インタビュー#2 K×SOY対談
サポートドラムとしてKを支える若きドラマー・SOY。ニューシングル『STORY』で共演を果たした二人の歴史を紐解く。
現在公開中のニューシングル『STORY』のMV、そこに映るドラマー・SOYの存在が気になった方も多いのではないだろうか。BORNの初代ローディーとしてバンドの成長期を支え、現在はロックバンド・Breathing Booostのドラマーとして活躍しながら、今年6月に開催されたrivabook presents 「June Cup Tour」ではKのステージでサポートドラムを務め上げたSOY。さらに、9月からスタートする「ZEAL LINK TOUR NEXT 2017」でも再び同じステージに立つことが決定し、ローディーとメンバーという立ち位置から、同じ音楽を奏でる仲間へと変化した二人に、彼らの歴史を聞いた。
◆一つの物語として、SOY君が叩いたら面白いんじゃないかと思って(K)
――まずは、お二人の出会いから教えてください。
K:7年くらい前にSOYがBORNのローディーに応募してきたんです。当時のSOYは、まだ右も左もわからないような17歳の若者で(笑)。
SOY:バンドをやりたいんだけど何をしたらいいかわからなくて、ローディーをしたら何か得るものがあるんじゃないかと思って応募したんです。
K:彼がBORNの初ローディーだったんですよ。その後、今でも俺の作品を手伝ってくれている瑛貴君(DAZのギタリスト・渋谷瑛貴)もローディーとして入ってきたんですけど、瑛貴君はローディーもバンドも経験者だったので、そこでできるローディーとできないローディーがはっきり分かれたというか…(笑)。でもキャラ勝ちで、「SOYはそういう感じだよね」って許されていたよね。
SOY:皆さんの心が広くて良かったです(笑)。
K:でも、最近「Kの呑みながらじお」でも話したけど、当時はレイチェル(Ray)が面白かったな。自分も散々遅刻しているのに、遅れてきたSOYにブチ切れたことがあって。俺たちからすると、「え、お前が怒るの?」って思ったけど(笑)。
――レイヴの「いなかもん」での対談に引き続き、また新たなRayさん伝説が…(笑)。ところでSOYさんはなぜBORNのローディーになろうと思ったんですか?
SOY:高校生の頃からヴィジュアル系が好きだったんです。それで色々聴いている中でBORNの「with hate」(2008年に限定リリースされたシングル)のライブバージョンの映像を見つけて。興味が沸いてHPを見たらローディー募集って書いてあったんです。しかも、他のバンドさんは免許が必要だったんですけどBORNは免許について書いていなかったから、「これならいける!」と思って。
K:…それ、書き忘れただけかも(笑)。
SOY:!!
――ローディーはどのくらいの期間やっていたんですか?
SOY:5年ぐらいです。ローディーを辞めてからスッとフェードアウトしてしまって、久々にお会いしたのが去年のBORNの解散ライブでした。
K:解散前に久しぶりに連絡をくれたんだよね。
――SOYさんは、BORNのラストライブを見たとき、どんな気持ちでしたか?
SOY:猟牙さんがキーボードでピコピコしていたのがすごく印象に残っています。自分が知らない間にすごいことをするようになったんだなと思って。自分がローディーをしていた頃、シングル『BLASTED ANIMALS』(2012年リリース)がリリースされて、その時すごく感情が高ぶってウルッと来たんですけど、それに近いものを感じました。それで楽屋に挨拶に行ったら意外と皆さん冷たくて「あ、お疲れ」みたいな。TOMOさんも「お疲れ様~」とだけ言ってどこかに行ってしまって(笑)。
――あの日は3時間半くらいライブをやっていましたからね。
SOY:そうか。もうヘトヘトでしたよね(笑)。
――再会して、Kさんの音楽に参加することになったのはどういう経緯だったんですか?
K:SOYが当時いたバンドで『仮面ライダー』の挿入歌をやったりしているのを知って、頑張ってるじゃんと思っていたんです。でも、電話で話すとなかなか難しいこともあったみたいで。そのときにSOYが「どんなことでもいいので、叩くから言ってください」って言ってくれたんですよ。「お前バンドやってるでしょ」と答えたら、「俺は個人的に動けるので」って。それで、BORNが解散して俺がソロをやるからスタジオで歌っておきたいなと思った時に、SOYを呼んだんです。それに、長くローディーをやってくれていたから、BORNのファンの子たちもSOYのことを知ってくれている。そういう意味でも、ただサポートをやるというだけじゃない一つの物語として、SOY君が叩くと面白いんじゃないかと思ったんです。
SOY:ありがとうございます。
K:それに、当時ポンコツだったSOY君が、最近ビシッとしている気がするんですよ(笑)。背筋も伸びて垢抜けたし、楽屋で見ていても時間があればスティックを持って練習していて、「今度、個人練習に入りたいです」って言ったりもするし。解散後の1stワンマンに向けての練習では、今思うと結構な頻度でスタジオに入っていました。俺たちはスタジオが好きなんでしょうね。
SOY:スタジオはめっちゃ好きです。今もペダルを持っているのでこれからでも行けますよ!
K:そして俺はそれを練習だと思ってなかったりするんです。
SOY:僕も大きく捉えると楽しいからやっている気がします。スタジオにはずっといられますよね。
――解散後、ずっとKさんを仲間として支え、今回「STORY」のMVで共演を果たしたわけですね。
K:そうです。「STORY」でMVを撮るときにいろんなソロアーティストの作品を見て、メンバーがいなきゃダメかなとか、バンドがいないとダメかなとか色々考えたんです。でも、「意外と二人でもいいんじゃないか」と思って。それで何となくSOYを呼ぼうかなと…(笑)。
――そんな軽いノリで(笑)?
K:はい(笑)。SOYは返事が早いんですよ。「あ、やります!」って。面白そうだし、やろうかなと思ってくれるんですよね。
――SOYさんがKさんのサポートとしてライブに参加したのは、先日のrivabook presents 「June Cup Tour」からですよね。
SOY:そうです。名古屋、大阪、東京と叩かせていただいて。でも、サポート自体が初めてだったのでリハーサルの段階からガチガチでした。NAOKIさんが緊張をほぐしてくれようとしてくれるんですけど、その気遣いがすごく心に沁みて…さらに緊張しました(笑)。
K:(笑)。でも、こう言いながら、SOYは意外と緊張していないんですよ。
SOY:してますよ(笑)!
K:だって、この前の俺のワンマンを観に来るって言っていたのに、寝ていてすっぽかしていますからね! その連絡が来た時、「SOY君、意外とメンタル強いな」と思って(笑)。
SOY:強くないです! やってしまった感がすごかったんですよ。
K:「行きます!」って元気に返事したのにさぁ。そういうところは相変わらずSOY君なんですよ。ローディー時代、レイチェルに「コーヒーと何々買ってきて」って言われて「はい、わかりました!」って言うんだけど、帰ってきて「何買ってくるんでしたっけ?」って言ったりしてたからね(笑)。
SOY:とりあえずわかりましたって言ったんですけど、話が終わった後に全部頭から飛んじゃったんです。それでメモ帳を持つようになりました。
――SOYさんは先輩と一つのステージを作ってみていかがでしたか?
SOY:とにかく本当に緊張したんですけど、次に参加させていただく「ZEAL LINK TOUR NEXT 2017」は「June Cup Tour」で東名阪を一緒に回ったメンバーが多いので、少しは自分を出せるかなと思います。「June Cup Tour」はスケジュールが詰まっていて、久々に短いスパンでライブをやれたのも楽しかったです。終わった後、何もないからつまらないなと思ったくらいライブは楽しい。
K:ちょっとヘヴィなことを言うと、そういうことに気付けるって、すごく大事なことですよね。俺はソロになってツアーの本数もバンド時代に比べたら減って。あの頃はすごかったんだなって今改めて思うんです。のほほんとしていて、そういうことにありがたみを感じないことは多いし、なくならないとわからないことってありますから。
SOY:確かにそうですよね。
K:でもSOYは面白くて、「June Cup Tour」の名古屋、大阪は当日入りの1泊2日だったんですけど、ライブが終わった帰り道に「やっと帰れる!」って言っていて(笑)。「たった1泊2日なのに、やっと帰れるってどういうこと!?」と思いました(笑)。
SOY:僕はまだまだそういう経験が浅くて(笑)。ヴィジュアル系からロックバンドに転向してからは化粧をする経験もなかったですし、ずっと緊張していたのでどこにいてもめちゃくちゃ疲れちゃって!
K:でも確かに、最初のツアーはそうだよね。
SOY:居酒屋さんと、ビジネスホテルに戻ったときがすごく楽しかったです。
K:ライブじゃないんだ(笑)。
SOY:あっ、ライブも楽しかったですよ! それにプラスで、ツアー先での居酒屋って楽しいんだなって再認識したってことです!
◆僕も音楽が好きですけど、Kさんは本当に大好きなんだなと(SOY)
――SOYさんの現在のバンドは、ジャンル的にはヴィジュアル系ではないロックですよね。
SOY:そうです。ジャンルは全く違いますね。別にヴィジュアル系が嫌いだからやめたのではなくて、ロックバンドをやるきっかけがあって始めたんです。なので、普通にヴィジュアル系に呼ばれたらやりますし、やってみたい。ヴィジュアル系はライブに強い姿勢で挑んでいるなと思います。逆にロックバンドは音楽を本当に純粋に楽しんでいる人が多い感じがする。ロックバンドに転向して交友関係が広がったし、自分の音楽に対する考え方が変わりました。大きな違いとして、ロックバンドは転換中に幕がないんですよ。だから、カッコつけようとしてもすごくダサい姿を見られるんです。しばらくカッコつけることを忘れていたので、ヴィジュアル系ではカッコつけたいなと思います(笑)。
K:たまにロックバンドを観に行くと、結構有名な人たちでも普通に転換を自分でやっていたり、物販の席に立っていたりするよね。
SOY:そうなんです。お客さんに近づく、というコミュニティーで。僕はそれを受け入れるのに時間がかかりました。
――ヴィジュアル系は、見せない部分があってこそですよね。
SOY:そうです。ヴィジュアル系はアイドルですよ!
K:言い切っちゃうの(笑)?
SOY:はい! いい意味でアイドルです! だって、女の子からカッコいいと言われる対象じゃないですか。ロックバンドとヒップホップは、どちらかと言うとカッコいいよりも、仲がいいとか、友達だから応援しようという感覚なんです。ライブが始まる前でもお酒を飲んで、めっちゃ楽しいリハをしたり、ライブが終わったらみんなでお酒飲んだりする人もいますし。それが向こうの普通で、郷に入っては郷に従えだから俺もちょっとやってみようと思ったんですけど、できなかった(笑)。でも、本気で音楽を楽しんでいて、終わった後もずっと音楽の話をしている。そういう面では、すごく楽しいところもあるんですけど、何が正解かはわからないです。
――違うカルチャーに入っていくということは、すごく勇気がいる気がするのですが。
SOY:勇気がいりました。最初は一歩引いてしまったんですけど、3年ぐらいやって慣れてきたところです。
K:前にライブに呼んでくれたので観に行ったんですけど、「すげー。こういう世界なんだ!」という印象でしたね。それに、そうやって声をかけてくれたのが嬉しくて。あまり「ライブに来てください」って言える人っていないと思うんです。SORA(DEZERT)も言ってくれるんですけど、その一言って大事ですよね。
SOY:そうかもしれないですね。そうやってロックのカルチャーを経て、久々にヴィジュアル系に戻ってきてやっていく中で昔の感じを思い出してきているんですけど、やっぱりヴィジュアル系はいいなと思っているところです。
――ところで、SOYさんから見て、BORN時代のKさんと今のKさんはどう映っていますか?
SOY:Kさんは、いい意味で何も変わっていないです。音楽に真面目で、僕が知っている人の中で音楽に対する考え方が一番ピュア。僕は一度、泥酔するまでKさんとお酒を飲んだことがあるんですけど、その時もずっと音楽の話をしていたんです。僕も音楽が好きですけど、Kさんは本当に大好きなんだなと思って。
K:自分としては真面目という自覚はそんなにないし、仕事だと思ってやっているわけではないから、練習を練習だとも思わないんです。でもこの感覚はSOYも同じだと思うんですよ。SOYも家にドラムがあったら叩くと思うんです。SOYと俺はそういうスタンスが同じだから近くにいられるのかもしれないですね。話していてやっぱり違うな、という人ももちろんいるし。その人が間違っているということではなくて、俺と違うんだなと思って。
――SOYさんがローディーを務めていた頃はBORNのどんな時期だったんですか?
K:SOY君が入って、わりとすぐにPS COMPANYに入ったんです。だからSOY君も色々な場面を見ていますよ。レイヴの連載で話した、事務所に入りたてのときの空気も見ているし(笑)。一方で俺らもSOY君もバンドをやって大変そうなのも見ている。あの頃は本当に毎日がサバイバルで、気付いたらSOY君がAREAの入り口で泣いていたりしたよね。
SOY:ありましたね。何かすごく悲しい出来事があったんですよ。
K:メンバーもそうだし、関わっている人のメンタルがかなりやられていましたからね(笑)。でも今振り返ると、やっぱり俺たちに必要なことだったと思います。ああいうのを通ってないと、本当に逸れた方向に行ってしまった可能性もあるので。
SOY:そうですね。僕も人生の経験として必要だったと思います。
――SOYさんは当時のBORNのメンバーの思い出はありますか?
SOY:TOMOさんは僕のローディースケジュールを管理してくれていて、すごくお世話になりました。それに、セミハードのすごくいいシンバルのケースをもらって嬉しかったです。あと、当時のTOMOさんは髪の毛を立てていたんですけど、それが本当にカッコ良くて。
K:SOYはローディーとして入ってきたとき、「TOMOさんみたいなことをしたい!」って言ってたもんね。
SOY:そうなんです。「TOMOさんみたいな奇抜な感じにしたい!」と言ったら、みんなにやめろと言われて(笑)。TOMOさんてスラッとしていたから、ああいうマリリン・マンソンみたいな感じがすごく似合ってカッコ良くて。
K:そう言っていたから、当時SOY君がやっていたバンドでTOMOみたいなヴィジュアルにするのかなと思っていたら、カワイイ系になっていて、あれ!?って思ったんだよ(笑)。
SOY:そういう間違いもしながら模索して、いろんなことに挑戦しました(笑)。あと、ライブ中にドラムを叩きながら、「ワンツースリーフォー!」って叫んでいたのもカッコよかったですね。特に「RADICAL HYSTERIA」のコーラス、あれはTOMOさんにしかできないだろうなと思って。
K:前から「TOMOさんじゃなきゃBORNの感じがしない」って言ってたよね。
SOY:そうなんです。他の方も上手いんですけど、TOMOさんの暴れん坊な感じがいいんですよ。
――KIFUMIさんの思い出は?
SOY:KIFUMIさんとは帰る方角が一緒だったので、終わってからいつも一緒に帰っていたんです。KIFUMIさんは「最近お菓子しか食べていないんだよね。これが今日の晩ご飯だよ」ってお菓子を見せてくれました(笑)。
K:今思うと、よくそれで生きていけてたよね…。
SOY:KIFUMIさんは可愛い感じで気軽に接してくれたので緊張はしなかったです。猟牙さんもめちゃくちゃ優しかったですよ。この前、偶然お会いしたんですけど、昔からずっと性格が変わっていない気がします。
K:むしろPS COMPANYに入って以降、ちょっとずつ大人になってきたという感じだよね。
SOY:そうですね。今のほうが落ち着いているかも。ローディーになった初日、初めて見た猟牙さんは、HOLIDAY SHINJUKUの前でヤンキー座りしていて、金髪でヒゲが生えていたんです。絶対にヤバイ人だと思いました(笑)。でも、すごく優しく話してくれて。
――昔のことをすごくよく覚えているんですね。
SOY:はい! すごく鮮明で、皆さんが何を着ていたかも覚えていますよ。ちなみにその時Rayさんは虫取り帽子みたいな帽子をかぶって、メガネをかけていました。
K:虫取り…もしかして麦わら帽子のこと?
SOY:それだ!
K:虫取りって(笑)! でも確かに、当時レイチェルはハーフパンツをはいて、麦わら帽子をかぶっていたから、己龍のメンバーから「ルフィ」って呼ばれていたんですよ。「麦わらのRay」って(笑)。
――まさかRayさんが海賊王を目指していたなんて(笑)。それにしても、ローディーを経て現在の関係性に至るというのは、なかなか運命的ですね。
K:確かに周りを見ていると、ローディーから一緒に音楽をやることはあまりないですよね。
SOY:そうですね。でも一緒にやらせていただくようになっても、KさんはいつまでもKさん先輩です! さっき、ローディーだった頃は泣いたりして大変だった話をしましたけど、今は嫌なプレッシャーではなくてすごく楽しいんです。
――次の「ZEAL LINK TOUR NEXT 2017」も楽しみですね。
SOY:そうですね。7本ですけど週末が多いですし。
K:9月までまだ時間があるので、SOYにはそれなりのものを見せてもらおうと思っているんですよ(笑)。
SOY:唐突なプレッシャーが…!
(文・後藤るつ子)
SOY
<プロフィール>
BORNの初代ローディーを務めながら、ドラマーとしての活動を展開。現在は4ピースロックバンドBreathing Booostでドラマーとして活躍中。2017年6月に開催されたrivabook presents 「June Cup Tour」でKのサポートとして全3公演に初参加し、9月からスタートする「ZEAL LINK TOUR NEXT 2017」への参加も決定している。
■オフィシャルサイト
http://www.breathing-booost.com/
【リリース情報】
Single『マメノナエ』
2017年4月17日(月)発売
(CD)
¥1,300(Tax in)
【収録曲】
[CD]
01. マメノナエ
02.さよならをくれた君へ
03. remaining snow