BLUEVINE

雨上がりの虹と思い出の種――。2ヵ月連続リリース作品『ROY G.BIV』『memento』の全貌、活動3周年を迎えるBLUEVINEの今。

2020年3月のミニアルバム『RAINDROP』発表後、コロナ禍の影響により様々な活動の中止・変更を余儀なくされた1年を経て、2021年6~7月に行われたBLUEVINE初のアコースティックライブツアー「Another RAINDROP」は、バンドを進化させ、ファンとの絆を深めるものとなった。そして2022年、活動3周年を迎える彼らが、デジタルシングル2ヵ月連続リリースを発表。その新曲「ROY G.BIV」「memento」と昨年のツアーについて、そして今後の展望をBLUEVINEの3人に聞いた。


この3人ならではの可能性を感じました(赤松芳朋)

昨年6月5日~7月17日のBLUEVINE Acousitc Tour 2021「Another RAINDROP」が、約1年半ぶりの“ツアー”でしたが、久々にツアーが開催できた時の思いはいかがでしたか? 初日とファイナルでの感覚の違いなどはありましたか?

生熊耕治(以下、生熊):アコースティックでもいつものスタイルでも、皆さんの前で演奏できてメンバーとツアーを完走できる喜びは同じでした。ツアーの中でメンバー、ファンとの絆が深まった感覚もしっかりありましたね。それとバンドアコースティックには、その良さがきちんとあるなと思いました。

赤松芳朋(以下、赤松):このコロナ禍で、お客さんも声が出せない中で、やはり人前でライブができるというのが嬉しかったし、改めてライブの楽しさを実感しましたね。やり慣れた3人なので、ライブの中で曲が育っていったし、この3人ならではの可能性を感じました。

AKI:1年半も空いていたんですね。一言で言うと「やっと」。BLUEVINEは楽曲や空間を共有することに重きを置いているバンドだから、何か方法はないかとメンバーと話し合った結果、あれが実現できる選択肢の一つかなと。とは言っても、始まるまではインストアイベントやファンクラブイベントの感覚に近かったです。本数を重ねて、『Another RAINDROP』の成長と共にツアー感って言うのかな、あの懐かしい感じが蘇ってきて。足を運んでくれたファンの方に感謝しています。

ミュージックカードという形で会場販売された『Another RAINDROP』(2020年3月発売ミニアルバム『RAINDROP』のアコースティックver.)の制作とツアーのアコースティックアレンジを通して、楽曲やバンド、自身に新たな気付きはありましたか?

生熊:BLUEVINEの楽曲はメロディーがしっかりしていると思うので、より歌が引き立ったと思います。歌に関して言うと、呼吸まで含めて歌にしたい思いがより強くなりました。AKIちゃんのピアノが更に世界を深くしてくれたなぁと思います。

生熊さんの歌の進化をとても感じましたし、AKIさんがピアノを担うことができるのは、BLUEVINEの強みですよね。

AKI:ピアノアレンジの楽曲に関しては、最初から最後まで僕のピアノソロという感覚で。鍵盤を弾くと人格が変わるタイプみたいです。車を運転すると人格が変わる人っていますよね? あれのピアノ版。極論、歌と伴奏だけで成立してしまうから自然とエゴが出てきてしまうんです。中途半端なエゴは必要ないから、どうせなら貫いてみようと思って。普段のベースっていうポジションとは真逆のアプローチができるから、アコースティックアレンジを一番楽しめたのは僕かもしれないですね。

生熊:赤松のドラムは音量やビート、ハートも含め、アコースティックでもしっかり歌に寄り添ってくれていて、どんな形態でもBLUEVINEとして成立することがわかりました。

赤松:BLUEVINEになる以前から、この3人でバンドからアコースティックまで経験もあったので、あまり不安要素はありませんでしたし、ライブをする毎に曲の中でも遊びができるようになりましたね。

コロナ禍がなかったとしたら、昨年のタイミングでBLUEVINEでアコースティックアレンジをすることはなかったと思いますか?

AKI:なかったと思います。新曲を作っていたんじゃないかな。

赤松:いずれは何かしらのきっかけでやるだろうとは思っていましたけどね。アコースティックver.というよりも、曲自身の成長や変化として捉えていました。

生熊:いつかはやりたいなぁと、ぼんやり考えていたんですけど、一昨年の年末にクラウドファンディングのリターンでアコースティックライブをやって、それができることをメンバーで確信したんですよね。

あれが昨年のツアーの布石になったということでしたよね。そして、そのツアーの模様を映像化して、昨年12月にBLUEVINE FILM LIVE2021「Another RAINDROP -The Movie-」が開催されましたが、フィルムライブという初の試みの率直な感想を教えてください。

生熊:2021年の8月はこの編集に全てを捧げていたので、開催できて本当に良かったです。会場のフィルムクラブユートピア南青山はAKIちゃんと下見に行ったんですけど、素敵な場所だったので、望まれるならまたやりたいなぁと思います。次回はPCのスペックを上げたいです(笑)。

赤松:前々からこういうこともありだろうなと考えてはいたけど、ファンの皆さんと一緒に僕らも映画を観るというのは想像を超えました(笑)。ミニシアターということもあって、シートの座り心地の良さに、後半は睡魔との戦いでしたけど(苦笑)。

AKI:今回はシアタールームだったけど、映画館とかパブリックビューイングとか色々と共有できる体験って他にもあると思っていて。可能性を模索したいですね。

毎日の積み重ねこそが未来へ繋がり、未来の自分を作っていく(生熊耕治)

昨年2月以来のバンドスタイルでの有観客ライブとなった10月16日「BLUEVINE LIVE 2021 -KOUJI IKUMA BIRTHDAY-」で、新曲「ROY G.BIV」を初披露、11月25日のThe THIRTEENとのツーマンでも披露されましたが、演奏した感触はいかがでしたか?

赤松:BLUEVINEを見慣れたお客さんからしたら「ROY G.BIV」が新曲ですけど、その日初めて観ていただいた方にとってはどれも新曲なわけで、新旧の差を感じさせず演奏することを徹底していた気がします。

生熊:バースデーライブは発声できない、暴れられない、観客数はキャパの半分以下という諸々制限のある中でしたけど、開催できて良かったです。その日、初披露した「ROY G.BIV」は緊張していたなぁと記憶しています。The THIRTEENのイベントの時は既に曲がバンドと一体化していたので、歌もパフォーマンスもしっかり届けられたと思いますね。

AKI:未完成っていう言葉が適切かどうかはわからないけど、僕たち3人にできることは全て音源に詰まっていて。それでもまだ足りない。ライブハウスで、オーディエンスの皆の声が入って初めて完成だと思っています。会場で「ROY G.BIV」を聴いてくれた人って、オーディエンスとしてプロフェッショナルの方だと思うから、僕の思い描いているイメージを共有できているはず。そういう観点では好感触でしたね。

「ROY G.BIV」は虹の7色の頭文字を取ったものですが、このタイトルにした経緯を教えてください。

生熊:前作のタイトル曲「RAINDROP」のアンサーソングにしたかったので、雨上がりの虹を描きたかったんです。「RAINDROP」では〈あの日から虹なら見えてなかった〉とありますが、虹の色を覚えるために使うこの言葉に出会った時に、これしかないと思いました。虹が見えなくても、日々の営みの中にきちんと存在していることを伝えたかった。自分自身の心の成長も描かれていると思います。

赤松さん、AKIさんはこのタイトルを最初に聞いた時、どう思いましたか?

AKI:雨(「RAINDROP」)があがって、虹(「ROY G.BIV」)が出たんだなって。

赤松:僕は初めて耳にした単語でした。説明を受けて虹色の頭文字というのは理解できたんですけど、だとすると「Iってなんだ?」と思って。何はともあれ、インディゴがわかってよかったです(笑)。

(笑)。ちなみに、「ROY G.BIV」の英詞から次のブロックは、バンド内の認識としてはBメロ・サビでしょうか? サビ・大サビでしょうか?

生熊:どうなんだろ? サビなのかな(笑)? 楽曲の構成やメロディーの積み方は、去年ピアノを楽典から学び出したことがとても影響しています。

AKI:前提として、AメロとかBメロっていうのはただの名前で。プリプロ中の呼称としてはBとサビだったんじゃないかな? 覚えてないけど。ただ僕は、Bメロ・サビと、サビ・大サビの違いがわからなくて。もし呼び方でメロディーの良し悪しが決まるなら、「ROY G.BIV」は全部サビです。

なるほど。「ROY G.BIV」後半のコーラス部分は、ライブでのファンの皆さんとのシンガロングを想定して入れたのでしょうか? このアレンジは、どの段階で思い付いたのでしょうか?

AKI:最初から…違うかな? 歌詞がのっていた記憶はあるけど、いつからアレンジとして存在していたかはよく覚えてないですね。

生熊:シンガロングの箇所に元々は〈Rain before~〉の歌詞をはめていたんですけど、ゲネプロの際、AKIちゃんのリクエストに応えた形になります。

AKI:誰でも歌いやすいように〈ラララ〉じゃダメですか?って耕治さんに言ったのは覚えています。

生熊:初めはどうかな?と思っていたんですけど、家でデモを録り直した時にこちらのほうがグッときましたね。もちろん、コロナ収束後に皆で歌いたいという祈りも込めています。

「ROY G.BIV」は特にイントロと英詞部分のリズムに特徴があるのと、全体的に広がりのある音色やコーラスの美しさが印象的です。皆さんなりの「ROY G.BIV」の推しポイントを教えてください。

生熊:自分は歌詞や歌はもちろん、曲にどっぷり浸かって聴いてほしいです。音楽は人が鳴るので今の自分やバンドがしっかり反映されていると思います。

赤松:僕はドラマーなので、歌が全面的に出るようなドラムが叩けたかなと思います。これはどの曲もそうなんですけど、抑揚はすごく意識しましたね。

AKI:いろんな対比があって。例えば、イントロの休符を弾くフレーズとサビのロングトーンのバッキングとか。その対比によって生まれるめまぐるしい場面転換と一貫して流れるテーマ、ここも対比になっていて、そのストーリー性を感じてもらえればと思います。

「ROY G.BIV」「memento」というタイトルは、それぞれ“虹”、思い出の“種”を意味することから、どちらもバンド名の“蒼き蔦”のイメージと繋がりを感じます。そういう部分を意識したところもあるのでしょうか?

生熊:もちろんあると思いますが、そんなに強く意識はしてないですよ。誰の中にもある虹や思い出は題材として深く、これからも描いていくと思います。

「memento」の歌詞は、生熊さんらしいメッセージ性の中にも、片仮名や四字熟語の使い方など考えられた言葉遊び的な部分も感じられます。生熊さんの歌詞としては、このような書き方は新鮮に思えたのですが、ご自身としてはいかがでしょうか。

生熊:実はこの曲は何度も書き直して「memento」になったんです。仮タイトルは「juvenile」と付けていました。子供の頃に読んだ小説や漫画の世界(星新一さん、手塚治虫さん、藤子不二雄さん、ミヒャエル・エンデ、ハーバート・ジョージ・ウェルズ、etc.)を今も探していたり、目指している部分があって。大人の自分たちの中にいる少年像を見え隠れさせたかったというのがあって、少し幼さも歌詞に残したかったんです。四字熟語は日本語の面白さがギュッと詰まった表現ですね。一言で引用できるので素晴らしいです。

〈忘れないでください〉と、敬語が使われているのも珍しいなと思いました。

生熊:敬語を使ったのは完全にメッセージです。コロナ禍で自分も不甲斐ない時もあったりするし、それでも僕自身は曲という思い出の種を蒔ける。メンバーやファン、まだ出会ってないあなたと曲を育てて、BLUEVINEを空へ大きな世界へ向けて昇華させたいんだ!と願った結果、敬語を使った歌詞になりました(笑)。毎日の積み重ねこそが未来へ繋がり、未来の自分を作っていくので、今をどれだけ最高の思い出にできるか?がテーマになっています。

「memento」は哀愁もありつつキャッチーでポジティブなメッセージソングですが、場面転換するBメロや、1サビから2Aへの流れのアレンジが変わっているなと思いました。皆さんなりの「memento」の推しポイントを教えてください。

生熊:スタジオでゲネプロをしていた際に、AKIちゃんから漠然と「どんなイメージですか?」と聞かれて、フェスや野外でたくさんの人に向けて歌っているイメージだと伝えました。Bメロからサビに行く流れとかはそういう感じかな? 赤松のサビ前のフィルが個人的に萌えポイントです(笑)。あとは、望み願わない限り行きたい場所には行けないよ!ってところかなぁ。

赤松:これも歌を中心にシンプルに、かつ元気よくドラムを構成した感じです。サビ前のフィルかー。生熊が言うならそこが萌えポイントってことで(笑)。

AKI:わかりやすく「ROY G.BIV」と「memento」って対になっていると思うんだけど、だからこそ共通の空気感が必要だと思っていて。二つの楽曲の繋がりを探してもらえたらと思います。

1本1本のライブを、今まで以上に大切にしていきたい(AKI)

「ROY G.BIV」「memento」それぞれのレコーディングやアレンジで、特に試行錯誤した部分を教えてください。

生熊:「ROY G.BIV」はシーケンスにかなり時間が掛かりました。それと今回もいつものエンジニアの由田なおさんに依頼したんですけど、マイクやマイクプリが良すぎて、声のレンジがかなり広く録音できています。ギターはちゃんとアンプを鳴らしていて。当たり前やけど、ちゃんとギターの音がしています(笑)。あと、コーラスアレンジがものすごく良いと思います。「memento」はシンプルでギターロックな音なので、僕らの年代の方は耳触りがすごく良いと思います。プラスシーケンスで色付けはしていますが、すごくわかりやすく作りました。

赤松:その曲のイメージに合ったチューニングを試行錯誤しました。いつも曲によってチューニングを変えるんですよ。どの音がその曲に合うかを考えながらやっているのが、楽しくもあり大変でもありましたね。

AKI:方向性を決めるのに一番時間を費やしたんじゃないかな。いろんなアイディアがあって、その一つひとつが素晴らしいアイディアだったとしても、全てが採用されるわけではなくて。その採用不採用を決めるのが方向性だと思っています。方向性がブレると楽曲が迷走するから。ベースのアレンジに関しては「必要なものを必要な分だけ」がコンセプト。ここにフレーズあっても良いよねってレベルなら弾かない。ここには必ず要るって思えるフレーズだけに厳選しました。

「ROY G.BIV」のMVはワンカット撮影の映像になっていますが、撮影の際に気をつけた点、大変だったことはありますか? 何かエピソードがあれば教えてください。

生熊:実は某クリエイターサイトでハマりそうな監督を探していた時に見つけた方が、ひょっとしたら元TRIPLANEのギタリスト川村健司君と面識があるかも?と思って電話したのが始まりでした。で、その監督が川村君の助手をしたり一緒に作品を作っているとわかって、川村君のチームにお願いしました。川村君は現在、映像やカメラの仕事をしていて、以前にソロのアー写を撮ってもらったこともあるんです。撮影当日は元々ミュージシャンたちのチームなのもあり、すごくスムーズに終わりましたね。元々はワンテイク、ワンカメっていうのは全く考えてなかったんですけど、当日に川村君が走り回って撮ってくれたファーストテイクが良すぎて、メンバーや監督と「これで良くないか?」となって。奇跡のワンテイク、ワンカメ、ファーストテイクです。

そんな奇跡あるんですね…!

赤松:ワンカット撮影ということもあって、この時ばかりは緊張してしまって、スティックを落とさないのを意識してしまったので、力強く握りすぎてしまいました(苦笑)。

AKI:ファーストテイクが終わった後、冒頭にイメージシーンがあるほうが良いかもってことで、雨に打たれるシーンの撮影が始まって。監督が「メンバー全員撮ります」とおっしゃっていたんですけど、耕治さんを撮り終えて、結果やっぱり要らないと。もう少しでずぶ濡れになるところでした。耕治さんが体を張ったそのシーンは、リリースの告知映像に使用されています。

「memento」もMVを制作されるようでしたら、現段階で言える範囲で、どのようなものになりそうか教えてください。

生熊:まだ何もお伝えできないのですが、作るなら全く顔が見えない今作とは相反するものにしたいかなぁ。もうメンバー出ない!とか(笑)。

赤松:こうなったら全てを監督に委ねます(笑)!

AKI:耕治さんが秘密だとおっしゃっているので、秘密で。

はい(笑)。さて、2月11日の3周年記念公演「BIRTHDAY」はどのようなライブにしたいですか?(※インタビュー実施後、2月11日公演は延期となりました)

赤松:いつも通り、各々の楽しみ方でいいと思うし、僕らはその皆の表情が見られれば全て伝わるので、お互い自由に楽しめる空間にしたいと思っています。

AKI:無事に開催できれば、それ以上のことはないかな。

生熊:コロナで奪われた2年間ではなく、非常事態だからこそ成長できたバンドとファンの力を集結させたいですね。

最後に、BLUEVINEとしての2022年の展望を教えてください。

赤松:BLUEVINEという名前で約3年やってきましたが、青は青でも、いろんな青を表現できる曲を今後も発信できればいいと思います。インディゴとかね(笑)。

AKI:予定していた次のライブができなくなる、そういうことが当たり前の世界になって。だからこそ1本1本のライブを、今まで以上に大切にしていきたいと思っています。もしかしたら、これで最後になるかもくらいの気持ちで。

生熊:まだまだコロナ禍ですが、延期になったツアーもやりたいし、今回のリリース記念ライブもしたい。メンバーとたくさん居たいなぁ。そして、よりたくさんの人にBLUEVINEを聴いて感じてもらいたいです。

(文・金多賀歩美)

BLUEVINE

生熊耕治(Vo&G)、AKI(B)、赤松芳朋(Dr)

オフィシャルサイト

リリース情報

New Single『ROY G.BIV』
2022年2月1日(火)配信

収録曲
  1. ROY G.BIV

リリース情報

New Single『memento』
2022年3月16日(水)配信

収録曲
  1. memento

ライブ情報

●BLUEVINE 3rd Anniversary LIVE 【BIRTHDAY】
2月11日(祝・金)下北沢Flowers Loft
※延期→5月4日(祝・水)振替公演