LM.Cが完成させた待望のニューアルバム『FUTURE SENSATION』。未知数にして無限大の可能性を秘めた最新作の魅力に迫る!
2016年12月にリリースされた前作アルバム『VEDA』から1年8ヵ月。LM.Cのニューアルバム『FUTURE SENSATION』が遂にリリースとなる。横尾忠則氏による鮮烈なアートワーク、突然の先行配信でファンを歓喜させたリード曲「ChainDreamers」と話題に事欠かない1枚だが、本領発揮は再生した瞬間から始まる。ライブを通じて更なる進化を遂げること請け合いの未知数にして無限の可能性を秘めた最新作、そこに収録された全11曲が描き出す音世界をぜひともじっくり聴き込んでいただきたい。このアルバムについて、そしてLM.Cがこの作品と共に見据える“IN FUTURE”(これから)について、二人に話を聞いた。
◆横尾忠則さんとの出会いで閃いた言葉が『FUTURE SENSATION』だった(maya)
――2016年12月のアルバム『VEDA』をリリース以降、約1年半に渡ってライブだけに注力して、いかがでしたか?
maya:幸せでしたね。と言うか違和感はなかったです。早く何かリリースせねばという気持ちもなくて。
Aiji:音源を出さなくて済むなら、正直それもいいかなと。もちろん音源を出すことで見えることもたくさんあるので出すべきだとはと思いますけど、出さなくてもいいなら出さないまま行きたい(笑)。
maya:って、ここレコード会社なんですけどね(笑)。
Aiji:(笑)
――リリースに捕らわれずに、ライブで目の前のファンと向き合うというのは、なかなか贅沢な時間かもしれないですね。
maya:そうですね。今振り返ると、「1曲先に出しておく?」という話もあったんですけど、果たしてそれが今の自分たちに合うのか、先に発表する1曲という形で世に出して幸せなのかを考えた結果、違うかなということでなくなった気がします。
――その間、アルバムのツアー2本(LM.C TOUR 2017「VEDA」、TOUR 2017「The Never-ending Veda」)と「LM.C Club Circuit’18 -Spring-」、さらにピッツバーグや台湾での公演、さらにmayaさんは東京ガールズコレクションにも出演しました。前回のインタビューのときに、「2017年はライブをいっぱいやれたらなと。すごく良いアルバムなので、1回のツアーで終わりというのももったいないと思うし、飽きるまでやってこそ見えるものもあると思う」と言っていましたが、その通りになったんですね。
Aiji:最近はそういうアーティストが増えている気がするし、そういう時代になってもいいと思ってます。自分たちのペースみたいなものを作るべきだと何年も前から思ってきたことを実践できた時期でした。
――Aijiさんは2本のアルバムツアーを経て『VEDA』を聴いたら、すごくバランスがいい作品で、これを越えていくのはハードルが高いと感じたそうですが、今作の制作に取り掛かったのはいつ頃だったんですか?
Aiji:去年の夏ぐらいから曲作りを始めたんです。mayaも俺も、それぞれ『VEDA』の次のアルバムということを意識していたとは思いますけど、相変わらず特に会話もせず(笑)、とにかく今やりたいもの、生まれてくるものの中から何曲か選んで、実際に録り始めてみようというところからスタートしました。まず4曲ぐらいピックアップして、形にしていくところから始めていった感じです。
――Aijiさんの「LM.Cが今やるべき、やっておきたい曲からまずレコーディングして形にしていこう」という言葉が印象的だったのですが、LM.Cが今やるべきもの、やっておきたいものとは何だったんでしょう?
Aiji:そこはもはや嗅覚でしかなくて、今これをやったら面白くなりそうだなというところだけかもしれないですね。『VEDA』以前のアルバムもあまりコンセプトを立てずに作ってきたんですけど、そこにまた戻った感じで、その都度やりたい曲を集めようと。あと、これまではどこか自分たちの黄金比的なところでバランスを取って作っていたんですけど、今回そういう意味ではバランスを取っていません。だから良い意味で歪な作品になったと思います。調整してしまうと、結局自分たちの想像通りの作品にはなるけどそれ以上にはならない気がして。昔はLM.Cのブランディングのために、ある程度のバランスが必要だったのでそれで良かったんですけど、なんとなくそういう時期はもう過ぎたのかなとも思ってます。
――LM.Cは次の段階に入っているぞと。
Aiji:そんな気がしてます。だから実際にトラックダウンをして、マスタリングする時期まで、あえて曲を並べて聴いたりもしなかったんです。今作はこんな色で、こんな形だったんだというのを自分自身でも楽しみたかったし、なるべく完成ギリギリまで全体像を見ないようにしていた部分はありますね。
――全体よりも個を見ていて曲を作っていったんですね。
Aiji:そうです。その集合体がアルバムだし、その点と点が結ばれたアウトラインがアルバムの性格であったり、世界観であればいいかなと。そんな漠然とした捉え方であったり制作だったので、まさに“NEW SENSATION”でしたね(笑)。
――(笑)。今回の壮大なアルバムタイトルからも、作品を作るにあたって大きなテーマがあったのかなと思っていたのですが。
Aiji:完全にタイトルも後付けです。そして、それは今からmayaが話します(笑)。
maya:任せてください! …えーと、何でこれになったんですかね…。
Aiji:(笑)
maya:アルバムはこれまでも、いわゆるコンセプトというものを立てて作っていなくて。前作『VEDA』は、LM.C的には特殊で他と違うものになったんですけど、結果的に仏教がモチーフで、このタイトルになってコンセプトが生まれた感じなんです。それ以前は、その時のLM.Cのキャッチコピーという感じでアルバムのタイトルを付けていた気がします。じゃあ今は何なのかなということでいくつかタイトル候補を挙げていたんですけど、どれもピンとこなくて。考えてみると、最初からこれだ!と思ったのは『STRONG POP』(2012年リリース)ぐらいでしたね。
――今回はいかがでしたか?
maya:制作しているときは常にスローガンになるような言葉がないかを探して、最終的にこれで言い当てているなというもので落ち着いたりするんです。今回もいくつか候補を挙げたんですけど、ある種どれも似合いそうで。だけどもっと可能性がありそうだなと考えていたときに、今回のジャケットを担当してもらった横尾忠則さんとの出会いがあり、アトリエにお邪魔したんです。そこで閃いた言葉が『FUTURE SENSATION』だったんですよ。その時の会話やアトリエの空気、並んでいる横尾さんの作品を見て閃いたので、“FUTURE”はこういう気持ちでとか、“SENSATION”はこの曲のこういう感情からということは一切ないです。もっと新たな出会いというか。
――横尾さんのアトリエは、強い刺激を受ける空間だったんですね。
maya:そうですね。横尾さんが持っているパワーが大きいのかな。「部屋が全部鏡張りでした!」みたいな奇抜さがあるわけじゃないし、すごく自然なんですけど、振り返るとお会いしたその瞬間に、思っていた以上に刺激を受けていたんだなと思いますね。「FUTURE SENSATION」という言葉が閃いた瞬間は、それをアルバムのタイトルにしたいと思ったわけではなくて、曲のタイトルなのか、歌詞に使える言葉なのかもわからなかったんです。でも、結果的にこうなって良かったと思います。こういう使われ方が一番似合うし、閃きが一番報われる結果になりましたから。
――それにしても、どういういきさつで横尾さんにジャケットをお願いすることになったんですか?
Aiji:俺の知り合いに歳の離れた友達のようなお医者様がいまして、以前その人に『VEDA』の完全生産限定盤をプレゼントしたんです。その人はそれを自分の研究室に飾ってくれていたんですけど、横尾さんもその先生とお友達で、研究室に遊びに来たときに『VEDA』のジャケットをとにかく気に入って持って帰られたそうなんです。自分にとって横尾さんはレジェンド枠の偉大なアーティストなので、「あの横尾忠則さんが!? そんなすごいことがあるんだな…」という気分だったんですけど、これまで曲と同じぐらいの気持ちでジャケットも作ってきていたから単純に嬉しくて。先生にポロッと「横尾さん、描いてくれませんかね」と言ったらご本人に聞いてくれて、「大丈夫そうだったよ!」と言われたので連絡したのが始まりです。
――予想外の経緯でした。
Aiji:そうですよね(笑)。でも、ジャケットを気に入って持って帰られたというところから、何らかのシンパシーを感じてもらえたんだろうと思います。俺は元々、横尾さんがグラフィックをやっていた時代の感性がすごく好きだったんですよ。でも、あんな世界的に見てもすごい人に頼んでもやってもらえないだろうと普通は思うじゃないですか。だから、むしろこれまでお願いする選択肢になかったんです。例えが妥当かわかりませんが、イチローとキャッチボールしてもらうようなものですからね(笑)。
――お二人に会った後、横尾さんがTwitterで「今日は自分の年令の半分の若いミュージシャンが来て、エネルギーを充電してくれた」「若い世代のアーティストが、後期高齢者を必要としてくれるなんて尊敬しちゃうよなあ」と呟いているのを見て、すごく良い方だと思っていたんです。
Aiji:本当にすごく気さくで素敵な方なんですよ。普通に楽しいお話をたくさんさせてもらいました。俺が、もしグラフィック・デザイナーだったら、横尾さんは本当の意味で雲の上の人だったんだろうし、こういうアプローチはまずできなかったと思います。
maya:私も横尾さんのことは存じ上げていましたし、Twitterも結構前から見ていたんです。前はTwitterのアイコンの顔が逆さか横向きだったんですよ。最初にそれを見て、「本当に変わった人だな」と思ったし、発している言葉も不思議だなと思っていました。でもやっぱり、横尾さん絡みになると、周りのデザイナーの様子がおかしかったですね(笑)。
Aiji:アートに直結した仕事をしている人ほどそうだよね(笑)。
――mayaさんくらいフラットな気持ちで行くほうが、良かったのかもしれませんね。
maya:そうかもしれないです。
――ジャケットのデザインについて、お二人から事前に伝えたことはあったんですか?
Aiji:当時何となく決まっていた仮タイトル二つと、楽曲を5~6曲渡して、一応衣装が赤ということは決まっていたので「テーマカラーは、赤です」と伝えました。
――そのわずかなキーワードで、このジャケットが出来上がったんですね。
Aiji:もうブッ飛びすぎていて、良い悪いの世界ではないですよね。唯一無二で、絶対的なものというか。到達している人の作品て、こういうことだよなと。本当にいい出会いだったと思います。
◆どう受け止められても、LM.Cの最新アルバムだし、自信を持ってお届けできる(Aiji)
――7月10日に「ChainDreamers」が先行配信されましたが、突然のことでファンの方々も驚いたと思います。
Aiji:反応もすごく良かったんですよ。デジタル配信ならではの手法と言うか、ああいう新曲の発表は盤で出していたらあり得ないじゃないですか。ある日突然、一番欲しかったものが手元にやってくる…そういうのは今の時代ならではだし、こういう取材を受けて、それを見聞きしてから聴くのとは感覚も違うと思うし。本当に先入観なしで聴く、まっさらな新曲に、ある意味すごくピュアで直感的な感想を言ってもらえたのは良かったですね。
――LM.Cらしいサプライズでした。ところで、前作アルバムは「The BUDDHA」から始まる作品にしようと決めたことでアルバムの全体図が見えたと言っていましたが、今作の全体図が決まったのはどの段階だったんですか?
Aiji:曲順のシミュレーションをした日だと思います。本当にそれまで何も考えてなかったんですけど、ミックスが始まって、やっぱりある程度の方向性というか、曲の並びが見えていたほうが精度が上がるので、その辺りから曲順にも真剣に向き合い始めましたね。
――曲順のパターンの候補はいくつもあったんですか?
Aiji:mayaとメールでやり取りしている中で、「ChainDreamers」から始まって「Dystopia」で終わる、という共通認識だけを持って、それぞれが思う曲順を出したんです。そうしたら、ほとんど同じだったんですよ。
――これだけの曲順の案がほぼ同じというのはすごいですね。それにしても、今回のアルバムは、リード曲「ChainDreamers」の印象もあって、すごくハッピーで前向きなアルバムなのかと思っていたのですが、結末がユートピア(理想郷)の真逆の社会を表す「Dystopia」というのが意外でした。
maya:これは真理ですね。真理がここにあります。Truthがね。
Aiji:今、何で言い直したの(笑)?
maya:心理と間違えないようにと思って(笑)。12年間、ヴォーカルというポジションでやっていますけど、ライブの曲順も、アルバムの曲順も、歌詞がこうだからというより、曲の流れでイメージするほうが多いかもしれないです。
――そうなんですね。今回いろんな曲の歌詞に散見された〈闇〉という歌詞も気になっていたのですが。
maya:闇深かったですか(笑)?
――ええ、とても(笑)。なので、最初は明るい未来を念頭に置いて聴いていたんですが、根底にあるのは、ただポジティブに明るいということではないのかなと。
maya:そう言われて思うのが、ずっと以前から一貫して、前向きでも後ろ向きでもない虚しさと言うか、全ての人類の人生と並行して流れているであろう虚無感みたいなものがあるんですよ。前作から最も色濃く引き継がれているのはそこだと思うんです。そこから来るフレーズと言うか、単語としての闇だと思うんですよね。単語としてプラスかマイナスかで言うと、虚無も闇もマイナスっぽいですけど、暗闇は真理だと思っていて。虚無感も暗闇も、そもそも真理も、絶対的なものという意味で使っているのかも。だから1曲目の「In Future, New Sensation」で〈暗闇よりも純粋なモノ〉と表現しているんです。本当の闇ですね。多分ネガティブなものを連想させる闇は、純粋な闇ではないんですよ。もっと本当の闇は何物でもないと言うか、〈光よりも素早い暗闇〉なんです。
――「Nothing」の歌詞ですね。
maya:そこには、残念ながらプラスもマイナスもない。そういう象徴として自然と出てきているのかなという気がします。そうは言いつつ、やっぱりその言葉に不穏な空気を纏わせたくないから、1曲目の「In Future, New Sensation」でそれを説明しているのかなという気がしますね。
――この曲には驚かされました。
maya:ですよね。私も聴いてビックリしました(笑)。元々、こういうのを入れてくれというオーダーではなかったんですけど、閃いたんです。作詞を一通り終えて、じゃあ1曲目をどうしようという時にサラサラと生まれてきた感じで。言葉としては最後にのせたんですけど、今思うと『FUTURE SENSATION』って何ぞや、ということをあえて言葉にしたかったのかなと。タイトルに理由もないし、説明もできませんという曖昧なことを、どう説明できないのか言葉にしているのかなという感じです。「In Future, New Sensation」はアルバムの入り口であり、一聴すると言葉が並んでいるという意味で、説明しているようで何も説明できていないと言うか。でもその感覚をあえて言葉にすると、こういうことだということを残しておきたかったのかもしれないです。…多分ね(笑)。
――(笑)。そして、そんな1曲目から相変わらず秀逸な歌詞が揃っています。
maya:本当にそうなんですよねぇ。今回も「できたな!」と思いました(笑)。
――mayaさんの歌詞は、ハッとさせられる言葉が多いですよね。
Aiji:そうそう。その角度だったの?みたいな。
maya:そうなんですよね! 私もそう思います! どのフレーズというよりも、そういうものを待っていた感じがします。作詞という部分だと、テクニックで何となく言葉を置いていくことはできるんだけど、例えばイントロのフレーズとか、サビに入るキメとか、「お、これは!?」という何かが、多分どのミュージシャンにもあるんです。ある種それは、自分を超えてしまっていると言うか。超える高さは色々あるんですけど、言葉はそれを待っている感じはありました。時間はかかるけど、待ってさえいればいつか…という。例えると、鹿威しと一緒です。いつか鳴るじゃないですか。それがちゃんと見ているときに鳴るか、よそ見しているときかわからないから常にチャンネルを合わせておくと言うか、ハッとするのをずっと待っているという感覚です。
――なるほど。それにしても鹿威しが例えに出てくるとは。
maya:もうちょっと素敵な何かあると思うんですけど、今はそれしか浮かばなかった(笑)。
――Aijiさんは今回の制作の中で印象に残っている曲はありますか?
Aiji:“調”で言うとマイナーな曲が多いので、その中にも光るものがあればいいなと思って作っていたんです。そういう意味では全曲に渡ってトーンが暗くなるのだけは避けたかったんですけど、仕上がってみれば一つひとつがちゃんと輝いているし、よくできているなという感じがします。でも挙げるとしたらやっぱり1曲目の「In Future, New Sensation」ですね。この曲は元々インストとして作っていたんですけど、歌詞がのることによってインストじゃなくなっちゃって(笑)。でも衝撃的な1曲に仕上がったなと思うし、プロローグとしてもこれ以上のものはない。作っている最中、どういうアルバムになるのか本当にわからなかったんですけど、この曲のお陰で腑に落ちたと言う感覚はありました。ただ、当時はライブのオープニングSEとしても使おうと思って作っていたのですが、きっと演奏することになるんでしょうね(笑)。
――(笑)。いつも作曲やレコーディングは辛いことが多いそうですが、今回は楽しかったそうですね。
Aiji:俺も、基本的には自分を超えている要素を必ず一つは盛り込みたいんです。この一つがあることで自分的にはOKみたいなものが結構大事で。それを必ずどの曲にも見付けることが大変だし、辛いんだと思うんです。でもそういった意味では今回の曲たちは全曲自信を持ってお届けできるものになっています。
――Aijiさんは、20年前よりもギターのフレーズの歌心に100倍ぐらい厳しくなっているそうですが、それも自分を超えている要素の一つになるんでしょうか。
Aiji:そうですね。ちょっとしたチョーキング一発でも自分のジャッジが厳しくなっていると思うし、昔より録りに時間がかかっている気もします。普通、職人てどんどんクオリティが高くなって時間も短縮できるようになるんだと思うんです。アレンジする作業や時間は確実に減っているけど、録音には時間がかかるようになってきてしまって(笑)。もちろん時間をかけずにサッといく部分もあるんだけど、やっぱりこだわり出すと合格ラインをすごく高いところに設定しがちなんですよね。でも、そのお陰で自分を超えることができるというか。それが、録りの時間が長くなってる理由の一つなのかなとも思います。自分の曲もそうですけど、mayaの曲だと余計に、閃きとか、そういうものをなるべくキャッチしたいという気持ちはありますね。
――先ほどの鹿威しの例えに似たものをAijiさんも持っているんですね。
Aiji:そうなんだと思います。平たく言えば録音するという作業なんだけど、ただ録音するだけじゃなくて、そこに奇跡みたいなものが入っていたほうが自分も楽しめる。そういう意味でも、今回のアルバムはあらゆるところで神がかっていた気がします。
――LM.Cは今後も一つの作品を長い期間かけてライブで掘り下げていくという流れを定着させていくのでしょうか?
Aiji:定着させたいなとは思います。一つのアルバムを出して、1回のツアーで終わるなんてもったいなさすぎるし、そこで終わりにしたくない。ライブで成長していく部分もたくさんあるし、そこで感じるものとか、また次にやりたいものが見えてくることもあるので。自分たちは、やっぱりライブに比重があると言うか、その中で曲が育っているなとすごく感じましたから。
――一つの作品に対してツアーを複数回やるアーティストは、なかなか珍しいですね。
Aiji:海外だったらワールドツアーを2年くらいかけて回ったりしているじゃないですか。日本のスピード感が異常に早すぎるんですよね。日本の90年代の音楽業界バブル、多分そういうモノが何かを狂わせたんだと思います。
――確かに一つの作品の消費期間が短いですよね。
Aiji:そうそう。そうするとどうしてもすり減るので。もちろん、そういうスピード感が合っている人もいると思うんですけどね。でもみんながそうする様な時代はもう終わったと思うし、アーティストそれぞれのペースでやっていく時代だと思うんですよ。自分達の歩幅を見付けて、勇気を持ってそこにアジャストさせていく事も、アーティストには必要な事なんじゃないかなと思います。
――このアルバムが今後たくさんのライブの中でどう変化していくのか、未知数ですね。
Aiji:そうなんですよ。昔だとどの曲がどういう風に育ちそうか、結構想像できたんですけど、『VEDA』で2回ツアーを回ったら「Avocado」がすごく化けたんです。それまでのLM.Cでは絶対にそうはならなかったのに、ああいう化け方をするようになったのはファンの力もあると思うし、自分たちとファンとのライブのやり方とか、あり方、捉え方とか、意識の違いもあると思う。だからこのアルバムがどうなっていくのかは全くわからないです。ただ俺達的には良くしようとやっているから、絶対に悪くはならないですけどね。
――その前途も含め、ツアーが待ち遠しいです。そしてLM.Cの“IN FUTURE”(これから)は、どうなっていくんでしょうか?
Aiji:今はまだアルバムが完成したばかりなので、考えたくないですね(笑)。まだ早いなという。1回ツアーに出て、2回目のツアーがある頃に考えます(笑)。でも、このアルバムを作って、今すごく曲を作りたいモードになってきているんですよ。こういう曲をやりたいという意欲ではなくて、何か生み出したいという感じ。前だったらこういうタイミングでは絶対にあり得なかったんですけどね。
――『FUTURE SENSATION』が良い起爆剤になったんですね。
Aiji:そうかもしれないですね。でもどうしようか迷っているんです。その衝動に乗って作るべきか、あえて耐えるべきか…。いや、耐える必要はないんですけどね(笑)。珍しいんですけど、いろんな感覚がネクストフェーズに入ってきている気がします。
――mayaさんはこの作品ができて、新しい衝動が芽生えたりしていますか?
maya:そこはまだちょっと秘密にしておきたいです(笑)。今はとにかくできて良かったなと。完成したという意味でもそうだし、発売にどうやら間に合いそうだということもそうだし。でもやっぱり実態が掴めないんですよね。こうやって話していく中で、色々辻褄が合ってきて、何か色々ミラクルが起きているような部分を見付けると、ある種自分たちの中で完成してきちゃうんですけど、曲が揃って通して聴いても、これだけ実態がよくわからないアルバムは初めてな気がします。そういうものができたというのは、経験として大きい気がしますね。それぞれの楽曲はもちろんすでに愛せているし、並びもこれでいいと思っているし、タイトルも素敵だと思えるんですけど、不思議なアルバムだなと思います。
――謎多きアルバムなんですね。
maya:そうですね。これができた経験が次に活きるんだろうなと。次のライブや作品によってこの『FUTURE SENSATION』の見え方が確実に変わる、そういう作品です。例えば前作の『VEDA』は、『FUTURE SENSATION』ができてもそんなに変わらない。だけどこのアルバムは、この先の過ごし方で変わりそうで。12年活動してくると、こういう作品が生まれてくるんだなと。こんな気持ちになれる内容や、ジャケットを担当してもらった横尾さんとの出会いも含め、色々なことが起きてくるんだと思うと楽しいです。
――今日は頭から、“幸せ”や“楽しい”というポジティブなワードが出てきますね(笑)。
Aiji:小学生の夏休みの日記みたいな(笑)。
maya:「楽しかったです!」「頑張りました!」みたいな(笑)。
――この作品と共にLM.Cがどこに向かっていくのか、その時この作品がどう変化するのかとても楽しみです。
Aiji:正に未知数な作品なんですけど、自分でも相当聴き込んで、大分整理できてきたので、あとはどうやって皆さんに響くのか、その反応すらも楽しめたらいいなと思っています。こっちは準備ができているので、あとはこういう作品をどう受け止められても、LM.Cの最新アルバムだし、自信を持ってお届けできるという感じですね。
(文・後藤るつ子)
LM.C
<プロフィール>
maya(Vo)とAiji(G)によるミクスチャーユニット。2006年10月に、マキシ盤『「Trailers【Gold】」』『「Trailers【Silver】」』を同時発売しデビュー。海外ツアーや武道館公演など精力的に活動を続け、2014年2月にアルバム『PERFECT FANTASY』をリリース。2016年12月21日リリースのアルバム『VEDA』を掲げ、2017年2月からLM.C TOUR2017「VEDA」を、9月からはTOUR 2017「The Never-ending Veda」を開催した。2018年8月25日HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3を皮切りに、ニューアルバム『FUTURE SENSATION』を掲げたLM.C TOUR 2018 「IN FUTURE」をスタートさせる。
■オフィシャルサイト
http://www.lovely-mocochang.com
【リリース情報】
『FUTURE SENSATION』
2018年8月8日(水)発売
(CJ Victor)
【収録曲】
[CD]※完全生産限定盤、通常盤共通
01. In Future, New Sensation
02. ChainDreamers
03. Virtual Quest
04. Intersection
05. Hangover
06. Hollow Hotel
07. Door!
08. Nothing
09. Twinkle Star
10. Brainwashing
11. Dystopia
[CD2] FUTURE SENSATION -Instrumental Tracks-
01. In Future, New Sensation -Instrumental-
02. ChainDreamers -Instrumental-
03. Virtual Quest -Instrumental-
04. Intersection -Instrumental-
05. Hangover -Instrumental-
06. Hollow Hotel -Instrumental-
07. Door! -Instrumental-
08. Nothing -Instrumental-
09. Twinkle Star -Instrumental-
10. Brainwashing -Instrumental-
11. Dystopia -Instrumental-
[DVD]
・[ChainDreamers] Music Video
・Maboroshi The Movie -Ver. Future-
[写真集]「PICTURE SENSATION」
【ライブ情報】
●LM.C TOUR 2018 「IN FUTURE」
8月25日(土)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
8月26日(日)柏PALOOZA
9月1日(土)名古屋Electric Lady Land
9月2日(日)ESAKA MUSE
9月4日(火)岡山IMAGE
9月6日(木)福岡DRUM Be-1
9月8日(土)奈良NEVER LAND
9月15日(土)HEAVEN’S ROCK 宇都宮VJ-2
9月16日(日)水戸LIGHT HOUSE
9月22日(土)長野CLUB JUNK BOX
9月26日(水)仙台CLUB JUNK BOX
9月27日(木)青森クォーター
9月29日(土)札幌cube garden
9月30日(日)札幌cube garden
10月4日(木)TSUTAYA O-WEST -Team☆LM.C Limited-
10月6日(土)TSUTAYA O-EAST
●LM.C TOUR 2018 「IN FUTURE」香港公演
10月14日(日)TTN_ /