◆50歳というのは一つのボーダーライン
――現在まだ他の楽曲の制作中ということで。
清春:いやぁ~かっこいいですよ。残りの曲は全部未公開の新曲です。その中でも3曲は超最近作った曲ですね。ツアーでは全部やりますよ。それにしても、時間が無かった。ロスなんて行ってる場合じゃなかったですね。(※MVを撮影)
――このご時世で海外撮影なんて、なかなかないですよね。
清春:本当ですよね。久しぶりだったな。今回はヴィジュアルも含めて色々と素敵なので。いつも素敵なつもりなんですけど、大人の中の純真さというか…音も詞も、ヴィジュアルもそうであったらいいなと。このスタイルはあと何年かしかできないからさ。
――え?
清春:永遠ではないだろうというのを、あらかじめ言っているんです。音楽は永遠に残るかもしれないけど、僕が実動して人の前に存在し続けるというのは、できる限り長くはやりたいんだけどいずれ朽ち果てる。アルバムもツアーもこの一回一回を大切にしなきゃいけない段階に入ってきているんだよね。自分の中では50歳というのは一つのボーダーラインにしていて。無理してやらなくてもいいんじゃないかと思うし、チャレンジしたい部分もあるし、先輩たちも頑張っているので怠けてられないというのもあるんですけど。その時になれば歌いたいこと、やりたい音楽があるんでしょうけど、今はまだ想像できないんだよね。ただ、25歳でデビューして50歳までやれば、ファンの人達への責任は多少果たせるのかなと思うんです。
――43歳の時の清春さんが「もし50代になった時に、このジャンルでこの環境の中でやってたとしたら、それも立派だとは思う」と言っていました。
清春:街でおじいちゃんおばあちゃんを見ると、今は色々と感じるんだよね。自分の父母を投影しているんじゃなくて、自分がいずれなる姿という。その時に自分は幸せなのかなぁって。ミュージシャンの中での自分じゃなくて、世の中での自分…最期をどう終えるべきかというのを考えますよね。
――「イエスタデイ」(アルバム『UNDER THE SUN』収録)の歌詞は「長くやっているミュージシャンの憂鬱」を綴ったものでしたよね。
清春:それも超えて、今作はラブソングが多いんですよ。生命、時間の終わりを救うのは精神的な部分でしかないから、その支えというのは自分が受ける愛でしかないんですよね。まだ余裕があるから人生を振り返るんだと思うんですよ。いざカウントダウンをはっきり言われた時には、頼るもの、すがるものが大切になっちゃうんじゃないのかなと。
――最期に思うのは、きっと大切な人のことなのかなと思いますね。
清春:そうだね。それが生きている人なのか、天国にいる人なのかというのもあるんだけど、自分がやばい時にはたぶん生きている人のことを思う気がするんだよね。
◆ミュージシャンとしての一番の役割
――さて、恒例の年末公演を含めた全国ツアーが12月23日からスタートします。
清春:もう超長時間はやらない(笑)。年末とか年々長くなって2013年は69曲9時間ひとりでやりましたけど。あれ奇跡だと思いますよ。35歳から45歳まであの長時間ライブをよくやったなと。僕の場合、ライブの本数も長さも他の比じゃないけど、それはファンの人達だけが知っていればいいことだと思って。最近、色々なお店のオーナーでもあるので結構忙しいんですよね。今、身の回りで、僕から発生するものが色々とあるんです。
――それは、これまでの清春さんがあるからこそ生まれているものだと思います。
清春:遠いところまで来ちゃったなと。こないだlynch.とツーマンをやったけど、葉月(Vo)が今の年齢で描いているビジョンって、なんか懐かしいわけよ。打ち上げに後輩のバンドマンの子たちがいて、やっぱりみんな、あそこでライブをやりたいとか、他のバンドの状況はどうだとかっていう話をしてるんだけど、なんか可愛らしいよ。もう俺だとそういうのないし。Zeppできますとか、武道館できますとか…そういうのはいずれなくなっていくものなんだよ…とも敢えて言わないですけど。「良かったな、頑張れよ」しか言わない。それくらい意識の距離感はあって、僕も会話するのに必死なんですけど(笑)。
――以前もそのようなお話が出ていて、「大きい会場で1日やってもそこで終わりじゃなくてその先がある。10年くらいしたら、やったことすら世間は忘れちゃってるよ」と。
清春:目標を持ってそれをクリアしていくという時期が過ぎた時、何が残っているかですよね。売れるための音楽なのか、自分が信じられる音楽、ファンの人が信じられる音楽、一生歌っていける音楽があるのか、鳴らしている理由があるのかということにしかならないのよ。だから人が見たいと思うわけで、そういうのがミュージシャンとして美しいし、本当の役割なんじゃないのかなと思いますね。
――なるほど。
清春:最近、ファンがバンドを育てていくみたいな風潮があるじゃない? 僕は未だに真っ向から否定しますね。僕の若い時は、僕がファンを選ぶっていう感覚だったので。当時よく言ってたのが、100人中99人ファンじゃなくてもいい、俺は成長し続けるって。売れなくてもいいとさえ言ってた。でも今はむしろ「売れたい! あそこでやりたい!」っていう意志が強いほうが応援される時代になってきちゃったよね。
――音楽を続けるためには売れなきゃいけない、という論理もわかります。
清春:要はどれくらいやりたいかですよね。ずっと武道館でやりたいのかライブハウスでいいのか、内容は関係ないのか大事なのか。僕が相談された時に唯一言うのが、「あなたのファンの人達というのは、あなたにどういう真意があろうと、あなたが人生における支えなわけなので、その子たちのために歌うだけでいいと思う。その子たちを幸せにする。その役割を果たす。そういう考え方にいずれなるはずだけど」です。そこでこそあなたの歌が一番響くわけなので、その役割というのはとっても素敵なことなんじゃないの?っていう。
――素敵な助言です。
清春:逆に言えば、苦しい時も良い時も常に支えてくれている人達というのは、清春さんの歌で生きているっていう人達しかいないわけなので、この人達を幸せにすることを第一に考えないと、いずれ全てが滅びるんじゃないかと思います。誰でもいいから音楽を聴いてほしいっていうものじゃ、ダメなんじゃないかと。いかに自分の会場を満たすことができるアーティストかということが、その人のバックボーンになっていくのかなと思いますね。今の自分の歌を聴きに来てくれる人達に対して身を尽くすというのは、ミュージシャンとしての一番の役割だよね。
――清春さんの根底にあるそういう思いが作品にもライブにも表れているので、それはやはりファンの方々にも伝わっているんだと思います。
清春:でもそれって結果的に昔と一緒で、ファンをふるいに掛けちゃってるんだよね。本当に好きな人にしかわからないようなことをするっていう。まぁ、本望だね。
――では最後に、2016年はどんな年にしたいですか?
清春:50歳までの3年の内の貴重な1年なので(笑)、できるだけかっこつけて、悔いの残らないような音楽を鳴らしつつ、よりファンの人達との関係性が良いものになっていけばいいなと。新しいアルバムが出る時というのは、ある種危険なタイミングでもあって、手放しで喜んでくれる人もいれば、あれ?違うって思っちゃう人もいると思うんです。今まで聴いてきた自分が正しいのか正しくないのか「?」が浮かぶタイミングでもあって、それをやっぱり何も変わらないって思わせられるのはライブなので、全国でベストを尽くしたいです。あとは、かっこいい大人、かっこいいおじさんになる、それしかないですね(笑)。
(文・金多賀歩美)
清春
<プロフィール>
1994年、黒夢のヴォーカリストとしてデビュー。1999年に無期限の活動休止。同年、sadsを結成しデビュー。2003年に活動を休止。同年、ソロデビュー。2010年には黒夢とsadsの活動を再開。2012年にはシングル『流星/the sun』『涙が溢れる/sari』、アルバム『UNDER THE SUN』を発表。また、2012年から定期的に行った「MONTHLY PLUGLESS」というスタイルのライブは、2015年は2月から11月にかけ全33日間66公演に及んだ。そして新作の発表を控え、12月23日より全国ツアーをスタートさせる。
■オフィシャルサイト
http://www.kiyoharu.jp/
【リリース情報】
『SOLOIST』
2016年3月30日(水)発売
[初回限定盤]
WPZL-31150/51
4,860(tax in)
[通常盤]
WPCL-12327
3,240(tax in)
【収録曲】
01. ナザリー
02. FUGITIVE
03. EDEN
04. DIARY
05. ロラ
06. MELLOW
07. MOMENT
08. QUIET LIFE
09. 海岸線
10. 麗しき日々よ
11.未定
12.未定
13.未定
※曲順は変動する可能性がございます。
<ストリーミング>
ワーナーミュージック・ジャパンHP http://wmg.jp/artist/kiyoharu/
期間:2015年12月18日(金)18:00 ~ 2015年12月25日(金)24:00
<配信>
2015年12月23日より先行配信スタート
[iTunes Store]
「EDEN」https://itunes.apple.com/jp/album/id1067069824?app=itunes&at=10l6Y8
「ナザリー」https://itunes.apple.com/jp/album/id1067077017?app=itunes&at=10l6Y8
※iTunes は、米国およびその他の国で登録されている Apple Inc. の商標です。
[レコチョク]
http://recochoku.com/w0/kiyoharu/
【ライブ情報】
TOUR 天使の詩 2015『21』
2015年
12月23日(祝・水)横浜BayHall
12月31日(木)大阪なんばHatch
2016年
1月10日(日)仙台Rensa
1月11日(祝・月)仙台darwin ※PLUGLESS
1月16日(土)KYOTO MUSE
1月17日(日)KYOTO MUSE
1月23日(土)広島CLUB QUATTRO
1月30日(土)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
2月6日(土)浜松Live House窓枠
2月7日(日)岐阜club-G
2月9日(火)名古屋ダイアモンドホール
2月13日(土)柏PALOOZA
2月14日(日)柏PALOOZA
2月19日(金)HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
2月20日(土)HEAVEN’S ROCK 熊谷 VJ-1
2月26日(金)水戸LIGHT HOUSE
2月27日(土)水戸LIGHT HOUSE
3月5日(土)金沢EIGHT HALL
3月11日(金)渋谷CLUB QUATTRO ※FC ONLY
3月13日(日)高崎club FLEEZ
3月18日(金)松山サロンキティ
3月20日(日)福岡DRUM LOGOS