2012.4.4/4.5

清春@代官山UNIT

『APRIL ONE WEEK』RHYTHMLESS & PERSPECTIVE

 

 

『APRIL ONE WEEK』と題し5日間6公演連続ライブを行うと発表されたのは、その公演日のわずか10日前のことだった。メジャーデビュー19年目、ソロ活動9年目にして初めてのチャレンジだという。3月27日にも突発的にライブを行った清春の口から、その真意は語られていた。去る3月4日、敬愛するMORRIE(DEAD END / Creature Creature)の20年ぶりとなるソロライブにゲスト出演した際、「ライブをすることが珍しいアーティストになるには自分はまだ早い、違うんじゃないか」と感じたという。そんな想いから「来たいときにやっているという形にしたくて。ミュージシャンだから、できるだけ毎日音楽を発表していきたい。まずは20年まではそういうふうにやっていきたい」と、この『APRIL ONE WEEK』開催に至った経緯を語っていた。

 

公演ごとにそれぞれコンセプトの異なるスタイルでのライブ『APRIL ONE WEEK』。その3日目と4日目「RHYTHMLESS & PERSPECTIVE」と銘打たれたこの公演スタイルは、通常のライブとは異なり、楽曲は二人のギタリスト(三代堅、中村佳嗣)をメインにバンド形態とは異なるアレンジが施され、歌をより際立たせるステージであり、清春が15周年の頃から定期的に行っているスタイルだ。ステージに立つ方も観る方も集中力を要するこのスタイルを連続公演の中盤に持ってくるという試みに清春の覚悟を思った。

 

正直なところホールで観たかったなという思いが頭を過ぎりながら開演の時を待っていた。だが、「Pledge」で幕を開けてすぐ、そんな考えは払拭された。清春の熱のこもった魂の歌声、繊細な動きの一つ一つ、息遣いまでをも感じることができるのは、この距離だからこそ。そして物理的な距離によってもたらされるのは心理的なそれとも重なり、心のより奥底にまで訴えかけてくる。

 

清春が燻らす煙草の煙とスモークが混ざり合い、籠に入った電球を自由自在に操る姿はある種の迫力さえあり、とことん深くダークな世界から始まったその空間は、曲を追うごとに救いへと変化していく。人が決して触れることのできない空には、きっと素晴らしい世界があるのだろう。そしてその空はいつでも一つだしみんな同じなんだ。そんなことを思った。

まだ通常のライブでわずか数回しか披露していない新曲(未音源化曲)の数々を今回のスタイルで披露するとは予想していなかったのだが、セットリストを改めて見直してみれば、ここにそれらが配されていることはごく自然な流れだったことがわかる。むしろ新曲だとかいつの曲だとかということを思うのは、特にこのスタイルのライブに関してはナンセンスなことかもしれない。なぜならそのどれもが清春であって、その根底に流れるものは同じなのだから。

 

 

「明日はもっと明るい感じなので」という清春の予告通り、『APRIL ONE WEEK』4日目かつ「RHYTHMLESS & PERSPECTIVE」第2夜である翌日は序盤の「退廃ギャラリー」「HAUNTED BOOGIE」といったアダルトでジャジーなムードからスタートし、「輪廻」を境に徐々に通常のライブに近い形のロックナンバーへと変化していったが、終始音の波に心地よく身を委ねられるひと時だった。そんなこの日のセットリストや空気感の影響か、二日間とも披露された「messiah」はなんだか前日とは随分と違う、とても優しい印象を受けた。

 

「この形態のときはいつもこの曲で終わろうと思っているんです。普段みんな別々に生きているけど、ライブの最後は常に“楽園”であればいいなと思っています」と、ラストに披露されたのは「楽園」。体の中心がとても熱くなるのを感じながら聴き入った。そして場内は明るい空を思わせる光に包まれ清春の穏やかな笑顔とともに幕となった。

 

この『APRIL ONE WEEK』に際し「毎日を“生きてる感”を一緒に感じてほしい」と話していた清春。連続公演の3日目・4日目である事実を忘れてしまう、ライブ単体として素晴らしいステージだった。終演後に楽屋で会った清春の顔はとても晴れ晴れとしていた。

 

 

◆セットリスト◆

【4.4】

1. pledge

2. crow

3. 情熱の影

4. サロメ

5. innocent

6. 堕落

7. 空

8. 暗い口づけ

9. 闇

10. 影絵

11. tanatos

12. messiah

13. SAD PAIN

14. この孤独な景色を与えたまえ

En.

15. 新曲

16. sari

18. 楽園

 

【4.5】

1. my love

2. 退廃ギャラリー

3. HAUNTED BOOGIE

4. the end

5. GENTLE DARKNESS

6. すれちがい

7. 枸橘

8. Limited

9. 新曲

10. 輪廻

11. 妖艶

12. Lylical

13. 首輪

14. 愛撫

En.

15. YOU

16. messiah

17. sari

18. 楽園

 

 

(文・金多賀歩美)