えど、タイトルがあって、ヴィジュアルイメージがあって、1曲目に「The BUDDHA」が入っていたらそこに引っ張られるだろうから普通以上に寄せる必要もなく。意識して寄せたら、また違った新しいLM.Cになった気もするんですけど、今はあえてそれをやらなかったという感じです。このアルバムは1曲1曲が独立していて今っぽいというか、ダウンロードで1曲買うという聴き方をしてもらっても平気なんじゃないかという気がしますね。
――どの曲もアルバムの入口になり得るということでしょうか。
maya:そういう印象です。このアルバムは制作期間が結果的に長くなったこともあって、独立した曲が集まっているというか、1曲完成するごとの喜びのほうが大きかった印象もありますからね。