◆一緒に並んでみたかった
――INORANさんと共演のPVシューティングはいかがでしたか?
清春:素敵でした。いい匂いがしました(笑)。
――(笑)。発表されていたお二人のコメントが今後を期待してしまう内容だったのですが、どうなのでしょう?
清春:大事にしたいんですよね。すぐに音楽作っちゃうとか、迂闊によくやってしまうものだと思うんですけど。バンドでデビューして活動が止まったり解散したりして、それぞれ違う道を選ぶ…いろいろな人がいると思うんだけど、感じるのは、音楽シーンに残ってる人で2種類の残り方があって。音楽を犠牲にして芸能人ぽく活動しちゃう人と、音楽をちゃんと極める人、この2種類あると思うんです。年齢は違うけど最近一緒にやった雅-MIYAVI-くんや、今回のINORANくんは、僕が思う音楽を犠牲にしていない残り少ない人たち。単純に、今ミュージシャンである程度の美学を残していてかっこいい40代っていうのがあまりにも少ないので、一緒に並んでみたかったっていうのはある。INORANくんはソロになったときにギターをフィーチャーしているかっていうと決してそうではなくて、全体で表現をしようとしてる。やっぱりいい顔してますよね。なかなかこうなれないんじゃないかなと思います。自分のことも含めて。40代になったときに果たしていい顔、表情をしていられるかっていうのは、音楽家の場合は作ってるサウンドとかで全然違うと思うんで。INORANくんは普段からかっこいい。ちゃんと現役感というか、今自分が思い浮かぶ最新のものを形にしている人。今お互いバンドもやってるけど、そっちがメインになってないよね。過去よりも現在っていう感じがする人だったので、音楽をすぐ一緒に簡単に作るっていうよりは、並んでみたかった。
――「感覚が近い人なんじゃないか」と感じた人とは長いお付き合いをしたいですよね。
清春:簡単にやっちゃうと終わったときに「じゃまたね」ってなっちゃう気がするんですよね。まぁお互いのキャリアと音楽的な感覚、レベルがあれば、いつでも一緒にできると思うの。別に“今”じゃなくていいとも思って。19歳~25歳の人が思うかっこいい人はいっぱいいるかもしれないけど、アラサーと言われる人たちから40代の人たちが青春時代を送ってきた音楽があるとすれば、まだかっこよくいられてる人って選りすぐりというか。あんまりいないんだよなー。
――確かに。そして、両A面があっての3曲目「rally」ですが、ずばりテーマは?
清春:単純なただいやらしいSEXソングじゃなくて、今思う愛の世界の感じを出したかったですね。ただいやらしい曲は黒夢、sadsのときもソロでもあるんですけど、子供っぽかったなと思ってて。今回は40代の感じ、快楽主義的なSEXソングではなくて、わかりやすく言うと「仲良くなる」っていうと変だけど、分かち合うというか。快楽を分かち合うんじゃなくて、手段としてのSEXというか。分かり合えないときもそれが一つの手段になったら大人だなっていう。変な言い方だけど、男から見たSEXソングではなくて女からはどういうふうなのがいいかしらっていう。所詮僕は男なので女にはなれないですけど。
――なるほど。
清春:ただ曲はムーディーになっちゃったけど、作ったときはもうちょっと切ない曲調だったんですよね、重いというか。歌詞が無くて仮歌のときはもうちょっと暗めだったんですよね。
――イントロの重めの感じは最初からですか?
清春:最初リフで作ってたから上モノはあとから乗せてもらったんで。だからどっちかというと陰湿というか暗めな重めな感じだったんだけど、妖艶な方に逃がしていったという感じ。僕は峰(正典)くんのギターが気に入ってますね。ふわっとした音も伸びのあるトーンですごく素敵ですね。あとファルセットが大変でしたね、この曲は。
◆音楽を続けていられるか、いられないかっていうのは想いの強さ
――ところで、改めて『APRIL ONE WEEK』について。5日間6公演連続ライブはいかがでしたか?
清春:良い経験というか、自分の体力、集中力、表現力、継続力の、良いデータが出たというか。20代後半の頃にロングツアーや4公演連続はやったことあるんだけど、歌自体でいうと今よりしっかりは歌ってなかったと思うんで。歌を歌うっていう部分での5日間6公演で1本1本が決して短くないライブで、43歳の今できちゃうんだなって。声も一番調子よくなかったのが初日で、どんどん上がってきたのはあるし。もちろん日を追うごとに疲れは増して朝起きたときに声が出ない感じはあるんだけど、出方が変わってくるんですよね。ライブの時間までに声が出る状態になっていく感じ。ま、やったことない人にはわからないと思う。普通にツアーで2本やったら1日休みとかやってる人は、逆にやわいな、甘いなと思いますね。人間の体って慣れというか、途中で休んだら走れなくなるというか。そういうのをすごく感じたかな。
――ではまた連続公演をやるかもしれない?
清春:やりたいですね。あと、チケットを急遽売る(『APRIL ONE WEEK』は公演日の10日前に発表)っていうのが僕は嫌いじゃないですね。僕の中での最終的な理想は、毎日ライブやってるような生活。それで本当にミュージシャンって言えるんじゃないかなって。あと急にやるとか。みんな積み上げて戦略を練り過ぎなんだよ。武道館なりドームなり、その先が絶対あるから注意した方がいいよね。そこで一気に終わった感にならないように。理想は同じ会場で何年もやることだよね。それがキャパ2000人でも500人でもいいんだけど、なんかこう積み上げ方をみんな間違えてる気はするかな。終わりがどこにあるかっていうのは僕は年齢的に感じられるので、ああいう5日間6公演ていうのは、僕にとってデータにもなったし確認にもなった。
――継続の重要性とか目標の設定とか、それは人生に当てはまることですよね。
清春:そうなんだよね。会社に入って社長になって満足する人と、もっと会社を大きくして世界に羽ばたく人と。みんなとりあえず社長になるための戦略をね、夜飲みに行って仲良くなって、はい社長になりましたっていうそれだけのような気がするんだよね。でも会社はその後も続くからさ。
――社長になることが目標の人と、社長になって何がしたいかということの違いですよね。
清春:そうそう。しかもそれを周囲の人間がやってるっていうことじゃない?バンドでいうと。事務所の人が手を変え品を変え。それは一般の人も感じるよね。なんのためにやってるのかっていう。自分たちが登りつめるためにファンの財布を使うわけじゃなくて、やっぱり一番お金を使ったり時間を使ったりしてくれる人たちのための自分だと思うんで。長くやるっていうことはそれなのかもしれないよ。
――若い世代のバンドさんにこのインタビューを読んでいただきたいです。
清春:みんなそうだよね、若い子と話すと。来年の何月までにはZepp目指してるとか、武道館行きたいですとか。でもさ、会場の種類って登りつめるための目標のワードじゃないよね。本来なら。あと、まだ若くしてでかい所をやるっていうのは、いずれ後悔するよ絶対に。僕がコミュニケーションとれる範囲でのミュージシャンには「お前その先があるだろ?」って言ってあげられるんだけど。やったことに意義があるのかもしれないけど、そんなの10年くらいしたら世間は忘れちゃってるよね、やったことすら(笑)。横並びがいるから、あのバンドよりも早めにやりたいっていうのがあるんだろうけどさ、でもそれは音楽とは遠いよね。音楽の匂いはしないよ。
――商業ですよね。
清春:うん。ホストが登りつめるみたいなことだよね。それを応援する顧客がいるっていう。○○くんっていうホストがんばってるから私も力になりたいっていうような。でもそれは音楽を楽しみに行ってるのか、その人を見に行ってるのか、タニマチみたいなことをしているのか。今はいいけど、数年後にお互いアーティストとファンの人の関係性の意味はきっと変わってくるよ。今の僕みたいに20年くらい経ったときにこうやって音楽で継続して新しいものを作っていってファンと向き合って活動をするという、そういう一つの例もあるわけなんで。それがその人たちの目にどう映っているかわかんないけど。音楽を続けていられるか、いられないかっていうのは想いの強さだとは思います。
――最後に今後の展望を伺おうと思ったのですが、先ほどから出ている通り、できるだけ毎日ライブをしたいと。
清春:最終的にはね。満足して飽きたらやめようかな、ミュージシャンを(笑)。展望ね…思い描いているのが一個あるんだけどね。目標というか。あんまりまだ言えないんだけど。ソロのことなんですけどね。んー展望…できるだけ元気で病気しないように。音楽が不自由にならないような体でいたいですよね。いつまでも若くないですから。でも気持ちだけはやっぱり、若者にも負けないっていう気持ちでいたいですよね。それは顔つきやプレイの部分ももちろんそうだし、作る作品も。
(文・金多賀歩美)
清春
<プロフィール>
1994年、黒夢のヴォーカリストとしてデビュー。1999年に黒夢は無期限の活動休止。同年、sadsを結成しデビュー。2003年に活動を休止。同年、ソロアーティストとしてデビューし、これまでに19枚のシングルと6枚のオリジナルアルバムをリリース。2010年には黒夢とsadsの活動を再開させ、現在は黒夢、sads、ソロアーティストとしての活動を並行して行っている。2012年、4月には5夜連続のライブを開催、そしてこの度ソロ名義では約2年4ヵ月ぶりとなるニューシングル『流星/the sun』をリリース。5月22日に赤坂BLITZ、6月8日に大阪BIGCATでリリース記念ライブを開催する。
■オフィシャルサイト
http://www.kiyoharu.jp/
『流星/the sun』
2012年5月23日発売
(avex trax)
清春、約2年4ヶ月ぶりのニューシングル! 「流星」は日本テレビ系「ハッピーMUSIC」5月エンディングテーマ&日本テレビ系「音龍門」特選アーティスト#014、「the sun」はテレビ東京系「KOZY’S NIGHT負け犬勝ち犬」エンディングテーマ。
【収録予定曲】
TYPE-A
【CD】
01. 流星
02. the sun
【DVD】
「流星」 MUSIC VIDEO
「the sun」(LIQUIDROOM 2012.3.27)
TYPE-B
【CD】
01. 流星
02. the sun
【DVD】
「the sun」MUSIC VIDEO
「流星」(LIQUIDROOM 2012.3.27)
CD only
01. 流星
02. the sun
03. rally