KOHTA

始まりにふさわしい曲

1曲目「ARRIVAL」は渋さがあるロックナンバーかつトリッキーさもあって、ちょっと変わっている、サビがないような曲ですよね。

KOHTA:この曲は元々「TERMINAL 00」と付けていたんです。ライブのSEで部分的に使ったり、インストゥルメンタルでやっていた曲で。そこに今回ラップ的なものを入れて、ちょっと洋楽っぽい作りを試してみました。割と僕の声の音色も変えて、ラップは高蝶君がやっているんですけど、そういうミクスチャーな洋楽のイメージでアレンジしたらどうかなと、インストゥルメンタルから歌まで派生した曲です。なので、確かにサビっていう感じはないですね。まぁ、あえて言うなら英詞の部分がサビに当たるのかなと。

今まで以上にベーシストとヴォーカリストの両面を1曲で感じられる曲だなと思って。1曲目がこの曲だからこそ、雰囲気的に前作との違いも出るんじゃないかと思いました。

KOHTA:ありがとうございます。まさにそういう目論見がありました(笑)。そういう意味で、始まりにふさわしいかなと。新しい表現を冒頭で感じていただけると思います。

インスト曲「01」「02」はもうお馴染みの曲という感じですね。改めて音源で聴いて、ベースのフレーズが細かいなと。

KOHTA:僕の好みですね(笑)。ライブの時は多少変わっている部分もあるので、ライブアレンジもぜひ楽しんでいただければなと思います。ちなみに、「06」は一番ライブ映えする曲かなと。あれだけシーケンスもクリックもなしで、割とアナログな感じなので。

なるほど。「TRANSIT」はAメロの一定に続いていくリフが印象的です。6月のライブで初披露したということで、感触はいかがでしたか?

KOHTA:これも今までのライブの流れにない、割と淡々と進んでいく感じですね。Aメロは弾きながら歌うのがすっごく難しいんですよ。ベースは休符が入るので。ライブでは物理的に無理なので、変えちゃうんですけど。だから、ライブアレンジで変わっている箇所もちょいちょいあるんですよね。歌に専念して弾かない部分もあったりします。今回、特に「DEPARTURE」は弾きながら歌えないけど、音源的にいいじゃんって思うものを詰め込んで、もう音源とライブを分けて考えました。基本、僕はリンクしたいんですけど、歌うことを前提に考えちゃうと、ベースフレーズがつまんなくなるので。

絶対難しいだろうなと思いながら聴いていました(笑)。

KOHTA:「DEPARTURE」は曲も割とストレートでシンプルなので、ベースフレーズは難解にしてやろうかなと思って結構詰め込んだんですけど、これをライブで弾くのは無理だと思って、作品として良いものができるように割り切って考えましたね。「LOST and FOUND」も結構難しいことをやっているんですけど。

「DEPARTURE」は歌もサビの難易度が高そうだなと思いました。

KOHTA:あれ、ファルセットを使わなかったんですよ。最初使おうかなと思ったんですけど、ちょっとベタだなと思って、なんとか出る範囲で頑張って出しています。この曲は言葉のはまりが最初良くなかったので、レコーディングしながらちょいちょい変えていて、そこが一番悩みましたね。特にサビとか、思い描いていた言葉とメロディの噛み合わせが悪い箇所がいくつかあって。この言葉にしたいけど、意味がわからなくなるなとか、そこら辺は高蝶君と二人で試行錯誤しましたね。

最後の1行は他のサビの部分より力強く歌っていて、未来に向かっていく雰囲気を感じられるなと。

KOHTA:さすがです。月並みになっちゃいますけど、そういうことなんですよね。いつか会えるし、いつか良いことはあるから、頑張って生きていきましょうと。そういういろんな願いが込められています。

ちなみに、この曲に〈約束した場所〉を入れたのは意識的なものですか?

KOHTA:それも言われるかなと思っていました(笑)。そういう解釈をしていただくのもありだし、裏読みしていただいてもいいんですけど、「DEPARTURE」はとにかく前向きにというのがテーマです。なので、曲順としても絶対最後に持ってきたかったし。その辺をポジティブに捉えていただければ、より楽しんでいただけるかと思います。

KOHTAさんの中では最もキャッチーな曲ではないでしょうか。

KOHTA:結構キャッチーですね。だからこそ、ベースフレーズはめちゃくちゃ悩んで。歌いながらだし、最初は色々葛藤しました。でも、シンプルになり過ぎるのは嫌だなとBメロやサビとか詰め込み過ぎて。これはこれで音源だからいいかなと。もう弾いている途中で、これは歌いながら弾くのは無理だとわかっていました(笑)。

では、ベースと歌のせめぎ合いの中で、一番葛藤したのは「DEPARTURE」ですか?

KOHTA:はい。でも、メロディや世界観を一番大事にしたのもこの曲です。となると、こだわるのは僕のフレーズなので、そこでただキャッチーなだけに聴こえない感じにはしたかったですね。僕のこの見た目でキャッチーというのも、ちょっとね(笑)。だから前向き、自分らしさ、そういう風に捉えていただけるとありがたいです。

今の僕を見てください

「LOST and FOUND」はそれこそベース始まりなので、インスト曲「04」からの繋がりが綺麗だなと思って。

KOHTA:元々は「LOST and FOUND」も、JEAN君のアイデアで冒頭にちょっと面白い感じのシーケンスが入っていて、その後にベースだったんです。この曲は自分の中でも変わり種というか、若干コミカルな部分をシニカルに聴かせたいみたいな、そういうのも込みで全体的にシーケンスが強めに入っているんですけど、冒頭のイメージがちょっとコミカル過ぎたので、カットしちゃいました。鍵盤とかで派手に一小節くらい入っていたんですけど、ベース始まりのほうが潔いなと思って、結構ギリギリで形を変えましたね。「04」に関してはガツンと歪ませて、ベースフレーズも淡々と進んでいって、ギターで抑揚とか展開を見せられる曲があってもいいなっていう。

ベースの音色がめちゃくちゃゴリッとしていて、ベース好きの人にはたまらない曲だろうなと思います。

KOHTA:そういう風にしたかったですね。割と同じフレーズなんですけど、グイグイ音で押していく感じです。

ちなみに、「LOST and FOUND」も〈嗚呼〜〉のセクションと英詞部分、どちらがサビなんだろうと思って。

KOHTA:〈嗚呼〜〉がBメロで、英詞のほうがサビ的な扱いですね。

なるほど。これも特にAメロは弾きながら歌うのが難しそうだなと思ったのですが。

KOHTA:難しいです(笑)。休符とか、裏で食って入るフレーズとかは非常に歌いにくいです(笑)。まぁでも、これも慣れていかないとなと。どうしても無理なところはアレンジしますけど。これもやっていて面白いところですよね。完全に歌に寄せちゃうと、どうしてもベースがつまんなくなるので、そこら辺は自分の中でも色々せめぎ合いがあります。

先ほど言っていた変わり種というところで言うと、前作での「KICK OVER」的な立ち位置かなと。「KICK OVER」は曲調としてそれまでのKOHTAさんにはなかったテイスト過ぎて一番表現しにくかったとのことでしたが、「LOST and FOUND」はいかがですか?

KOHTA:これも歌の表現は今作の中で一番難しかったです。冒頭の英詞部分のエフェクトも結構色々悩んだんですよね。高蝶君とJEAN君の意見も聞きつつまとめていきました。でも、アルバムの中のフックには良いのかなと。ある種、一番新しいチャレンジの曲ですよね。「DEPARTURE」は割とストレートな感じではあるので、多分、今までの流れで聴けるかなとは思うし、「TRANSIT」もシンプルと言えばシンプル、「ARRAIVAL」と「LOST and FOUND」はちょっと変わり種という。冒頭と真ん中にフックを利かせたものを持ってこられたなと思います。

「LOST and FOUND」の歌詞も、例えば〈I’LL SEE YOU ON THE OTHER SIDE〉など、気になる言葉があります。

KOHTA:バンドのイメージが強いと、僕が何を言っても基本そういう風に色々考えて捉えちゃう方もいると思うんですよ。その状況下で、やっぱりネガティブな言葉は余計に落としてしまうから、なるべく前向きな言葉で。前向きなことを言ったら言ったで、この先どうなるんだとなるかもしれないですけど、そこを想像してもらうのはいいかなと。先に何が待っているかわからないけど、すごく楽しそうなことが待っているんじゃないかと想像を膨らませていただければありがたいです。どの曲にも共通しているんですけど、あくまで前向き。

そして、「05」は今までにないタイプの落ち着いた、おしゃれな雰囲気です。

KOHTA:元々あった「03」も似たような変拍子でアダルトな感じですけど、「05」はそれとはまた違ったアダルトな感じを挟みたかったですね。

「03」や「05」のようなインスト曲があったり、1曲目がいわゆる歌もの系ではないというのが、作品全体として大人なイメージにさせているんだろうなと。

KOHTA:今だから出せる、自分なりにアダルトなイメージを出したかったですね。実際まさにそういう年齢だし、キャリア的にもそういう部分をちゃんと見せていきたいですよね。ストレートな僕のイメージだからこそ、斬新かなっていうのはあります。今見せられるアダルトな色合いというか、落ち着いた色合いを表現できればなと。

現在のKOHTAさんのヴィジュアルにも合っています。

KOHTA:本当ですか(笑)。そう言っていただけると、ありがたいです。

さて、クリスマスイブに行われるライブ「TERMINAL EVE」は、会場が6月に引き続きKOHTAさんのバンド人生の始まりの地である浦和ナルシスです。半年ぶりのライブとなりますが、全曲披露になるのでしょうか?

KOHTA:いや、むしろアルバムの曲でもやらないのがありますね。ライブ後にサイン会とか催し物があるので、時間的にいくつか削っています。でも、逆にいいかなと思って。アルバムを買っていただければ全て聴けますので(笑)、ライブはライブとして楽しんでいただければと。

ちなみに、フロントに立つことは慣れましたか?

KOHTA:いや、慣れはしないですね(笑)。ただ、やらなきゃという思いは強いです。どうしても生涯バンドマンっていう感覚があるので、多分、一生慣れないと思いますけど。でも、今まで見せてこなかった新しい表現として「今の僕を見てください。今、僕ができることをやります」みたいな感じですね。バンドとは違うけど、自分が先頭に立つという責任はやるたびに強く感じています。

そういえば2年前の取材時に、今後やってみたいこととして、まずは曲を増やして純粋なワンマンをやるということと、対バンもやるかもしれないと話していましたが、結果どちらも実現しましたよね。

KOHTA:まぁそうですね。イベントに呼んでいただくことが重なったりしたし。いつか自分がやっていたバンドと一緒にやれる機会があったら、また面白いだろうなと思います。バンドとしての自分とソロとしての自分を、同じ場所で見せられたら面白いなと。全く予定はないですけど(笑)。

新しい作品ができたので、2025年はソロの活動も活発になっていくのでしょうか?

KOHTA:ライブの本数は増やしたいですね。関東だけじゃなくて、せめて地方の大きい都市に行けたらいいなと。色々スケジュールの都合もありますけど、そういう思いはあります。忘れられないように、定期的にソロのライブを挟みたいなと思っています。

(文・金多賀歩美)

KOHTA

オフィシャルサイト

リリース情報

●New Album『TERMINAL』
2024年12月25日(水)発売
(HEAT)

[CD]HCTM-0002 ¥3,300(税込)

収録曲
  1. ARRIVAL
  2. 01
  3. 02
  4. TRANSIT
  5. 03
  6. 04
  7. LOST and FOUND
  8. 05
  9. 06
  10. DEPARTURE

ライブ情報

●KOHTA ONEMAN LIVE「TERMINAL EVE」
12月24日(火)浦和ナルシス