GOTCHAROCKA

結局ユニークさみたいなものがないとつまらない(JUN)

JUN

「NONFICTION」の歌詞は戦争がモチーフでしょうか?

樹威:戦争がモチーフではありますけど、きっかけはちょっと違って。近所の駅に鳩がいっぱいいて、壁にビターッとくっ付いている時期があったんですよ。なんで今日ここにいるんだろうと思ったら、日差しがめっちゃ強くて鳩も暑いんだなと。その隣で選挙活動か何か演説をしている人がいて、その周辺でビラも配っているんですけど、素通りしていく一般の人たちもいて、その様子が滑稽というか、何だろうなこれと思って。そこから、鳩って平和の象徴だし、鳩もそういう意味で壁に避難しているのかなとか色々想像して、そういうところから歌詞を書いてみようかなと思いました。

JUN:この曲は樹威さん原曲で、それをアレンジしていきましたね。

樹威:元々はサビがこんなに激しくなかったですね。多分、倍テンしたんだよね?

JUN:そうですね。さらに激しくして、楽曲として伝わりやすくするために色々と変更した部分もあるんですけど、この曲をデモで聴いた時に危機感を感じる雰囲気とポップスが混ざっている印象があったので、その緊張感を取ったらダメだなという感覚で音をまとめていきました。そのシリアスさや緊張感を、今回はノイジーな雰囲気のサウンドで仕上げるというのがイメージとしてピッタリだったので、結構ギターでもそういう雰囲気を出して、危なげな空気を出せたらいいなと、それで突っ切って終わるというアレンジをさせてもらいました。

樹威:流れを止めないでいくという雰囲気はあったかもしれないですね。

今作の中ではこの曲が一番シンプルかなと感じました。

JUN:サビが一番特徴的であってほしいなと思ったので、他のものは削いだという感じですね。この曲がダラけることがあってはいけないぞと、大砲を打ったらそのまま向こうまで飛んでいけみたいな(笑)。

(笑)。次の「MURKY」が個人的に特に好きです。かなりギターのフレーズが目立つ曲でありつつ、メロディーが本当に素敵で。

JUN:ド頭に鳴っているギターフレーズから作りました。でも、全貌は頭の中にあって、簡単に言うとミドルテンポのロック系の部類になると思うんですけど、ライブで聴き入ってもらうというよりも、ミドルかつリズムでしっかりノレる強さのある曲を作りたいなと。それでリフを活かしつつも、やっぱりメロディーの華やかさがないと完成しないと思っていたので、樹威さんが歌ってハマるスタンスというのが、ああいうサビになりましたね。

サビの美メロに胸がギュンとします。

JUN:歌が入った時に訴えかけてくる印象にしたいなと思ったのと、この曲もやっぱり「宵」ができたことによって、どういうサウンドに持っていくかが決まりやすかったです。「宵」の歌詞の話にもあったような汚れた部分とか、汚いと綺麗のギリギリのところみたいな、そういう感覚があったりして。だから音で言うノイズですよね。それをどう扱って形にするかという、トータルの世界観をサウンドで大分出せたかなと思っています。

「MURKY」というワードは「暗い、暗くて前方を見通せない、淀んだ」といった意味合いなので、より合点がいきました。

樹威:選曲会で聴いた時に、表題は「宵」でいいけど、それ以外だと僕も「MURKY」を一推ししていましたね。色々なことができそうな曲だなと思って。Aメロ、Bメロ、その次のセクションも違うのがあって、すごくいっぱいセクションがあるのがいいなと。で、サビは悲しげな、ちょっと憂鬱な雰囲気があったり。とは言え、ツーバスがドコドコドコってサビの後半に入ってきたり、結構激しいんですよね。完成した今もいいなと思っている曲です。

十夜:ギターのリフも印象的ですけど、イントロ、Aメロ、Bメロ、サビというのが、世界観が全部違うんですよね。僕のイメージとしては、最終的には一つの大きい部屋なんだけど、その中に一個一個部屋があって、「はい、最初はイントロの部屋に来てください」「楽しかったですね。じゃあ次はAメロの部屋」みたいな感じで、部屋の中身の楽しみがそれぞれ違うイメージなんですよ。それがすごく魅力的で、最終的に大きな箱に入って1曲になっているという感じですね。

JUN:カッコいいものを作ると言っても、結局ユニークさみたいなものがないとつまらないなと思っちゃうところはあるから、そういうのが形になっているのかもしれないです。Aメロがあって、Bメロでちょっと激しくなって、その後サビ前でファルセットのセクションがありますけど、あそことかめっちゃ好きですね。あの部分があるとないとでは、大分変わると思うんですよ。

あのブロックの怪しいギターフレーズも良いですよね。

JUN:怪しいんだけど、若干小馬鹿にしているフレーズにしているんですよ。これも個人的な感覚で…怪しくしたいけど、ちょっとコミカルみたいなバランス感をどうしてもとりたいというか。そこで例えば怪しさを100%出そうと思ったら、マジで怪しくなって使いものにならないというのがGOTCHAROCKAのバランスだと思うんですよね。

なんとなくわかる気がします。そして「ENDORPHIN」は、ド頭の楽器隊のユニゾンで激しい曲なのかなというところから、歌が入ると印象が変わるなと。

樹威:僕もメロディーを付けた時、どっちにしようかなと思いました。例えば、ド頭の印象を引きずっていく方向だったら、多分Aメロのニュアンスは今と違ったと思うんですけど、最終的にこの形に着地しました。Aメロで曲の雰囲気が違って聴こえるんだろうなというのは思っていましたね。

JUN:実は選曲会の時にこれ以外の5曲が決まって、あと1曲しっくり来るものがないなぁと、そこから作り始めた曲なんですよ。サビから作り始めたんですけど、すごくライブ感を想像できるものになったので、シンプルさとスピード感を混ぜて仕上げました。冒頭で結構激しくてパンチ力のあるイカつい曲が来るのかなと思うけど、意外とそうでもないというのは、土台が元々ポップスを逆にそっち方向のニュアンスにはめ込んでいるというのがデカいかもしれないですね。

そういうことだったんですね。

JUN:めっちゃ激しい曲を作ってやろうというよりは、ロックポップスのスタンスを曲のアレンジによってテンションの良い曲に変えていったという。あと、サビは樹威さんが歌っていてライブで愛溢れる空気になっていくものがいいなと思って作りました。

歌詞の内容としてはレクイエムというか、残された側の思いなのかなと。サビは耳で聴いていたらすごく温かいのに、歌詞を見ると〈死合わせ〉という。

樹威:サビを聴いた時に、僕がちょうど観ていた映画の墓に花を手向けているシーンを思い出したんですよね。言ってしまうと、映画は『プライベート・ライアン』なんですけど。漠然と海外の墓というイメージがパッと思い浮かんだんですよね。

ちなみに、このギターソロのハモリはツインですか?

JUN:はい、いきなりツインになっちゃいますね(笑)。この曲だけギターソロは良い意味で王道にしています。

ツインでのギターソロというのは、音源を作る時にお二人の間でディスカッションはするのでしょうか?

JUN:作曲している時に僕がフレーズを作ってしまうので、もうできちゃっています。あとで、ここのニュアンスどうしようとか、ライブでの演奏に向けてのコミュニケーションはありますけどね。

十夜:この曲はサビの綺麗なメロディーからギターソロのメロディーラインに流れていくのが、僕のイメージではピアノで演奏されている曲を聴いているような感覚で。だからその音符の綺麗さはすごく聴きどころなんじゃないかなと思っています。すごく好きなところですね。なので、ハモリは外さないようにしっかりライブで弾こうと思っています。

1曲1曲かなり濃度の濃いものに仕上がっている(十夜)

十夜

「THE PIGS」にはJUNさんのヴォーカルパートもありますね。

JUN:ラップっぽくやろうと思ったんですけど、感覚で言葉を入れていったらこういう感じになって。ユニークな曲にしたかったので色々な要素を入れたくて、僕の声も入れてみようかなと。あと、僕がガヤガヤ言っているところに、樹威さんのファルセットが鳴っているというものを前々からやりたいなと思っていたんですけど、あえてそういう曲を作ろうとすると良くならないなと思っていたので、作っている最中に「ここにハマりそう!」と思う時にやりたいなと思っていたんですよ。それで、この曲はいけそうだなと。だから、以前あったようなツインヴォーカル的な形とは違って、楽器の一つとして僕の声が入ってきて、樹威さんもまた違ったアプローチでいるという面白みが組み込まれたらカッコいいかなというのを形にした曲です。

確かにそのセクションは面白いなと感じました。

JUN:僕、「みちのくダヴルドラゴン」のライブ(3月4日開催@渋谷REX)を観に行ったんですよ。客席から樹威さんの声を聴く機会って、普段あまりないじゃないですか。久々に聴いて、やっぱり素敵やなと思って。色々なアプローチをするにあたって、ファルセットで歌っている時に出る一つの良さは、やっぱりいいなと改めて感じたんですよね。その時にはもうこの曲の構成は作っていたんですけど、やっぱり間違っていなかったなと思えたので、ライブを観に行って良かったなと思ったし、後押しされましたね。

樹威:あの翌日が選曲会だったもんね(笑)。

JUN:そうだ(笑)。色々なヴォーカリストがいて、できるできない、似合う似合わないとかもあるじゃないですか。樹威さんのファルセットはカッコよさの一つだなと。これはサビに持ってくるほどの部分ではないですけど、合間合間でこういうのが入ってくるのは独自性というか。GOTCHAROCKAだからできるスタンスというのは今作でも出したかったので、これは素敵だなと思います。

歌詞はエロティックな内容だけど意味深で。

樹威:この歌詞は結構後半に書いたんですよ。前半は内容的にはどうしても陰に入っていた部分があったんですけど、この曲はそうじゃなく、遊べそうだなと思ったので取っておいたんです。だから、この曲の歌詞を書いて仮歌を入れている時が楽しかったですね(笑)。それまでが楽しくなかったわけじゃないけど、気が楽な感じで、リズムを感じて楽しみながらロックできるなという曲だと思ったので。内容も僕としては今作の中で一番幸せな歌なんですよね。世界に置いていかれている男女の物語というイメージです。欲を満たしている時って、時が止まっているよなという風刺もありつつですけど。

全部を明かしてしまうと面白くないのかもしれないですが、冒頭のUとCとM、後半のHとGが意味するものとは?

樹威:冒頭はただUとCは反転させても同じ形にならないな、だけどUとMは反転させてもUとMだなという、そんなことを適当に書いただけですよ(笑)。

意外とそのままだったんですね(笑)。

樹威:HとGは、セッ●スとオ●ニーのことを言っているだけです(笑)。

なるほど(笑)。

JUN:アルファベット一文字の歌詞を歌った時に、すげー曲にハマる感じというのが「MURKY」でもあって。樹威さんが仮歌のデータを送ってくれた時に、いつも「さてさて、どんな歌が入ってんやろ?」と思いながら聴くんですよね。それで「MURKY」を聴いた時に冒頭からアルファベットを歌っていて、これ何て言ってんやろ?と歌詞を見たら、なるほどPCのコピペのやつかと(笑)。これ、知らない人はわからないやろな。

樹威:Macを持っている人は知ってるでしょ(笑)。〈CMD C CMD V〉。

JUN:曲の世界観と言葉の雰囲気が、曲を作った時のイメージとすげー合っていて「これ、めっちゃいいっすね」とか言っていて。「THE PIGS」にもアプローチは違えど入っていて、アルファベット一つを面白く使うやり方はカッコいいなと思いました。

これは何だろう?と考える楽しさもありますね。

樹威:実際は大した意味もなかったりするという(笑)。

JUN:遊んでいい曲も楽しいですよね(笑)。

遊んでいい曲という意味では、「White-Hymn-Choirs」も耳障り優先で書いた歌詞なのかなと思ったのですが、いかがでしょう?

樹威:その流れで言いたいことを全部言おうと。遊びながら歌えたらいいなと思って書きました。タイトルの頭文字を取ると「WHC」なんですけど、WHO(世界保健機関)みたいな響きの歌にしようと思ったのが最初で。それで、怪しい集団ですよという歌にしたいなと思いました。デモを聴いた時に皆で合唱している感じだったので、そういう雰囲気がいいなと思ったんですよね。

オーディエンス参加型のライブ曲がまた新たに完成しましたね。メインのリフと歌がユニゾンする箇所も、ヴォーカルとギターの3人編成のバンドだからこその良さが出ますね。

JUN:無駄がなくていいっすよね(笑)。他に違うフレーズや色々な音が入っていたら、WHCの濃度が…(笑)。ちなみに、この曲はデモを作った時に仮タイトルが「ダダ」だったんですよ。お客さんと一緒に歌おうとしている部分が、デモ段階では〈ダダダダダーダー〉だったので。歌詞ができて、それをぼんやり見ながら聴いていたら、駄々をこねているように聴こえてきたのが個人的に面白かったです(笑)。そもそもこの曲は、GOTCHAROCKAでリハをしている時に思いついたんですよ。

そうだったんですね。

JUN:色々な曲があって、色々な良さがあるバンドだけど、このパーツってやっぱり外せないなとリハをやっている時に思ったんですよね。テンションで行ききってOKだよという感覚になって演奏したり、お客さんが楽しんで観てくれているというのは外せないなと、今作にもやっぱり入れたいなと思って。〈ダダダダダーダー〉の鼻歌から作ったので、それさえあればいいわという曲です。

もうそのメロディーラインがGOTCHAROCKAっぽいですもんね。

JUN:そうっすね(笑)。

十夜:やっぱりこういう曲は楽しいですよね。樹威さんの歌詞だったりJUNの音で遊ぶ感覚というのは、目に見えて形になっていることが多いと思うので、お客さんもやっと声を出せるようになってきたし、ライブでやるのが楽しみですね。

『CAST』を引っ提げた全国ツアーが7月8日にスタートし、8月18日にツアーファイナル兼11周年ライブ@duo MUSIC EXCHANGEを迎えます。GOTCHAROCKA恒例の盛りだくさんな夏が控えていますが、8月19日には「12周年から一番遠い記念日」という例年にない新たなライブもありますね。

樹威:めでたいようで、一番めでたくない日です(笑)。何でもない日ですね。

JUN:マラソンで走ってきてゴールテープを切ったと思ったら、スタートのパンッをもう1回鳴らすみたいな(笑)。

では最後に、ツアー&11周年に向けての意気込みをお願いします。

十夜:今作が1曲1曲かなり濃度の濃いものに仕上がっているなと思っていて、ライブでやるのが楽しみです。お客さんは先に音源として聴くかもしれないですけど、ライブでの感じ方はまた違うと思うし、積み重ねていくと、お客さんや僕らの演奏の具合も変わってくると思うんですよね。今までの曲たちに新しい曲たちが加わって、ライブの印象がまたどう変わってくるのかなというのも楽しみなので、皆さんもそういう部分も楽しみつつ、気軽に足を運んでくれたらいいなと思います。

JUN:新しい曲が6曲増えるわけですけど、「11年目のGOTCHAROCKA、やっぱりカッコよくて、ライブ楽しいでしょ?」って、楽しませることを軸にして作った作品なので、絶対楽しいと思うな〜と、制作しながらめっちゃ思っていました。なので、皆と一緒にツアーで大盛り上がりできたらいいなと。また新しい僕らの魅力を使って楽しみに遊びに来てもらえたら、今年も熱い夏になるんじゃないかなと思います! 待ってます!

樹威:毎年のことですけど、夏はリリースして全国ツアーを回るというのがGOTCHAROCKAの中での一番の大イベントだし、楽しみでもあるので、一箇所一箇所、楽しむために気合を入れて臨んでいきたいなというのが今の正直な思いです。各地方遊びに行きますので、ぜひ皆さんライブに来てください。よろしくお願いします!

(文・金多賀歩美)

GOTCHAROCKA

樹威(Vo)、JUN(G)、十夜(G)

オフィシャルサイト

リリース情報

New Mini Album『CAST』
2023年7月5日(水)発売
(GOD CHILD RECORDS)

[限定盤](CD+DVD)GCR-237 ¥3,190(税込)

[通常盤](CD)GCR-238 ¥2,640(税込)

収録曲

【限定盤】
[CD]

  1. NONFICTION
  2. MURKY
  3. ENDORPHIN
  4. THE PIGS

[DVD]

  1. 宵(Music video)

トレカランダム封入(限定&通常&memorial edition同絵柄全4種)

【通常盤】
[CD]

  1. NONFICTION
  2. MURKY
  3. ENDORPHIN
  4. THE PIGS
  5. White-Hymn-Choirs

ライブ情報

●樹威Birthday live ロミオ&ジュイエット物語’23 ~ワインレッドの夢芝居~
6月30日(金)新宿ReNY

●GOTCHAROCKA 11th anniversary tour ~D1MLY L1T FLOOR~
7月8日(土)西川口 Hearts
7月9日(日)西川口Hearts
7月15日(土)札幌SPiCE
7月17日(月・祝)仙台MACANA
7月20日(木)神戸VARIT.
7月22日(土)名古屋ell.FITS ALL
7月29日(土)広島SECOND CRUTCH
7月30日(日)福岡DRUM SON
8月4日(金)OSAKA MUSE
8月6日(日)静岡Sunash

●TOYA BIRTHDAY LIVE ブルーライト横濱浴衣祭’23 ~今宵は至高の一杯を~
8月11日(金・祝)新横浜NEW SIDE BEACH!!

●11th anniversary tour ~D1MLY L1T FLOOR~ TOUR FINAL -The 11th anniversary day-
8月18日(金)duo MUSIC EXCHANGE

●GPS主催 ~12周年から一番遠い記念日~
8月19日(土)SHIBUYA REX