◆LM.Cのこういう感じが、作品にも結びついていると思う(Aiji)
――Aijiさんのレコーディングはいかがでしたか?
Aiji:前作のアルバムの時から環境も作って自宅でやっているんですけど、ちょっと飽きてきたので、アンプを持ち込んだりして実験しました。スピーカーは鳴らさないですけど、真空管的な質感とかいろいろ試したんです。でも、結局気に食わなくて全部録り直しました。
――全部録り直すとは思い切った決断ですが、何が気に入らなかったんでしょう?
Aiji:家の環境でやっているのでノイズの影響を受けちゃうんですよね。真空管は、それがすごく増幅するんです。そのちょっとしたノイズが許せなくて。
――細やかというか、神経質というか…
Aiji:ノイズに関してめっちゃ神経質ですよ。ぶっちゃけ、プロ用のレコーディングスタジオで録ってもノイズは乗るんです。それをどうやって良しとするのかなんですけどね。特に今回、ドラムは打ち込み曲が多いので、生のドラムサウンドの中だったら聞こえない様なちょっとしたノイズも聴こえちゃうというか、気になっちゃうんです。良くも悪くもセパレーションの良いクリアな音になるので、その分ノイズが気になるんですね。なので録り直しました。でもそれは自分の実験の延長線上なので苦労でもなんでもないんですよ。自分の自宅でできるクオリティと環境がよりわかったし、何が必要かもわかった。次作は、よりアンプを鳴らさないぞと(笑)。
――実験の甲斐がありましたね(笑)。
Aiji:そうですね。本来ならスタジオでアンプを鳴らせばいいんでしょうけど、時代的にもそうだし、自分の好みも含めて、自宅で録っています。あとはノウハウですね。今までずっと一流のスタジオを使わせてもらってきて、良い音に関しての自分の中の基準もあるし、どういうものかもわかっているので、アンプシミュレーター(※ギターアンプの周波数特性を再現するエフェクター。レコーディングのライン録音時に使用する)を使うにしても理想の音に到達できるんですよね。自分の経験と知識以上の財産はないなと思いますね。
――Aijiさんの性格がわかるお話でした。
Aiji:まぁ細かいっすね(笑)。
――イメージですが、お二人の性格は逆のような気がします。
Aiji:本質的には逆なんですけどモノづくりに関しては一緒ですね。こだわる箇所が多少ずれてはいるんですけど、制作に関しては俺もmayaも基本細かいです。
――じゃあmayaさんも自宅で録るのは大変だったんじゃないですか?
maya:いや、そうでもなかったですね。結局自分とのやり取りだから。そういう意味では気楽でした。レコーディングするっていう経験はLM.Cを活動開始してから重ねてきたので、それを自分でやったわけですけど、外のスタジオでやるみたいなやり取りがなくて、ここをこう録りたいっていうのを瞬間でできるし、飽きたら瞬間でやめられるし、休憩に入れるし。そういう気遣いがなかったです。編集も自分でやれるし。楽というか楽しかったですね。
Aiji:我々には向いているかもね。まぁ、バンドだとアレンジのちょっとした変更とかも常に一緒にいて話した方が生産性がいいのかもしれませんけど、自分たちは二人しかいないし、それぞれ自分に向き合う方が向いているのかもしれないですね。
――とは言え、3分の距離なら会った方がいい気はしますが(笑)。会った場合と会わない場合、どんなメリットとデメリットがあるんでしょう。
Aiji:メールだと、良くも悪くもmayaは無責任にいろいろ言うんですよ。一緒にやると俺の顔色を多少は伺って「Aijiさんが良いって言ってるからいいかな」って流されてくれるところがあるんですけど、メールのやり取りだと全然流されてくれないっすね(笑)。
maya:会わない良さは、それぞれが結果を見せられるってことですよね。一緒にやると途中経過を見るから、「それならこれで良いかな」ってなる。一長一短ですね。途中でツッコミ入れて終わらなくなるパターンもありますからね。
Aiji:でも、一緒にやらないと無駄も踏んでるよね。ちょっとした処理にすごい時間使って。ああでもねぇこうでもねぇってやり取りが超長いんですよ。「DREAMscape」なんて打ち込みと生で要素が多いし、展開もあるので、アレンジの詰めで超絶時間がかかりましたからね。あれは完全に一緒にやった方が早かったです(笑)。
――Aijiさんは一緒に作業したそうですね。
Aiji:いや、大丈夫です! mayaが家に来るといろいろ事故とか起こして家の中を荒らすんですよね(笑)。水ぶちまけても絶対謝らないし!
maya:うん、謝んないっすね(笑)。謝らないヤツっていますよね、昔から。
Aiji:それですよ。クラスに一人はいるそれです。
maya:そういうヤツに憧れてたことがあって。
Aiji:前に、家で作業するときに水をぶちまけられて以来、作業では呼んでないっす(笑)。
maya:ちなみに、Aijiさんちの猫のせいにしました。
――ひどい(笑)。
maya:でも、これが良いところでもある(キリッ)。
Aiji:社会的には良いところないからね! まぁLM.Cのこういう感じが、作品にも何かしら結びついていると思うんです。もっと距離感が近くて常に肩組んでるような二人組だったらもっと違う作品になるんでしょうし。どうします、取材中ずっと肩組んでたら(笑)。
maya:アルバムタイトルが違う風に聞えちゃいますよね(笑)。
Aiji:ヤバい『PERFECT FANTASY』だな(笑)。
◆最近、ライブが今まで以上に楽しい(maya)
――2月にはアルバムタイトルと同名のツアーが始まりますが、前回を上回る充実の本数ですね。
Aiji:1回行った所には、また行きたくなるんですよね。海外もそうなんですけど、そこで待っている人がいるなら行き続けたい。
maya:国内だとコンビニもあるし。
Aiji:…何でコンビニ?
maya:いや、何でもあって便利じゃないですか。
Aiji:(笑)。確かに、海外だとずっと何か足りない感じの中で回ってるんですよ。そのハングリーさが良いのかもしれませんけどね。
――ツアー先で何か楽しみはありますか?
Aiji:食べ物ですかね。スタッフとかサポートメンバーとかとよく行きます。ツアー先でmayaと二人きりってこともないし、ライブやって移動が多いので観光名所にもあまり行けないし。…そろそろちゃんと観光しますかね。ただ、mayaはとにかく協調性がないので、一緒に行っても必ずいなくなるんですよ。maya、協調性とか意識したことある?
maya:あんまないっす(笑)。だから最初から行かないんですよ。あ、そこはちょっと気を使っているのかも。帰りたくなったらどうしようって思うし。
Aiji:帰りたくなったら帰ればいいんだよ! 大人なんだから(笑)!
maya:そっか(笑)。でも今年はみんなとどこかに行こうと思います。今まで本当に一緒に行かなかったんで。
――ぜひ肩を組んで観光名所を巡ってください(笑)。今回のツアーではどんなLM.Cを観せたいですか?
maya:最近、ライブが今まで以上に楽しいんですよね。7年間続けてきたある種の結果なのかもしれませんけど、集まってくれる人たちとの関係が、2年、3年では到達できなかったものになれている気がする。今回、新曲が増えるので、今までの音楽ごと成長していくんじゃないかな。
Aiji:LM.Cのライブは基本的にアンコールはやらないので、本編が命なんですよ。でも、フルアルバムを出した後のツアーって、セットリストがガラッと変わるじゃないですか。そうすると、ライブの右肩上がりにテンションが上がってく感じが薄くなったりして、いつものLM.Cじゃないって言われたりすることもあったんですよね。で、今回はミニアルバムってこともあってセットリストの半分くらいが新曲に入れ替わっちゃうみたいな事もないので、右肩上がり感もしっかりありつつ、アルバムの世界感も感じてもらえたらなぁと思います。自分たちの王道パターンに、いい感じで新しい血が入る感じですかね。LM.Cのライブはこうだよねってイメージを持っている人にもしっかり応えられるし、いつもLM.Cのライブに来ている人たちにも新しいLM.Cを観せられる。良いバランスのライブになると思いますし、そうありたいですね。
(文・後藤るつ子)
LM.C
<プロフィール>
maya(Vo)とAiji(G)によるミクスチャーユニット。2006年10月に、マキシ盤『「Trailers【Gold】」』『「Trailers【Silver】」』を同時発売しデビュー。海外ツアーや武道館公演など精力的に活動を続け、2013年6月、ベストアルバム『B-Side BEST!!』を、12月には15枚目のシングル『My Favorite Monster』をリリース。2014年2月からは全国22か所でツアーLM.C TOUR 2014 [PERFECT FANTASY] を開催。
■オフィシャルサイト
http://www.lovely-mocochang.com
『PERFECT FANTASY』
2014年2月12日発売
(FlyingStar Records)
ビクターエンターテイメントFlyingStar Recordsへの移籍第1弾作品は、2012年4月発売の『STRONG POP』以来、1年10か月振りとなる待望のオリジナルアルバム。先行シングル『My Favorite Monster』を含む全8曲を収録。
【収録曲】
01. 1.Neo Fantasia
02. DOUBLE DRAGON
03. Chameleon Dance
04. 禁じられた宇宙。
05. My Favorite Monster
06. mono-logue
07. DREAMscape
08. DIVE TO FANTASY