H.U.G

確固たるものが出来つつあると思う(横山和俊)

横山和俊

12月のツーマンから3月のワンマンまでに新曲を一気に4曲増やしましたが、この時の制作はなかなか大変でしたか?

横山:Karyu君はペースが早くて、ノルマ以上に曲を上げてきてくれたんですけど、僕が遅くて1曲しか上げられなかったです。本当にずっと催促されまくっているんですけど(笑)。ワンマンをやるために曲数が足りないので、とにかく書けるだけ書きましょうという感じで1月が始まりましたね。

このバンドのスピード感は3人のキャリアやクリエイティブ力は前提としつつも、お互いに感化し合っている部分が大きいのではないかなと。

ryo:それは確実にあると思います。

Kayru:僕は「HUG」を作った時に、やっぱり二人が持っているポテンシャルみたいなものがすごく自分の好みだし、想像を超えたものを提示してくれるので面白いなと思っていて、その感覚がずっと続いているんですよね。しかも横ちゃんとは以前からずっとやっていましたけど、ここまで深く一緒に作れていなかったなというのもあって、その新鮮さもあります。ryoさんは初めて一緒に作っていますけど、欲しいものをちゃんと提示してくれるし、僕がアイデアを結構キツめに何個か投げたりするんですけど、ちゃんと受け止めて、より良くして返してくれるんですよね。

ryo:他のプロジェクトやバンドと棲み分けしていくタイトさは大変ではありましたけど、楽曲が良いものになっていく過程のクリエイティビティはすごく楽しいですね。あぁ辿り着いたなとか、一つここで落ち着いたなみたいな喜びは常にあります。

Karyu:僕が思うに、今3人で作っているのがめちゃくちゃ良くて。ここで人数が増えると、また色々と散漫になっていくと思うんですよ。何て言うんだろう…焦点を絞ってやれているというか。

横山:まずKaryu君がやりたいことを前提に、僕らメンバーがガツッとH.U.Gサウンドというものを作れていっているので、そこを核として確固たるものが出来つつあると思いますね。

以前ryoさんが、Karyuさんはアバウトな「なんか違うんだよね」ではなく、ちゃんと出口が見えている意見を言ってくるからわかりやすいと話していて、ちょっと意外だったんです。個人的にはKaryuさんは感覚の人というイメージだったので。

Kayru:(笑)

ryo:本人の中にある正解を提示しないままリターンを繰り返すと消耗していくので、それはクリエイティビティではなくて、次だったらOKになるかな?みたいな精神状態になって良いものが出来ないんですよね。そこは本人がすごく気にして、「もっとこうしたいんだけど、これを試してみたいです」とか、「ここをもっとこうしたいです」と具体的に言ってくれて、「わかった。じゃあやってみるね」っていうキャッチボールがちゃんと出来ているという感じがありますね。ちゃんと気を使ってくれているし、僕もそれに応えようとしているし。

なるほど。

ryo:あと、横さんに関しては、もう10年以上一緒にものを作っているので、Karyu&ryoの二人でやり取りをしていたとして、なんでそういうやり取りをしているのかも、言わなくても伝わっている感があって安心というか。そこで「僕は違うと思うな」と入ってくると、「え、じゃあどっちに行こうか?」って迷うと思うんですけど、今のところそういうことはすごく少ないし、俯瞰してものを見てくれている横山という人物が、良いバランスを作ってくれているなというのはありますね。

横山:この3人が20代とか30代だったら、もう大変だったと思いますよ(笑)。全然ハグしていないと思います(笑)。

Karyu:確かに(笑)。1曲でもう揉めてますよ(笑)。

ryo:「言っていることはわかるけどさぁ…(怒)!」みたいな(笑)。

Karyu:絶対なってる(笑)。

ryo:同じ活動をしてきたわけじゃないですけど、各々が高めてきたスキルや対処方法がある状態で今、融合している感じですかね。

横山:今、出会った意味があるような気がします。

Karyuさんがやりたいことをバックアップする形から始まったということで、約1年前の時点では横山さんは「僕はこんなことをやりたい!」と言うのは、まだ控えていると話していましたが、ついに横山さん作曲の「BUTTERFLY」が生まれました。

横山:実は今年に入ってからH.U.G用に書いた曲が別にあったんですけど、作っている途中で自分に迷いが出てきて。打ち込みのリズムの曲なんだけど、TAKEOさんの生ドラムを意識したアレンジで…とか考えていたら、頭がクラッシュしちゃったんですよね。悩みが出ている曲って多分違うんだろうなと思って、途中段階の曲をKaryu君にチラ聴きしてもらって「違うかな? …違うね」と、ボツにしたんですよ(笑)。

Karyu:そうでしたね(笑)。

横山:その後、もういいや!ってガーッと勢いで作ったのが「BUTTERFLY」だったんです。TAKEOさんのドラムの想定を一度忘れて、まず構成だけ決めて。サビまではすごく機械的にして、元々は1サビもリズムが速くならずにゆっくりのままだったんですけど、曲としてはOKで遊べそうだねとなってから詰めていく中で、Karyu君とサビはガッといきたいねとなって、そこら辺を作り上げていきました。

そうだったんですね。

横山:最終的にリハでTAKEOさんに叩いてもらってドラムを決めたので、僕のデモのドラムと最終的に音源になっているドラムは違うものになっています。ということで、天才ではなく秀才な(笑)、色々な頭脳を集めた作品になってしまいましたけど、Karyu君が作らないようなタイプのものを僕は作るべきなんだろうなという意識があったので、とりあえず一作目としてはこんな形になりましたね。

確かに、Karyuさんの曲との違いを感じる雰囲気があります。ちなみにすごく細かい部分ですが、個人的には2Bとサビの間がカッコいいなと思っていて。

Karyu:お、間奏。

横山:ちょっと空けているところですね。あそこはすぐに行きがちですけど、ちょっと広い空間にしたいと思って。ryoさんにとってはトラップですよね(笑)。

ryo:もう大丈夫です(笑)。

それと、全編を通して歌をかなり重ねているのが面白い音色になっているなと。Aメロのオクターブ上も印象的です。

ryo:そうですね。バストラックと言って、声をまとめてデモを組み上げていくやり方にスイッチしたんですよ。普通だと、メインの歌を録ってコーラスをはめていって完成ですけど、複数のトラックをギュッとまとめて絞ってやる音の重ね方が、H.U.Gのバンドサウンドにはハマりそうだなと思って。色々デモ制作の手法を調べながら作っていって、今のところはこの形がH.U.Gのスタンダードになっています。だから、他の曲も大なり小なり色々な声で埋めていっていますね。

確かに。

ryo:やっぱりH.U.Gの音は、ドラムのバチバチッとしたアタック感みたいなものを非常に大事にしているので、普通に歌を録ってエンジニアさんに投げると、どうしても埋もれがちなんですよね。それを立たせるための色々なトライ&エラーをしながら、今のスタイルに落ち着いてきていて。これから先、また変わっていくかもしれないですけど、現状このアルバムに関してはそういうアプローチをしています。

「BLOOD PIN」「WHO IS THE ROMEO」はライブ曲の印象が強いですが、ワンマンをやる上で欲しいパーツを足したという感じでしょうか。

Karyu:その通り。「BLOOD PIN」のタイプの曲はなかったし、このテンポ感とかライブでは絶対に必要な曲だろうなと思って。でもサビはちゃんとキャッチーにというのを気を付けながら作りました。

勢いで行き切る感じかと思いきや緩急がすごくて。

ryo:サビで急に天井がドンッと高くなる感じが良いですよね。

Karyu:僕的には間奏を一番推しているんですよ。がむしゃらに頭を振る感じで。

「WHO IS THE ROMEO」はSNSで「#ROMEOで跳ぶよ」をよくお見かけしています。

ryo:やっぱりお客さんと一緒にライブを楽しみたいねというのがあって、ライブで色々試しているんですけど、この曲もそういうことの取り組みの一つですね。

横山:ライブでやってから、ここで跳んでもらおうという部分の歌詞が変わりましたからね。

ryo:あ、そうですね。元々は〈3,2,1 UP!!〉じゃなくて全く別の言葉を当てはめていて、ライブのゲネで変えることになりました。

横山:Hyperな方のご意見が(笑)。

Karyu:(笑)。フェスとかで見るような、お客さんが一度座ってからジャンプするというやつをディスパでも昔やっていて、すげー楽しかったなというのがあったので、それをもう一回やりたいなと想定して作ったんですけど、二人に説明していなかったんですよね。なので、ゲネで説明して「ここ、座ってジャンプをやりたいんです」と(笑)。そこから急展開で詞を変えてもらいました。

ryo:結果、めちゃくちゃ盛り上がる曲になりましたね。

絶対に納得させられるものを作れているという自信がある(Karyu)

「SEEDS」が今作のリード曲です。最初、ツアータイトルでもある「LOVE THAT NEVER ENDS」がリードになるのかと思っていたのですが、もしかしたら「SEEDS」が生まれる前はその可能性もあったのでしょうか?

Karyu:ありましたね。映像関係も含めて、そういう感じで作っていたところもあります。「HEART」「LOVE THAT NEVER ENDS」「SEEDS」はタイトルチューン的な扱いでもあるし、僕はFC内でデモから聴いてもらったりしていて、アンケートを取ったら「SEEDS」がすごく人気があったんですよ。僕的には初めは「WHO IS THE ROMEO」とか、ちょっと捻じ曲がった考えでいったほうが面白いかなとか思っていたんですけど(笑)。

横山:MVを撮る時に推していたもんね。

Karyu:でも、大勢の意見がそうなのであれば、そっちのほうが伝わりやすいんだろうなと。結果、ryoさんの詞の世界観もマッチして、一番推すべき曲だなというふうになりましたね。

最新曲という点や、キャッチーさがありつつ各パートがそれぞれ魅力的で、なおかつ歌詞の意味合い的にもメッセージソングというところで、最終的にやはりリードにふさわしいなと納得でした。

Karyu:僕、すごく昔から、曲を作ることに関して「種を撒いている」っていう表現を色々なところで使っていて、それをryoさんには伝えていなかったですけど、今回この曲の括り方として使ってくれていて、その偶然性みたいなものもすごく良いなと感じています。

Cメロの部分の歌詞がこの楽曲の核となる部分だろうなと。

ryo:そうですね。そこが一番この曲の肝です。あとはH.U.Gをこうしてガツガツ動かしていく理由みたいなものとも紐付けています。僕、曲は楽器隊に任せますけど、歌詞を書いて歌を録っていて「これヤバいな」となる時は鳥肌が立つんですよ。自分で作ったものとは言え「SEEDS」はゾゾゾッと来て「あ、これ良い。マジで良い」となって、自信を持ってデモを返しました。

ライブで横山さんによる鍵盤のフレーズから始まるのも美しいです。

横山:デモでピアノが入っていて「あら、お洒落」と思って。僕、このバンドで音色としてのピアノを弾くって、全く意識していなかったんですよ。もうちょっとデジタルなシンセかなと勝手に思っていたんですけど、Karyu君のデモでピアノが入っていたので、「そうか。別に頭を固くする必要はないか」と思って、手癖を意識して変えて弾きました。あの…良いですよね(笑)。

全員:(笑)

横山:リハで同期を流さずに練習がてらポロンと弾いた時に「横ちゃん、それモテるよ」と言われて(笑)。

Karyu:言った言った(笑)。

横山:「すっごいモテるから、それ弾いたほうがいいよ」となったのが、最後のSEなんですけどね。

素敵ですよね。

横山:まぁ、しょうがないですよねぇ(キリッ)。

ryo:Geniusなんで(笑)。

Karyu:クソ〜ッ(笑)!

Geniusの取り合い(笑)。

Karyu:実は元々「SEEDS」はボツ曲だったんですよ。出だしの部分だけあって、バラードにしたいなというところで進まずに終わっていたというか。曲を作らなきゃとなった時に、それをもう一回取り出して聴いてみて、もうちょっとライブっぽくしようという発想で、出だしだけバラードっぽい感じで、そこからガラッとアグレッシブにいってやれというところから組み立てていきました。

横山:じゃあタイミングが良かったんだね。熟成した感じ。

Karyu:だから面白い構成にもできているかなと。

横山:珍しくギターソロがあるもんね。

ところで、約1年前にryoさんは「この二人とやる時の自分の歌という部分で、新しいカードを増やしたいなというのがあって。そこを新たに獲得しながら特徴にできたらいいなと思いながらやっている」と話していましたが、現時点の自己評価としてはいかがでしょう?

ryo:よく頑張ったなぁという感じですね。歌詞の表現の仕方とか、例えば「WHO IS THE ROMEO」のクリーンの歌からガナリに繋がっていくような、ちょっと洋楽っぽい歌い方とか、今までちょいちょいはやっていましたけど、前面に出してやることはなかったので、そこは新しいカードを獲得して活かしていけているなと。そういう意味では及第点をあげてもいいかなと思いますね。

ちなみに、「DROP」の2サビ後の英詞部分のアプローチが特徴的でカッコいいなと思って。

ryo:色々試してはいるんですけど、デモの声の出し方とCDになっているあそこの歌い方はちょっと違いますね。より突き抜けた感じはあります。ただ、ライブでそればかりやると、お客さんの耳が痛くなっちゃうので、ある程度バランスでという話はしていて。なので、ライブでは必ずしも毎回あれをやるわけではないですけどね。

記事公開時にはツアーも残すところ7月7日、白金高輪 SELENE b2でのファイナルのみとなります。そういえば、昨年のイベント時には横山さんはO-JIROさん(PENICILLIN)のドラムパッドを借りていましたが、その後どうしているのでしょうか?

横山:本体はお借りしたものと同じものを買ったんですよ。で、足場とパッドは…まだO-JIRO君LOVEです(笑)。お陰様でツアーを回らせてもらっています。

Karyu:感謝しております。

セットリストは毎回少しずつ変えているようですが、Karyuさんの地元山口では『HELIOS』に収録されていない、さらなる新曲「HELIOS」を初披露したんですよね。

Karyu:まだ曲が足りないというのもあって、さらに作りました。自分の中では『HELIOS』というアルバムのタイトル曲を、なぜか今作っているみたいなところはあるんですが(笑)。「HELIOS」というワードとアルバムで表現したいことを詰め込んだ感じにしたいなってのもあって、デモの段階で「HELIOS」の言葉を入れちゃって、ryoさんに「HELIOS」でお願いしますと(笑)。これが逆に今後アルバム『HELIOS』と繋がって色々遊べるなと思っています。

タオルが舞う曲だそうですね。

Karyu:FCの中でチャットをやっている時に、タオルを投げる曲をやりたいという話になって、その思いつきから曲に繋がっていった感じですね。

横山:Karyu君の曲の作り方として、ライブの画が見えるというのが重要な要素であり、特徴なんだなと1年やってきて感じました。パフォーマンスと、お客さんとの関係性を曲に反映させたいというのが、まずあるなと。

では最後に、ファイナルに向けての意気込みをお願いします。

横山:やる度にバンド感がまとまってきているし、お客さんと作り上げていく過程が非常に熱くて盛り上がっていて楽しいです。最終日はやはりすっごく良いライブになって、さらに次の展開が見えるものにしなくちゃいけないので、楽しみつつも色々試しながら可能性を探っていきたいと思っています。皆さんに来てほしいし、来られない方は配信を観てほしいなと思います。

ryo:最初のセッションバンドのステージは別として、H.U.Gとして正式始動してまだ1年経っていないんですけど、この1年近くの集大成と未来を感じられるような1日になったらいいなと思います。1年間でバンドがどう変化して、どういうふうに曲が増えて、どういうライブ運びをするようになっていったのかというのを、ドキュメンタリーのように一緒に楽しんでもらえるんじゃないかなと思います。ぜひ遊びに来てください。

Karyu:まだ始まったばかりのバンドなので色々試している段階ではあるんですけど、D’ESPAIRSRAY、Angeloで自分のことを知ってくれているお客さんには必ず観てほしいし、ryoさんと横ちゃんの過去を知ってくれている人も含め、絶対に納得させられるものを作れているという自信があります。なので、今、僕たちが何を作っているのかというのを一度は絶対に聴いてほしいし、ライブを観てほしいなという強い思いを持っています。7月7日、配信でもいいので観てください。

(文・金多賀歩美)

H.U.G

ryo(Vo)、Karyu(G)、横山和俊(Mani&Key&Per)

オフィシャルサイト

リリース情報

New Album『HELIOS』
2023年6月10日(土)発売
※ライブ会場&オフィシャルサイトにて販売

[CD]SIXR-001L ¥3,300(税込)

収録曲
  1. The Wonderful Visit
  2. HUG[B:Ni~ya(NIGHTMARE)]
  3. DROP[B:祥平(アルルカン)]
  4. HEART[B:ZERO(THE MICRO HEAD 4N’S、OFIAM、Luv PARADE)]
  5. DON‘T DOUBT[B:kazu(gibkiy gibkiy gibkiy)]
  6. LOVE THAT NEVER ENDS[B:MASASHI(Versailles)]
  7. BUTTERFLY[B:kazu(gibkiy gibkiy gibkiy)]
  8. BLOOD PIN[B:MASASHI(Versailles)]
  9. WHO IS THE ROMEO[B:Яyu(Ashmaze.)]
  10. SEEDS[B:燿〜yo〜(摩天楼オペラ)]
  11. Breath of the Souls

ライブ情報

●「H.U.G TOUR 2023 LOVE THAT NEVER ENDS」FINAL
7月7日(金)白金高輪 SELENE b2
サポートメンバー:NAOKI (B)、TAKEO(Dr)

●Luv PARADE主催イベント「DEVIL’S PARTY♯3」
7月9日(日)新宿BLAZE
出演:Luv PARADE、Moi dix Mois、H.U.G、NoGoD
H.U.Gサポートメンバー:MASASHI(B/Versailles)、TAKEO(Dr)

●THE MICRO HEAD 4N’S & defspiral Coupling Tour 2023 9BALL GAMES -4th-
8月26日(土)新宿BLAZE
出演:THE MICRO HEAD 4N’S、defspiral、H.U.G(GUEST)、SPLENDID GOD GIRAFFE(O.A)
H.U.Gサポートメンバー:NAOKI (B)、TAKEO(Dr)