LM.Cの軌跡を集めたカップリング集『B-Side BEST!!』がついにリリースされた。7年という時間の中で紡がれた、彼らの歴史と名曲の数々に迫る!
2006年にリリースされたシングル『☆Rock the LM.C☆』から最新シングル『DOUBLE DRAGON』までのカップリング曲を集めたベストアルバム、その名も『B-Side BEST!!』がリリースされた。ベストアルバムはLM.Cにとって2011年10月にリリースされた『☆★Best the LM.C★☆2006-2011 SINGLES』に続いて2枚目。2006年からの彼らの軌跡、そして彼らの今を詰め込んだ1枚は聴き応え十分。この作品とともにLM.Cの歴史を紐解く二人のインタビュー、ご堪能あれ!
◆適当にやってきたら愛せないですから(maya)
――1年半前に出したベストアルバム『☆★Best the LM.C★☆2006-2011 SINGLES』(以下、シングルス)のタイトルは☆も付いていてキラキラポップでしたが、今回は実にシンプルかつ明瞭なタイトルですね。
maya:当時より大人になりましたからね。
Aiji:☆は付けるもんじゃなくて、出していくもんだなと。……すいません、今のなしで。
maya:(笑)。1年半前に出したシングルスのタイトルの☆は、それまでの流れを汲んでいて、デビューシングルの『☆Rock the LM.C☆』のタイトルの☆に由来しているんです。そこから1年半経って、今はそれまでとは違うところにいる気がするし、違う時間が経ったんだなって思いましたね。意図して変化しているというより、その瞬間に自分たちが一番素敵だなと思う形にしたらこうなった感じです。何かが大きく変わったっていうよりも小さな変化を積み重ねてきた。それを踏まえてできたこのアルバムが最新のLM.Cです。
――そんな最新作の1曲目には、未発表新曲「激FANFARE」が収録されていますよね。前回のシングルスでは未発表新曲が最後に収録されていましたが、ここには何か意図はあるのでしょうか。
maya:前回も今回も収録曲はリリース順に並んでいるんですが、前回はその最後に新曲を入れるのが似合ったし、今回は最初が似合ったんです。一番良いところに素敵な形に収めるっていうのがいいなと思ったので。
――素敵な形で収まった2006年から2013年までの作品を通して聴いてみて、率直にどういう感想を持ちましたか?
Aiji:よくできたアルバムだなと思いました。今聴いても古い感じがしないし、完成度としても満足してます。
――LM.CのB面は、かなりの名曲揃いですしね。
Aiji:そうなんですよ! そこ太字でお願いします(笑)。そもそも普段から、これはA面曲、これはB面曲って決めずに作って、その楽曲に一番良い落としどころを見つけようとしているんですけど、自分たち的には、レコーディングに入ろうとしている段階で「どの曲が(A面、B面に)選ばれても良い!」くらいの気持ちでやってるんです。
――LM.Cは先にレコーディングをして、その中から選曲しているんですか?
Aiji:そういうことも多いです。とはいえ、「(選ばれるのは)これじゃないか?」っていうのはそれぞれあると思うんですけど。
――二人の「これじゃないか?」が違ったことはあるんですか?
Aiji:ほぼないですけど、一番決まらなかったのは『DOUBLE DRAGON』の時かな。曲数も5曲くらいあったせいもあって「決まんねーな!」と(笑)。
――結果的にはどちらの思惑通りになったんでしょう?
Aiji:mayaです。その段階で歌詞がちゃんと入っていたんですよね。そうすると、mayaが次にやりたいのはこれなんだろうなと思うし、LM.Cにおけるmayaのストーリーも大事だから、それを出そうと思って。
――なるほど。ところで、mayaさんの歌詞といえば、今回収録されている曲の中にもかなり物語性が高いものが入っていますよね。これだけの情景や心象を“歌詞”として表現するのはすごいと思ったのですが。
maya:才能ですね(キリッ)。
――自分で言い切りましたね?
maya:(笑)。まぁ、才能というか情熱ですね。自分は、歌詞の元になるストーリーやテーマを掲げたら、まずそれについて調べるんですよ。例えば8曲目の「…with VAMPIRE」だったらヴァンパイアについて調べる。
Aiji:取材ハンパないですよ。
maya:今ってなんでも調べられちゃいますから。どこにでも電話できるし。
――電話取材もありなんですか!?
maya:まぁ電話はほとんどありませんけどね(笑)。自分は情熱がないと全然何もできないんですけど、歌詞で我ながらよくできてるなと思うのは情熱で書いてるとこかな。それを、才能って言い切りたいけど、情熱ってことで。
Aiji:maya、才能って言い切っていかない方が良いね。ちょっと感じ悪いからね(笑)。情熱を持てる才能ってことかな。
maya:そうっすね(笑)。例えば、今この瞬間にその時の情熱があるかっていうと疑問なんですよ。だからこそ、歌詞を書いている時の自分にすごいパワーを感じる。何のために調べているかというと、必要だし、結果として繋がっているからなんですけど、傍から見たら時間もかかるし大変な作業だと思います。知識は増えるけど、削っていく部分もすごくいっぱいあるから、言い方を変えれば無駄かもしれないし。でも、理解しておかないと、ずっと歌っていきたいメッセージにはならないと思うので。
――失礼を承知で言いますが…すごく意外でした。
Aiji:ですよね(笑)。大体mayaなんてチャラく見えるじゃないですか。
maya:そう見られてて良いんです! それを知らずとも曲を聴いて何か伝わると思いますから。
――だからこそ、あれだけ表現力のある歌詞になるんですね。そんな歌詞の中で一番時間がかかったのはどれでしょう?
Aiji:「maple leaf」じゃない? あの頃結構やばかったよ。
maya:そうですね。「Shibuya Cantabile」も結構かかったけど、加速しだしてからは早かったんですね。「maple leaf」は「もうなんもねーな!」って感じだったんですよ(笑)。
Aiji:時期も時期だったんだよね。何年かやってきて空っぽな時期だったし。空っぽな俺の歌、みたいな(笑)。
maya:空っぽなオレがここに詰まってます(笑)。でもそれが言葉になっていて、そういう時の自分たちの物語がここに入ってるんですよ。歌詞に目を通してもらったらわかるんじゃないかな。全部結果オーライですけど、真剣に向き合っているとは思います。適当にやってきたら愛せないですから。
◆このアルバムはすごくシームレスな1枚ってことです(Aiji)
――名曲たちは、そういう裏打ちがあって生まれるんですね。
maya:うん。簡単にポンポンできるもんじゃないです。だからこそ楽しい。
Aiji:ポンポンできたに越したことはないですけどね、財産としては(笑)。
maya:同じように愛せるならその方が楽ですけど、それだけではないというか。とはいえ、辛かった思い出もないですけどね。
Aiji:…俺、辛かった思い出しかないけど。
maya:あれ(笑)!?
――なんでしょう、この温度差は(笑)。
Aiji:温度差出しちゃいましたね(笑)。作曲は毎回辛いです。人のインタビューを読むと、5人に1人くらいのミュージシャンが「曲の作り方を忘れる」って言っていてすごく共感するんですよね。曲のアウトプットの仕方の回路みたいなものがあるんですけど、それがうまく思い出せなくて構築の仕方を忘れちゃうんです。
――Aijiさんでもそういうことがあるんですね。
Aiji:人が聴いてくれるような環境になってからずっとですね。何かを表現するのに辛くないアーティストなんていないんで、mayaもきっと辛いはずなんです。でも、それを楽しいって方向にうまく変換していっているんだと思うんですよ。俺はひたすら溜め込んで負の連鎖の中で作ってるけど(笑)。
――その負のスパイラルからある瞬間スパーンと抜けるわけですか。
Aiji:そうそう。その回路が結びつくと連続的に作れるんですけど、そのジョイントの仕方が思い出せずに無駄な時間を過ごすことも多々あります。そういうインタビュー記事を読んでいて、先輩だと「ですよね!」って思うし、後輩だと「だろ!」って思いますからね。誰も簡単になんてやってないなと。
――その辛さを「楽しい」に変換できるmayaさんはすごいですね。
Aiji:羨ましいです。
maya:楽しんだ方が良いじゃないすか(笑)。
Aiji:まぁそうなんだけどね。俺はレコーディングでようやく楽しくなってきます。あとは構築するだけじゃないですか。元を作る段階がもう…。メロディはすぐできるんですけど、人に聴かせるためにある程度アレンジもしないといけないのが、さらにすっげー辛いです。
――Aijiさんは作り込んでから人に聴かせるタイプなんですね。
Aiji:うちは二人とも100%作り込んできますよ。最後までアレンジが全然変わらない曲もあるし。
maya:その方がこういうことがやりたいんだなって伝わりやすいし、早いですしね。
Aiji:そこからの基準はそれより良くなるか悪くなるかしかないから、デモより良いものになればいい。ハードルは高いですけど。
――シンプルなジャッジ故にハードルが高いです。それにしても、LM.Cは個人作業が多いんですね。
Aiji:そうなんです。LM.Cは基本プリプロがないんで。デモがあがって選曲したらそこからいきなり本チャンです。本チャンまでは、ひたすらデータのやりとり。
――意外です!
Aiji:だって、こいつを家に呼びたくないんですよね。水とかこぼすし。
maya:あとはずっとAijiさんちの猫と遊んでます。
Aiji:水こぼして拭きもしないで写メとってますからね。何しに来てるんだかよくわかんないんで、データと文章のやり取りの方が的確かなと。
――…それはデータのやり取りのみというデジタルかつビジネスライクなやりとりになっても致し方ない。
二人:(笑)
Aiji:言うなればこのアルバムはすごくシームレスな1枚ってことですよね。阿吽の呼吸というかね。
――すごくいい言葉をいただきました。